天空の家: イラン女性作家選 (現代アジアの女性作家秀作シリーズ)

  • 段々社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434188787

作品紹介・あらすじ

椅子ひとつ分の"安住の地"を求め、テヘランからパリ、ロンドン、カナダへと向かうマヒーン夫人。革命と戦禍を逃れひとり彷徨う老夫人の孤独に寄り添う表題作。ふとしたことから染み取りに夢中になったレイラー。身近な人との微妙な心のズレにも気付かず人生の染みを滲ませていく「染み」など、全7編。1979年の革命、8年間に及ぶイラクとの戦争、王制からイスラーム共和制へ…激動の波に翻弄される女性たちの悩み、願い、喜びは?-"知られざる国"イランの女性たちの生の諸相を、イラン、フランス、アメリカなど異なる活動拠点で創作を続けるイランを代表する女性作家7人が鮮烈に描くアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • イラン国内でペルシア語の作品を発表することが表現者にとっていかに困難であるか、そんな社会的制限や検閲下で、具体的に描けないもどさしさ、声高に言えない胸の内を、冷静なタッチで、かつ強い意志をもって描き切るイラン女性作家たちの気概を感じた。

    戦争、離散、家族、児童婚、田舎と都会、伝統と近代化…等、重厚で濃厚なイラン社会。
    また、表面には出せない、奥底にある感情を読者に伝える表現力の高さ。
    よい文学に出会った、という満足感に浸れる作品たちだった。

  • 1979年のイスラム革命以降に書かれたイランの女性作家の短編を集めた本。いずれも抑制のきいた大人っぽい小説という印象。日常を俯瞰したものあり、ファンタジックな社会派もあり、多様である。もっとたくさん読んでみたいと思った。

  • イラン現代文学選。7人の女性作家の作品を、ペルシャ語から直接日本語へ翻訳したという、注目に値する作品集。
    どれも素晴らしい作品で甲乙つけがたいが、そのなかでも、ゾヤ・ピールサード「染み」、ゴリー・タラッキー「天空の家」が良かった。
    解説に、イランの女性作家は「推定400人以上」とあり、その少なさにのけ反る思いがする。未知の国イラン、その中でも活躍の場が制限される女性作家。彼女たちの描く生の喜びや悲哀は、直接的な社会批判が許されない背景もあってか、奥ゆかしく理知的な印象を受けた。

  • 今年読んだ本で三本の指に入ることを確信しているけれど、私のオールタイムベストにも入りそう。
    現代イランの女性作家の短編を集めたもの。
    どれも秀作だったけれど、ゾヤ・ピールザードの「染み」が見事。
    読んでから一ヶ月経ってもくっきりと胸に残っている。
    まさに染みのように。

    イランの作家は男女問わず、読むのは初めてだと思う。
    読む前に抱いていた暗いイメージは、やはり収録作の多くの背景にあった。
    政情不安、それに伴う家族の別離、幼女の強制結婚等々。
    しかし読み進めるに従って、描かれている感情はほとんどが非常に身近なものであることに気づく。
    気づいてみればそんなことは当たり前、当たり前なのだけれど、自分とは無関係な世界だと切り離して来たのだなぁ、とやるせない気持ちにもなった。
    しかし、そんな私の甘えた弱さなど蹴散らすくらい、どの作家の筆も力強い。
    それが、幸せな作品群とは言い難いこの本を読み終えた後に、爽快さが残る理由だろう。

  • 1979年のイスラーム革命以降に発表された7編が収録されている。最近ではイラン映画が日本でも公開されるようになってイランの普通の人の暮らしが垣間みられるようになったが、この作品集でもまた、ひとつひとつ趣は異なるものの、さまざまな年代の普通の女性たちの悩み、葛藤、喜び、悲しみが描かれる。7編はどれも印象的な物語である。そこにあるのはまぎれもなく普遍的なものだ。ともあれ、女性の手になる小説がペルシア語から直接邦訳されるのは初めてのことだそうで、それを喜ぶとともに今後も継続して紹介されていくことを願いたい。

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