リアルタイムOSから出発して組込みソフトエンジニアを極める

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434159374

感想・レビュー・書評

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  • 日経BP社から2006年に発売された同名の書籍が絶版になっていて、再出版とのことです。詳しい経緯は、著者のブログで語られています。

    こんなに、濃くて良い本でも4,000部なのかぁ、と。

    実は、2007年に発売された私の『ソフトウェアテストHAYST法入門』も確か4,000部です。
    そして、約1年前に発売された、『ソフトウェアテスト技法ドリル』は、第1刷1000部、第2刷500部、第3刷300部、第4刷500部の累計2,300部です。

    でも実感として、そんなもんかなぁとも思います。
    コンサルティング先で『ソフトウェアテスト技法ドリル』をご存じでない方、多いですからねー。本当なんですよ。コンサルティングも有用と信じでいますが、先に、ドリル本を配って読ませた方が費用対効果が高いのではないかなぁと思うこともありますw。

    と、愚痴はともかく、『組込みソフトエンジニアを極める』は、組込み系の人に、迷いなくおすすめできる本です。
    するすると、読める本ではないけれど、大切なことがしっかり書いてあります。

    内容については、Amazonの「なか見!」で目次とサンプルが読めますし、外伝を読んでいただければと思います。

    学習用書籍のページで、

      [1] 各マイクロコンピュータのデータブック
      ぼろぼろになるまでマイコンのデータブックを読み込む。これが基本です。

    というのは、酒井さんらしくていいなぁ。

  • 開発規模が増大して疲弊している現場、海外勢に追い上げられてる現状をなんとかしたい!という著者の熱い想いが伝わってくる素晴らしい本(-_-) 20数年現場で経験積んできた方だけあって、内容が濃い濃い w

    前半2章は設計(性能、機能分割)、後半2章は開発プロセス(再利用、品質)のお話です。優れた設計があれば、優れたプロセスを構築できる、と見事に一本筋の通った内容になってます。

    一番興味深かったのは、再利用のお話。
    過去verがあるから、という安易な流用ではなく、あらかじめ数年先までの開発ロードマップを想定し、最初から再利用ありきで開発を行うってのが、当たり前とはいえ、目からウロコが当社比1.5倍くらい落ちました。

    大事なのは、製品ではなく、解決できるお客様の目的にフォーカスしてロードマップを想定すること(製品の陳腐化にも耐えられるように)。技術面だけに偏らず、ビジネス面の視点もキチンと考えておられる、えらく志の高い内容でした。

    リファレンス的な技術本以外で、読み直したいと思った本は久しぶりかも。組み込みやってる人はホンマ一読の価値ありです。というわけで読み終わったので今から図書館に返しに行きます<えー。。。いや、ちゃんと買い直しますよ?お値段\1,800も良心的 w

  • ファックス、ブルーレイレコーダー、産業用ロボット、エレベーター・・・等、様々な機器の心臓部として組み込みシステムが活躍しています。
    この組み込みシステムは(多くの場合)低コスト化の為、最低限の性能のコンピューターシステムが採用されています。
    コンピューターと言うからには組込みシステムにもソフトウェアが必要であり、このソフトウェアを作るエンジニアは組み込みソフトエンジニアなどと呼ばれています。

    本書は架空の会社・東洋レジスター株式会社を舞台に、この会社の電子レジスター向け組込みシステムの開発を通して、組込みソフトウエアの開発現場が直面している課題やその解決方法、エンジニア個人が取るべきスタンス、マネージメントの方法、ソフトウエアの品質保証の方法等を解説しています。

    全4章からなり、それぞれ以下の様な内容になっています。

    1章:
    CPUなどハードウエアについて少し触れた後、リアルタイムOSについて解説。
    厳しいハードウエアの制限下で、リアルタイムOSの割り込み処理などを利用しながら求められる性能を実現する方法を解説

    2章:
    オブジェクト指向の考え方を導入して、全ての機能が密接に絡み合っている組込みシステムを機能毎に分割。
    その為のツールとしてUMLを導入。

    3章:
    機能毎に分割した組込みシステムを他のシステム開発時に再利用する方法を紹介。
    システムのコアとなる部分の抽出方法とそれに対する検証方法を解説。
    これ以外にはエンジニアがマーケティングにも注意を払うべきと主張したり、体系的な再利用に対するエンジニアの心理にも触れている。

    4章:
    組み込みソフトウエアの品質保証について解説。
    完璧なシステムを作成するのは極めて困難。
    組み込みソフトウエアを機能毎に分割して各個に検証するべきだが、忙しい現場にはそのような余裕はない。そこでシステムのコアになる部分の抽出/検証から始め、その後サブシステムをラッピング化する事などを推奨。


    他にも色々と参考になる事が書かれていました。

    ソフトウエア工学と言う言葉がありますが、本書で紹介されている考え方や手法の根底には工学的なアプローチが存在しています。
    しかし、(少なくとも他の工学分野とは違い)ソフトウエア開発は定性的な側面が極めて強い為、これが一番と言う絶対的な手法など存在しません。

    また、本書では組込みシステムの多機能化によって苦悩を深める開発現場の様子も紹介されており、著者はシステムを「機能毎に分割する」手法を徐々に実行に移して社内全体での設計資産の再利用を推進すべきと主張しています。

    この様に組込みシステム開発に関して参考になる内容が多数載っているのですが、残念なことに校正が全くなっていません。
    私が読んだのは第1版なのですが、本文中に「てにをは」の間違いが散見された他、文章が長く理解しにくいものになっている箇所が多数。

    「編集者、仕事したのか?」と言った感じになっています。

    おかげで内容が頭に入りづらい事と言ったら・・・・

    "#まあ、事前に組込みソフトウエア開発に関する知識をお持ちでしたら別かも知れません。"

    これが直れば文句なしの良著です。
    購入を検討されている方はこの点が修正された版を買われると良いのではないかと思います。

    "#改修版があればの話になりますが・・・"

  • 組み込みソフトウェアの基礎から応用的な技術のWhyとHowを書いた良書です。
    組み込みソフトウェア技術の発展を時間順に追いながら、リアルタイム技術、設計分析技術、体系的再利用、品質向上技術がなぜ必要になるのか?どうやって身に付けるのか?を解説しています。
    内容は新卒社会人を意識して書かれているので、わりと平易です。
    新卒社会人や学生さんにお勧めです。

  • 組込みソフトを極めるための出発点としてよい本である。

    組み込む対象の現物によって、要求が違うため、現場へ行って議論する必要がある。
    それを演出したいという意図はわかるので、出発点とするにはよい本であると思う。

    例えば、「ハードウェアが変わってもアプリケーションソフトウェアは変更しないで済むようにしたい」という記述がある。

    ”ハードウェアが変わっても、ソフトウェアを変更することによって、他のハードウェアを変更しないように済むようにしたい”という要望が、組込みソフトに求められる要望ではないだろうか。

    アプリケーションソフトウェアだけでなく、アプリケーションハードウェアを変更しないで済むような、ソフトウェアが求められる場合もないだろうか。

    「CPUの創り方」という本を紹介しているのは、基礎から勉強しろという教訓としてよくわかる。

    記法としてのUMLの役割が重要であることは現場にいればよくわかる。

    しかし、オブジェクト指向は、現物によって異なるのではないだろうか。サブジェクト思考の方がよい場合はないだろうか?
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