僕は死なない子育てをする: 発達障害と家族の物語

著者 :
  • 創元社
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本棚登録 : 117
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422930954

作品紹介・あらすじ

*********

【推薦します】

◆本田秀夫 氏
(精神科医・信州大学医学部教授)

納得できる生き方は、
自分を知るところから始まる。
発達障害があるとわかったことが
大きな転機となり、
前向きに人生を歩んでいくことができた
著者の実体験は、
生きづらさに悩む多くの人たちに
希望を示すだろう。


◆山崎ナオコーラ 氏
(作家)

「あ、これは私のことだ!」と思いました。
特性のある人、
特性のある人と関わっている人、
育児中の人、育児はしない人、色々な人が
「あ、私のことが書いてある!
書いてくれてありがとう!」
と思うんじゃないかな。

*********


「仕事終わりに妻と待ち合わせをし、
並んで帰路を歩きながら、
僕は缶ビールを開けた。
蒸し暑い夜に、
妻は静かに涙を流し始めた。
妊婦はビールを飲めない。」

23歳で結婚し、父になり、
鬱になって離婚しかけたり
自殺しかけたりしてから発覚した
〈発達障害〉。

一言で表せば「苦闘」の20代。
けれど「未来は大丈夫だ」と信じようとした。

「なんとか生き延びてこられたんだから--」


NHK「ハートネットTV」への出演や
「ハフポスト」「withnews」などで活躍する、
平成元年生まれの人気ライターによる、
発達障害当事者・育児ドキュメンタリー。

「死にたいぐらい
辛くなってしまう領域が存在することを、
僕は知っている。」


【本書に登場する資料】

バカの壁(養老孟司)
イクメンじゃない「父親の子育て」(巽真理子)
心が雨漏りする日には(中島らも)
自閉症スペクトラム(本田秀夫)
空白を満たしなさい(平野啓一郎)
旦那さんはアスペルガー(野波ツナ)
言葉を失ったあとで(上間陽子)
生活者の平成30年史(博報堂)
「待つ」ということ(鷲田清一)
弱いロボット(岡田美智男)
結婚不要社会(山田昌弘)
マネジメント(P・F・ドラッカー)
家族と国家は共謀する(信田さよ子)
ディスタンクシオン(P・ブルデュー)
手の倫理(伊藤亜紗)
職業としての小説家(村上春樹)
火花(又吉直樹)

感想・レビュー・書評

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  • えんどーこーた|note
    https://note.com/kotart90/

    書籍詳細 - 僕は死なない子育てをする - 創元社
    http://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4412

  • 突然だが、わたしは今、妊娠中である。

    子育てについて情報収集をするなかで、育児本もよく読むようになった。そして「発達障害」をもつ「パパ」が書いた本に出会った。

    人間は、就職、結婚、貯金、両家との関係維持、そして妊娠出産と順調にステップを踏んで、ようやく子育てに至る。
    その一本道の途中を抜かしたり、その過程で社会や周囲の理解を得られない場合を考えてみよう。きっと一人で悩みを抱え込み、生きるのが辛くなるだろう。

    二三歳で結婚し、二四歳で父親になった著者。夫婦仲が悪化し、別居寸前だった二六歳の時、発達障害が発覚した。一旦休職した職場に復帰したものの退職せざるを得ず、「いつか妻に借りを返したい」と考えていた。

    のちに、劣悪な労働環境で働いていた保育士の妻も折れてしまう。

    絶望的な状況下で、「夫婦は、どちらかが「主人」になる“主従”の関係ではなく、互いにサポートし、ケアし合う関係」に自然となっていった。


    一時は崩壊寸前だった家族は、自分たち家族にとって大切なことは何かを見直すことで、再びチームになった。「死にたい」と思っていた著者は、「死ななくてよかった」と思えるようになった。

    「現代の日本で“普通に”子育てをしていくのは難しい」と著者は言う。
    誰もが自分の「父親像」「母親像」を思い描く。でもそんな周りが押し付けてくる/自分が理想とする像は壊してもいい。自分を追い詰めないで。死んだら楽になれると一瞬でも考えてしまったら、まずはゆっくり休もう。そう思えただけでも、この本を読む価値はあった。

    わたしも子どもが生まれたら、自分が死なない子育てをしたい。


    p135
    仕事でケアワークをしている人には、ケアをされる場所も必要だ。

    p136
    僕は言葉による説明が好きだから、言葉による「説明」を過信していたところがあった。鬱になったときも、妻に対して「自分がなぜこのような状態になっているのか」を一生懸命説明しようとした。夫婦が別れそうになったときも、なんとか言葉を絞り出して、論理的に状況や道筋を説明しようとした。しかし、そんなことは必要なかった。というよりも、しないほうがよかった。ただ、飛びついて泣ければ、ひとまずそれで良かったのだ。相手がつらいのなら、抱き止めればよかったのだ。人には無条件で肯定されることを必要とする局面がある。
    「寄り添う」とは、どういうことなのか。どれだけ言葉で励まされるよりも、どれだけ本や動画で知識を与えられるよりも、ハグのほうが通じるコミュニケーションがある。背中に手をあてて、隣でじっと座っているだけでも、気持ちが落ち着かせられることがある。僕自身が弱くて脆い自分と向き合う日々を過ごしてきたからこそ感じたことだ。
    それらは、僕が鬱のときにしてほしかったことだった。

  • 題名の上手さに引き寄せられて読んだ。
    「自分の知り方」と「特性との対処法」が素晴らしい。
    大変な経験をしてきたからこそたどり着いた「今」だとは思うが、いまだ混乱の中にいる発達障害者にとっては、一つの道筋を示されているようで心強い限り。
    発達障害に関係なく、夫婦や家族の在り方を考えるヒントがたくさん詰まっていると思う。

  • どん底に何度も落ちながらもぼろぼろになりながらつかんだ家族の形。こういう発達障害の生育家庭もあるのだと参考になった。ひどい状況でも家族への思いは常にあったことがかしこで感じられ、だから奥さんは去らなかったんじゃないかなと思った。この人のやっと手にした今の状況は本当に尊い。

  • わたしたちは、いかに「普通」や「当たり前」「○○らしさ」といった言葉に縛られて、自分や周囲の人々を生きにくくしてしまっているのだろうと思う。結婚し、一児の父となってから自身の発達障害を知った著者が、苦しさやしんどさの正体をひとつひとつ解きほぐし、やがて自分にとって程よいやり方を見つけて自分なりの人生を見つけ出していく……そういってしまえば簡単そうだが、「こうでなくては」という意識の奥底に染みついたものを変えるのは、やはりたやすいことではなかったはずだ。
    わたしが一番好きなのは、娘さんが父親である著者に対して「じぶんもだいじだからな!」と真顔で言うところだ。以前読んだ本で、子育ては親から子への一方的なケアではなく、親は子からもたくさんのものを受け取っているのだという趣旨の内容があった。この本の著者もまた、娘さんから多くのものを受け取り、ケアされているのだろうなあ。

  • 発達障害だとしても死にたくなったこともあったとしても、未来を見据えて行動する。

    すごくすごくつらい気持ちというのが読んでいて伝わってきて、支え合って生きていくことの尊さを知る。

    パートナーに愛情を注げる人なのだと思った。

    発達障害と成績は全然関係ないんじゃないかって思えてきて、そうなのか…となる…
    自殺願望については「死にたいと思ったこともある」くらいの触れ方なので、全体的に暗くなくていいと思う。

  • 発達障害と診断され、一時期は鬱病から自殺や離婚も考えたという男性が、自分のことを見つめ直し、子育てを通して家族のことも見つめ直し、少しずつより良い生き方を模索していった過程がとてと丁寧に描かれている。きっとご本人たちにとっては大変な苦しみもあっただろうけど、読みながらずっと、こんなふうに家族で協力し合いながら人生に取り組めたらどんなに良いかと、少し羨ましい気持ちにもなった。これは子育ての本であり、夫婦関係の本であり、発達障害の本であり、鬱病の本であり、多様性(または本の中の言葉を借りると無限性)の本であり、ウェルビーイングの本だと思った。

  • 自身の子育てや、特性を見直すきっかけになった。
    子育てで産後うつになった時、ひたすらに自分が悪いと思い続けてきたけれど、
    自分の特性にもっと早く気づいていれば、対策を取れたのになぁ、と思った。
    妊娠期に読みたかった。
    産院等で、こういった特性のある両親に向けた講演やプログラムがあれば良いなと思う。
    母親学級等でも実務的なことばかりではなく、
    こうしたメンタル面に特化したことも取り上げるべきだと強く思う。

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著者プロフィール

遠藤光太(えんどう・こうた)
1989年(平成元年)生まれ。発達障害の当事者。妻、子2人との4人暮らし。小学校時代には不登校を経験し、大学時代にはうつ症状を呈する。卒業後の社会人2年目に長期休職を経験。その後、退職、アルバイト、無職、障害者雇用での勤務を経て、2018年からライター業。ハフポスト日本版、withnewsなどのウェブメディアで取材記事執筆、エッセイ連載などを行う。

「2022年 『僕は死なない子育てをする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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