根っからの悪人っているの?: 被害と加害のあいだ (シリーズ「あいだで考える」)
- 創元社 (2023年10月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422360157
作品紹介・あらすじ
シリーズ「あいだで考える」創刊!不確かな時代を共に生きていくために必要な「自ら考える力」「他者と対話する力」「遠い世界を想像する力」を養う多様な視点を提供する、10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。*『根っからの悪人っているの?――被害と加害のあいだ』著者の映画作品『プリズン・サークル』は、日本で1か所だけ、刑務所の中で行われている「TC(回復共同体)」という対話による更生プログラムを、20 代の受刑者4 人を中心に2 年間記録したドキュメンタリー。本書は、この映画を手がかりに、著者と10 代の若者たちが「サークル(円座になって自らを語りあう対話)」を行った記録である。映画に登場する元受刑者の2 人や、犯罪被害の当事者をゲストに迎え、「被害と加害のあいだ」をテーマに語りあう。(装画:丹野杏香)
感想・レビュー・書評
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めちゃくちゃ良かった!
色んな人がこのシリーズに興味を持って
自分から手に取ることで、想像力が広がり
それぞれの思っていることを言語化&話しやすく
なるんじゃないかと思った。 -
#根っからの悪人っているの
#坂上香
#創元社
気に入った #あいだで考える シリーズです。#プリズンサークル という映画を作成した映画作家がファシリテーターとなり、一般の若者と映画に出ていた少年犯罪の加害者(被害者でもある)と被害者が対話する。居場所と対話。誰にでも必要なものなのだ。 -
映画『プリズンサークル』を見ていれば、もっと深い感慨があるだろうが、見ていないので純粋にこの本のみの感想である。
他のさまざまな本、研究でも言われている通り、犯罪者は生育環境に問題があり、自分が大切にされた経験が極端に少なく、そのため自尊感情が育たず、自分の感情を殺す傾向にある。そうしなければ虐待や貧困などに耐えられないからだ。この本に出てくる元犯罪者も、そうである。普通の若者たちが、対話と学習によって、「犯罪者」と自分の間に理解不能な溝があるわけではないことを、自ら理解していく過程が描かれている。
とはいえ、こういう集まりに参加する若者というのは意識が高い若者で、これに参加しなくてもこの答えにたどり着いたのではないかと思う。もちろん読んで考えたことより実際に交流して考えたことの方が深く残るので、これはこれで良いとは思うが、こういう集まりに参加しない大多数の人たち、「プリズンサークル」も見ず、本も読まない人たちにどうわかってもらうかは難しい。
子ども食堂(本来国がどうにかすべき問題を善意の一般人におしつけ)の必要性が増す日本社会で、子どもの育成環境を良くすることが、未来の犯罪防止に繋がると、どれだけの人がわかっているだろうか。
刑務所内のTCも大事だが(それが全国に一ヵ所しかない日本!)、子どもが他者に大事にされる世の中になって欲しい。 -
もっと禅問答と言うか、本質邸な部分に切り込む内容かと思いましたが、題名が表すような内容ではありませんでした。もうちょっと濃い目の議論が展開されて欲しかった。
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興味があったけどなかなか手に取れないでいた(映画もみていない)「プリズン・サークル」の著者(制作者)による、中学生から大学生まで10代の若者4人との5回にわたるワークショップの様子を記録した本。
刑務所内のTC(回復共同体)のプログラムを撮影した「プリズン・サークル」をみたうえで、そこに登場した元受刑者(加害者)二人や別の事件の被害者となった人を一人ずつゲストにむかえて対話していく。加害者といっても多くは元被害/被虐待児(やその家族)だったりもする。被害者といっても、加害する立場が転じて被害を受けることになったケースもある。加害と被害の話は複雑でしんどい。対話形式なのでその気になればどんどん読めるが、自分も7人目の参加者になったつもりで考え考え、休み休み読んでいく。
自分の子らと同じ年頃の少年の起こした事件に巻き込まれ友人を失った山口さんの話(事件の渦中の言動もその後の気持ちも…)がとくに印象深かった。自分と似たタイプの人とも思えて。山口さんのお話で、最近言われるようになった「修復的司法」の意義についても具体的に腑に落ちた。司法や刑法というシステムからはこぼれてしまう「忘れられた存在(被害者)」や「無視された人(加害者)」の問題をこれからも考えていきたい。
世の中には生まれついての「悪人」なんてたぶんいなくて、環境やタイミングなどが相まってそうならざるをえなかったのだろう、とそれは前から思っていたことだったけれど、そこからどう回復というか生き直せるようになるか、「安心と信頼が感じられる居場所」が鍵かと思うが、いまの社会には難しい課題ばかりだと改めて思った。いろんな人に読んでほしい。とくに親や教師など、こどもに関わる人は一度は読んでみてほしいと思う。
巻末の作品案内が充実していて、芋づる式に読みたい本が何冊もある。 -
サンクチュアリ…心から安全だと感じられて、安心して本音が話せる場所。「ここでは相手を攻撃せず、肯定的で、みんなのためになるような言い回しをしよう」「誰も仲間外れにしない」「対等に向き合う」「みんなからも学ぶけど、自分も誰かに与えてる」「自分がいてもいいんだっていう感覚」「仲間と一緒にいる」
エモーショナルリテラシー…自分の心の動きや様々な感情を感じとり、理解し、表現する力のこと。それを言語化できないから暴力が言葉に成り代わってしまう
「口に出してったら自分にフィットする感情が見つかってきた」→TCでみんなに聞かれていくうちに「あ、それかな」って思う。それでだんだんフィットしていく感じ
TCの場では、余暇時間に何人かが自分のテーブルに来てくれたりする。「さっきの話もう少し聞かせて」とか「話聞いて、この部分めっちゃわかった」とか言ってくれるっていうのが、活発にあったんですよp88
「刑務所っていうのは、屈辱的なことばっか。それはだんだん卑屈って言葉になっていく。そして自己嫌悪っていう、自分はダメな存在だとか汚い存在だとかっていう捉え方になっていってしまう。みんなゴキブリって好き?基本嫌だよね。で、ずっと誰かにお前はゴキブリだって言われ続けたら、自分は人前に出たらダメなのかなって思い始めるんだよ。屈辱を味わっていく中で自己嫌悪感がだんだん育っていく。そういうのがすごく厄介だよね。」p95
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「刑務所の環境がいいと戻りたくなる」という言説に対し、真人さんが否と答えているのが印象に残る。「犯罪は精神的にめちゃめちゃよくないんですよ。どんどん卑屈になって、どんどん人が悪くなっていく。今は、精神的にはちょっと崩れちゃってるけど、犯罪してないし、生きてるんだなって感じられるから、いいかなと。それに、昔は助けを求めたくても平然としたふりをして、まったく求めなくて、それがゆがんだ形で出てた。」(p. 52)
→映画で、叔父の家に強盗に入った健太郎さんもそうだった。お金がないって、言えなかった。助けて、困っている、って言えるようになるといいな。 -
映画 プリズンサークルと合わせて
感情の筋肉が印象に残った -
自分の感情の筋肉を鍛えていくこと、それは自分もまだまだできていないと感じた。
「自分が今この瞬間に何を感じているか?」という意識が無くなってしまうほど、日々の仕事に追われていたり。それを考えないように、周りに合わせるように半ば強制された学校という教育の場での過去があったり。筋肉を使わない癖が知らない間についてしまっていたのかもしれない。その存在を忘れてしまうほど。
社会では、対話の機会は本当に少ない。自分と違う意見や感情と対峙することはすごく体力を使うけれど、人と人とが共に生きていくために必要不可欠な場であることを再確認した。分かり合えるかは定かではないけれど、歩み寄ること、優しい第3の空間を創り出そうと努力することが重要なのではないかと思う。