ジェインズヴィルの悲劇: ゼネラルモーターズ倒産と企業城下町の崩壊

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422360102

作品紹介・あらすじ

世界トップレベルの自動車企業・ゼネラルモーターズ(GM)。その生産工場が閉鎖したとき、企業城下町ジェインズヴィルの分断が始まった――。『ワシントン・ポスト』で30年以上のキャリアを持つ女性ジャーナリストが、一市民のパーソナルな物語を通して「分裂したアメリカ全体の物語」を描き出した、衝撃のノンフィクション!★ファイナンシャル・タイムズ&マッキンゼー「ベスト・ビジネスブック2017」★ニューヨーク・タイムズ「100の名著2017」***GM最古の自動車組立プラントを擁するウィスコンシン州南西の街ジェインズヴィルでは、経済のすべてがGMを中心に回っているといっても過言ではなかった。退屈だが高給の工場作業。工員の家族は半地下や庭つきの一軒家に住み、安定した生活を送っている。家族3代、組立プラントに勤めているという家庭も少なくない。しかし「大不況(グレート・リセッション)」の渦中にある2008年、クリスマスを目前に控えた冬の日、ジェインズヴィル組立プラントの長い歴史は唐突に幕を下ろした。最後のシボレーがラインを通過していくのを呆然とした気持ちで見守っていた工員たちに、怒涛の苦難が押し寄せる――。工場の再開を信じるのか? よりよい雇用を求めて職業訓練を受けるのか? 遠方の求人に縋って単身赴任をするのか? 生活レベルを落として援助を受けるのか?かつては同じ工場で共に働いていた人々も、同じ街を故郷とする同胞も、その立場と選択によって運命は大きく分かれてしまう。家族がバラバラになり、十分な援助も受けられず、日々の食事にも事欠くような元工員の家庭があるいっぽう、政治家や財界人はインセンティヴをばらまいて新企業の誘致に奔走しつつも、まだ「グラスは半分以上残っている」と楽観的に構えている。災厄を免れた者と、災厄へと滑り落ち、いまだに抜け出せずにいる者。ジェインズヴィルという一都市の悲劇はまさに、二分されたアメリカの縮図となっている。著者は現地に赴き、元GM工員、その家族、教育者やソーシャルワーカー、政治家、財界人など、ジェインズヴィルのさまざまな人々に緻密なインタビューを実施。プラント閉鎖以降の彼らの生活や行動を事実のみならず心理まで克明に描写し、すべて実名によるノンフィクションでありながら、小説さながらのストーリーテリングに成功している。。また、補遺には著者が2013年晩冬~春にかけてロック郡で行った、住民の経済状況に関する調査および職業訓練の成果に関する調査統計結果を多数の収録。本編とは異なる視点から、ジェインズヴィルの「その後」を検証する。一企業に依存していた自治体がそれを喪った途端、ドミノ倒しのようにあらゆる経済活動が停滞し、人々の人生が坂を転げ落ちていくさまを目の当たりにする時、これがはるか遠い異国の、耳慣れない地方都市だけに起こりうる物語だとは決して思えないだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 2021年5月20日読了

  • リーマンショックで経営難に陥ったGMの企業城下町ウィスコンシン州ジェインズヴィルで起こった雇用消失についてのノンフィクション。工場労働者の雇用が失われたことで建設業・小売業・サービス業まで町自体が大きく衰退し、労働者階級は困窮し自殺者が急増したそうです。リーマンショックがアメリカ全土に与えた影響は予想を大きく上回るほど大きく、困窮と国民の分断がトランプ政権誕生の土台だったのだろうと思いました。
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  • リーマンショック後の大不況で、GMの工場が閉鎖された都市のドキュメンタリー。

    自動車関連の仕事をしていた労働者および家族の工場閉鎖後の状態が描かれていた。

    再就職後の賃金は下がり、生活が苦しくなったことがよくわかった。

    新しく創出された雇用の賃金も低い。製造業の良い仕事はもう戻って来ないのかもしれない。

    巻末に資料もついていたが、景気低迷期や産業構造の転換のなかでは、職業訓練の効果は薄まるのかもしれない。

  • ★GMジプシーの悲哀★リーマンショック後のGM城下町の苦境を追う。GMの工場が時給28ドルで中産階級を支えていたが、閉鎖になると半額程度の仕事しか残っていない。収入と家族の生活を守るために近隣の別の工場に出稼ぎに行き、週末ごとに戻る「GMジプシー」の姿が染みる。あと10年近くもこの生活を続けるのか。娘がアルバイトを掛け持ちして家計を支える例もある。
     再就職のために職業訓練学校に政府が金を投じ、そこで懸命に学ぶ人も多い。再教育に対する米国の信念を感じる。ただ卒業してもいい職を得られるわけではなく、むしろ学ばなかった人よりも再就職が厳しいとの調査結果も示す。優秀な成績で卒業して刑務所に職を得た人が精神を病んでしまう例も。再教育の意義を問いかける。

     一方で新しい職を作ろうとする経済界の主導者の姿も描く。楽天的にあろうと活動し、一生懸命であり活動に満足しているようだが、かつての中産階級を救うには至っていない冷静な筆致が厳しい。

     終身雇用に守られた日本で、会社に頼らず働ける能力を磨けというが、ことはそう簡単ではないことが分かる。GMをすでに退職して年金で悠々自適の人もおり、時代の運不運も大きい。個人として備えられることが何か、そして地域としてどれだけの対応が可能か、突きつけられる。答えは出ないが。

  • 東2法経図・6F開架:302.5A/G61j//K

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著者プロフィール

『ワシントンポスト』で30年間記者を務めたジャーナリスト。社会政策にフォーカスをあてた取材を多く行う。ハーバード大学、ニーマン財団のフェローとしてラドクリフ大学院でジャーナリズムを学ぶ。ワシントンDC在住。ピューリッツァー賞受賞。

「2019年 『ジェインズヴィルの悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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