河合隼雄のカウンセリング教室

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422114224

作品紹介・あらすじ

一度きりの個別の出会いのなかに普遍的な本質を見る。「時間」「人間理解」「倫理」「家族」「友情」の五つのテーマに分けて語る豊かなカウンセリングの知恵。

感想・レビュー・書評

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  • 「四天王寺カウンセリング講座」で開催されている講座のうち
    2007年に亡くなられた心理学者の河合隼雄氏が講演されたものを
    「カウンセリング教室」と「カウンセリング講和」の
    2冊に息子の河合俊雄氏がまとめておられます

    どんな方を対象に開催されている講座なのかよくわかりませんが
    語られている内容から 多くの人はカウンセリングの現場に
    携わっている(女性が多い)方のように思えました

    村上春樹氏との対談を読んでから この方の名前や肩書くらいは
    知っているものの どんなことを書いておられるのか 
    どんな方なのか知りたくて この2冊を図書館で借りました

    話し言葉でそのまま収録されています
    ああ実際に聞きたかったなと思わされる語り口と内容でした

    カウンセリングについて体系的に書かれている専門書とは違い
    そうしたことに携わっていない人にでも 自分の生き方について深く考え 
    何か考え直すきっかけを探そうという人にもお勧めと
    前書きにも書かれていたとおりの内容でした

    そして氏が生前どのようなカウンセリングを行っていたかと
    いうこともおぼろげながら感じられたように思います

  • ー概要ー
    四天王寺カウンセリング講座での河合隼雄の講演記録を2冊にまとめたものの1つ。「カウンセリングと時間」「カウンセリングと人間理解」「カウンセリングと倫理」「カウンセリングと家族」「カウンセリングと友情」の5章から成立。
    カウンセリングを学ぶ講座であるが、自分の生き方について深く考え、何かを考えなおすきっかけを探そうという人にもお勧めできる。

    ー河合隼雄さんー
    日本人としてユング派分析家の資格を取得。

    ー感想ー
    カウンセラーの役割とは、心の表層から深いところまでおりる作業をしていくクライアントの横にいるよと示すこと、また絶対にきれない関係であること。
    これは簡単なようでものすごく難しい。たぶんふとした拍子にクライアントに対して何か感情移入してより過ぎたり離れ過ぎたりしそうだし、それが伝わってしまいそうだと思った。

    カウンセリングに時間を設けるのはきれないよう、長く一緒にいるために共倒れにならないようにするため。私の元カウンセラーもクライアントとは一生の付き合いだと思ってやってると言ってたのを思い出した。
    その作業(非日常)を週に1回、1時間行い繰り返すことで日常と非日常を結びつけていく。あまりにも大きな非日常体験は日常に落とし込むにはかなり時間と労力がかかることだからカウンセリングはちょうどいい。
    カウンセリングと関係ないけど、考えたこと。
    動物保全においての私にとってのカウンセリング的存在は公園管理のNPO、イレギュラーは小笠原のウミガメ保全や長野のクマ研修。
    公園管理で学んだことはゆっくりと吸収されていく感覚があって、研修たちはいまだに圧巻ってかんじで落ちてない感覚がある。たまにそんな研修を挟むのも悪くないけど、続けるか悩むところだったけど、やっぱりNPOは続けていこうとこの話を読んで思ったのであった。

    カウンセリングの技術として勉強になったのは、自分の倫理を()にいれる、ということ。
    クライアントの話に自分の倫理観がひっかかったとしても、それは()にいれておいて、さてとするのはとても良い考えだと思った。倫理観を無視して話を聞こうとしても人間、表情や声色、態度に微妙に揺れが出て変化に気づかれると思っているので、この方法なら堂々と立てそうだと思った。

    私がこれから人生において考えていきたいと思った2つの考え。
    1つはカウンセラーとは研究者、勝負者、芸術家であるということ。意味は理解してるけど、カウンセラーじゃないから本質はわからない。
    2つめは激しいを超えて深い感情をもつということ。

  • この本の内容は1992年の「こころの処方箋」と同じですが、語りが違います。

  • 『カウンセリング入門』のほうが、ライブ感があってよかった。

    カウンセリングの本というよりは、日本文化論に近い。モヤモヤした感覚を、的確に言葉で切り取る"鋭さ"は、さすがという他ない。

    カウンセリングの難しさ、奥深さを思い知らされる。

  • カウンセリングを学ぶのみならず、自分の生き方を考えなおすきっかけとなる本。
    最近、リーダーシップの分野で自己認識の重要性を良く聞く。カウンセリングについての本ではあるが、自己認識へのヒントがたくさんあった。
    講演記録ということで、分かりやすい言葉で書かれていて、読みやすかった。

  • 2009年刊行。
    カウンセリングと倫理、友情、時間、家族等について講演した記録。

    最近カウンセリングを受けて、正直うさんくさく、一体カウンセリングって何なわけ?と思って手に取った本。なかなか含蓄に富んだ内容だった。
    わたしをカウンセリングしたカウンセラーにも読ませてやりたいと思った。

    正直、流派や経験値、年齢世代性別等によっても相当に左右されそうな内容で、カウンセリングの技法と呼べるものを定型化(河合先生言うところのマニュアル化)は難しそう。しかしそうすると普及や習得スキルの標準化は難しそう。

    文中、将棋の名人の、研究者、勝負師、芸術家が同居するのが勝てるベストバランスという発言に、まさにカウンセリングも同じと頷く場面がある。
    …だとすると、名人芸の先生に当たったクライアントはいいけれど、そこまでいかないカウンセラーに当たったらハズレってことだろう。

    お金を払ってカウンセラーにかかるのに、あまりにも当たり外れがあって、カウンセラーみずから人間修行中と言うなら、あんまりお金払って利用したくないなと思った。

  • 【平易な言葉の奥深い意味を、読み取れるか否かは読者次第】
    こんなことを言うと疑われるかもしれないが、私は河合隼雄先生の本は近年あまり読まないようにしている。
    (いや、読んでるやん!こないだも読んでたよね?とか言わないよーに。そりゃ読むよ。読んでるよ。だけどむかーし、若かりし頃のようには、かな…)なぜなら、どれもものすごくわかりやすい言葉で、サラサラーっと書いてあって、下手したらサラサラーっと読んでしまう、読めてしまうのだ。
    そりゃいいことなんじゃないのと思われるかもしれないし、実際素晴らしいことなのだが、そのサラサラ〜に騙されて(?)その深奥、その言葉の持っている本当の深さを、読み飛ばす?受け取らないままサラサラと読んでわかった気になりやすい危険な本でもあるのだ。

    この本読んだ(読んでるやん)。私の言いたいことは、例えばこんなところに明らかである。
    ---
    グッゲンビュール(筆者注:河合先生の師の一人)は、こう言っています。「自分は色々考えたが、友情を支えているものは、『真実』ということと『優しさ』ということではないかと思う」という言い方をしています。そこには嘘がない、真実だということ。しかし、同時に優しさがないといけない。(p.210)
    ---

    これ読んで、反論ある人います?いや、いてもいいんだけど。意味わからない人、います?たぶんいないんじゃないですか…。そりゃ立ち止まると、「『真実』とはなんだ」とかあると思うんですけど。多くの人が、「確かにその通り」「ほんとそうだ」と思えるのではないでしょうか。

    続けます。
    -----
    グッゲンビュールは、「真実と優しさというのは、われわれの友情を照らしている二つの星だ」という言い方をしています。真実と優しさをもって友達になっていこうというのではなくて、もっと極端な言い方をすると、真実と優しさというのは、人間が本当に持つことはほとんどできないのではないかというぐらいの感じです。(p.211)
    ------

    真実と優しさというのは、人間が本当に持つことはほとんどできない…

    それだけの深さをもって、前の文章読んだ人いますか?いたというなら、この二つ目の文章もあなたはきっとちゃんと読めていないと思いますw

    これです。

    「友情を支えているものは、『真実』ということと『優しさ』ということではないかと思う」という文章を読んだ時に、多くの人は、「うん、ほんとそう」と思って、「真実と優しさをもって友達になっていこう」と思い、子どもにそう言ったりする(アホw)。

    しかし、本当は私たちが受け取らなくてはいけないのは、「真実と優しさというのは、人間が本当に持つことはほとんどできない」というくらいの感じ、それをもって「真実と優しさというのは、われわれの友情を照らしている二つの星だ」という言葉を受け取らなくちゃいけない。

     
    そう、サラサラなんて読んではいかんのです。

    サラサラ読める文章なのに、決してサラサラ読んではいけないという… この苦悶。
    お茶漬けをサラサラ食うなというのと同じです。
    それならガッツリ難解な文章で、んんん???と眉間にしわ寄せながら読ませていただくほうが、「本当のところ」が受け取りやすい気がする…

    たぶん、サラサラ読ませて、サラサラとわかった気にさせて、何年も経ってふと見返したときに、「!!!」ってなる、その人生の魔法を、ふんだんに盛り込んでいらっしゃるのだと思うのですが…

    私としては、ちゃんと力量がないと読めない、読む側に相応の「読み取る力」が求められるな…と思って、ついつい敬遠してしまう、河合先生の著作たちです。

  • 善意というものほど怖いものはない、闇のなかにどれほどの光が入っているのかわからない
     身近な人の力になりたいと考え、カウンセリング・マインドを身につけるために購入した。河合隼雄の本は『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』で対談を読んだだけだったが、そのときの話の内容にいたく感銘を受けたのを覚えている。
     傾聴、受容が何よりも大切であることを思い知らされる。聞き受け入れることはたやすいことではない。つい何かを言ってしまいたくなる。それは、自分がその人の悩みをともに悩むことがしんどいからだ。ともに悩んでくれ、話を聞いてくれる存在がいてくれるだけで救われるのに。
     反省の意を込めて読んだ。大切な人が悩み苦しんでいるときに心ないことばをかけた。その人がよりよく生きるための物語を紡ぎ出す手助けができなかった。

  • カウンセラーじゃないけど人と接する仕事をしていて、時々人の成長とか変貌を目の当たりにする。週1会うだけことにも意味がある、という言葉は励まされもするし、共有することの大切さを改めて感じる。

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