クラスはよみがえる:学校教育に生かすアドラー心理学

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422111278

作品紹介・あらすじ

アドラー心理学の第一人者が、数多くの実践例をあげながら、新しいクラスルーム・マネジメントのあり方、子どもの問題行動にどう対処するかなど、きわめて具体的、平易に説く。

感想・レビュー・書評

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  • 私が今、一番色々なことを真似させてもらっている尊敬している先生が
    「人生の本」として選んだ5冊の中の一冊。

    今まで読んだ教育書の中で
    一番衝撃と納得をくれた本かもしれません。
    (教育に携る人にはぜひ本当に読んでもらいたい)

    今までの教育の価値観をアドラー心理学の視点から論じています。

    ○主な考え方
    ・人間行動の究極目標は「集団の中で自分の居場所を確保することである」という前提。
    適切な行動も不適切な行動も最終的にはこの目標の達成に向かって行われる。

    ・問題行動を起こす子どもがいる(発生する)のはそうしなければ居場所が確保できないと感じさせるクラス全体の構造に問題がある
    そのため、
    ・教師の役割は、適切なクラスルームマネジメント(構造の組み立て)をすること。
    最大限の勇気付けと最小限の子どもの負担の肩代わりをする。

    ・教師の行為はどんなことも注目になりえる。
    不適切な行為は注目せず、適切な行動に注目する。

    ○目指すもの
    子ども
    ・競争の原理から協力の原理へ
    ・共同体意識を育てる
    ・「自己受容感」「集団への貢献」を持つ
    ・「不完全であることを受け入れる勇気」を育てる

    教師
    ・教師は責任を引き受けるボスからコーディネーターへ(きちんと責任は子どもにとらせる)
    ・相互の信頼関係を作る(「相互の」ということは「私(教師)が先に」という意味)
    ・信用(条件付)ではなく信頼(条件無し)する

    ○具体的
    ・問題児だけでなくクラスの全員に対して不適切な行動には注目しない。
    適切な行動は見つけ、勇気付ける。という方針を持つ。

    ・考え方は常に「誰が?」「なぜ?」(過去)に焦点を当てるのではなく、「これからどうすれば?」(未来)に焦点を当てる

    ・罰を用いない
    教師と生徒の上下関係が生まれる。叱られなかった子が優越感を持ち、競争原理が働く。「罰を受けないように。」と積極的に動かなくなる。
    代わりに
    ・行為の結末を見届けてもらう(子どもに)
    実際にどうなるか体験させる

    ・お願いする
    命令しない。感謝「ありがとう」や「嬉しい」を用いる。

    ・感謝する
    「あたりまえ」のことに感謝の声をかける。
    「何もしない」ということでさえ、場を乱さないという協力(貢献)

    ・クラス会議
    問題についてクラス全体で話し合う。
    人間は自分に向かって語られるよりも、自分について語られるほうに耳を傾けるもの。

    本の主張の本筋とは逸れますが、

    ○競争原理が支配するクラスの特徴(1から5へと進行していく)
    1.賞賛を集める
     いい子で誉められよう
    2.注目を引く
     なんとしても目立とう
    3.権力闘争をしかける
     勝とう。少なくとも負けないでいよう
    4.復讐する
     相手(教師)にできるだけダメージを与えよう。(愛されないならせめて憎まれよう)
    5.無能力を誇示する
     無能力さがバレないよう見捨ててもらおう

    ○教師の持つ迷信(無意識に持つ悪しき価値観)
    1.完璧病
     完璧にこなさせようとする。「不完全であること」受け入れる勇気をくじく。
    2.反省病
     過去に注目させる。これからの適切な行動を知らせることに焦点が向いていない。
    3.計画病
     計画通りに進むことに優先順位を置く。「計画を立てないと子どもは動かない」と信じていない。
    4.努力病
     結果ではなく、努力することが目標になっている時がある。
    5.習慣化病
     習慣としてできることに価値を置く。(これはあまり賛同できなかったですが。)

    非常に納得でした。
    特に競争原理が支配するクラスの特徴はまさに私の中学時代の状況そのままでした。
    理由が分からないまま、悪くなっていった当時の学校生活。ようやく分かりました。
    あの無力感、痛みを知っているからこそ、あの再現はしていきたくない。

    この本は教師ではなく心理学の先生が書いた本で、100%そのまま再現することはできませんが、今、注目している赤坂先生のアドラー理論、実践を参考にしながら自分なりの形を生み出して生きたいと思います。

    クラス会議の
    「人間は自分に向かって語られるよりも、自分について語られるほうに耳を傾けるもの」という視点も秀逸だと思います。
    クラス会議については、別の機会でも話せそうなのでほとんど書いていませんが、これを学級の仕組みに組み込み、適切に運営していけるかが勝負だと思っています。

  • 衝撃の1冊であった。
    書き振りが「挑戦的」であるのも面白く、多くの学校で行われているであろう教育の形を真っ向から否定するものであり、自身の教育のあり方についても考えさせられた。とても30年以上前に書かれた本だとは思えない。過激な内容であったといっても過言ではないと思う。

    今回読んで心に残ったキーワードは、対等な関係・お願い・「なぜ」ではなく「どうすれば」の3点である。
    特にお願いをするといった形で子どもに伝えることは、これまで「子どもに舐められてはいけない」という意識があり、あえて使わないようにしていた。しかし「上下関係を築くことにつながる」という内容が書かれており、一理あると感じた。全ての子どもを尊敬し信頼するとは、対等な関係であることが元になっており、教師のあり方(行動)で本当にそう思っているかどうかが子どもたちは判断する。

    自身の経験を振り返ると、宿題を忘れた子どもがいたときに、なぜ宿題をやってこないのかと叱責をしたり追及をしたりしたことがある。しかし、これを本書の内容と照らし合わせると NG行為であり、子どもにとって「教師が自分よりも上にいる」という意識を与えていたことに気づいた。

    自身の感情といかに上手く付き合うかが肝であることは、他の実践とも変わらない。まずは小さいことから自身の教育を改めていきたい。

    (学びメモ)
    ・性格とは、状況に合わせて用意されている行動パターンのセット
    ・クラスに問題児がいるということは、クラス全体の構造に問題があるということ。
    ・3歳までで子どもの性格は決まらない。友だち関係の中で体験することと深く関わりがある。
    ・人間の最も根源的な欲求は、所属欲求。
     ↓それを得るための子どもの作戦レベル
    ・賞賛→注目→闘争→復讐→無能力の誇示
    ・問題があるクラスは集団ではあるが、組織ではない。
    ・ルールが守られるのは、子どもたちの自覚によって
    ・教師5大病 完璧病 反省病 計画病 努力病 習慣化病
    ・反省は、一般にあまり役に立たない。
    ・この世に自分ほど大切なものはないと思う時、他者もまたそう思っていることを知り、他者を大切にできるようになるbyブッダ
    ・対等である=相互に尊敬し合う
    ・信用…根拠があるからできる 信頼…無条件 → 子どもを信頼せよ。「きっと何か考えがあるに違いない」
    ・過去「なぜ」ではなく未来「どうすれば」に焦点化
    ・自分自身が好きだという自己受容は、精神的な健康の最大条件
    ・「問題は、何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかだ」byアドラー
    ・教師のすること全てが子どもに影響を与える。
    ・伝える時はお願いの形で。協力に感謝する。横の関係。
    ・Iメッセージで自分の思いを伝える「〜と私は思っているのですが、あなたはどうですか?」
    ・共感はするが、同情はしない。
    ・恐怖心から行動する人間は、行動する喜びを見失う。
    ・例 窓ガラスが割られていたら…①後始末+どうすればよいか ②ルールづくりの提案 ③もし今後見かけたらどうするか(協力体制の確立)*犯人探しは不要。
    ・告げ口する子に対しては、「あなたからA君に何とかしてとお願いしてくれますか?」
    ・子どもに行為の結末を体験させる。
    ①自然の結末 … 教師が介入しなくても致命的でないときに活用。介入せずに子どもに任せる。
    ②社会的活用 … 適正なルールを適正に運用する。
    3つの条件(全員参与・必要感・平等に課される)の下で、ルールは必要であり快適であるという意識を育てる。
    ・ルールゼロベースでスタートして、必要がおこるたびに、ルールを制定していくのがベスト。
    ・「もし犯人を見つけたらどうしますか」「先生はその犯人もきっとそうしないといけない理由(仲間はずれにされているという思い)があったのだと思います。その人もみんなの仲間だと思えるように、みんなには何ができますか?」
    ・論理的結末…冷静・聞く耳あり・協力体制○の条件下で 問いかけ、どうなるか考えさせる。作戦1、2の子どもにのみ使える。
    ・勉強することは、子どもの課題であり、教師の課題ではない。
    ・子どもが喜んで勉強してくれる環境をつくることが教師の課題。
    ・不適切な行動=共同体を破壊するような行動。(迷惑をかける)
    ・適切な行動=自分自身あるいは共同体に対して建設的な行動
    ・自分の人生の課題は、自分の責任で解決すること。
    ・教師の責任は、適切な授業をし、適切なクラスマネジメントをすること。
    ・自分の要求をはっきり言葉で伝える=必要な生活力
    ・察しが良すぎて先回りしすぎる=過保護
    ・実際の体験以上に強力な教育法はない。
    ・ディスカッションの活発化を目指して行うクラス議会のテーマ … 1週間を通して良い出来事 困った出来事 試してみたい改善策 ルールとしてあった方が良いこと
    ・クラス議会ルール 1どしどし発言 2よく聞く 3批判NG「それは違う」ではなく「私はこう思う」4結論先で理由後
    ・ルール…クラスの中に秩序を確立するためにの取り決め事項(強制力を伴う)。集団を円滑に運用するために必要1役割ルール 2禁止ルール
    ・社会的結末は、すでに存在するルールにのみ使える。
    ・教師は最初のはずみをつけてしまえば、あとは少し手を貸すだけ。
    ・人間は、自分に向かって語られるより、自分について語られる方がより耳を傾けるもの。

    きっとこの先もずっと忘れない貴重な本に出会えたことに感謝。

  • ほめてのばす
    ほめるとそれが目的になる
    本来は達成したこと自体が嬉しいはず

  • アドラー心理学の教育実践。「子供の目線に立って…」と恰好つける教師がいるが、それどういうことか本当にわかってるぅ?


     私の生まれた年の本だけど…まだ使える。本質を突くものは、時流を越えられる。子どもを子ども扱いする教師ばかりだが、それじゃあ社会人は育たない。子供を育てると同時に、社会人を育てているんだという意識を持つ教師にならなければいけない。そのためのこの一冊である。

     しかし、この本が生まれた背景が80年代の荒れた学校の教育方法だから、2017年の今に読むとちょっと大げさである。
     それでもなお、この本の言う民主的な教師になれていない人が多くいるのだから、日本の教育がけなされて当然である。

     自分の感覚だと、中学校教師よりも、公立の高校教師とか、中堅レベルの伝統ある高校教師にくだらない教師が多いと思う。生徒を不当に下に見る。くだらない。

     教育業界には競争がないから教員の淘汰が起きないといわれる。でも、競争原理を取り入れたからって、このアドラーに基づくような民主的な教育ができる教師ばかりになるとも思えない。もう、こういう本を読んで勉強してる教師が一人一人増えていくしかないと思う。そして、その成功例を増やして、ほかの教師にフィードバックしていくしかない。

     他人を変えることはできない。変えられるのは、自分だけ。その副産物として、周囲に変化がありうるのである。
     

  • まあ、主張していることは、その通りなのだと思いますが……文体というか、口調がすごく嫌味で、イヤな感じです。

    あと、やっぱり学校のことというのは、なかなか見えてこないんだなぁと……。
    これはもちろん、なかなか見せない学校の方にも問題があるのだと思うのですが。

    どうしても、学校には無限の時間と空間があると思われがちなようです。

    例えば、子どもを全体の前で注意してはいけません。子どものプライドを傷つけることになります。(フムフム、なるほど…)でも、ただ見過ごすのは、教育をしていないのと同じです(その通り!)。だから、そういうときは、1人のところをみはからって、そっと注意してあげましょう。

    1人になる空間と時間についての考察は、なにもありません。
    まあ、各自の創意工夫ということになるんでしょう。

    空間は、まあ、なんとかなります。(ただし、最近は2人になると、なにを言われるかわからないという問題はありますが)

    で、大きな問題は、時間。
    授業中に、他の子たちをほっといて……ってなわけにはいかんよな。
    だからといって、休み時間に呼び出すのか?そうすれば、もうその子は、それ自体「罰」だと感じちゃうでしょうね。

    この作者、なんか、さり気なく、その子が1人になる時間が、あるような錯覚をしていますが、今の学校で、1人になれる場所なんて……。

    そうして、いろいろな創意工夫で、どんどん真面目な教師ほどボロボロになっていくという現状があるようです。

    医者(?心理学者?)はいいですよね。
    そこに行く人間は、すくなくとも、「治りたい」と思っているんですから。そして、患者がこなくなったからといって、追いかけていく必要はない。
    で、熱心に来ている人だけを見て、「こんなけ治した」と言ってればいいんですから。
    ↑ 暴言です。ゴメンなさい。でも、この本での書きようなら、これぐらい言っても許されると思います。

    でも、学校は、行きたかろうが、行きたくなかろうが、「行かなければならないところ」として設定されています。
    そのあたりに、大きな問題があるのかもしれません。

    もうちょっと、この心理学を勉強してみます。

  • 20年以上前に書かれた本ですが、気づきの数が半端なかったです。コーディネーターとしての教師になる必要性、よくわかりました。今でいうとファシリテーターでしょうか。

    最大の気づきは、ぼくはまだ競争主義に生きているということです。協力主義への移行が必要です。

    少し読みにくい本ですが、まずはアドラー一冊目、読んで良かったです。

  • これを信奉して無理に押し通そうとすると学校では多分生きていけない。
    でも非常に的確なので心に留め置き実践・浸透させたい。

    子供が自身を守ろうとするための4作戦は必見。

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著者プロフィール

1948年生まれ。大阪大学医学部卒。シカゴ・アルフレッド・アドラー研究所留学、神戸家庭裁判所医務室技官勤務の後、新大阪駅前にて相談施設(アドラーギルド)開業。日本アドラー心理学会認定指導者、初代日本アドラー心理学会会長。著書『クラスはよみがえる』、訳書『アドラーの思い出』(いずれも創元社)など。

「2017年 『勇気づけの方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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