トラウマの現実に向き合う:ジャッジメントを手放すということ (創元こころ文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422000589

作品紹介・あらすじ

トラウマ治療や技法について知っていることと、実際にトラウマの治療ができることは違う。トラウマ体験者は深い傷つきによって、対人関係における「信頼」に問題を抱えていることが多い。したがって、トラウマ治療において最も重要なことは、個別の治療戦略や技法よりも、治療者の姿勢であるとも言える。患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹するなど、本書はトラウマに向き合う治療者の姿勢について、誰もが納得できる豊かな提言に満ちている。

感想・レビュー・書評

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  • 精神科医 水島広子さんが治療者に向けた、「トラウマ治療」の根幹となる、ジャッジメントを手放す大切さを説く一冊。

    治療者向けだが、十分理解が深まる。

    「自分の想像を超える体験をした人を見たとき、人は、自らの心のバランスをとろうとして、とりあえずジャッジメントを下しがちである。」

    「そんなこと、誰にでもあるよ」「もっと辛い思いをしている人もいるでしょう」「いつまでも引きずらないで、前向きにならないと」
    他人から不用意にかけられた何気ない言葉で、自分の辛い経験や記憶に厳重な蓋を重ねて、自尊心をさらに低下させ、他者への信頼も失っていく。

    「可愛そうな人」というジャッジメント、つまりレッテル張りをされ、一見同情・共感・尊敬の念を呈されているようでありながら、「結局はこの運命から逃げ出せない」という束縛感を生み出すパターンもある。

    ジャッジメントとは、【ある人の主観に基づいて下される評価】であり、決して社会の絶対的な物差しではない。

    個人の成育歴やパーソナリティ、価値観、社会的地位等のバックグラウンドを反映する、きわめて主観的なものだ。

    同情、共感過多時代なので、見知らぬうちに私たちは、自らの或いは他人のジャッジメントをあたかも盤石な物差しと思い違いがちだ。

    私も日常の営みのなかで、自分、他者、社会の感情とジャッジメントを区別し、自分が自分の日常をコントロールできる感覚を深めていきたい。

  • [図書館]
    読了:2017/3/4

    p. 204 「ゆるし」とは、「トラウマ体験者としての自分へのジャッジメントをやめる」ということだと思う。とても適応が大変な変化ではあったけれども、自分自身に傷がついたわけではなく、自分は大変な変化を乗り越えながらもプロセスを前進している存在なのであり、そこにジャッジメントを下すことには何の意味もない、と心から知ることが「ゆるし」ということなのだと思う。

  • 専門家がジャッジメントしてしまうことから抜け出すための仕組みが必要なのだろう。
    気付き、手放すための安心できる場が。
    専門家はやたらと同業の専門家に厳しい。これが続くシステムではジャッジメントの横行を止めることは難しいのではないか。

    ある事例検討会で「専門家が事例検討会で傷つくのは当たり前だ」とする発言を聞いたことがある。本当にそうだろうか?傷つけられるただそれだけで本当に良い支援者となれるのだろうか?患者さんに必要だといわれている環境が、良い支援者になるためにも必要だとは考えられないのだろうか。

  • アセスメントとジャッジメントを混同してしまうことはままあることだ。

    そこに自覚的にいられるかどうかが、
    人と共にあれるかの分岐点であるだろう。

    私達はどれだけ学び、分かっていても、
    自分の世界観をもって、他者を理解しようとしてしまう。

    だからこそ、人の発する一語一語に丹念に耳を傾け、その言葉に込められた思いを丁寧に紐解いていけるといいなと思う。

    そして、他者だけでなく、
    自らにゆるしをもてることが、
    この上なく大切なことだろう。

  • 治療者に向けた書かれ方をしているが、本書冒頭にもあるように、当事者にとっても非常に得るものが多い。
    当事者向けの本だと、押し付けのように感じてしまう事も少なくないが、治療者向けに書かれていることから、自らの状態を客観視することができ、自らへの接し方について学ぶところが多かった。

    ジャッジメントを手放す。
    コントロール感覚の回復をめざして。

  • B区図書館
    N図書館にリクエスト

  • トラウマの捉え方、考え方、ジャッジメントの考え方、なぜ手放す必要があるのか等、わかりやすく紹介されています。

    文庫サイズなので手に取りやすいですし、読みやすい文章ではありますが、中身は濃密で読み応えがありました。支援者として繰り返し読みたい一冊です。

  • 素晴らしかった。日本の精神医療は一度目の診察で名前をつけられる(ジャッジメントされる)ことは見直すべき

  • もう少し早くに知りたかったという思いがある。
    大小あれどもトラウマを経験してきている人たちにちゃんと理解もなく、かわいそうな人たちとして自分から何かしてあげようと手を差し伸べたりしてしまったからだ。

    コントロール感覚を持たせてあげることとジャッジメントを手放すということ、安心を与えることが大事であるということをいたく痛感した本であった。
    私の経験上、特に女性にPSTD気味の人が多い気がするし、もう少し信頼と距離感を大事にして接してあげれば良かったと思う節がある。
    同じことを起こさないためによく自分の中に落とし込んでおきたい。

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著者プロフィール

水島広子【みずしま ひろこ】

慶應義塾大学医学部卒業・同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、対人関係療法研究会代表世話人、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン代表。主著に『自分でできる対人関係療法』『トラウマの現実に向き合う』(創元社)、『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』(紀伊國屋書店)、『怖れを手放す』(星和書店)、『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)、『自己肯定感、持っていますか?』(大和出版)、『「毒親」の正体』(新潮新書)などがある。

「2022年 『心がスーッとラクになる 世界の美しい文様ぬり絵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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