白い土地 ルポ 福島 「帰還困難区域」とその周辺

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784420310901

作品紹介・あらすじ

「どうしても後世に伝えて欲しいことがあります」
原発事故の最前線で陣頭指揮を執った福島県浪江町の「闘う町長」は、死の直前、ある「秘密」を新聞記者に託した――。

娘を探し続ける父親、馬に青春をかける高校生、名門野球部を未来につなぐために立ち上がったOB、避難指示解除後たった一人で新聞配達を続ける青年、そして帰還困難区域で厳しい判断を迫られる町長たち……。
原発被災地の最前線で生き抜く人々と、住民が帰れない「白い土地」に通い続けたルポライターの物語。

●目次
序章 白い土地
第一章 夕凪の海
第二章 馬術部の青春
第三章 「アトム打線」と呼ばれて
第四章 鈴木新聞舗の冬
第五章 ある町長の死 1
第六章 ある町長の死 2
第七章 ある町長の死 3
第八章 満州移民の村
第九章 フレコンバッグと風評被害
第一〇章 新しい町
第一一章 聖火ランナー
終章 一〇〇〇年先の未来

●著者プロフィール
三浦英之(みうら・ひでゆき)
1974年、神奈川県生まれ。朝日新聞記者、ルポライター。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第25回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第25回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第18回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。福島県南相馬市在住。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災から13年。

    これは2020年に発行された本であるが、とても詳細に記録されていると感じた。

    《白地》とは帰還困難地域の中でも特定復興再生拠点区域以外のエリアを指すこと。

    現在も居住の見通しのたたないままなのか…。
    何もしなければ帰れない…という現実にミンさんの「(私の人生は)良かったよ。放射能が来るまでは…良かったよ」が心に残る。

    いつくるのかわからない地震により一瞬のうちに人生が大きく変わるという現実。
    ただ国の判断に任せるしかないのか。
    国は何を優先的にするべきなのか…今も明確な答えがないのでは…と思うこともある。





    • かなさん
      湖永さん、こんにちは!
      私も昨年この作品を読みました。
      震災から13年経った今も、白地は白地のままなんでしょうね…。
      発災前、そこには...
      湖永さん、こんにちは!
      私も昨年この作品を読みました。
      震災から13年経った今も、白地は白地のままなんでしょうね…。
      発災前、そこには、人々の暮らしがあったはず、
      帰れない故郷にふるさとへの思いも放置されたまま…
      でも、この作品を手にできて
      それを知ることができて、私はよかったと思っています。
      2024/03/12
    • 湖永さん
      かなさん こんにちは。

      毎年この時期になると震災のことを思いだしますがなかなかルポなどの記録を読むことができませんでした。
      かなさんのレビ...
      かなさん こんにちは。

      毎年この時期になると震災のことを思いだしますがなかなかルポなどの記録を読むことができませんでした。
      かなさんのレビューを見て読んでみようと思った一冊です。
      知らなかったことがこれだけあったんだ…という現実に驚き、それでも読んでよかったと思えました。

      これからもいろいろ参考にさせてくださいね。

      2024/03/12
  • 「白地」放射線量が極めて高く、住民の立ち入りが厳しく規制されている「帰還困難区域」の中でも、将来的に居住の見通しの立たないエリアのこと…。福島第一原発周辺の自治体が直面した困難と、そこに住んでいた住民たちの思いや葛藤などを徹底した取材に基づいて明らかにしたルポ…。

    震災から12年、福島の原発事故に関しては、天災より人災という側面を改めて強く感じました。12年前実際にどんなことが起きていたのか…この作品を読んで初めて知る事実も含まれていました。国と東京電力そして原発周辺の自治体…もっと早く避難を呼びかけることもできたのにそうならなかったのは…読んでいて本当にひどいと感じました…。住民の思いを一身に背負って周辺の自治体の首長たちは戦い続ける…その姿になぜ国を背負う政治家にはこういう熱いものを感じないんだろう…そんな風にも思いました。

    「放射能がくるまではよかった…」のミンおばあちゃんの言葉…重いです。原発事故が起きるまでの人生、辛いことも悲しいこともあったはずなのに…それまでの人生はよかったと…。震災から12年経った今も白地と呼ばれる土地はあって、放射能が高くて立ち入り出来ない土地が存在する…そこでは原発事故前まで人々の生活が営まれていた場所、今は荒れ放題…この作品の中ほどのカラー写真、一面の緑に覆われた中央に車がぽつんと…見て言葉を失いました…。この作品も読めてよかったと思います。

    • かなさん
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、
      ホント、三浦英之さんの作品は素晴らしいです!!
      今まで、積んでいたなんて…
      な...
      NO Book & Coffee NO LIFEさん、
      ホント、三浦英之さんの作品は素晴らしいです!!
      今まで、積んでいたなんて…
      なんてもったいないことをしてたんだ…
      そう、思えるほどいい作品があります。
      コメントありがとうございます(^^)
      2023/03/12
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      かなさん、お返事ありがとうございます♪
       私の名前、めんどくさくてごめんなさい。本と珈琲のない人生なんてあり得ない、と思いからカッコつけで英...
      かなさん、お返事ありがとうございます♪
       私の名前、めんどくさくてごめんなさい。本と珈琲のない人生なんてあり得ない、と思いからカッコつけで英語表記したものの、自他共に認める綴るのがメンドイ人になってしまい、でも今更変えるのもなあとか、ちょっと自己嫌悪です。
       同様のことをチーニャさんにもお伝えし、「本と珈琲」でいいです、ということにしてます。
       またの機会には、簡略表記にてよろしくお願いします。勝手で申し訳ありません。
      2023/03/12
    • かなさん
      本と珈琲さん、了解しました!!
      お返事するにも、
      本と珈琲さんのレビューにおじゃまする際にも
      その方が助かります(^^)

      私も、...
      本と珈琲さん、了解しました!!
      お返事するにも、
      本と珈琲さんのレビューにおじゃまする際にも
      その方が助かります(^^)

      私も、本と珈琲のない人生は今考えられない感じの生活です!
      好きな本を読みながら大好きな珈琲を飲みつつ、
      ブクログも楽しむって、至福の時間ですよね!!
      改めて、これからも本と珈琲さん、よろしくお願いします。
      2023/03/12
  • 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)及び福島第一原子力発電所事故による災害を東日本大震災という。
    発電所はなかったが、風向きにより被爆地になった浪江町、町民と避難した津島地区にも。そして再び避難。
    国の考える復興、地域の人達が目指す浪江町復興への思いの差。
    何もしらなかった・・・・。

    • かなさん
      ひまわりさん、おはようございます!
      この作品、私もひまわりさんのように、
      何も知らないでいて…と思いました。
      この作品の中ほどの写真を...
      ひまわりさん、おはようございます!
      この作品、私もひまわりさんのように、
      何も知らないでいて…と思いました。
      この作品の中ほどの写真を見て衝撃を受けました…。
      震災から12年…時が止まったままの地域もあること、
      ひまわりさんがこの作品を読んで「レビュー」投稿してくれて
      本当に良かったです!!ありがとうございます。
      2023/08/12
    • ひまわりさん
      かなさん、こんばんは。
      本当に事件は現場で起きているです。福島から転居されてきた方がおられたのを思いだします。方言も違う地方で慣れない生活、...
      かなさん、こんばんは。
      本当に事件は現場で起きているです。福島から転居されてきた方がおられたのを思いだします。方言も違う地方で慣れない生活、ほんとうにつらそうにされてました。三浦さんは他にも本を書いておられる様子なので読んでみます
      2023/08/12
  • 三浦英之「復興五輪」の現場から | 連載コラム | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
    https://imidas.jp/olympic

    三浦英之著『白い土地』特設サイト
    https://www.shiroitochi.com/

    白い土地|集英社クリエイティブ
    http://www.shueisha-cr.co.jp/CGI/book/detail.cgi/1765/

    白い土地 ルポ 福島 「帰還困難区域」とその周辺/三浦 英之 | 集英社の本 公式
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-420-31090-1

  • 2022年1月3日の昼頃、本書第1章を読み終わってからしばらくして、何気なく眺めたネットニュース記事に、今まさに読んだばかりの木村さんが出ていらして、この偶然にとても驚いた。
    さっき読んだばかりの本書(2021年第2刷発行)では、2016年に次女の汐凪さんの首とあごの骨がみつかったが、まだ身体の8割以上が見つかっていなくて、お父さんは探し続けているいうことが書かれていた。
    そして2022年1月3日のニュースは、汐凪さんと思われる(DNA鑑定をしていないから現時点では明確ではないだろうが)大腿骨が見つかったという記事だ。
    (沖縄戦遺骨収集ボランティアの具志堅さんに手伝ってもらったとのこと)

    著者の三浦英之氏については、私は2019年5月に『南三陸日記』(文庫本の方)を読んだ。
    その時自分のブクログレビューに「著者は現在は福島にいらっしゃる。そちらでの記録を、また本書のように書籍化してくれることを切に望む。」と書いていた。
    それが実現されていたことを遅ればせながら知って、本書を読んだ。
    私は『南三陸日記』の文庫本を読んでいたので、てっきり著者は南三陸から続けて福島へ移られたと勘違いしていたが、なんと間に3年間のアフリカ赴任とその書籍の発行が挟まれていたようだ。

    さて、本書1章の「その後」をたまたま知ってからその先を読み進めたのだが、本書の「全て」が知らないことばかりだった。

    (同じ被災者間で起こる「分断」については、私が他に読んでいる「大川小学校」の遺族間でも有ったことで、悲しいかな、人間同士、当然起こり得ることだと思う。)

    浪江町長の章からは特に凄い。
    知らないことだらけ。
    著者の丹念な取材力と、わかりやすい説明。

    本書を読みながら並行して、いずれも初めて「著者三浦英之氏についてと、復興庁のホームページと、安倍元首相の2020年3月7日の行動と発言の記録(首相官邸ホームページ)」にもアクセスしてみた。

    何も知らないでいた私にとって、本書は、読んで本当に良かったと思える1冊だ。
    知ろうとしただけでも、私は政治家よりはマシかもしれない。

    (一読者の私には2017〜2020の内の何年のことだか途中でわからなくなってしまう箇所が割と多かったので、全部とは言わないが、何月の前にもう一度何年かを書き加えてもらえたら、もっとわかりやすかっただろうと思う)

    三浦英之氏について検索していたら、氏が2019年にご自身にとってのベスト10冊を挙げていらっしゃる記事にあたり、その内の2冊と、氏の『五色の虹』を図書館から借りてきた。

  • 三浦記者と言えば、安倍元首相が双葉でのぶら下がりでの最後にねじ込んで質問した記者だという印象が強い。
    やはりあの時の印象の通り、ガッツのある記者だということがこの本の取材のルポからわかる。しっかりと地域に根づこうとする意識を持ち、取材する。地域の様子を良く見ていると感心する。この震災による原発事故はなかったことにしたい人たちにより忘れ去られようとしている。それをさせないようにしなくてはならないと、読んでいて思い出す。

  • 今回も徹底した現地取材と著者の熱い思いがあふれ出るような三浦氏のルポ。現役の新聞記者が新聞配達をしながら被災地でルポを書くなんて空前絶後だろう。
    原発事故後の絶望的とも思える現実、その中で足をつけて生きていく方々。何事もなくきれいに事が進んでいくように見せたい政府、それに乗っかり思考停止したような関係者。
    このコントラストが生々しいが、忘れかけていたのは自分自身も同じだと改めて振り返った。
    また著者の作品を読んでみたい。

  • 三浦さんのお書きになったものは間違いない感じがして安心して読み始められる。
    もっと丁寧に読むべきなのだろうが、ページをめくる手が止まらなかった。
    Twitterなどで読んでいたものが、より詳しく書かれていた。
    コロナ禍で、震災から10年の節目も、薄く短く弱い印象で流されそうで辛い。今もなお苦しみ続ける人たちのことを忘れるわけにはいかない。
    これからのルポもよろしくお願いしたい。

  • 三浦英之さんの著書を読んだのはこれで四冊目。
    どうして、氏の言葉はこれほど心に届くのか。

    第1章「夕凪の海」第4章「鈴木新聞舗の冬」第5章「ある町長の死Ⅰ」どのページを読んでも、現地で人々の声に耳を傾け続けた氏にしか、書けない言葉ばかりであるからだろうか。
    『「帰還困難区域」とその周辺』で生きる人々の声を記録し、未来へと繋げる。
    そんな記憶の記録。
    僕たち日本人にとって、大きなテーマである原発という問題を考える上で欠かせない「生きた声の一冊」であることは間違いないだろう。

  • 本書半ばに掲載される写真。福島県双葉町の町営住宅。二階まで入り込む雑草。忘れ去られる場所。白い土地。娘の遺体を探し続ける父、”馬の町”の高校馬術部、アトム打線と呼ばれた野球部OB、一人新聞を配達する販売店店主。周辺の町で暮らす人々がいる。「安全神話」を信じて誘致した原発。入ってくるはずの事故の情報が来なかった。悔恨する町長。「アンダーコントロール」で誘致したオリンピック。いつしか復興五輪はコロナ克服とスローガンに変わる。現職官僚の言葉「TEPCOは撤退モード」。忘れさせてはいけない。知らなければいけない。

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