現代思想からの動物論: 戦争・主権・生政治

  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409031056

作品紹介・あらすじ

人文学の動物論的転回。あらゆる権力支配の基盤に、人間による動物支配をみる力作

人文学では近年、動物というテーマが盛んに議論され、脱人間中心主義へと向かう現代の思想潮流とも響き合い、ますます熱を帯びたものとなっている。本書はその流れに決定的なインパクトをもたらすだけでなく、あらゆる思想概念に根底的な再考を迫る理論的成果である。フーコー、アガンベン、デリダ、ハラウェイ、スピヴァク、キムリッカなど広範な思想家の理論を通し、「動物」という視角から主権や統治といった概念を批判的再審に付す作業は、現代思想の限界を示すと同時に、新たな可能性をももたらすものとなるだろう。人間と動物との暴力的関係を停止し、存在の新たな関係を構想する、力みなぎる一書。

「本書は人間動物関係を平和の装いに覆われた戦争と捉え、人文学が生んだ種々の概念装置によってその構造を解き明かすとともに、動物たちの主権回復へ向けた方途を模索する作品である。著者は権利、暴力、人種などのテーマを探究する社会政治学者であり、本書では人間と人外の動物の解放を目標に据える実践理論、批判的動物研究を軸に、浩瀚な理論知を駆使して対動物戦争の全体像を描き出す。アリストテレスからアガンベン、スピヴァクからデリダまで、古今の思想家たちが発展させてきた政治哲学、暴力論、解放理論を手がかりに、肯定的な言葉で語られてきた人間動物関係の暗部に光を当てる本書は、私たちの思考に根強く残る人間中心主義の存在を再確認し、その真の克服を目指す道しるべとなるだろう。のみならず、本書は動物という参照軸を通すことで、人間のための学に留まっていた諸理論の欠落を埋め、その刷新、さらには統合を促す可能性をも秘めている。諸分野を横断する動物の問題系は、主権理論、脱植民地化論、フェミニズム等の考察に、互いを結び付ける新たな層を付け加えるに違いない。」(訳者解題より)

感想・レビュー・書評

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  • 「現代思想からの動物論」書評 人間による支配 根底から考察|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12977852

    人間中心主義!これは動物への戦争?新たな人間と動物関係の構築 | この道〜明日はもっと輝いてる♪ - 楽天ブログ
    https://plaza.rakuten.co.jp/happymomoneko/diary/202002170000/

    現代思想からの動物論―戦争・主権・生政治 | ペンと非暴力
    https://vegan-translator.themedia.jp/posts/7184626

  •  動物産業は効率的な食肉生産のため、抜かりなく栄養・動作・社会性・性行動・繁殖能力を監督しかつ制御しなければならない。生そのもの、生物帯における生の起伏、シエ名の創造性と生産性が、寄生的統制機構の要となる。(p.40)

     ガルトゥングは「個人的」暴力と「構造的」暴力の区別が、「可視性」の政治学に対応することも指摘した。すなわち、個人的暴力は見えるのに対し、構造的暴力は隠される。

    構造的暴力よりも個人的暴力に注目が集まるのはおかしくない。個人的暴力は目に見える。こ人的暴力の被害者は普通、暴力を認知し、ことによると抗議しうる。他方、構造的暴力の被害者はそれを全く認知しないよう仕向けられかねない。個人的暴力は変化と活力の形をとり、並の上の波頭となるばかりか、のどかな水面に波を立てる。構造的暴力は音を立てず、目にも見えないーーそれはもとより静まった、のどかな水面である。静岡な社会では、個人的暴力が人目に止まる一方、構造的暴力は周囲を取り巻く空気ほどに自然なものとみなされうる。(p.44)

     この強調、というより何としても気絶処理を欲する行き過ぎた固執からは……動物への暴力を目の当たりにした衝撃が窺い知れるだけでなく、麻痺した無関心の状態にいたい、知らない方がよいと知っていることにかんし無知のままでいたい、という願望が垣間見える。そしてこの、わたしたちが知らない方がよいと知っていることとは、失神しない牛が死に逆らい、生と関心と願望を露わにするという事実である。(p.370)

     停戦の見込みを語るドゥウォーキンの身長差に留意されたい。停戦は「権力の平等」でもなく。暴力手段の公平な配分でもない。それがもたらすのは、相争う派閥同士が一時的なものであれ民主的平和を築く機会の展望である。(p.372)

  • 東2法経図・6F開架:480A/W12g//K

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著者プロフィール

ディネシュ・J・ワディウェル Dinesh Joseph Wadiwel/オーストラリアの人権・社会法学者。市民団体の一員として15年以上にわたり貧困撲滅運動や障害者支援に携わる。2005年、西シドニー大学で博士号を収め、現在、シドニー大学の上級講師。主な研究領域は暴力理論、人種理論、障害者の権利論、批判的動物研究。シドニー大学の人間動物研究ネットワーク(HARN)議長、障害者の権利研究ネットワーク共同議長を務める。共編著にAnimals in the Anthropocene: Critical Perspectives on Non-human Futures (Sydney University Press, 2015)およびFoucault and Animals (Brill, 2016)があるほか、論文多数。

「2019年 『現代思想からの動物論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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