羅針盤の殺意 天久鷹央の推理カルテ (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408558653

感想・レビュー・書評

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  • 御子神先生の死の謎解きは、なんとも切なかった。今回も全く想像がつかない結末だったなぁ。
    小鳥遊とのやり取りも、だんだん夫婦漫才みたいになってきて面白い。
    アニメ化も決まって、今後がますます楽しみ!

  • 天久鷹央の学生時代の恩師・御子神氷魚。彼女は鷹央から不治の病で余命宣告を受けていた。
    「見立てよりも早く死んだら殺されたと思ってくれ」
    そう言って去った氷魚はカルテ室の奥で不可解な病死を迎えることになり──。

    圧倒的な知識量と記憶力を持ちながら、対人コミュニケーションや手先の不器用さを抱える天才医師・天久鷹央。彼女はその力を活かすため、医師たちが苦戦する患者の見立てを行う統括診断部にいた。不可解な事件の真相だけではなく、そこにある病気をも診断する。医療ミステリの人気作、天久鷹央シリーズの短編集。

    今作は三作収録の連作短編集となっている。鷹央が臨床実習時代にお世話になった氷魚との関係や、彼女の不可解な病死の謎を解くのがメインストーリー。時系列としては後半の作品になるものの、どの本から読んでも楽しめるようになっている。

    『禁断の果実』
    早春になると肝炎になる?!サッカー部のレギュラーになった高校生・宮本翔馬は、小学六年生を最後に発症していなかった肝炎で入院してしまう。検査の結果でも肝炎の原因は不明。小学生の頃と同じく入院後は回復傾向にあったが、彼の病状が急変してしまい──。

    アレルギーはあるものの、それはハッキリしていて口にはしていない。なぜか早春に肝炎を発症して、入院すると軽快する。中学校ではパタッと治まっていた病気が、レギュラーを勝ち取ったこの時期になぜ再発したのか。それを解き明かすのはもちろん天久鷹央!彼女がミステリにハマっていて、今読んでいる本のあらすじがどう考えてもあの作品で笑ってしまった。

    統括診断部メンバーの紹介と、さらに鷹央の「師匠」である御子神氷魚(ひお)の登場も兼ねた導入回。謎の一端はわかりやすいものの、この作品の魅力である「謎を解き、病気を診断する」という部分をしっかり味わえるのがいいよね。どうしてそれが?と言いたくなるほど思いも寄らないものが病気のきっかけになり得るのは衝撃的。ぼくは早春に必ず鼻炎になって、アレルギーテストをしても原因不明なんだけど、このきっかけは何なんだろうか(寒暖差アレルギーかもとは言われた)。


    『七色の猫』
    病院の裏手にある庭園を散歩していた鷹央が発見したのは青い猫!ドラえもーん!と声を上げたくなるその毛色は、なんと何者かによって塗られたものだった?!鷹央たちはその猫を動物病院へ連れて行く。すると獣医から、様々な色に塗られた猫たちが保護されてくると告げられて──。

    数十匹もの猫たちに色を塗る犯人。いたずらにしては手が込みすぎている。かと言って、どんな理由でそんなことをするのかもわからない。鷹央は不可解な謎へ猫のように飛びついて、その犯人捜しを始める!これは鷹央のトドメの一言が痛快でよかった。というか、鷹央の対人コミュニケーション能力の成長っぷりが感慨深い。


    『遺された挑戦状』
    開かずの間と化していた過去のカルテ保管庫で倒れていた氷魚。脳塞栓症での病死として判断されたものの、「余命よりも早く死んだら殺されたと思ってほしい」という彼女の言葉を胸に、鷹央は氷魚の死の真相を調査し始める。

    関係者以外立ち入り禁止のカルテ保管庫。積もった埃には一人分の足跡だけが残されていた。つまり、氷魚が倒れた時には彼女以外の人物はいなかった。広義の密室で、病死のように見せかける殺人は可能なのか?!師匠のことということもあって熱くなる鷹央。その暴走を、鷹央のことを師匠だと告げる小鳥遊が収めるドラマがよかった。

    師匠に習い、最後は師匠を超えるのが弟子の役目なのか?それとも?!ミステリの仕掛け自体は明快。でもね、そんな簡単に終わらせてくれる作家さんではないわけで。そこからがまさに勝負!という二転三転がよかった。タイトルになっている「羅針盤」が指し示す存在とは何か。その指針をどう読み解くか、それが人間の生き方にも繋がってくるのかもしれない。

  • 続けて読ませていただきました。

    今回は恩師の物語が中心でしたね。
    しかし、意外にも動物好きな鷹央先生。なんかかわいかったです。
    こういう人の死なない話も良いですなぁ。

  • 羅針盤の殺意という題名だが、3つの短編だ。短編といっても布石が入っている。遺された挑戦状に導かれている。そういった意味で「羅針盤」なのだろう。

    禁断の果実では、鷹央が硝子の塔の殺人や十角館の殺人を読んでいるのがユニークだ。毎年2月3月に肝炎になる男子高校生、銅が関係するが、小鳥遊と鴻ノ池のやり取りで推測できるが、病名は初めて聞いた。

    七色の猫はそのまんま、特殊な塗料で色を付けられた猫、何らかの病気が関係するのか・・・。

    遺された挑戦状、鷹央の師匠である御子神氷魚が脳梗塞で亡くなる。自殺なのか病死なのか殺人なのか、鷹央が究明していく。そして最後には意外な結末が・・・。
    医療エンターテイナーの知念実希人さんらしさが溢れた作品だった。ミステリーだけど切ない涙を誘われる。

  • 『羅針盤の殺意 天久鷹央の推理カルテ』— 師匠の謎死と医療ミステリー

    知念実希人氏の『羅針盤の殺意 天久鷹央の推理カルテ』は、シリーズ第15弾にして、新たな展開を迎える一作です。本作では、天才医師・天久鷹央が、自らの師である御子神氷魚の不可解な死に直面します。師匠の死に隠された真実を解明するため、鷹央は医療の現場で推理を展開していきます。

    この物語は、師弟の絆と医療現場のリアルを組み合わせ、読者にスリリングな医療ミステリーを提供します。特に、鷹央と彼女の部下であるコトリとの関係が深まり、二人のコンビネーションが事件解決の鍵を握る場面は見どころの一つです。一方で、常連キャラクターである鴻ノ池の出番が少ないのはファンにとっては少し物足りないかもしれません。

    このシリーズがテレビアニメ化されることも発表されており、その動向がさらに期待を集めています。アニメ化によって、鷹央のキャラクターや医療ミステリーの魅力が新たなファンにも伝わることでしょう。

    『羅針盤の殺意』は、医療ミステリーとしての魅力とともに、人間ドラマの深さも感じさせる作品です。シリーズを追い続けるファンはもちろん、新しくこのシリーズに触れる読者にとっても、引き込まれること間違いなしです。次回作とアニメの両方に大いに期待したいと思います。

  • はじめて天久鷹央シリーズを読んで見たがなかなか個性のあるキャラ設定がとても良かった。内容もライトな感じで読みやすい。

  • 見た目は高校生の様だが、その頭脳は天才と言える天久 鷹央先生のシリーズものですが、どれも面白いですが、本作もピカイチです。

    御子神 氷魚、帝都大学の元主任教授で、現在は総合病院の院長を勤める人物。
    かつての鷹央が『恩師』と仰ぐ唯一の人物。
    しかし、その氷魚が脳梗塞で亡くなった。

    場所は、病院地下のカルテ室で、誰もいない密室の部屋。謎めいた言葉を残した氷魚の死の真相を探るため、鷹央達が動き出す。

    そこには、病院関係者を巡る大きな闇があった。
    果たして、鷹央達は、事件の裏の裏の、更にその裏まで辿り着けるのか。

    最後のどんでん返しに、必ず驚きます。
    エピローグに、ウルウルです。
    『ありがとう、そして...さようなら、氷魚先生』

  • 大好きな天久鷹央シリーズ。このシリーズはすべて読んでいるが、この本の中ではまだ鷹央と小鳥遊が出会ってからまだ8ヶ月しか経っていないことに驚く。いっぺん時系列を整理しないとよく分からなくなってきた。今回は鷹央の師匠である女性が出てくる。2人の絆、友情がテーマの1つ。小鳥遊と鷹央と鴻ノ池の掛け合いが相変わらずとても楽しい。

  • とても面白かった。 二転三転していく展開がすごく良くて、一気読みでした。

  • 鷹央の学生の頃の恩師・御子神氷魚が不治の病に冒され、最後に不可解な死を遂げる。氷魚は、鷹央と同じギフトの持ち主で、唯一「先生」と呼ぶ人だった。氷魚から自分の死の真相を解明して欲しいと遺言を残されて…

    あの鷹央が師と仰ぐ人物だけあって、中々厄介な事件でした。

    ギフトが授かる反面、人の気持ちにあまり関心がない2人だったけれど、本当に信頼できる姪と部下がいて救いがありました。

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著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

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