- Amazon.co.jp ・本 (848ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408552729
感想・レビュー・書評
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怒りが、涙が、繰り返し出てきます。本当にこれでいいのか……
赤松徳郎42才は、トラック80台、年商7億、従業員90名。東京都世田谷区等々力にある中小運送会社の赤松運送を継ぎ10年。自社の大型トレーラが、脱輪して歩いている主婦・柚木妙子33才を直撃し即死、子供はかすり傷。大きく新聞に取り上げられ、警察、陸運局の調査が入り、トレーラは製造元の財閥系ホープ自動車へ運ばれて「整備不良」とされた。
社内で整備記録を調べると門田23才の整備ノートはしっかりしている。納得いかない赤松社長は、徹底して調べるが、大口取引先を失い、取引先の東京ホープ銀行からは貸金3億円の全額の返済を迫られる。会社倒産の危機にあっても負けない赤松の頑固で一徹さに好感が持てる。
ホープ自動車は、3年前にリコールを隠して闇改修を行い。内部告白による発覚で消費者の信頼を失い、販売と業績の低迷による資金不足を起こしている。今回の事故は、3年前に全てをリコールせずに隠して闇改修していた部分が表に出てきたものである。
【読後】
顧客のことを考えずに、ホープにあらずんば人にあらずという奢りが蔓延している組織では、考える事は、内向きの組織内の政治のことだけである。読んでいて怒りと、涙が繰り返し出てきます。お母さんを亡くした幼い息子と夫の事を想うと涙がとめどなく出てきます。
【音読】
2021年8月28日から9月9日まで、大活字本で、音読で読みました。
この本の底本は、実業之日本社文庫「空飛ぶタイヤ」です。本の登録も同本で行います。
大活字版では、第1巻~第5巻まであります。
空飛ぶタイヤ(大活字本シリーズ)
2018.05発行。字の大きさは……大活字版。
2021.08.28~09.09の13日間 音読で読了
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【バックナンバー】
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映画館で予告編を観て。ぐぐっと胸に迫ってきたものがあったので、即本屋さんへ。文庫本は、ぶ、分厚い。ずっしりとした重さ。
でも、最初の一文からスッと入っていきました。ゴールデンウイーク中に読めたらいいか…なんて呑気なこと思ってたけど、そんなこと出来ませんから。途中で止められませんから。一気に最後まで読んでしまいますから。
もうね。赤松社長の真実を求める泥臭いまでのがむしゃらさに、その熱量に熱くなっている自分がいました。彼は勿論のこと、敵対関係となる大手自動車会社の沢田だって、その資本系列の銀行員である井崎だって、各々自分の揺るぎない信念のもと仕事や真実に迫っていく姿が格好いいのです。
そして、赤松社長の背中には彼のもと一致団結し困難に黙々と立ち向かう社員たち、彼を支える妻や、父の姿に勇気をもらってイジメに立ち向かう子どもがいます。彼らがいてこそ赤松社長は倒されても倒されても立ち上がることが出来るのですよね。人はひとりでは生きられないというけれど、愛する人が一人でもいれば、人は何度も立ち上がることが出来るのでしょう。
わたしはこの小説を読んで一番強く思ったことは、仕事をするということ働くということはこういうことなんだということでした。今、日本の社会では働き方や社員の形態、AIの導入とか変革期を迎えているけれど、働くということがこんなにも、熱くて夢中になれるものなんだという気持ちはなくならないでいてほしいし、そんな気持ちになれる魅力的なものが仕事であってほしいなと思いました。 -
人身事故の重みと社員や家族の生活の重み、それに耐えて戦う主人公の精神力がすごい!
結構理不尽なことを言われたり、経済的にも絶望的な状況に置かれたりする場面を読んでいるだけでも辛かった。
危機的状況を乗り越えたと思ったら、また次の波が押し寄せてくる。
この分厚い本のほとんどの部分がそうなので、なかなか気が休まらない。
最後は絶対勧善懲悪!を合言葉に読み切った。
最後は泣いた〜! -
DVDを借りてきて映像で見たのが、この作品との最初の出会いでした。今の年齢よりももっと若かったときに見た記憶があるので、大企業で働くのはあこがれもあるけれど、組織の中に溶け込めない性格の自分、歯車を自分で動かしたい自分の性格には向かないのかなぁとも思ったことを思い出しました。
映像から入った人には、絶対に読んで欲しいこの原作。
映像よりももっと胸が熱くなる場面がたくさんあり、最後の1ページまで裏切られない作品です。
赤松運送の社長の行動に主軸がおかれる場面が多いですが、忘れてはいけないステキな女性が出てきます。ホープ自動車に勤める沢田さんの奥さん。彼女の発言は、忘れてはいけない気持ちを呼び起こさせる重要なものを感じさせます。本当にちょっとしか登場しないのですが。
最後に、改めて思ったのが、この世の中、やっぱり「出る杭は打たれる」という言葉通りなんだなぁっと改めて思うこと。そして「豆腐に釘」という人たちもなかなかしぶとく頑張っているということ。対照的ですがいろんな人がいるからこそとおもいました。
どんな規模の会社も「社員」は、色んなものと闘いながら頑張っているんです!社会に出てお給料をもらうようになって実感したことを思い出しました。 -
色々な登場人物が主観となって一つの事件を多角的に描写するところが面白いです。池井戸的結末(勧善組織悪)はもちろん踏襲されています。
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2020年1月25日、読み始め。
池井戸潤さんの作品を読むのは、初めて。
『下町ロケット』で直木賞を受賞されている方です。
2020年2月2日、読了。
走行中のトレーラーのタイヤが外れて、通りがかりの母子を直撃。
整備不良が原因か、それとも車体の構造的欠陥が原因か、で、展開していく作品。 -
ー このホープ自動車という組織で生きていくのに、生半可な正義感なと邪魔以外の何ものでもない。自己利益実現のためのしたたかな戦略あるのみだ。正義と利益には何の相関関係も存在しない。無論、正義を追うことを否定はしないが、深追いもしない。
ホープマンとして職務に従事する目的は、正義の実現ではなく、あくまで個人の利益と生きがいを追求するため。通貨に裏と表が存在するように、会社にもビジネスにも裏と表が存在する。その表の部分だけを青年の主張よろしくひた走るお人好しに、欲しいものを手にするチャンスは回ってこない。 ー
物事にはいろいろな見方があり、人それぞれの立場があるので、一概には何が正義なのか断言しにくいところはあるけれど、本質的に大事なことは何なのか、それを働く人は忘れてはいけないと思う。
心が熱くなる作品。
熱くなりたい。正義を実現したい。その気持ちは働く上で忘れてはいけないことだと思う。
素晴らしい作品だった。 -
息をするの忘れるぐらい集中して読んだ
片山さんをもうちょっとこらしめてくれるとスカッとできたかも -
結末は分かっているのに、読み始めるとわくわく感が止まりません。上下巻が合本になってお手軽に一気読み。小説はハッピーエンドですが現実は厳しいようで、ネットによると事件に巻き込まれた運送会社は廃業に追い込まれてしまったようですね。三菱ブランドの車は今やシェア1%。