向日葵を手折る

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 622
感想 : 61
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  • / ISBN・EAN: 9784408537672

作品紹介・あらすじ

山間の分校の転校生に忍び寄る、不穏な影の正体は――新鋭ミステリ作家が瑞々しい筆致で描く、長編青春ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • はい、「テーマ:ひまわり#2」です

    えがっだ〜。・゚・(ノ∀`)・゚・。

    青春ミステリーだそうです

    父を亡くし山形の桜沢という集落に住む祖母の元に母とともに越してきた小学6年生の高橋みのり
    みのりはそこで心優しき怜と乱暴者の隼人という二人の少年と出会う

    もう、いいじゃん!
    もうスタートからして100点じゃん!

    そして集落独特の排他的社会の中でも信頼できる小学校の先生に見守られながら三人は成長していくわけですが…
    「よそ者」のみのりが感じていた小さな違和感が重なっていき地域が隠していたものが明らかになっていく

    そして小学生から中学生に成長する中で三人の関係も少しづつ変わっていくわけです
    子どもからちょっと大人へね
    このあたりもいいのよ!
    幼なじみがちょっとづつ男子女子を意識していく感じがもうね

    そして終わり方も良かった!
    「ひまわり」選書をしてなかったら絶対読まなかったであろう作品
    もう結果でた感あるわw

    【ひまわり】はい、この作品はひまわりがもうど真ん中にいます
    まず作品冒頭に「向日葵流し」と「向日葵男」というパワーワードが2つドーンと出てきます
    なんじゃそれ?もうこの時点読者を捕まえてます
    なんじゃそれ?聞いたことないわ
    「向日葵流し」はこの地域の風習で灯ろうに向日葵の花を乗せて流すという行事で、この行事の中でいろいろ事件がおこります
    (調べだけど実際にはない架空の風習っぽいです)

    そして「向日葵男」です
    子どもたちの噂ばなしに登場する怪人です
    この怪人のことを話していると大きなナタを持って子どもの首を刈にくるっていう
    すごい子どもの噂ばなしでありそうw

    この「向日葵男」にはいろいろな効果があると思うんですよね
    まず「向日葵」っていう強烈な「明」の存在を子どもを殺しに来る怪人というとんでもない「暗」を被せることで、不穏さや、納まりの悪さ、ちぐはぐさを表現してると思うんです
    このちぐはぐさってまさに子どもそのものですよね
    子どもの中にある同時に発生する反対方向の感情、それはみのりたち三人の子どもたちにもあって、それを「向日葵男」に投影されてるように感じました
    (「向日葵流し」も「向日葵男」ほど強くはないけど「向日葵」という「明」に「灯ろう流し」という「暗」を混ぜてますよね)

    また「向日葵男」が存在することで夏の代名詞的な「向日葵」を物語の中心に置いても、一年中物語を進めることができるんです
    物語を引っ張る力を持つワードになっているわけですよね

    「ひまわり」の持つ強烈な「明」のイメージに「暗」を無理矢理注入することで、作品全体を捉えどころない不安定な雰囲気で包み、小学生から中学生へと進む主人公たちの心の不安定さも同時に表現してるのかな

    「ひまわり」の持つイメージを逆手に取ってうまく作品に活かしてます
    でもそれもこれもやっぱり「ひまわり」自体が強い力を持っているってことなんだろうなと思いました

    そしてそして!2作目にしてもう「ひまわり考察」めんどくさくなってきたw
    長いレビュー向きじゃないのよ(´-﹏-`;)

    • ひまわりめろんさん
      本とコさん
      こんにちは!

      そうなんですよね
      一応広く選書したつもりなんで、これはもうひまわりの力です
      ひまわりマジックオーケストラです(ち...
      本とコさん
      こんにちは!

      そうなんですよね
      一応広く選書したつもりなんで、これはもうひまわりの力です
      ひまわりマジックオーケストラです(ちょっと意味が…)
      2023/07/05
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      ひまわりの力‥、そうですね
      選者じゃない方のひまわりの種は
      メジャーリーガーもメッチャ食べてますもんね
      あやかりたい(^.^)
      ひまわりの力‥、そうですね
      選者じゃない方のひまわりの種は
      メジャーリーガーもメッチャ食べてますもんね
      あやかりたい(^.^)
      2023/07/05
    • ひまわりめろんさん
      自分はひまわりの種よりかぼちゃの種が好きです(いろいろ台無し)
      自分はひまわりの種よりかぼちゃの種が好きです(いろいろ台無し)
      2023/07/05
  • すごくよかったです。星6つをつけたかったくらいです。
    この作品の著者の彩坂さんの作品は『夏の王国で目覚めない』に続き2作目ですが、同じ作者の作品とは思えないほど、こちらの完成度が高いと思いました。

    父親の死によって、12歳の高橋みのりという少女が東京から山形県の山辺町に近い桜沢の祖母の家に母親とともにやってきて過ごした4年間の物語です。

    以下、少しネタバレありますのでご注意ください。


    小学校は小さな分校で、みのりは乱暴者の西野隼人、いつも隼人と一緒にいる大人しくて優しい藤崎怜らと同級生になります。
    そこでみのりは級友らや、親同士仲のいい怜とまず、親しくなります。
    乱暴すぎる隼人には最初は悪印象を抱きます。
    みのりは隼人に持っていた不信感を怜に尋ねますが、怜は「隼人はそんなに悪い奴じゃない」というばかりです。
    みのりは、その土地で子どもを殺す怪物と言われる向日葵男に襲われますが、危機一髪で難を逃れます。
    みのりは佐古という教師に父の不在から気を許し車で連れ去られそうになりますが、隼人が気づき助けてくれ、隼人は車にひき逃げされ負傷します。

    そしてみのりたち六年生は、今井先生と別れを惜しみながらみな一緒に卒業し、山野辺の中学校へ進学します。
    そこでまた、みのりの周りで様々な大きな事件が次々に起こります。

    隼人、怜、みのりのキャラクターが際立ちだんだんと隼人、怜の人間性がわかってきます。
    隼人はちょっとかっこよすぎで、怜もまた優しい男の子で、なんでみのりばかりそんなにモテるのって感じがあります。
    でも、大変、密度の濃い大きな痛みをともなう真の青春恋愛小説であり、ミステリーでもあり、家族の小説でもあったと思います。
    みのりの級友、一人一人や周りの大人たちの人物像も、いつもあたたかいお父さんみたいな小学校の今井先生、怜のお母さんで体の弱いけれどもとても明るい春美、ぶっきらぼうな美術教師恭子など、よくできていてとても個性的で上手いと思いました。

    最終章では、分校の級友たちが賑やかに再会します。

    • くるたんさん
      素敵なレビュー!青春小説でもあり…まさに私の言いたいことが全て詰まってます¨̮♡

      温かい読後感も良かったですよね♫
      この作家さんの繊細な描...
      素敵なレビュー!青春小説でもあり…まさに私の言いたいことが全て詰まってます¨̮♡

      温かい読後感も良かったですよね♫
      この作家さんの繊細な描写が素敵でした♫
      2021/04/24
    • まことさん
      くるたんさん。

      ありがとうございます。
      くるたんさんのレビューも素敵でした♡
      くるたんさんも米沢にいらしたことがあるのですね!あち...
      くるたんさん。

      ありがとうございます。
      くるたんさんのレビューも素敵でした♡
      くるたんさんも米沢にいらしたことがあるのですね!あちらは県内でも特に雪が多く大変なところだったでしょう。
      この作家さん、他の作品ももう少し読んでみたいと思っています。
      2021/04/24
  • 2023年の年末から読みはじめ、
    2024年元日、読み終えました。

    前半の小学生時代がけっこう長く、しんどい描写もあり「長いな…」と途中で感じてしまう。
    しかし、最後まで辿り着くと、前半があったからこその1つの物語だと納得できる1冊。

    個人的には、中学生時代の みのり、怜、隼人の切ない心の揺れがたまらなかった。

    今年もよろしくお願いします。

    • アールグレイさん
      ねこさん!(=^_^=)
      あけましておめでとう
      ございます!
      今年もよろしく

      そういう本ってよくあります...
      ねこさん!(=^_^=)
      あけましておめでとう
      ございます!
      今年もよろしく

      そういう本ってよくありますね!最初は進展が少なかったりして、読むことがつらい・・・・それがあるから、話全体の良さを知ることができるのかと思います。
      今年も好きな本を自分のペースで楽しく読みたいですね!
      2024/01/02
    • ねこがすきさん
      アールグレイさん
      明けましておめでとうございます。
      コメント&共感ありがとうございます…!
      そうなんですよね、読むのが捗らない部分もありなが...
      アールグレイさん
      明けましておめでとうございます。
      コメント&共感ありがとうございます…!
      そうなんですよね、読むのが捗らない部分もありながら、最後まで読めてよかった1冊でした★

      それでは、今年もよろしくお願いいたします♪
      2024/01/02
  • ダークで残酷で、容赦ない現実。
    思春期に感じる心と身体、関係性の変化に対する違和感やもどさしさ、戸惑いは、当時の私にもあって懐かしく、共感する。
    闇が深いけれど、読後感は幸せな気持ちになりました。

  • 心掴まれた一冊。

    良かった。

    舞台は山形の集落。少年少女の4年間、そこに絡む不穏な事件を描いた青春ミステリ。

    向日葵、残酷さ、ざわつきが漂う中での丁寧に描かれる三人の心の機微、大人に一歩近づく細やかな瞬間が時に眩しく時に痛いほど心に響いてきた。

    次第に見えてくる彼らに流れる交錯する思い、裏側とも言える時間。

    全てを知った時、今まで見て感じてきたものがクルッと姿を変える、この瞬間にせつなさと共に心掴まれた。 

    最終章がまた秀逸。
    みのりの心情がひしひしと伝わってくる。

    大人になったからこそわかることも多々ある。

    苦しみをバネに…どんな思い出もきっと無駄なんかじゃない。

    • まことさん
      くるたんさん。おはようございます!

      私もこれ、すごくよかったです!
      星6つをつけたかったくらい。
      まず、隼人と怜の対称的なキャラク...
      くるたんさん。おはようございます!

      私もこれ、すごくよかったです!
      星6つをつけたかったくらい。
      まず、隼人と怜の対称的なキャラクターがすごくよかったし、もちろん三人の間の友情。
      大人たちの目線もよかったです。
      また、山形の四季が細やかに描かれていて、いいなあと思いました。
      冬のひっぱりうどん。春の山菜採り。ずんだもち他。
      実は、この作品の舞台は、私の地元で、著者の彩坂さんにもお目にかかったことがあります♪
      2021/04/24
    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪
      まことさんも楽しまれて一安心!良かったですよね〜、なんとも言えないこの三人の友情、関係。
      辛い場面もあった...
      まことさん♪おはようございます♪
      まことさんも楽しまれて一安心!良かったですよね〜、なんとも言えないこの三人の友情、関係。
      辛い場面もあったけど自然描写に癒されました。
      え、地元?彩坂さんにも⁇素敵!
      私も山形、米沢に住んでたことありますよ♫
      大好きな県の一つです¨̮♡
      2021/04/24
  • 父を亡くした主人公・高橋みのりが、母の実家である山形で暮らした数年間が描かれている。閉鎖的な環境であるがゆえに、様々な問題が起こるが、それを乗り越えて成長していくみのりやその友人たちの姿が、とても良かった。ホラーミステリーの要素も加味されており、けっこうドキドキしながら読んだ。

  • ミステリーという観点からいうと、先が読めてしまう部分も多々あったので、惹かれるところは少なかった。
    でも、青春ストーリーとしては良かった。
    小学生~中学生という多感な時期のみのりと隼人と怜の三人の関係性や心情、山形の田舎での様子が細やかに描かれていて、自然の豊かさと相反する閉塞感を感じながら読んだ。

  • 『向日葵を手折る』彩坂美月著 「寄り添う」を見つめ続ける物語
    https://www.47news.jp/culture/entertainment/book/5514731.html

    山間部にある閉鎖的な集落の光と闇を描く 作家・彩坂美月が作品に込めた想いとは | インタビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/639114

    向日葵を手折る|実業之日本社
    https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53767-2

  •  わかりきっていたラストのはずなのに、鳥肌が止まらない。

     みのり、隼人、怜の物語。

     父親を亡くし、心に空洞ができたみのりは、住んでいた東京から母親の実家である山形県に移り住むことになった。

     不安を抱えていたみのりだったが、優しい男の子、怜の存在がみのりを支えてくれた。でも、女子にも平気で暴力を振るう隼人の存在が疎ましかったが、隼人は怜の親友だった。

     平凡な生活を送りながらも、いくつかの事件が起こる。それら全ては向日葵男の仕業だと考えられ・・・。

     みのりたちが住む桜沢には向日葵男がいるという噂があった。悪いことは向日葵男がやったのだと子供たちは信じていた。

     さて、私たち読者はみのりたちが小学生から中学生、そして大人になるまで見守っていくわけだが、その描写が本当に瑞々しくて、自分が子供の頃に感じていたことや、思っていたことなどをリアルに表現している。

     この物語は、子供たちが持つ感情を見事に表現することに成功している。また、その子たちの成長を目の当たりにでき、同時にミステリーも味わえるという実に贅沢な一冊に仕上がっている。

     これから読む人が純粋に羨ましい。子供の頃に感じたあの感情を味わいたい人には是非読んでいただきたい。個人的にはめちゃくちゃ隼人が好きだ。

  • 自然の中の人間模様が心地よく、いつまでも読んでいたくなる、青春ミステリーでした。
    とにかく前半はお腹が空いてきます。
    食用菊や茸、そしてあけびの肉詰め、山葡萄ジュース、よもぎパン、ウコギ飯、菜の花のおひたし、辛し和え、べーコンとノビルを炒めたパスタ、ノビル餃子、納豆を入れたひっぱりうどん、タラの芽やカタクリ花の天ぷらなど、山形県の季節に合わせた食事話しが所々にきて、最高です。
    そこに夏の日差しや山からの景色、神社までの石段、暗闇の沼、夕方からはじまるお祭り、向日葵流しの川、そして真っ暗な夜空の星など描写が素晴らしく、雪が降る日に窓を開けたまま風呂に入るところも良かったです。
    それだけでも充分楽しませているにも関わらず、向日葵ミステリーでジワジワと近づいてくる恐怖もあり、そこに小学生同士のいざこざから徐々に怪奇な出来事になり、中学生の青春もあり、中盤の土砂降りの二人のシーンと、八章の祭りの夜の二人のシーンは忘れられませんね。
    「気がつかなかった!」と思ってしまうシーン続出で、前のページに戻ったりします。
    そして最後ですよね。今井先生の技アリはやられました。
    最近観た映画で、なんとなく是枝監督の怪物を思わせた、伝わらないからこその齟齬が映えていた感がありました。

    個人的に
    「隼人の父も、怜さん父も、かつては向日葵を流した子供だったのだ。」という文章が、全体をフォローしている一番好きな言葉でした。そして彩坂美月さんの想いも含まれている気がしました。
    もう一度言っちゃいます。
    いつまでもこの世界をのぞいていたかった。

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著者プロフィール

山形県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。『未成年儀式』で富士見ヤングミステリー大賞に準入選し、2009年にデビュー(文庫化にあたり『少女は夏に閉ざされる』に改題)。他の著作に『ひぐらしふる』『夏の王国で目覚めない』『僕らの世界が終わる頃』『サクラオト』『思い出リバイバル』などがある。本作『向日葵を手折る』が第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門にノミネート。

「2023年 『向日葵を手折る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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