緑の庭で寝ころんで

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 633
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537177

作品紹介・あらすじ

ふるさと福井で、北海道の大自然の中で、のびやかに成長する三人の子どもたち。その姿を作家として、母親として見つめ、あたたかく瑞々しい筆致で紡いだ「緑の庭の子どもたち」(月刊情報誌「fu」連載)4年分を完全収録。ほかに、読書日記、自作解説ほか、宮下ワールドの原風景を味わえるエッセイ61編、掌編小説や音楽劇原作など、単行本初収録の創作5編も収載。著者の4年間のあゆみが詰まった宝箱。

感想・レビュー・書評

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  • 前回のエッセイ『神さまたちの遊ぶ庭』を読んですっかり宮下家のファンになってしまった。
    そんな宮下家のみなさんに再び逢えてとても嬉しい。
    のんびり屋の長男くんにしっかり者の次男くん、そして天然100%爆笑エピソードに欠かせない末っ子の妹ちゃん。ほんと妹ちゃんは期待を裏切らない可愛さ。
    拠点を北海道からふるさとの福井に移しても変わらずのびのびと成長していくお子さん達と、その姿を温かく見守る宮下さんにまたもや笑ったり涙ぐんだり。
    宮下さんご自身も書いておられたように「しあわせのエッセイ集」なのだと感じた。

    中でも「秋の森のリス」が印象的。
    リスが冬に備えて、秋の森で胡桃を集めて地面等に埋めて隠すエピソード。
    長男くんがポケットに文庫本(森鴎外)を入れっぱなしにしているのを見て宮下さんが尋ねた時の長男くんの返答「一度寝かせてからまた読むと、なんだか深く読める感じがするんだよ」には参った。
    リスが埋めた胡桃のように、彼の中でいつしか芽を出しやがて大きな樹に育つのだろう。

    そうそう、だから私も自宅の本棚に買い込んだ本を沢山寝かせて、熟成するのを待っているのよ…というのは単なる言い訳だね。。

  • きちんと年齢を重ねた大人でいらっしゃるのだけど、非常に感覚がお若くて瑞々しい。ご家族も、とても穏やかで、心優しい関わり方をなさってて、宮下さんはお幸せだなと思うのだ。降って湧いた幸せではなくて、自分たちで大事に積み上げてきた幸福なのが、好もしい。優しく、筋の通った文章で、この方らしかった。

  • すぐそばで著者が話しかけてくれる気がして、とても癒されます。

  • 「羊と鋼の森」や「よろこびの歌」などで描写される音楽が、とっても瑞々しい理由が分かった気がする。

  • 宮下さんの本はそんなに多く読んでないし、特に好きっていうわけではないけれど、たまたま手にとってみたら、なかなか興味深く読むことができました。子供に関することが多かったことや、宮下さんがその土地に根ざし、自然そしてその美しさを繊細に受け、しっかりと生活しているということ、人柄を知ることができたからかもしれません。数々の連載をまとめたので内容的にかぶるところがあるにしても、読み進めると、時々行間ににじみ出る、暖かい紅茶のふくよかな柔らかい味わいを感じることができ、それが本人のこういった姿勢、生活から出てくるものなのだろうと思いました(この本だけでなく、他作品でも感じるものの元でしょう)。宮下家の緑のお庭を覗いた様な感じで、子育てについては、少々自分の刺激になりました。数冊しか読んではいませんが(申し訳ないけれど)、今後は注目して見ることにしました。

  • 福井の情報誌『fu』に連載されていた子どもについてのエッセイと、本屋大賞受賞前後の変化、そして掌編小説と音楽劇原作。宮下さんのこの数年を知るための必読書。
    思えば、初めて宮下小説と出会ってからもう10年になる。
    『スコーレNO.4』を初めて読んだとき、あぁ、この人の書く文章が好きだ、この人の描く世界が好きだ、すごく心地いいもん、とそう思った気がする。
    あれから10年。自分も宮下さんも10年分歳を取った。子どもたちも10歳ずつ大きくなった。この10年間の長さと変化と、そして変わりなさを思う。
    自分と宮下さんには似ているところがある、と勝手に思っている。子どもが学校に提出するものに、宮下さんは自分の名前を書いてしまうし、私は夫の名前を書いてしまった。本当は子どもの名前を書くべきところに。
    東京から自宅に帰る新幹線を乗り間違えて、京都に一泊しちゃうところなんかも似ている。あ、私はそこまでひどくない。そこまでひどくはないですね。ええ、ひどくないです。勝手に仲間意識を持ちつつ心配し温かく見守っている。
    でも、そういううっかりなところより、もっとなんていうか子どもたちとの接し方とか、子どもへの思いとか、そういうところが似ている気がする。それがとてもうれしかったりする。
    宮下家の子どもたちについての文章に、あふれる愛を感じるのは私だけじゃないはず。こんな風に子どもと一緒に成長できる母親って幸せだと思う。子どもを育てるのは決して楽じゃないし、きれいごとだけでは済まない。面倒くさいことも腹の立つことも、真剣にブチ切れることもある。子どもと一緒にいられる時間って、人生の中で本の一瞬だってわかっているのに、無駄にしちゃうんだな。思い通りにならないとイライラもするし投げ出したくもなる。親も一人の人間なので。
    そんなときに、宮下家の日々を読むと、肩のチカラが抜ける。あぁ、もう一歩下がって見てもいいんだな、と思える。子どもには子どもの世界があって、そこに親と言えども土足で入り込んじゃいけない。一歩下がってにやにやしていればいい。ときどきは突き放すのもいい。絶対的な信頼感と、絶大なる愛情があれば、大抵のことはうまくいく。それほど大きく外れることもない。外れてしまったら外れた世界でまた歩き出せばいい。というか、そもそも外れるってどこからよ?
    宮下さんが三人の個性豊かな子どもたちをまるっと受け入れてまるっと愛していられるのは、それはやはり夫氏との関係が芯にあるからだと思う。
    宮下さんが夫氏を心の底から信頼し愛しているから、その2人の間に生まれた子どものことを信頼し愛するのは当然のこと、とそう思ったり。
    このエッセイには本屋大賞について書かれている部分が多い。あの日、壇上に登る宮下さんを見て胸がいっぱいになったのを思い出す。参加している書店員たちがものすごく喜んでいた。みんな幸せそうな顔をしていた。自分が賞を取ったわけでもないのに、自慢げにPOPを見せ合っていた。あの喜びと幸福感はいったいなんなんだろう。多分、それは宮下マジックなんだろう。知り合った誰をも、その本を読んだ誰をも、ファンにしてしまう魅力。それは宮下さんが私たちに向けて放ってくれる遠赤外線なんだ、きっと。その作品を読むと、この後もずっとこの人に付いて行きたいと思わせる。この世界に宮下さんがいてよかった。本当に心からそう思う。

  • ものすごく健やかなのである。
    宮下さんの三人のお子さんも、住んでいた北海道での日々も
    何より宮下さんのものの見方、感じ方が真っすぐで健やかなのだ。
    作家って、こうもっとドロドロした人間がなるものだと思ってました(←偏見)

    一年間家族で山村留学してたという
    北海道の村の描写が本当に素晴らしい。
    森の息遣いや動物たちの可愛らしい姿が見えてくるようでした。
    本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』は
    こんな素晴らしいバックグラウンドから生まれて来たのだね^^

  • 北海道移住生活から始まり、本屋大賞エピソードまだ、宮下さんの面白楽しいお話。

  • 宮下奈都さんのエッセイを初めて読みました。三人のおこさんとのやりとりがクスッと笑えます。自然体な子育てに共感が持てて、宮下さんをとても身近に感じました。北海道で家族と山村留学した一年間のことや、「羊と鋼の森」が生まれたきっかけなど興味深かったです。また「羊と鋼の森」を読みたくなりました。

  • 色々な媒体に載った奈都さんのエッセイが集められている。
    奈都さんとお話したいなあ。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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