- Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
- / ISBN・EAN: 9784406054102
作品紹介・あらすじ
1920年代のアメリカ南部。「ぼく」は、本が読みたいという気持ちでいっぱいでした。でも、黒人は図書館を利用することができません…。本と出会い、肌の色がちがっても、「自由」を求めてやまない人びとを知り、成長していく「ぼく」-。黒人の子どもたちを主人公に、本を読む楽しさや図書館の魅力について描いた絵本。
感想・レビュー・書評
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この本も、フォローしている方のレビューを読んで借りた。
アフリカ系アメリカ人の差別、苦悩の歴史は様々な本や映画で語られているが、図書館視点の本は初めてだった。
あまりにも当たり前に利用している図書館。
日本の図書館の歴史は、「夢見る帝国図書館」を読んで知るところとなったけれど、日本の図書館でも利用者に対する差別はあったのだろうか?
ほんの100年ほど前の話、アフリカ系の方達がいかに多くの苦難を乗り越えて、今に至る一つ一つの権利を勝ち取ってきたか、その一端がこの短い絵本の中からも伝わってくる。
2020.4.10詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1908年にミシシッピ州で生まれた貧しい黒人のリチャード・ライト。
彼の自伝「ブラック・ボーイ」の一場面が、味のある筆致と絵によって表現されている絵本です。
読むことが好きな彼が生きる時代は、図書館を含む公共施設の黒人による利用が禁止されていました。
彼の辛い人生は、我々の今の生活が如何に恵まれているかを教えてくれます。 -
黒人差別が凄まじいミシシッピ州の農園で生まれたリチャ-ド・ライト(Richard Wright 1908-1960)が、アメリカ黒人文学の先駆者と名を馳せるまでの幼少年期の苦難の時代に、文字を覚え、図書館で本を借りて読めることの喜びを伝える絵本。ひとりで本が読めるようになっても、高価な本を買うゆとりなどなく、町の図書館は公園や運動場と同じように、黒人の利用が禁止されていた時代、同じ職場の白人のフォークさんの「図書館カード」を貸してくれた勇気ある善意が、自由世界への旅立ちの切符となった、と回想しています。
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ちょっと昔のアメリカの話。
生活全般において差別されていた黒人。
読み書きまで制限されていたとは。
しかし人間その気になれば学ぶ手段は絶対にあるということでもある。
学ぶ権利を放棄しかけている現代っ子に読んで聞かせたい1冊。 -
1920年代のアメリカ、当時はまだ黒人が自由に公共図書館を利用することができない時代でした。
主人公「ぼく」は幼いころから、本を読みたいと強く願っていましたが、自分の本を持つこともできませんでした。
17歳で働きはじめますが、その願いは強まる一方です。
そこで彼は、職場で唯一信頼できる白人に図書館カードを借りることにしました…
彼はカードの持ち主の代わりに本を借りに来た、という振りをすることにしました。
それでも、白人の図書館司書から「本当にあなたが使う本ではないのですね」と咎められます。
とっさに「ぼくは字が読めませんから…」といった「ぼく」を大声で笑った図書館員。
その場面で思わず涙が出そうになりました。
この本の主人公「ぼく」は、実在した人物リチャード・ライトの経験をもとに書かれています。
彼の自伝『ブラック・ボーイ』で描かれた出来事を絵本にしたものです。
当時のアメリカの様子、そして本を読むことの尊さを伝える1冊です。 -
[墨田区図書館]
絵本の形式をとっているものの、その見た目の薄さよりは字が各ページにちりばめられている。自叙伝形式をとっているものの、多少散文的に、ただつらつらと「どうであったか」を伝えてくるので、まだ読み取る力の少ない中学年や、行間が読めない高学年には、つまらないかも。けれども、簡素化された形態で差別の事実を伝えてくる良書。一応読ませはしたが、何かを掴んでくれたかな…? -
私が初めて手にした自分名義のカードが地元の図書館のカードで、母親が私の名前を漢字で書いてくれたのも嬉しくて、今でもその時のことを覚えている
タイトルをみて、そんな喜びの絵本かと思って借りたら、大違いだった
リチャード・ライトという後に作家になる黒人の青年が、職場の白人に協力してもらい、図書館で本を借りて自由に近づくおはなし
リチャードの自伝『ブラック・ボーイ』の一場面をもとにしたものとのこと(あとがき)
20世紀前半の黒人差別がまだ激しかった頃のおはなしで、黒人は図書館のカードをつくれなかったとのこと
なんとかして本を読みたい「ぼく」は、色々と工夫をする
(人種)差別のことは、ほぼ単一民族で構成される島国である日本に住む大人の私にも、わからない
子どもにもわからないとは思うけれど、こんなおかしなひどいことがあったのだ、ということを感じてもらうことはできる
色々な知識や情報に無料で自由にアクセスできる場所があるのが当たり前になって、良かった
私も、色々なことを知ることが第一で、そこから広がる世界があると思っている -
図書館より。
タイトルに惹かれました。
黒人の主人公が、自分が黒人であるために図書館を自分の名前で利用することができないので、代わりに自分の気持ちを分かってくれる白人の仕事仲間を味方につけて、彼の名義で本を借りて読んだ、という大筋です。
子供のころから憧れて憧れて、やっと大人になって「本」というものに、そして本の中に広がっている古今東西あらゆる人との「出遭い」そして描かれている「世界」に対面したときの主人公の胸の高鳴り、喜びがひしひしと伝わってくる本です。ごく小さなころから、息をするように、食べるように本を読み、育ってきた自分にとって当たり前になっていた「本を読むことの素晴らしさ」=「合ったことのない誰かの世界を共有すること、人生に深水を与えてくれる貴重な体験であること」を気づかせてもらったように思います。
ここのところ、本を読むこと自体に、それほど意味があるモノなのか…?とうつうつとした疑問を抱えていた時期だっただけに、主人公のストレートで素朴な、読書を喜ぶ姿勢は新鮮で、吐胸を衝かれた思いでした。 -
「わたしのとくべつな場所」と同じ、黒人差別をテーマにした絵本。
「わたしの・・・」とは違って、まだ黒人が図書館で本を借りられなかった時代の実話に基づいたおはなし。
黒人達が知識を得ることを恐れるのは、白人にとって恐怖だったのでしょう。アルカイダが女性に学校を禁止したのと同じだと思います。
暴力や抑圧で人の気持ちまで思い通りにすることなど出来ない。ということがわからなかったのですね。