- Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
- / ISBN・EAN: 9784404041425
作品紹介・あらすじ
一度にひとりずつ、一話語りの百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。彼女のもとに不思議話を携えて様々な人がやってくる。ある日、おちかは本所亀沢町の手習所"深考塾"の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」と呼ばれる空き屋敷にまつわる不思議な話を聞く。それは、"深考塾"の大先生である加登新左衛門・初音夫婦と、草鞋に似た真っ黒な固まりである暗獣"くろすけ"との交わりであった。人を恋いながら、人のそばでは生きられない"くろすけ"とは…。表題作をはじめ4話収録。
感想・レビュー・書評
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変調百物語の第2弾。
このシリーズは江戸時代の市井の暮らしぶりを生き生きと描きながら、併せて当時の物の考え方や宗教観なども分かり易く表現している。
古来より日本には万物に神が宿るというアミニズムにも似た神道がある。アニミズムと異なるのは神が宿る対象が自然だけではなく、日常生活のあらゆる物が対象である点だ。従って当然家屋のような建物にもそれは存在していて不思議はなく、本作の「くろすけ」の話などもその一つだ。現代なら「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付されるだろうが、当時の宗教観であれば「そういう事があるかも」と納得するのだ。江戸時代ともなれば科学的な思考も一般庶民に少しずつ芽生えている中で、原初的な思想と科学が微妙なバランスでないまぜになっている時ではないだろうか。
そういう時代を舞台に百物語を聞くというこのシリーズは、ほど良い不気味さと謎と日常が上手くブレンドされている作品だと思う。
この第2弾で登場人物も更に増えておちかの周辺が賑やかになってきた。次作もまたこの独特な雰囲気を楽しみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三島屋百物語シリーズ第二弾。4つの短編からなる一冊。 主人公のおちか自身は過去を乗り越えて一区切りがついた状態で始まっているが、まだ心の靄を飼ったままではある。 私のおすすめは「暗獣」。くろすけが可愛い。けれどくろすけと共存することはできない。なんてなんというジレンマ。 くろすけの可愛さだけでも堪能してください。
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「おそろし」の続編。
相変わらず三島屋の黒白の間で面妖な話を聞いているおちか。
ただ、少しだけ外への世界が広がったようです。
タイトルの「あんじゅう」は黒くてすべすべしていてあまり賢くないけど悪さなどはしない生き物。
このお話はずっと読んでいたかったなぁ。
ほっこりやさしくなれるお話でした。 -
これすき。
愛おしい。 -
悲惨な経験をし、心に傷を持つおちかが、不思議な経験をした人達から一話語りの百物語を聞き集めることで、生きるちからを取り戻していく「おそろし」の続編
話に出てくるのは人の想いが凝り固まった物の怪、幽霊。
おちかを取り巻く人々も増え、おちか自身の物語もこれから進みそう。
4つの話の中では表題作の「暗獣」がいちばん良いかな。
この話の「暗獣」くろすけ、「くろすけ」という名前の妖怪は、これまで、
宮崎駿監督「となりのトトロ」にでてくる「まっくろくろすけ」と
高橋由太の「『大江戸あやかし犯科帳 雷獣びりびり」シリーズの雷獣「くろすけ」とを知っているが、「暗獣」くろすけが、中では一番人に心を残す妖怪とおもう。 -
2021/03/13
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11月-1。3.5点。
三島屋おちかの百物語、第二巻。
館に住む妖怪、あんじゅうが切なくて哀しい。
相変わらずの面白さ。安定している。
ニューキャラも増え、今後も楽しみ。 -
なぁ、くろすけよ。おまえは再び孤独になる。だが、もう独りぼっちではない。私と初音は、お前がここにいることを知っているのだから。
こんな優しい別れの言葉があるんだ。
母が「昔ウチで飼っていた犬を思い出すよ」と言っていたので読んでみた。確かにくろすけが犬っぽい。
毎度引き込まれる宮部ワールド。 -
読売新聞の連載で読んでいたが、まとめてよむとより深く、楽しめた。そもそも連載中は前の話を知らなかったので、主人公の背景とかあいまいなまま読んでいたし。