- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396635756
作品紹介・あらすじ
第三の“竹内ノート”を求めて、男はルソン島へ――
戦没詩人、山下財宝、山岳民族、イスラム独立闘争…
空っぽな日本人はそこで何を見たのか
注目の才能ミヤウチの、これが決定版。またしても展開予測不能の冒険小説!
戦死した若き詩人が見晴るかし、残したものとは―
ぼくは、ぼくの手で、戰爭を、ぼくの戰爭がかきたい――そう書き残し、激戦地ルソン島で戦死した詩人・竹内浩三。彼は何を見、何を描いたのか? テレビディレクターの職を捨て単身フィリピンに渡った須藤は、その足跡を辿りはじめた。だがその矢先、謎の西洋人男女に襲われ、山岳民族イフガオの娘ナイマに救われる。かつて蹂躙された記憶を引き継ぎ日本人への反感を隠さないナイマだが、昔の恋人ハサンの実家を訪ねる道行きに、付添いとして須藤を伴うことに。ミンダナオ島独立のために闘ったイスラム一族の家で一時の休息を得た須藤だったが、ハサンの家は秘密を抱えていた……。
感想・レビュー・書評
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作者の作品を出来る限り出た順番に読んできて、作者はいろいろなスタイルに挑戦している?試している?好きなもの書いてたら結果こうなっている?みたいに感じてました。この作品、一作の中が、めちゃくちゃな展開で、ハードボイルドなのか、恋愛小説なのか、どストレートの純文学なのか、わからない作品なんですが、不思議に素直に読めて、作者がわのブレとかは全然感じませんでした。一読者の勝手な感想ですが…。これが、宮内悠介スタイルになるのかな、と勝手に期待してます。次は「黄色い夜」かな。こんなスタイルの本書ける人は他にいない!
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途中ブレた?
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フィリピンで戦死したとされる詩人・竹内浩三に惹かれ、自分は歴史の中にいない、と感じている青臭い正義感を抱え続けた男が、竹内浩三の足跡を追おうと、現代のフィリピンを彷徨う。
無茶苦茶な出会いがあり、不思議な導きがあり、男はフィリピンの歴史を見る。
すごく深く重みのある歴史が語られたかと思うと、とんでもなく軽い調子のキャラクターが登場して無茶苦茶な行動を取ったり、物語の振り切れ方が凄い。
内省と奔放が不思議に共存して物語を綾なしているのがこの人の作風の特徴だなあ、と思う。
ある部分ではとてつもなく軽く、あほらしく、でもその分だけ、重みが胸に響く部分もある。
ものすごく軽いエンターテイメントで、重いテーマを包み込む、そのギャップが違和感でもあり、面白みでもある。
ラストの「わたしたち」の人称で語られる部分は圧巻だ。
土のにおい、木々のにおい、硝煙のにおいがするようだった。
いくつか引用される詩が美しい。
竹内浩三の詩はもちろんだが、フィリピンの革命家、リサールの詩も胸にしみた。
作中に登場する「国家の死臭」という言葉も、体の芯に響くような言葉だった。
作品の舞台はフィリピンであり、語られる戦争は第二次世界大戦の消耗戦であるのだけれど、今だからこそ、書かれた物語なのだと思う。
こういう物語を読むたびに、自分の生まれる前には深い歴史があること、生まれた国がなぞってきた歴史を引け目に思うでもなく高圧的になるでもなくニュートラルに受け止め、そして忘れないこと、その難しさと大切さをしみじみと思う。 -
フィリピンでは、かつて戦争の激戦地として、多くの命が失われた。
日本軍でルソン島で戦死した詩人・竹内浩三。
彼の詩に感銘を受けたTVディレクターの主人公は、本当の戦争をテーマに番組を作りたい思いを抱いているが、なかなか認めてもらえない。
仕事をやめ、一人フィリピンに旅に出て、竹内浩三の足跡をたどり始める。
謎の西洋人男女に襲われたり、山岳民族イフガオの娘に救われたり、
とんでもない事件に次々見舞われ、挙句に、拉致され、赤ちゃんの世話までするという、冒険に次ぐ冒険。
フィリピンの歴史、戦争、日本軍、宗教が少し理解できたような。 -
ハードボイルドを想定していたら意外と強いエンタメ、というかコメディ風味。
どこかツギハギの印象を受けてしまって、どちらかに特化した方が集中できた気がする。
ラスト50ページの臨場感と荒廃感は読み応えありでした。 -
12月17日読了。図書館。
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この作者の本を今まで何冊か読んだが、海外が舞台という点は共通していても、みんな語り口が違っていてびっくりする。今回はフィリピンが舞台で、第二次世界大戦当時の日本軍の所業と、最近のイスラム過激派の闘争とが並行して語られ、戦争反対のメッセージが強く現れている。占いに左右されたりするあたり、ちょっと行き当たりばったりな物語展開のようにも見えるが、それぞれの登場人物の行動原理がはっきりしているので、読んでいて違和感は感じなかった。魅力的な人物も多く、私としては、トレジャーハンターのマリてお嬢様が主役で別の本を書いて欲しい。
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77軽妙でありつつ硬派なストーリーでしたが、長編にもかかわらず途中での破綻もなく、一気に読みました。異教徒の親友と愛する人が共に幸せでありますよう祈りたくなりました。自作に大いに期待です。
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冒険小説と呼ぶにはあまりにも淡白ではあるが、フィリピンの過去と現在がドキュメンタリーのように描かれている。
過去とは太平洋戦争時代、敗残の日本兵が彷徨い死んでいった様が描かれ、現在ではISとの戦いや財閥の支配が描かれていた。
エンターテイメントではあるが、8月に読むには相応しい内容だったと思う。