恋大蛇 羽州ぼろ鳶組 幕間(祥伝社文庫 い27-13)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396347994

作品紹介・あらすじ

恋と火事は、江戸の華。
咲かせたくもあり、咲かせたくもなし。
流人となった男、酒呑み火消、次代を担う若頭。
三人の脇役たちが織りなす、心ゆさぶる物語。

救えなかった命――猛火に包まれた幼子の悲鳴が聞こえる。炎への恐怖に萎む心と躰を麻痺させるため、今日も〝蟒蛇〞野条弾馬は、酒を呷って火事場に臨む。京都常火消、淀藩火消組頭取に己を取り立ててくれた心優しき主君が逝った。「帝を、京を、そこに住まう人々を救え」今際の言葉を胸に刻んだ弾馬は……(「恋大蛇」)。
表題作の他二編を収録、シリーズ初の外伝的短編集。

感想・レビュー・書評

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  • <羽州ぼろ鳶組>シリーズ。「幕間」とあり裏表紙には「外伝的短編集」とある。

    出羽本庄藩の『天蜂』鮎川転、京都淀藩の『蟒蛇』野条弾馬、町火消め組の『銀蛍』銀治・け組の『白毫』燐丞・仁正寺藩の『凪海』柊与市の「三羽鳶」。
    このシリーズは進むに連れて登場人物が倍々ゲームのように増えていくので頭が追い付かない。自分なりに整理せねばと思いつつその前に新刊が出てしまうので読んでしまうという悪(?)循環。
    こうして脇役たちにスポットを当ててくれると個性が出て分かりやすい。これからもこういうのをお願いしたい。

    第一話「流転蜂」で鮎川転がなぜ八丈島に?と混乱。早速忘れている。詳細は「夢胡蝶」だっただろうか、読み返さなければ。
    現在の刑務所暮らしとは違って、この時代の遠島は自分で生活の糧を得なければならない。これと言った産物もない島で、これと言った技術もない者は野垂れ死にするしかない。だが代わりに島民たちとの距離は近い。
    身分を隠して暮らしていた鮎川転だが、島で火事が起きればやはり火消の血が騒ぐ。

    表題作は野条弾馬のプライベートな面。彼がなぜ『蟒蛇』になったのか、火消であることの誇りと葛藤と、様々な思いが見えてくる。
    源吾の妻・深雪が文だけだが存在感を出してくる。深雪といい紗代といい、火消を支える女たちも強い。
    それに出会えた主も恵まれている。
    表紙に描かれている猫にそんなエピソードがあったとは。

    第三話「三羽鳶」は、源吾ら『黄金の世代』の十歳ほど下の銀治、燐丞、与市の話。
    源吾や加賀鳶の勘九郎らのような派手さはないが、こういう人たちは好きだ。
    地道に夜回りをして町を見守るとともに配下の火消たち一人ひとりにも気を配る、火消であると同時に医者としても町の人たちを見守ったり火事での検死も請け負う…いろんな火消がいて良いと思う。
    藍助も頑張っているようで良かった。
    与市にこんなにたくさんの弟妹がいるというのも知らなかった。
    源吾や勘九郎らが不在の江戸で起きた連続火付け事件は現代でも時折耳にする事件と絡んでいたが、見事解決。
    そして読売の文五郎から『黄金の世代』に対抗する呼び名も付けられる。
    頑張れ『銀波』の世代。

  • 新時代は〜こ〜の未来だ♪
    世界中全部変えてしまえば変えてしま〜え〜ば〜♪

    本作『恋大蛇』によって遂に読了数で今村翔吾さんが原田マハさんを抜いて四皇の仲間入りを果たしたわけです
    新時代の到来ですよ!!

    何言ってるんでしょうね
    はい、わかりました
    閉じてます『このお口』なんちて

    さて『恋大蛇』です

    今作は幕間と冠した中編集
    三本の中編はそれぞれ
    ・元出羽藩火消し 江戸三大纏師 『天蜂』鮎川転
    ・淀藩 京都定火消し 『蟒蛇』 野条弾馬
    ・町火消し め組『銀蛍』 銀治、け組『白毫』 燐丞、仁正寺藩火消し 『凪海』 柊与市の三人

    と、元敵役に、本編主人公のライバルに、脇役のさらに脇役ともいえる地味めな三人
    しかしながら、それでもこんなに面白いお話かできちゃうんです
    そしてそれは敵役や地味めの脇役にさえしっかりした背骨があるからに他ならず
    あらためて今村翔吾さんの持つ人物の造形力というか生み出す力はもう恐ろしささえ感じます

    「マヤ、恐ろしい子」(急に誰?)

    そしてそれぞれのお話の中に本編に還元されそうな伏線も混じっていて
    これを読まなきゃシリーズの先には進めませんことよ!亜弓さん!
    (漫画ネタ多め)

    • ひまわりめろんさん
      チーニャさん
      こんにちは!

      好きにお呼びください!
      そしてこれからも好きにコメント入れてくださいね!

      みんみん
      え、あたし人気あるの?ま...
      チーニャさん
      こんにちは!

      好きにお呼びください!
      そしてこれからも好きにコメント入れてくださいね!

      みんみん
      え、あたし人気あるの?またまたー
      こんな適当なレビュー真面目に読んでるの土瓶さんくらいじゃないの?
      縁側日記も土瓶さんがブックオフで買うくらいじゃないの?
      2022/09/19
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      みんみんさん初めまして!!こんにちは!
      ありがとうございます。
      びっくりしました。笑いました。
      もう、縁側日記って。ハハハ!!面白すぎて、吹...
      みんみんさん初めまして!!こんにちは!
      ありがとうございます。
      びっくりしました。笑いました。
      もう、縁側日記って。ハハハ!!面白すぎて、吹き出して笑いましたよ〰️!!
      みんみんさんも、いつも楽しすぎますよねえ!!
      レビューのあと、誰か、きっとコメント、来るだろうなあ…、って。待っていて(笑)
      みんみんさんが

      来た〰️!!ガラスの仮面返し〰️'
      `,、('∀`) '`,、

      流石です!!ってなりました~✨


      これからもヨロシクお願いします~
      2022/09/19
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ひまめろさん、こんにちは~(^o^)

      ハハハやっぱり面白いですねえ〰️!!土瓶さんまで登場しちゃいました(笑)楽しすぎます〰️!!
      ありが...
      ひまめろさん、こんにちは~(^o^)

      ハハハやっぱり面白いですねえ〰️!!土瓶さんまで登場しちゃいました(笑)楽しすぎます〰️!!
      ありがとうございまーす
      '`,、('∀`) '`,、
      2022/09/19
  • いま時代小説で一番の輝きを放つ今村翔吾さんの熱さが伝わって来ます。
    恋大蛇(こいおろち) ー 羽州ぼろ鳶組シリーズの13作目《幕間》
    2022.03発行。字の大きさは…小(中ですが、字が薄いので小)。2022.05.18~19読了。★★★★☆
    流転蜂、恋大蛇、三羽鳶、の短編3話。
    新庄藩火消頭取・松永源吾たち火消しの活躍の物語です。

    「流転蜂」では、江戸三大纒師で火消番付、西の前頭九枚目「天蜂」鮎川転(うたた)が、罪を負って八丈島へ島流しにあい島で活躍する物語です。
    「恋大蛇」では、京(京都)の野条弾馬(だんま)が、淀藩主稲葉正弘に懇願されて、三条河原町随一の大旅籠「緒方屋」の店火消から禁裏御所方火消の淀藩火消頭取となり活躍する物語です。
    「三羽鳶」では、町火消め組の頭・銀蛍の銀治。同じく町火消け組の頭・白毫(びゃくごう)の燐丞(りんじょう)。仁正寺藩の火消頭取柊与一の三人が自殺志願者を火事の中で葬る狸屋の悪事を解決する物語です。
    三話の中で、「恋大蛇」が一番良かったです。野条弾馬の苦悩と、弾馬を一筋に愛し、支える緒方屋の一人娘「紗代(さよ)」がよかったです。

    【読後】
    久しぶりに今村翔吾さんの羽州ぼろ鳶組を読んで、今村さんの熱さが伝わってきます。佳境に入ると一気に熱く燃えて行きます。次作を楽しみにしています。

  • 『幕間』ってことは新しい章が始まる前の箸休め?
    いやいや、そんなことは全くない。今回も漢たちの火消しとしての矜持や勇ましさ、それを支える女たちの毅然とした眼差しに何度も胸がアツくなった。
    ぼろ鳶たち主要メンバーではないけれど、ファンなら誰しも知っているシリーズの脇役たちが活躍する短編三本。
    鮎川転、野条弾馬、そして銀治・燐丞・柊与市の三羽鳶。いずれもぼろ鳶とこれまで関わりがあり、その後が気になっていた面々ばかり。
    特にいつもは”黄金の世代”の下で日の目を見ることのなかった若き三羽鳶たちの絶妙なタッグが面白かった。憧れの”黄金”たちの背中を追いつつも自分なりのやり方で職務を全うする心意気は本当に天晴!
    こういう短編集もたまにはいいもの。また脇役たちにスポットを当てた話を取り上げてほしい。

    これでぼろ鳶シリーズ第二部の幕開きは準備万端。
    ぼろ鳶たちをはじめとする火消したちの更なる活躍に期待が高まるばかり也!

  • 「羽州ぼろ鳶組」の13冊目。3つの話からなる、シリーズ初の外伝的短編集。
    『幕間』ということで、昨年4月から読み始めたこのシリーズ、どうやらここでひと段落ですかね。

    第一話「流転蜂」
    留吉と名乗ってはいるが、表題を見れば誰のことかはすぐ分かる。吉原で彦弥と火花を散らした“天蜂”鮎川転の、流刑となった八丈島での暮らしぶり。
    火消を止めたくても止めきれず、平太を救いに行く姿がカッコいい。それを助ける角五郎も。
    終盤、田沼の意を受けた使者との面談はこの後にあるお話(あるよね!?)への布石に違いない(と思ったが、どうかな?)。

    第二話「恋大蛇」
    こちらも、京や大坂で源吾とともに火に立ち向かった“蟒蛇”野条弾馬と緒方屋の紗代ちゃんとの恋バナとすぐ分かる。
    きっとこうなるだろうと思うように進む、とても分かり易い展開。あの人の文が一役買うのも予定通り。収まるところに収まって良かったよ。
    最後に書かれていた「技比べ」というのも、どこかで読めるかな。

    第三話「三羽鳶」
    さて、これはどの3人かと思ったら、め組の銀治、け組の燐丞に仁正寺藩火消の柊与市と、次代を担う面々のお話。
    黄金の世代に比べると派手さはないが、しっかりとした個を持つ3人。源吾や勘九郎らが江戸を不在にしている中、それぞれの組を率いて空き家の火事場に残った不審な骸の謎を追う。
    与市ってこんなに強かったんだと思ったが、これまで目立たなかった逸材がまだまだいるということで、この後のお話も楽しみ。
    『三組の頭、柊与市、銀治、燐丞、共に黄金の世代よりも少し若き者たち也。此れ迄黄金の光陰にありて、目立つこと少なけれども、その心、その技、その躰、全く以て劣らず。
     まさしく銀波の世代といえり。江戸火消に隙間なく、ますます天晴也―。』
    銀波の世代たぁ、こりゃまた渋い。

    このシリーズ、登場人物一人ひとりのキャラクター(生い立ちや性格、人間関係、特徴特技など)がしっかりと作り込まれているので、どんな話になっても話に厚みが出る。
    ぼろ鳶が出てこなくても十分に楽しめた。

  • 羽州ぼろ鳶組 幕間

    今回は、幕間と言うことで、『黄金の世代』の登場は無かったが、彼らより少し下の火消し達が活躍する。

    《流転蜂》
    八丈島に送られた男・鮎川転は、名前も捨てて、留吉と名乗り、罪を償う為、米と僅かな日用品と、どうしても手放せなかった「羽織」だけを持ってきた。
    穏やかに日々を送っていたある日、島に山火事が発生した。

    《恋大蛇》
    京の火車事件、大阪の緋鼬事件で松永源吾とともに戦った、野条弾馬は、炎に立ち向かう時、過去の忌まわしい記憶が蘇って、躰が強張り、それを抑える為に、酒を煽って火事場に臨んでいた。
    そんな彼を一筋に愛し支える、紗代。

    《三羽鳶》
    め組の頭・銀治。け組の頭で、診療所を開く燐丞。荒事の得意な柊与一。の三人が、謎の焼死体の真相を暴く。

    以前、今村翔吾氏が、インタビューで
    「今、火事場を書かせたら、自分が一番うまいと思う」と言っていたが、本当に、そうだと思う。

    そして、人気登場人物の投票では、
    一位・・深雪
    二位・・新之助
    三位・・源吾
    今は、源吾が、三位だけど、最終回に、一位になれば良いと思っている。
    とも言っていた。

    新シリーズが始まり、どんな源吾が見られるか、楽しみである。

  •  3人の脇役たちが織りなす、心揺さぶる物語、羽州ぼろ鳶組シリーズの外伝的短編集。

     大好きなシリーズの脇役たちが活躍する物語は、個性豊かな人物たちのそれぞれの熱い思いが描かれ、ぼろ鳶組が登場しなくても十分楽しむことができました。

     江戸時代の火消しという視点と、多彩な火消したちの群像劇的な展開がこのシリーズの魅力の一つだと思いますが、この外伝的短編集によって、さらにその魅力が深まった気がします。

     一人一人に己の人生があることをこの作品から感じました。

     自分も自分の道をしっかりと歩んでいきたいと思います。

  • 外伝的短編集。第一部で活躍した男達を主人公としたもの。其々のその後が語られると共に、今後の展開に繋がる話のたねも伺える。
    これから、第二部に入って行く感じがして、ワクワクが高まる。

  • スピンオフ。
    三羽鳶が一番好きかな。
    誰のスピンオフかは、最初の話の興を削ぐので書けませんね。
    あの人もその人も、それぞれに人生があり、ドラマがあるなぁと。
    隅々の人までこれだけのストーリーがあるから、本編も厚みがあって楽しいのだと思う。

  • 羽州ぼろ鳶組シリーズのスピンオフ短編(中編)・三話が収録されています。

    本編第六弾『夢胡蝶』に登場した、鮎川転の流罪先での生き様を描いた第一話「流転蜂」。
    表題作の第二話「恋大蛇」では、京の“蟒蛇”でお馴染み、淀藩火消頭・野条弾馬の、藩主との交流そして弾馬に思いを寄せる紗代さんとのお話。
    そして、『襲大鳳(下)』のレビューで書かせて頂いた“与市エピソードが読みたい”という私の願いを今村さんが聞き届けてくれたかのような(笑)第三話「三羽鳶」。

    源吾達ぼろ鳶メンバーは出てこないですが、三話とも楽しめるのは勿論、本編の深みがより増すようなエピソードで、サブキャラだけなのにこれだけ読ませるのは当シリーズのキャラクターの層の厚さを実感します。
    犯した罪を償いつつ、“番付火消”としての矜持を胸に生き抜く“天蜂”・鮎川転の姿はカッコイイですし、弾馬さんに春が来たのもおめでたいですね。いつか紗代さんと深雪さんの邂逅が実現するといいな、と思います。
    そして前述の仁正寺藩火消頭・柊与市と、め組火消頭・銀治、け組火消頭・燐丞の“銀波の世代”。個人的にすごく好きですね~。
    “黄金世代”より少し若くて、その影に隠れがちですが、彼らの“クセの無さ”が良いんですよ。
    地道&堅実な銀波トリオの活躍をもっと読みたいですね。
    本書を読んで、本編セカンドシーズンの再始動がますます楽しみになってきました。
    何やら、“江戸火消VS他の地域の火消”の「技比べ」があるようで、その話早く読みたいですよね。
    「あー、めっちゃ楽しみやんけ(by弾馬)」

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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