黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零 (祥伝社文庫)

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  • 祥伝社
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  • / ISBN・EAN: 9784396345808

感想・レビュー・書評

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  • はいもう、序章で100点です

    「黄金の世代」と呼ばれた若かりし源吾と(ほぼ)同期の火消したちが一堂に会して炎と対峙するところからプロローグが始まるんですがしかも内記目線というのがまたにくい
    にくいなこの

    そして序章で100点なんだもん読み終わった時には当然270点になりますよそりゃ
    もうそんなんほぼほぼ計算通りですよむしろ驚きはないですよ

    「鉄鯢(けいは山椒魚のこと)」と呼ばれ火消しとしては並以下の能力で愚鈍とさえ評され、子の源吾をして火消し番付に載るのも恥ずかしいと言わせた父松永重内の火消しとしての他の追随を許さぬ圧倒的覚悟
    父の魂の教えを胸に黄金雛が大空へと翔び立つときとめどなき涙が頬を伝う!

    ニヤリとさせられる仕掛けが随所にあったりしてもういたれりつくせりの羽州ぼろ鳶組零巻!
    読んだ人は必ずや最後にこう言うでしょう
    「京都の高級旅館か!」(誰も言わない)

    • Manideさん
      たしかに…ナイスレビューです。

      序章で100点で、読み終わり270点はすごい。
      270点というのが、しっかり計算されてそうで、とても信憑性...
      たしかに…ナイスレビューです。

      序章で100点で、読み終わり270点はすごい。
      270点というのが、しっかり計算されてそうで、とても信憑性を感じますww
      2022/07/25
    • ひまわりめろんさん
      Manideさん
      こんばんは!

      そうなんです
      よくぞこの信憑性に気付いてくれました
      むしろ信憑性しかありません
      信憑性だけのつまらない人生...
      Manideさん
      こんばんは!

      そうなんです
      よくぞこの信憑性に気付いてくれました
      むしろ信憑性しかありません
      信憑性だけのつまらない人生です
      信憑性、信憑性って京都の高級旅館か!(絶対流行らない)
      2022/07/25
    • Manideさん
      ^_^ 面白い
      ^_^ 面白い
      2022/07/25
  • 黄金雛 ー 羽州ぼろ鳶組シリーズの10作目。《零:番外編》
    2019.11発行。字の大きさは…小。

    尾張藩火消し171人が焼け死んだ事件に、松永源吾たちが立ち向かう…。

    物語は、飯田町定火消・松永源吾が16才の時の話に遡る。
    源吾の世代は、「黄金の世代」と言われ優秀な火消しが出て来た年でもあった。
    そして、源吾の父・重内、大音勘九郎の父・謙八などの人達の話が出ていて、おやっさん達の話が聞けて嬉しいです。
    事件の発端は、尾張徳川家前藩主・宗春の業績を抹殺したい幕府老中や若年寄、尾張火消しを廃止したい尾張藩御付属列衆(江戸家老)・中尾采女、甚兵衛に遺恨を持つ火事場見廻・服部中、商売敵越後屋を蹴飛ばしたい毛織物商糸真屋・久右衛門、秩序を乱す火消しをこころよく思っていなかった大学頭・林鳳谷が策を用い尾張藩火消頭・伊神甚兵衛の配下171人を焼き殺したことから始まります。

    甚兵衛が死んで3年が過ぎたころ服部中の屋敷から火が出て屋敷に居た服部中以下20数名と救出に向かった火消し加賀鳶たちが死んだ、加賀鳶の譲羽十時は、重症を負い、その話から火事の原因に不信を懐く。
    加賀鳶大頭・大音謙八たちは、火事の原因究明に乗り出す。それとは別に、源吾と勘九郎たちも動き出す。
    そして、事件に関係した糸真屋・久右衛門も死に、久右衛門から真相を聞いた源吾たちは、次に狙われる林鳳谷を助けようとするが、幕閣は、林鳳谷をおとりにして下手人の捕縛に動く。

    尾張火消しの中で唯一生き残った者がいる…その者が、下手人か…。
    林鳳谷は、源吾たちはどう動くか…。

    【読後】
    今村翔吾さんが、「青き春」と言っている、源吾たちの若かりし頃の話を尾張藩火消頭・伊神甚兵衛の話をとおして語っている。
    また、源吾が、なみいる火消しを見まわして「あんたたちは俺たちがあこがれた火消しだろうが! いつから火消しを辞めてしまったんだ!!」と叫んだくだりは、胸が打たれる。

  • シリーズ第10弾は始まりの物語。
    源吾が火消デビューを果たした若かりし頃、「黄金の世代」と呼ばれた同期の仲間達と共に懸命に奔走した日々を追う。

    若さ故に心のままにがむしゃらに突き進む源吾達。
    大人達のやり方が理解できず反発したり、言い付けに背いたり、とまだまだ"青い"。
    あの「菩薩」の内記もぼやきながらも、心の奥を熱くするのだからよっぽどだ。

    「火消はどんな命でも救うのだ。それが悪人であろうとも。たとえ己が死ぬことになろうとも」
    「人の強さは、人の弱さを知ることだ。それを喰らって、人は強くなる」
    父の遺した言葉は源吾を火消として、人として強くする。
    これが源吾の、ぼろ鳶組の原点。
    今では大御所のように偉そうにしている面々の、恥ずかしい"青い"時代が読めて嬉しかった。
    そして迎えた終章。
    また第1弾から再読したくなった。

    要所要所で幼い頃のぼろ鳶組のメンバーがチラッと登場するのがこれまた嬉しい。
    「解説」にもあったし、私も薄々感じていたことだけれど、ぼろ鳶組って『ONE PIECE』の「麦わらの一味」に似てる。

  • 〈羽州ぼろ鳶組〉シリーズ第10作にして「零」の表記が。
    源吾がまだ駆け出しの火消し時代の、「若かりし日々」の物語。そのため所属もまだ飯田藩。

    源吾だけでなく、加賀藩の大音勘九郎、八重洲河岸の進藤内記、町火消の漣次に辰一に秋仁も若い。

    でもこの頃から辰一と秋仁は角突き合わせていたのには苦笑い。
    偉大な兄亡き後に八重洲河岸定火消を背負うことになった内記の重圧と責任の大きさには素直に大変だなと思う。それにしても内記のキャラクター、ちょっと違うような。『菩薩花』をもう一度読み返してみなくては。
    偉大な身内と言えば勘九郎もそうで、この頃から最大の火消軍団だった加賀藩を纏め上げる父・謙八の迫力には逆らえない。
    一方で源吾の父・松永重内は逆に迫力無し。せっかく火事場に一番乗りしたのに後から来た加賀鳶に消口を譲ってしまう体たらく。源吾は父が歯がゆくて仕方なく、ついつい父に反抗的に接してしまう。

    みんな青い。火消になりたての彼らは手柄を立てたくて気持ちと体が逸って仕方ない。
    大事なのは誰が消すかではなく、いかに速く消すか、そしていかに死人を出さないか。それが分かるのはもっと後になってから。そして組織を預かる立場になればさらに意識も変わる。

    この作品の事件、またまた辛い。
    冒頭は尾張藩火消百七十人が壊滅してしまうという痛ましい火事。それが何者かによる罠なのだから許せない。
    その三年後、火事場見廻の役宅で火事が起こるのだが、強烈な毒の煙に包まれた現場は救出に入った火消たちも次々倒れていく。
    あまりに無惨な有り様に、各火消頭たちは若手の火消たちに出動を禁じる。しかしそんなことで大人しくする源吾たちではなく、重鎮たちに隠れて事件を調べ次に狙われた家を張り込みまでして…。

    親の心、子知らず。この言葉が何度も湧いてくる。
    火消は憧れの職業、憧れの男。だから命を投げ出してでも火事場に飛び込み人を救い火を消す姿をみんな期待している。しかし若い命を散らすことが美化されるのもおかしい。
    だけど若い彼らは憧れの火消の姿を追いかける。冷静な内記ですら様々な葛藤を抱いている。

    この残酷な事件の犯人は彼らが憧れたあの人なのか。源吾の父・重内は火消失格なのか。そして次こそ火を消し人を救えるのか。

    終盤は重鎮たちと若手たちのタッグでいつもの熱い男たちが見られ、同時にハラハラもしながら読んだ。
    やっぱり源吾パパ、素敵な人だった。なのに…。

    この先源吾も様々な紆余曲折がある。挫折もあれば再出発もある。この作品を踏まえてシリーズを読み直すとまた違う感慨があるかも。
    終章、『火喰鳥』となった源吾が救った姫はもしかして?

    ちなみに『大学火事』を調べたら本当にあった火事らしい。実際の火事にこんな物語を作り上げるなんて面白い。

  • 「羽州ぼろ鳶組」の10冊目。短期入院中の読書、その1。
    今回は遡って源吾らこのシリーズで活躍する面々のまだ若かりし頃のお話。

    火事場見廻の屋敷で起こった火事が3年前に最強を誇った尾張藩火消が野火で全滅した事件につながるが、毒を含んだ煙に家の者はもとより助けに入った火消まで亡くなる事態に火消を預かる者たちは次代を担う若い火消たちを火事場から締め出すことを決める。
    源吾に勘九郎、内記、漣次、秋仁に辰一。血気に逸る彼らがそれに従うわけもなく勝手に動き出す。“黄金の世代”として競っていた彼らが互いに互いの懐に入り込んでいくところが微笑ましく、内記や辰一の意外なところも知れる。

    加えて、鯢サンショウウオのように鈍い、と火消としての評価が低い父に反発する源吾が、その父の真の姿に触れる物語にまた泣ける。
    最後に深雪さんとの場面まで出て来て、小さな頃の武蔵や彦弥、相撲取りの寅(荒神山)や行きずりの山路連貝軒や星十郎の父らもチラ見せで登場するなど、ここまでシリーズを読み続けてきたご褒美といった感じの巻。
    十分に堪能しました。

  • 十作目にして意表をつく「零巻」 

    表紙も2枚重ねである
    表表紙は破天荒な若者の後ろ姿、裏表紙は火消半纏を着た見るからに熟練の火消の後ろ姿
    さて、これが誰の後ろ姿かは、本文を読むと自ずと明らかになる 

    物語は、火消黄金の世代と言われた1756年、火消デビューしたばかりの若かりし源吾と仲間たちの不器用で危なっかしいけれど、一途で熱くて清々しい活躍
    我が我がと競いつつも、思うところはみな一つなのが嬉しい

    前途のある若火消を守ろうと、敢えて謹慎させていた親火消だったが、若火消の情熱に押され、ついに加賀藩火消頭大音謙八は、火消たちに向けて野獣の如く咆哮する

    「若火消が道を拓く!古火消は援けよ!」
    「古き者の知恵でもどうにもならぬ苦難に直面した時、打ち破るのはいつの世も若き力と思い出した」

    見事、世代交代をした瞬間ではなかろうか

    「源吾、火消はどんな命でも救うのだ。それが悪人であろうとも、たとえ己が死ぬことになろうとも。」
    「人の強さは、人の弱さを知ることだ。それを喰らって、人は強くなる」

    「一つの命も死なせない」という源吾の火消としての矜持は、父重内の最期の姿と言葉から植え付けられたものだったのだ

    源吾の憧れであった尾張藩火消頭取伊神甚兵衛が藩の罠に嵌り、配下の火消171名を死なせてしまう場面、父重内を残し、堀内大学を救いだす場面は、涙なくしては読めなかった

    巻が進むにつれて、ガシッと心を掴まれてしまった
    残り少なくなってさみしいなと思っていたが、8月に10巻が出て、10月には11巻が出版されるらしい
    まだまだ、ワクワクが続きそうで嬉しい!

  • ベテラン火消の子世代がちょうど火消デビューしたての血気盛んな青年時代。将来有望な彼らは“黄金世代”と呼ばれていた。
    源吾が“火喰鳥”の、勘九郎が“八咫烏”の雛…
    皆が若く、それゆえに周りが見えなくなりがちな時代。


    むむ、シリーズ最新刊まで読み終えていないうちに『零』を読んでしまった。
    でも、そこに並んでたら手に取らずにいられませんがな。

    本編シリーズも毎回熱くて面白いが、そこにさらに若さと青さが加わって、眩しいほど。そして、この危険な仕事を生き延びてきた親世代の思いも、また炭火のように深く熱い!

    父・松永重内を侮り、時に罵倒すらしたことを、この後源吾はどれだけ悔やんだろう。
    このシリーズの表紙は、ずっと男の背中のイラストが使われているが、重内の表紙はまた一段と口に出せない言葉を背負った背中だった。くぅ〜。

    まだ可愛い武蔵、木登り上手な彦弥、そして少女時代の深雪などがちらっと登場するのもファンにはたまりません。

    人は、日々の出来事、出会った人々、その時々の思いを全て撚り合わせて出来上がっていくのだな、と思う。
    素晴らしい出来事に出会っても、あるいは酷い出来事に遭っても、その中から何を選んで自分の血肉にしていくのかは、自分で選んでいくものなのかな、と。

    早く続きを読まねば!

  • 羽州ぼろ鳶組 <零 >(シリーズ第十弾)

    ここにきての“エピソード0”という事で、源吾達の若かりし頃の物語です。
    いやぁ源吾・16歳。青いですねぇ。血気盛んで、地味な父親に反発する一方、憧れの火消、“炎聖”こと尾張藩火消頭・伊神甚兵衛に対しては出待ちするファンのようです。
    そんな源吾の憧れの伊神さんが、卑劣な陰謀による、とんでもない悲劇に巻き込まれてしまいます。
    その後に起こる、毒煙を吐く火災の謎を、親たちに無断で同期の火消達と探り始める源吾。加賀鳶の勘九郎、町火消の漣次、秋仁、辰一ら“黄金世代”と呼ばれる10代の若者たちの未熟ではあるけれど、真っ直ぐな情熱あふれる姿は微笑ましいです。そうそう、あの“菩薩”・進藤内記も何気にメンバーに入っていました。10代の内記はまだ人間らしい部分もあったんだなと。秀逸だった兄上に対する想いとか。もしかしたら本当は“友”を必要としていたにも関わらず、八重洲河岸定火消の頭として、彼の部下達を守るために心を殺すようになったのかも、とつい妄想してしまいました。
    そんな若者たちを見守る、親&師世代の火消達もめっちゃカッコイイです。彼らの想いがちゃんと受け継がれていることは、今までの巻で皆さまご存じの通りです。
    そして、ギクシャクしていた、源吾と父上ですが、終盤で燃え盛る炎の中でやっと心を通わせる場面にはグッときました。
    父の跡を継いで頭になった源吾が、ラストで火事から助ける少女との運命的な出会い。このもっていき方が流石ですね。
    キャラが魅力的なこのシリーズですが、この巻で一層深みが増した気がします。

  • ぼろ鳶組の零話だけあって、源吾たちの世代の雛時代のお話。
    現在にも繋がっていく物語。
    序章ではまさかの人物語りでビックリ!
    そしてこれまでちらほらと話に上った源吾の父親がどんな人物だったのかも判明。
    不器用な姿に胸が締め付けられた。
    親世代から子世代へ、悲しみや苦しみと共に火消しの魂は受け継がれていくんだなぁ。

    源吾たちの親世代の活躍も良かったし、相変わらず真っ直ぐな源吾も良かった。
    それに、随所で登場するぼろ鳶メンバーの幼い姿にはほっこり。

  •  羽州ぼろ鳶組の始まりの物語、若かりし火消したちが活躍するシリーズ第零巻。

     10巻目にあたる本巻を零巻として主人公の若かりし日の物語が描かれており、主人公の成長を味わうことができました。

     当然、個性ある火消したちの若かりし頃も描かれており、人物のつながりも感じられ、新たな楽しみを味わうことができました。

     また、主人公と父との確執や理解など、親子もテーマになっており、読みごたえがありました。

     物語としてもクライマックスに向けて盛り上がっていく展開で今回も十分堪能することができました。
     
     第10巻が今から楽しみです。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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