落陽 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
3.66
  • (18)
  • (26)
  • (31)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 301
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396345150

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【ビブリオエッセー】若き明治天皇の決意 「落陽」朝井まかて(祥伝社文庫) - 産経ニュース
    https://www.sankei.com/west/news/200304/wst2003040004-n1.html

    渋沢栄一も登場する歴史小説「落陽」 書評家・大矢博子|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12313450

    祥伝社 s-book.net Library Service
    http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396345150
    http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396635022

  • 明治神宮造営の物語。
    あの神宮の森が、実は人工の森で、しかも大正に作られたとは、にわかには信じられないような、そんな事実のお話。
    造園にも、明治大正の新聞記者にも、思い入れがなかったので、読み通すのに少し苦戦した。

  • 明治から大正にかけて、歴史の勉強になりました。

  • 今まで読んだことがない種類の歴史小説だった。明治が終わり、大正の時代に生きる若者が明治という時代を考える作品。

     一番の感想は作者はこの時代に生きてきたのではないかと感じさせるほどのリアル感があったこと。銀座や新橋あたりは近代化の中心で華やかに、そして人々は洋装に身を包み、麦酒を飲み、政治を語る。一方で本作の中心にある明治神宮(神宮林)のある原宿、代々木は未だ荒野であるし、木場など下町が残るところは未だに和装の庶民が住んでいる。このコントラストが急進する近代日本を色濃く映し出し、作品自体に色合いを与えていると思う。

     そして、本題は明治神宮に祀る明治天皇とはどんな人物だったのか、ということ。瀬尾が言う通り、明治天皇は御一新以前の日本の伝統・心を引き継ぎながらも外面は西欧列強と比肩する近代国家としての立ち振る舞いをせざるを得ない、そんな苦悩の人生だったのだと思う。これまであまり語られず、考えたことのない明治天皇という存在への言及がとても新しく感じられた。

     明治神宮は150年をかけて完成させていく一大事業、挑戦であるという。この令和という時代に想いを馳せるにはぴったしの小説であると思う。東京に住みながら明治神宮に参詣したことがない私はまずは一歩踏み入れたいと思う。

  •  明治神宮創建に至るまでの、日本人の動向を描いた歴史群像劇。
     明治から大正へ、時代の移り変わりにあって、人々が、何を想い、尽力し、生きたのか。
     壮大な命題を、斬新な題材を通じ、庶民の生活を活写している。
     “かくなる上は、己が為すべきことを全うするだけです。明治を生きた人間として”
     百五十年の時を掛けて、祈りの杜を、人の手で造り上げる。
     その“長い挑みこそが、日本の独自(オリジン)だ”と、著者は主人公に語らせる。
     そこに込められた熱意と祈念、明治天皇への崇敬は、すなわち、「明治とは如何なる世であったか」という反映になる。
     そして、近代になって大きく変貌し、急成長を遂げた日本国家、その精神を象徴する、天皇の存在。
     近代日本の創成期において、支柱となるべく重圧を一身に背負い、死後に神として祀られた明治帝を、どのように捉えるか。
     主人公である新聞記者の男は、その問いに真摯に向き合い、取材し、書き続け、顧みる。
     “生まれとしては然るべき道かもしれない。しかし一個の生涯としてみれば、恐るべき道を歩んだことになる”と。
     所属の異なる人々の視点を重ね合わせることで、『勤皇』という心理を、現代の者にも自然と感じさせる筆力は、流石の一言。
     そうして、時代の転換期にあって、国民が如何に行動するか、ひとつの回答を示している。
     ――“明治という時代は大正になって、ようやく完成したのかもしれないね”――。
     終盤の感慨が、本書の総括と言えるのではないだろうか。

  • 明治神宮の森ができるまでの話。東京出身なので、明治神宮には何度か行っている。また、特集番組で人工的に作った森で、生態系が豊かな場所も知っていた。しかし関東ローム層を身近に見る機会はなく、実家周辺は舗装されていで地質は知らなかった。木の選定などは興味深かった。近年、異常気象が多く、梅雨の大雨、猛暑、スーパー台風などの災害が多発。東京にはタワーマンションではなく、神宮の森のような場所が必要なのかなと思った。

  • 明治天皇崩御に際し、渋沢栄一ら政財界人は神宮を帝都に創建すべしと主張するが、林学者の本郷高徳らは風土の適さぬ土地に森を造るのは不可能と反論し、大激論となる。
    大衆紙の記者瀬尾亮一は神宮造営を調べる同僚に助力するうち、取材にのめり込んでいく・・・。

    明治神宮造営という観点から明治時代がどのような時代だったかを紐解いていく物語。
    かなり堅苦しい主題ですが、さすがは朝井まかてさん。
    一般市民の記者という神宮造営の「外」の視点から専門的なことも噛み砕いてやわらかく語られていくので、読み手も興味をつないでどんどん読み進めていくことができます。

    しかもこの主人公の亮一という男、記者という立場を利用して、醜聞をネタに金持ちから金を巻き上げるチンピラみたいな奴なのです。
    帝大を中退し大手新聞社をトラブルで辞め三流紙に落ちぶれたという経歴のせいか、仕事のモチベも失い何だかやさぐれている。
    そんな亮一が、同僚の活発な女性記者に触発され、神宮造営を取材していくうちに記者魂が目覚めていく。
    次第に激動期の日本を支えた明治天皇の生涯に思いを馳せ、独自取材を進めていくようになります。
    このへんの描写が非常に巧みで、亮一の心情変化には違和感なく自然に納得できました。

    天皇を精神的支柱として敬い親しんできた民衆の思い。
    そして、近代国家へと変貌する時代の流れに添い、前例のない天皇としての役割を課され、苦悩しながら模索していく明治天皇の姿。
    天皇とは何か、日本人にとって天皇の存在はどういうものなのかという、現代においても問いかけられる命題に真正面から取り組み、その正体をあらわにしていく作者の手腕には鳥肌が立ち、言葉にならないほどの感銘を受けました。

    明治神宮という美しい森が歴代の人々の努力と熱意によって作り上げられた事と同じように、今の日本人の根幹も同じ経緯でを築かれたのだと、気づかされました。

  • 明治神宮のこと、何にも知らなかった。
    森の成り立ちに深く思いをはせる。

  • 明治神宮創建という渋いテーマの歴史小説。しかも明治神宮の森の造林がテーマである。このテーマについて、歴史学などで研究が進んでいるのだけど、そのへんの成果もそれなりに参照されているようである。

    主要登場人物のキャラも立っており、読み進めるに不足なし。とはいえ、この小説の大テーマである「当時の日本人にとって、明治天皇とは何だったのか」という問いに、結局のところすっきりと応えているかは多少ひっかかった。

  • 平成最後の日に、なーんて。

    明治神宮にどんな森を作りますか、杉だけじゃあ育ちません、目指すは藪です!という話(笑)
    かなり大雑把にまとめました。

    ただ、明治神宮を作る前提として、明治天皇とは何だったのか、という流れがある。ちょっと赤坂真理っぽい。
    崩御の前に、大勢の人が連日ひれ伏し拝んだというのを、この作品ではない所でも読んだ記憶がある。
    その一種、異様な感じを、この作品では「なんで、そこまで?」と主人公の目には奇異さとして映し、クライマックスで明治天皇の「人」としての部分を取り出しにかかるのだった。

    ただ、良かったのか悪かったのか、主人公の三流新聞記者っぷりは割と品がないので、扱うテーマに対して、どうしても矮小な感じがする。
    もちろん記者という立場をなくせば、また崩れてしまうものもあるのだけど。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝井まかての作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
川越 宗一
恩田 陸
森 絵都
凪良 ゆう
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×