空色の小鳥 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 183
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396344252

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭を読んでもどう展開していくのかが読めない、そして進んでいくにつれページを捲る手が止まらない物語だった。

    主人公の敏也が何かを企んでいる不穏な雰囲気は序盤で感じられるが、解説にもある通り、人柄に悪い印象を受けず、ただ世の中を斜に見ているクールな若者という感じがして、より展開が読みにくかった(勿論、褒め言葉)。

    内容については「血」の繋がりとは何かを考えさせられるものだった。義父の雄太郎氏は決して悪者ではなく、自らの血を残すというのは生物の本能であり、血への拘りを非難することはできないと思う(性悪な伯母や従兄弟は擁護しないが)。物語としては、公では血を重視し認めないながらもお爺ちゃんとして敏也と結希を見守るという締め方は非常に読後感が良い。

    「空色の」とタイトルにある通り、空の喩えが多かったのが印象的。初めての作家さんだったが、文章表現が上手だなと思った。

  • たまたま図書館で手にとって読んだ作品。同じ作家さんで、「プリティが多すぎる」を読んで面白かったので。
    こちらは読みごたえもあり、面白く読めました。。文の所々に主人公のブラックな部分があり、よくあるストーリーにエッセンスを添えている。
    ラストは、結希が血縁だったら、全く違うものになったのかもしれないし、同じものになったのかもしれないなと思う。
    人生とはままならいものであり、それが救いになることもある。

  • ありきたりな親子ものかと思ったけど意味ありげな伏線がちらほら。これは何かあるなと思った矢先に人生の計算が狂った人の様々なパターンをまざまざと見せつける。結希ちゃんの純粋で一途な姿は色んな人を救ったね。自分の心と自問自答しながら成長していく主人公と愛すべき隣人たちが物語を盛り上げる。氷のような頑固さを溶かす愛の力に脱帽。恋愛も友情も親子の愛も。様々な優しさに溢れた作品だった。

  • 大金持ち相続争いにおける身内の醜さや、人間関係が不得手な主人公に代わって場を和ませるニューハーフ、厳しい父へ反発してきたけれど人間らしさを垣間見た時の気持ちの変化など、要素の一つ一つは小説の中では珍しくないものだけど、感情の動きやストーリー構成の巧みさによって素晴らしい作品に仕上がっている。
    大崎さんの作品の中で本や書店をテーマにしたものは言うまでもなく面白いが、本書を初めお仕事小説や少し不思議な物語など幅広く書ける作家さんですね。

  • 寝るのも忘れ、没頭して小説を読むという経験を久々にしました。読み終わって本を閉じたとき、このたった数百ページの中に過去から未来までいろんな人たちの人生が詰まっていたなあとしみじみ感動していました。

  • 途中からストーリーの展開が分かってしまって少し残念、、、全体的に心温まるお話で読後感は爽やかでいいです。
    いつも思うけど、血にこだわり過ぎです。

  • 一代で財を成した資産家の実子・雄一は父を嫌い家を出たが事故により早逝してしまう。雄一の忘れ形見を極秘裏に育て上げ、妾の子として蔑まれた主人公・敏也の復讐劇。境遇ゆえの敏也の屈折ぶりと対照的な支援者の優しさが胸に染みました。

  • これまた、非常にジャンル分けが難しい作品(^ ^;
    殺人事件が起きたりする訳じゃないが、
    主人公が「何を考えているか」が明かされないので、
    読み始めから70%くらいはそこがミステリと言える。

    「資産家の跡目争い」というドロドロとした
    人間関係は常について回るので、
    いろいろ「政治的な駆け引き」も比重が大きい。

    さらに同居する「不思議な四人組」については
    ホームドラマ的な色合いも強いし、
    終盤のふとしたやりとりで垣間見える
    思いがけない家族の絆みたいな、
    ヒューマンドラマっぽい側面もある。

    最後の最後は、(何となく想像はついたが)
    「意外な」展開となり、それでもなお、
    と言う部分が隠れテーマでもあり、救いでもあるか。
    結希ちゃんにとっては、一番のハッピーエンドかも。

    はてさて、西尾木家の将来やいかに(^ ^;

  • 幸せの形は家の数だけある。そんな言葉が胸に浮かんだ。

    義理でも実でも親しくない兄弟の子供を引き取れるかな…。
    独身の会社員が子どもを育てるって、経済的にも肉体的にも大変なのは間違いない。
    復讐のためという理由があったのと、友人や彼女の理解があったから根気強く、我慢強く育児をやり始めたけど、そうでなければ結希へ態度や生活環境に、こんなに配慮することはなかったんじゃないかと思う。
    下手したら自分の人生が搾取されたと感じたかもしれない。真実を知る古参の使用人が、あなたは立派なことをしたと、主人公をやたらと褒めるのは、自分は結局何もしなかった負い目からなのかもしれない。

    時折起こるトラブルにくすっとなるのは、やっぱり子どもはかわいいからかな。
    育児を通して彼自身の家族に対する考えがだんだん変わっていくのを読んでいて感じた。

    最終的に義理(の兄)の義理(の娘)と家族の関係という、一般と呼ばれる家族の形ではないけど、彼らは幸せになるためにこの道を選択した。
    一般と違うことで煩わしいと思うことはあるかもしれないけど、彼らが血の繋がりに拘ることはこれからも無いと思う。

  • 血の繋がりってそんなに大事なものなのかを結希を通してみていく。
    今まで血の繋がりについて考えたことは無かったけれど、実際自分がその問題に直面した時にどんな対応をするのか考えさせられる。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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