炎の塔 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 574
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (531ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396344054

感想・レビュー・書評

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  • フォローしている方の「波濤の城」のレビューを見て興味を惹かれ、シリーズものと知れたので、最初の巻から買ってみた。
    本の概要を見れば、映画「タワーリング・インフェルノ」を思い出す。私は封切の日(1975年6月28日)に中洲の松竹ピカデリー1で観た。
    もう50年近くも前だが今でも鮮明に思い出す。生き物のような炎の動き、ところかまわず起こる爆発、様々な人間模様、全てを洗い流す水の迫力…。

    ページを開けば、『全世界の消防士にこの物語を捧げる』という映画の冒頭のメッセージがここにも。(本の献辞としては、ちょっと違和感)
    映画をなぞったような前半はかなりかったるく(そこに伏線は撒かれていたのだが)、作者の後書きに『「タワーリング・インフェルノ」にインスパイアされて執筆した』とあったが、まあ、「タワーリング・インフェルノ」そのままだ。
    大火災の発端も、その遠因も、最上階に色々な背景を持った様々な人が集まっているのも、政治家やビルのオーナーがクズばかりなのも、市井の人のほうが自己犠牲の精神にあふれているのも、全部そのまま。
    というわけで、ちょっと読めば、炎がねめまわしたり爆風で扉が吹っ飛ぶ状況も人が炎に包まれたりエレベーターから落っこちるあり様も、全て脳内に絵が再現されて、どこまでがこの作者さんの筆力なのか、よく分からず。

    最後も上階の貯水タンクを爆破して消火する…というわけではなく、映画から外れて、終盤になってからはようやく面白く読めた。
    前半に撒かれた小ネタが活きてきて、○○を使って□□を△△して鎮火するために、そこまで弱っちかった主人公・神谷夏美が勇気を奮うところが見所。
    民間人に死を賭して同行させるのはどうかと思うが、ともあれ、一難去ってまた一難、それぞれの特性を活かして窮地をくぐり抜けるところはなかなか良かった。(秋絵に中野の言葉を伝えられたかが気になる)

    次の「波濤の城」は「ポセイドン・アドベンチャー」らしく、またそのままというのは勘弁ね。

  • 女性消防士・神谷夏美シリーズの第一弾

    壮絶なドラマでしたね。
    感動しました。面白かったです。
    前半戦は、ビル所有者・管理者側の危機管理の無さを呆れながら読んでいました。そしたらなんと消防へ出向している官僚から政府役人までも危機管理の無いこと。愕然としますね。
    でも、現場の消防士の決断、判断、指揮は、なんと素晴らしかったか。カッコいいです。
    ビルの最高責任者、役人は最後の最後まで・・・哀れです。
    五十嵐貴久さんは、ここまで無能を表現するテクニックさすがです。

    後半戦は消防士の活躍する姿に涙して感動しながら読みました。
    消防士の命をかけて闘っている姿に感動し、尊敬します。
    前半部分の危機管理の無い、どうしようもない者たちの言動のことは後半部分の感動シーンで忘れてしまいましたね。

    この物語からは、仲間との絆。仲間を信じること。物事は深く考えなければいけないこと。常に普段から危機管理の意識を強く持っておくことの大切さなど、多くを学べました。

  • 五十嵐貴久『炎の塔』祥伝社文庫。

    あの傑作映画『タワーリング・インフェルノ』にインスパイアされて執筆された作品のようだ。つまりは超高層ビル火災パニック巨編といった作品で、500ページのボリュームを感じさせない一気読み作品であった。

    銀座にオープンした高さ450メートルの超高層ビルで漏電による小火が発生。ビルのオーナーは防火設備への過信から初期対応を怠り、火災はビルのあらゆる階へと拡大していく。そして、100階建の超高層ビル内には5万人の客が…この大火災に立ち向かうのは銀座第一消防署の落ちこぼれ神谷夏美をはじめとする消防士たちだった…

    物語の冒頭に描かれる誤発注による50トンもの塩酸と大恐竜展。これは何かの伏線だなと感じたが、読んでのお楽しみ。

    また、『タワーリング・インフェルノ』だけではなく、『ポセイドン・アドベンチャー』や『バックドラフト』なんかの影響も感じ取れる。

    • take9296さん
      こんばんは。単行本刊行時に気になっていた一冊です。文庫化されたんですね。「タワーリング・インフェルノ」に「バックドラフト」。これは期待できそ...
      こんばんは。単行本刊行時に気になっていた一冊です。文庫化されたんですね。「タワーリング・インフェルノ」に「バックドラフト」。これは期待できそう。
      2018/04/16
  • 超高層タワーでの大規模火災。
    消防士の女性が主軸となって展開していく救出作戦。
    火災の様子は恐ろしく、死が近すぎて心臓の悪いほどスリリングだった。

    その日タワーで過ごす人々にもきちんとストーリーがあり、物語の中で全てが重なり合っていく様はすごい。
    善い人も悪い人もいた。でも容赦なく死んでいく。
    この人は死なないで欲しかった!っていう人が何人もいて、その度に涙が出た。

    人死が多いため読後爽やかという訳にはいかないけれど、とても面白かった。

  • こちらが後になってしまう、迫力ある物語でした。炎は予測できないし追いかけてくる。塩酸があそこで生きてくるとは、あれを持ってきた奴隷じゃないと叫んだ奴に酒臭い息のジジイに反論出来ず言いなりのお姉ちゃん、探し出すとキリがない、真っ先に逃げた社長の光二には生きて罪を背負ってと非常に激しく思う。天罰なんかないから。絶対安全だと前置きする話が福島原発と重なって、事態が収まっても東京電力は生き残っているし裁判でも誰も責任を負わないし自民党も賠償金さえ出し惜しみ、自分達のボーナス貰うのに。日本人だからかな、同じ事ばかり

  • 五十嵐貴久版タワーリングインフェルノ!
    エンターテイメント作品として、とても面白かった!
    雰囲気としてはタワーリングインフェルノ+ポセイドンアドベンチャー+バックドラフトといった感じ(笑)
    それだけで、おおよそ想像つくと思います(笑)

    ストーリとしては、
    銀座にオープンした高さ450Mの超高層タワー。数万人が集まったオープン初日で漏電火災発生。
    火災など起きるはずがないと過信するタワーの社長。
    対応が遅れることで、被害は拡大。
    それに対応する銀座第一消防署の消防士たち。
    消防士たちは消火できるのか?
    タワーに残された人々を救うことができるのか?
    極限状態の中、様々な人間模様、ヒューマンドラマが涙を誘います。
    鉄板のパニックエンターテイメント小説!

    なんといっても、タワー社長のくずっぷりが目に留まります。過信とエゴの塊!
    当然、どうなるのかって想像はつきます。(笑)

    そして、消防士たちの熱い思い!
    読んでて熱くなります。手に汗握ります
    タワーに残された人たちの人間ドラマ。
    もっと掘り下げてほしいところもありますが、涙します。
    そして、最後どうなる?
    っといった展開!
    もう、後半はあっという間です。

    また、伏線が面白い
    恐竜展
    ビキニ女性の水槽ダンス
    そして、なぜか、プールに塩酸納品?
    これらの伏線がどう回収されるかは本書をご覧ください。

    ということで、とても楽しめました!
    おすすめ

  • 映画『タワーリングインフェルノ』へのオマージュ作品とか。
    まさに、映画に勝るとも劣らない迫力満点のパニック小説となっている。
    『交渉人』シリーズ等で如何なく発揮された、著者の類稀な筆力の賜物作品といえる。
    前半は、様々な登場人物を紹介するために、描写が細切れになり(しかしこれらの登場人物や一見関係ないかとの出来事が最後ジグゾーパズルのように見事納まる)、物語世界に入りきれないもどかしさを感じるが、後半は一気読みの世界。
    火災が発生し、同僚の死後、一人残された消防士神谷夏美が、恋人たちと必死の行動をするに至るは、映画もかくやの獅子奮迅。
    絵空事と評価する読者もいるだろうが、エンタメとして楽しめればよいのではないだろうか。
    神谷夏美が活躍する第2弾も出版済み、さらに第3弾も執筆中とか。これは読まずにいられない!

  • リカを読んで面白かったので、手当たり次第に作者の作品を買い漁った中の一冊!
    洋画「タワーリングインフェルノ」のオマージュ作品!
    主人公が女性というのも個人的に良かった。
    ☆5個では足りない位、好きな作品です。
    もちろんタワーリングインフェルノは何度も見たぐらい好きです。

  • 作者本人も書いているが、日本版「タワーリング・インフェルノ」。私もこの映画は大好きな作品だが、本作は超人的にカッコいいスティーブ・マックイーンの代わりに女性消防士が主人公になっている点と、ポール・ニューマンのようなイカす設計士がいない点が違うが、あとはムカつくオーナー、老夫婦など様々な人たちの群像劇となっている。

    途中で屋上の貯水タンクを爆破してはという案に対して「映画の見過ぎ」と突っ込むところはご愛嬌だが、どうやってこの超高層ビルを鎮火するのかは、作者が最も頭を捻った部分だろう。

    本作もそうだし、映画「タワーリング〜」もそうだが、自らの命を張って消火と人命救助にあたる消防士は、世界各国共通で尊敬されている。

  • 銀座に超高層ビルがオープンした。
    数万人が集まる初日、作品タイトルから予想される内容通りに話が展開していく。
    伏線がいくつか張られており、それらが後半にうまく回収されるし、沢山の人々の混乱と対応する人々の奮闘が次々と描かれて、最後まで続きが気になり勢いで読み切った。
    ただ主人公の、女性消防士神谷に今ひとつ感情移入しきれなかったのが残念。

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著者プロフィール

1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。『リカ』で第2回ホラーサスペンス大賞を受賞し、翌02年デビュー。以来、警察小説・青春小説・サスペンス・時代小説等、ジャンルにとらわれずに活躍中。

「2023年 『交渉人・遠野麻衣子 爆弾魔』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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