言霊: なぜ日本に、本当の自由がないのか (ノン・ポシェット い 6-1)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396310691

感想・レビュー・書評

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  • わかり易く、論理的な文章。日本人の駄目な所、嫌な所についてこれだけ理路整然と書かれると納得するしかない。

    「将来起こって欲しくないことから目を背ける、ないことにする」日本人の習性は今まさに起こっていることだろう。
    戦前から日本人は何も変わってない。

  • 日本人が信仰してきた「言霊」という言葉には、ある言葉を唱えることによってその内容が実現するという考えがあります。著者は、「言霊」が私たち日本人の行動に影響を与えたのは過去のことではなく、現在でもなおその影響力は大きいと主張しています。

    言霊の影響の中でもとりわけ問題なのは、不愉快な予測を受け付けようとしない態度を助長することだと著者は考えます。たとえば、このままでは危機に陥ることが予想される場合に、私たちはそのことを口にするのは不謹慎だと考えてしまい、その結果として、来たるべき危機を回避するための方策が採られることのないまま、深刻な危機を迎えてしまうということが、これまでの日本社会において何度も繰り返されてきました。著者はここに、今も残る言霊の影響力を認めるとともに、そのことを深く認識することが重要だと論じています。

    日本人の危機管理能力の低さが、希望的観測にしがみついて客観的に状況を分析するリアリズムが欠けていることに由来するという考えは、著者のみならず多くの論者によって語られています。そうした発想の根を、古代以来の言霊信仰に求めたところに、本書の特徴があるように思います。

  • 言霊に支配されている日本を、論理的に説明している良本。

  • 言霊信仰にとらわれている日本人。
    とてもわかりやすく説明されている。

    憲法問題。
    この本が発行されてから20年あまり、いまだ改憲がされていないという状況。
    いまもなお日本が言霊信仰にとらわれているということを示しているように思う。

  • 『言霊』とは文字通り、言葉をコミュニケーションツールとしての単なる記号と捉えずに、その中に霊性をみとめる考え方のことです。
     例えば受験生に対して「落ちる」とか「すべる」という言葉を発してはいけない、という習慣も、知らず知らずのうちに「言霊」を意識しているからです。
     どちらかというと悪い使い方をされることのほうが多いです。日本の怪談などで「末代まで呪ってやる〜」と言って死んだ人間が怖いのは、言霊のせいです。(因果応報の仏教思想も関係しているかもしれませんが…)死んだ人間に何が出来るんだ、という合理的な考え方の人には、何も怖くありません。
     この言霊思想がいかに言論の世界で大きな障壁を生んでいるかをわかりやすく解説した好著です。歴史を見る目が変わります。

  • 仕事の上司よりお借りしました。自分では絶対に手に取らない本だったもので・・(笑)
    内容は、自分が持っていない視点を植えつけられました。とても刺激的で新鮮でした。
    歴史について、私自身は全く詳しくないのでそれが正しいのか間違っているのかは判断できませんが、「納得してしまった」というのが全てです。
    そして、私自身、「言霊信仰」の信者であることに気付かされました。
    ものの考え方全てが、非科学的な「言霊信仰」に基づいているなぁ・・と改めて気付いた次第です。

    面白かったです!!!

  • 日本人は未だに言霊に支配されている、という趣旨の日本人論は今までも結構見聞きしたことがあったので、それ自体は目新しくもなかったんですけどね。

    でも、こういう風にきちんと日本史を研究している人が一冊の本に纏めたものを読むと、やはり芯が通っている印象を受けますね。今まで断片的にのみ耳にしていた日本人論が根っこから理解できる感じです。

    この言霊論に非常に共感できるものがあるのは、僕自身も小説書きという趣味では言葉を用い、仕事でも営業のための言葉を用いていたという経験もあるからだと思います。

    また、つくづく内実を重んじない日本人の形式主義は問題だなァとぼんやり考えていた所だったので、これも僕の中では言霊論と上手く結びつきましたね。と同時に、辻褄合わせや改竄を平気で行う日本人の心性の根深さに改めて感嘆しました。

    だけど今回読んだ本は、単に日本人という範囲の中に留まらない部分もあるかと思います。言っちゃいけないことを言ったばかりに非難されるということは外国でも有り得るでしょうし、また差別の問題ともなれば尚更です。『言霊』で述べられている差別論は、現代哲学が問題にしてきた暴力と排除の考察にも通じるものがあります。

  • 目に見えない縛りや考え方に気づかされる名著。
    憲法議論や自衛隊、貴族と百姓など。
    言葉のもつ役割はコミュニケーションだけではなかったと気づかされる名著です。

  • 「良くない事を口にすることは、演技でもないないことだ」
    一度は耳にした事がある言葉ではないだろうか。一見筋が通っているかのように見える。そのように思ってしまうこと自体がコトダマという日本独特の信仰にとりつかれている証拠なのだろう。
    憲法という言葉を使うものこそ。コトダマが宿っている。その危険性。
    リアリティがないことに苦しむ自分は、コトダマイズムと現実の矛盾に対面しているからかもしれない。
    やっぱり納得の一冊。やっぱり井沢さんの本は読みやすくわかりやすい。またよんじゃうだろうな。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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