日本史を変えた八人の将軍 (祥伝社新書 595)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396115951

作品紹介・あらすじ

将軍がわかれば、日本史がわかる
日本史のなかで、700年にわたり政権の座にあった武家。その中心である将軍が日本史におよぼした影響について、将軍8人と将軍にならなかった2人から読み解いていく。鎮東将軍、征西将軍などさまざまな将軍があるなかで、なぜ征夷大将軍だけが武家の棟梁とされ、幕府を開くことができたのか。将軍権力(軍事と政治)はどのように変化していったのか。そして、彼らは日本史をどう変えたのか。中世政治史を専門とする東大史料編纂所教授と、『家康、江戸を建てる』などで知られる直木賞作家が、知識と想像力の限りを尽くして、命題に迫る!

序 将軍とは何か
第一章 坂上田村麻呂――すべてはここから始まった
第二章 源頼朝――頼朝が望んだのは征夷大将軍ではない!?
第三章 足利尊氏――うかがい知れない英雄の心中
第四章 足利義満――最大の権力者が求めたもの
第五章 織田信長と豊臣秀吉――将軍権威を必要としなかった覇者
第六章 徳川家康――今も影響を与え続けている家康の選択
第七章 徳川吉宗――幕府中興の祖がなしえなかったこと
第八章 徳川慶喜――英明か、凡庸か。勝利者か、敗残者か
第九章 西郷隆盛――近代最初の将軍であり、封建制最後の将軍
結 将軍が日本史に果たした役割

本郷和人
東京大学史料編纂所教授、博士(文学)。1960年東京都生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、現職。専門は中世政治史。著書に『乱と変の日本史』など。

門井慶喜
小説家。1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞、2016年『マジカル・ヒストリー・ツアー』で第69回日本推理協会賞(評論その他の部門)、2018年『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。著書に『家康、江戸を建てる』など。

感想・レビュー・書評

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  • 「将軍」という観点で8人についての対談。
    歴史家と作家という、事実を扱う人と想像する人が同じ人物をどうとらえるのかの視点の違いが面白い。
    資料に従って事実を洗い出す歴史家の説明に対し、その人物像を想像しストーリーを紡ぎ出す作家の説明の対比の中で、それぞれの「将軍」の実像に迫ろうという試みは読んでいて楽しい。
    知っていること、知らないことを合わせて人物と将軍という「役割」を説明してくれるので、今までとは違った「将軍」像が見えてくる。
    個人的には西郷隆盛(将軍ではないものの、本書ではとりあげられている)を武士としての最期の将軍というか、明治としての最初の将軍ととらえた視点はさすがというしかなかった。「守る人」「攻める人」としての対比もお見事。

  • 最後に取り上げた将軍が西郷隆盛というのは面白い。近代最初の将軍でありながら封建制最後の将軍である端境期のラストサムライだ。本郷先生と小説家のコラボで新たな視点が引き出され目から鱗が落ちまくりの対談だった。

  • 小説家と歴史家による対談形式の将軍についての本。
    第一章 坂上田村麻呂――すべてはここから始まった
    東北を「攻め」た将軍。捕虜を都まで連れて帰った意図の考察が面白い。

    第二章 源頼朝――頼朝が望んだのは征夷大将軍ではない!?
    演説という形をとった北条政子に焦点を当てたのは興味深い。征夷大将軍というのも縁起もので選ばれたものというは初めて知った。恩には必ず恩で報いるという源頼朝の性格も納得がいった。

    第三章 足利尊氏――うかがい知れない英雄の心中
    兄と弟の役割分担。室町幕府は鎌倉幕府の続き物という考えは面白い。

    第四章 足利義満――最大の権力者が求めたもの
    最も最高の権力者に近づいた男。3代目での豪腕は凄い。

    第五章 織田信長と豊臣秀吉――将軍権威を必要としなかった覇者
    あまりにも有名な2人。2人とも将軍になっていたらここまで人気になっていなかった気もする。

    第六章 徳川家康――今も影響を与え続けている家康の選択
    東京至上主義の祖。博多だったら確かにどうなっていたか。

    第七章 徳川吉宗――幕府中興の祖がなしえなかったこと
    米の限界。

    第八章 徳川慶喜――英明か、凡庸か。勝利者か、敗残者か
    薄情な人ではあるが高所から判断できる人であったとは思う。

    第九章 西郷隆盛――近代最初の将軍であり、封建制最後の将軍
    まさかの将軍。熊本城を「攻め」て破滅し、終わりを迎えたところに歴史の宿命を感じる。

  • 将軍がわかれば、日本史がわかる、というキャッチが目を引いた一冊。
    中世政治史を専門とする、歴史学者として著名な本郷氏と私も読んだ『家康、江戸を建てる』などで知られる門井氏による対談方式で進められていく、単なる歴史を事実だけで捉えるのではなく、日本史を長期的視点で振り返る、興味深い内容。
    坂上田村麻呂から始まる征夷大将軍の歴史から始まり、鎌倉・室町幕府の成立、将軍にならずに権力を把握した信長・秀吉を経て、江戸幕府から近代最初の将軍となった西郷隆盛の人物を紹介しています。
    将軍の権力を軍事と政治のバランスによってとらえ、その変遷から歴史を見る視点には非常に興味深い。
    あらためて思うのは、同じ将軍という言葉であるのに、時代によって求められているものが異なるだけでなく、過去の歴史が、次の時代に影響を与えていく様を、両者がお互いの視点で述べています。
    歴史を流れとして捉えるには、このような内容の書籍が本当にいい刺激になります。



    <目次>
    序 将軍とは何か
    第一章 坂上田村麻呂――すべてはここから始まった
    第二章 源頼朝――頼朝が望んだのは征夷大将軍ではない!?
    第三章 足利尊氏――うかがい知れない英雄の心中
    第四章 足利義満――最大の権力者が求めたもの
    第五章 織田信長と豊臣秀吉――将軍権威を必要としなかった覇者
    第六章 徳川家康――今も影響を与え続けている家康の選択
    第七章 徳川吉宗――幕府中興の祖がなしえなかったこと
    第八章 徳川慶喜――英明か、凡庸か。勝利者か、敗残者か
    第九章 西郷隆盛――近代最初の将軍であり、封建制最後の将軍
    結 将軍が日本史に果たした役割

  • 本郷先生のいつもの本なのだが、小説家の先生が入ることで、新しい視点も加わり、良い塩梅になっています。このテーマで最後が西郷隆盛というのは、新鮮。

  • 将軍という言葉を聞くと、無意識に偉そう、強そう、軍事のプロといったものを想像する。現に日本史の中でも多くの将軍が生まれ何かしらの形で歴史に影響を与えてきた。とは言え様々な時代に将軍が輩出されたが、なれる人間は世代の中の極々一部なのだから、ある程度世襲的に継いだものもいるだろうが、際立って優秀な方がそれを名乗ることができたのだろう。
    本書は坂上田村麻呂に始まり、西郷隆盛まで日本を変える影響を与えた8人の将軍について、私の大好きな歴史家本郷和人氏と直木賞作家の門井慶喜氏の対談本だ。
    将軍といえば誰もがまず初めに思い浮かべるのは征夷大将軍の坂上田村麻呂であろう。日本史専攻でない私でも中学の歴史できっちり覚えた名前だ。征夷大将軍の「征夷」とは読んで字の如く、夷を征伐する役割を担う。明確に目的が役職名になっている時代は、討伐することが目的であるために、軍事力が第一に必要とされた。当時の軍隊が現代のように情報で統制され組織だった動きを取るのが難しいことを考えれば、坂上田村麻呂もかなりの個人的な戦闘能力を持ち合わせていたに違いない。現にアテルイを捕縛して連れ帰ろうとするのだから、蛮族(当時の日本の東北の果ての意で)を生け取りにするなど、実現可能な圧倒的な武力を持っていたと考えるのが普通だ(意外にも安易な罠などに引っかかったかもしれないが)。その後の将軍職にも源頼朝や足利尊氏、織田信長に豊臣秀吉、そして徳川家康に始まり慶喜まで、最後は西郷隆盛と歴史になを残した数々の英雄について語られていく。当時軍事的な側面の強かった将軍も時と共に時勢を照らした意味合いに変遷していくのだが、名前を見る限り、軍事においても政治においても何れかの能力が突出し、日本の歴史に大きく作用するような人間を今でも「名将」として人々は語り継ぐ。物語の主人公であったり、ビジネス本にも頻繁に登場してくる。
    本書はそうした将軍の時代による役割や、それに就いた人間像などに迫り、そこへ日本の社会がどのような体制・人物を求めてきたかについて、流れに沿って理解していくことができる。対談形式に進むので、最新の歴史解釈なども加わり、驚きと納得の中で読み応え十分である。
    なお将軍としては太平洋戦争期の将たちにも少しは登場して欲しかったが、逆に何十人も現れては消えてゆく状態においては「将軍」の格も品位も低下してしまったのだろうと考える。時には穴埋めのような形で任命され、戦場に散ってゆく短命な将軍もおり、能力も様々と取り上げる価値も日本史に与える影響も非常に軽微なものとなってしまったのだろう。
    本書最後に出てくる西郷隆盛などは、まさに武士のあるべき姿として捉えられているが、残した実績も死に様もこの様な人材が後の世に出なかったという事であろう。
    将軍の歴史と共に日本の成り立ち・変化を見て、将来の日本において求められる人材像を想像してみたい。きっと恐らくは平和な世である江戸期の徳川家とその家臣(老中)を思い浮かべるが、ウクライナのゼレンスキーの様な戦時のリーダーが必要になる日が来るかもしれない。

  • 8人の将軍+信長秀吉で10人についての対談本。
    歴史学では語れないストーリーを門井さんが提供して、本郷さんが学者の観点から打ち返すというのが面白い。軽い雰囲気で展開されているが、将軍のあり方、政治と軍事の比重の解釈は興味深かった。門井さんの歴史小説を読んでみたくなったな。

  • 日本の将軍は独特ですね。
    やはり海が守ってくれるから、他国から攻められることが少なかったせいでしょうか?

    けれども、近現代になって飛行機ができた。
    だから他国から攻められることもある。
    それ故今、日本は変わろうとしてるのでしょうか。
    ここを歴史で読み解いて行きたい。

  • いつも利用している図書館で、「これまでに一度も借りられていない書籍」をまとめたコーナーが設置されていて、そこにあった一冊。

    歴史を学ぶに当たっては、「特定の人物にスポットを当て、その人物についてしっかり知ること」また「歴史を下りながら、スポットを当てる人を変えていくこと」が有効だと考えているのですが、この本は、まさにそういう本でした。

    また、研究者と作家の対談、という形式も読み応えのある形だと思いました。

    この本は、日本における将軍の意味や政権のあり方などを俯瞰して学ぶのに、とてもよい本だと思います。
    これまで誰も借りてなかったのが、不思議で仕方ないです。

    これを機に、この本の著者である、本郷氏と門井氏の著書も読んでみようと思います。

  • ◎読みやすい。吉宗の評価が低かった。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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