悪魔は細部に宿る 危機管理の落とし穴(祥伝社新書)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396114213

感想・レビュー・書評

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  • 本書では、警察官僚として危機管理を担当する著者が、実際に起きた危機管理対象事案について独自の視点で、分析を加えている。
    状況判断や公開資料などを基にしていることから、正確でないところもあるかもしれないし、当事者ではないという点で理想論的な部分はあると思う。
    しかし、危機管理を専門としない読者としては、事例を上げての説明は、その着眼点・対処方法という点で、非常に興味深く読み進めることができた。

    特に「危機管理の極意」という章では、セウォル号の転覆事故の例を上げていて、
    ・合法だから安全とは限らない
    ・韓国だから起きたのではなく、本質的には日本も同じように起きる可能性がある
    ・危機管理と組織管理は別物である=大統領に危機管理上の責任はなくても、危機管理に対応できる組織を作れなかった責任はある
    という点が勉強になった。

    また、
    ・状況を判断できるだけの専門家が委ねることが大切
    ・「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」
    など他にもいろいろ得るものがあったと思う。

    ただ、戊辰戦争・西南戦争・第2次世界大戦等の歴史的な事例については、「社内政治の愚」など組織管理論としてはいいのかもしれないが、危機管理という観点では違和感を感じた。

  • 人生には仕事もプライベートもリスクが至るところに潜んでる。毎日通勤に使う自転車で(目が悪く溝にタイヤを取られる)1年に1回は転んでる。
    仕事においては起こるはず無いと油断してるとトラブルに見舞われる。
    本書内では誰もが知るような大きな事件・事故を事例にリスク対応の経緯が語られており、その様な大事故でなくても日常のトラブルに置き換えて、あぁこれも良くあるな、と頷きながら読み進められる。不確かな情報に翻弄され、材料もない中で判断を迫られ、細かいマニュアル等が何の意味も成さず、兎に角良く切り抜けたなと自分でも驚く事は良くある。大抵事後処理の最中に「何で油断してたんだ」と反省しきりである。
    良くあるリスク本よりも事例ベースで当てはめて解説されていくので解りやすさは勿論、事例と合わせて記憶に残せる。
    後半は歴史の教訓が多いためややリスク管理の域を戦略レベルの失敗で語る面も多いが、それはそれで歴史好きにも嬉しい。
    悪魔は細部に宿るのタイトル通り、私の隙をいつでもリスクは狙っている。

  • 様々な事例の紹介とともに危機管理の要諦や陥穽について、筆者の広い経験も混ぜながら見解を述べる一冊。単なるリスク管理上の「机上の空論」ではなく、いざと言うときに「使える」プロセスとは何か、極限時の人間心理とは何かと言った、非常に腹落ち感のある論が展開される。物によっては、あらゆる自体が想定される故に、精緻なBCPは作り込むだけ無駄とも言い切ってしまう筆者のスタンスは、豊富な実体験に基づくだけに、かえって潔い。

    世界で最もポピュラーな工業製品として、AK47を取り上げてのセクションなどは、組織論にも通ずる部分もあるように思われて、大変に示唆に富んでいた。

  • 古今東西の事例を元に危機管理の教訓を解説する。

  • 東2法経図・6F開架:336A/H56a//K

  • 【悪魔は細部に宿る】

    A.大災害に直面した人々は、楽観的な情報ではなく、自らの不安感と調和するような悲観的な情報を受け入れる傾向がある

    B.2011 年、東日本大震災で福島第一原発1 号機が爆発した時、「周りの人がそうしなかったから」、家族を避難させなかった人たちがいる。このように日本人は、周囲と行動を合わせようとする集団思考が強い。すなわち、「自助」の発想に乏しい。しかし、それでは避難のタイミングを失いかねない。

    C.過去に苦い経験をしていない業界、過去の教訓が伝承されにくい業界では、セウォル号並みの状況であっても不思議ではない。

    D.危機管理は、設備というハードと、習熟度というソフトが揃って初めて機能する。このうち設備というハードは、カネさえ出せば整備できる。しかし、関係者が対処要領に習熟しているかどうかというソフト面は、外形だけではわからないため、とかく疎かにされがちである。

  • ■書名

    書名:悪魔は細部に宿る 危機管理の落とし穴
    著者:樋口晴彦

    ■概要

    本書では、危機管理を専門とする著者が、東日本大震災、韓国のセ
    ウォル号事故などの最近の事例を分析・検証し、失敗の教訓の重要
    性を論じて個人および組織の危機管理の極意を説く。また、戊辰戦
    争・西南戦争などの幕末・明治の戦争、第二次世界大戦などの歴史
    的な事例も採り上げ、現代の組織にも通じる教訓へと落とし込んだ。
    危機管理の達人になるための必携の書。
    (From amazon)

    ■気になった点

    ・コンプライアンスと危機管理は両立しない。

  • 人は、組織は、なぜ失敗の教訓を活かせないのか? 本書では、危機管理を専門とする著者が、東日本大震災や韓国のセウォル号事件など、過去の事件・事故を分析。失敗の教訓や、個人および組織の危機管理の極意を説く。

    第1章 東日本大震災編を振り返る
    第2章 危機管理の極意
    第3章 日本の安全保障編
    第4章 なぜ失敗の教訓を活かせないのか
    第5章 歴史に学ぶ(幕末・明治編)
    第6章 歴史に学ぶ(第二次世界大戦編)

  • 日本の海運業は、こうした自己の教訓を活かすことで安全管理を向上させていったのである。味方を変えれば、過去に苦い体験をしていない業界、あるいは過去の教訓が伝承されにくい業界では、セウォル号並みの状況であったも不思議ではない

    被害者あるいは弱者に同情するのは当然のことだが、同情に流されてしまうだけでは情実国家になってしまう。同情は同情、ルールはルールと切り分けて考えることが法治国家のあるべき姿なのである

    ぎりぎりの局面では外野は口を慎め

    プロシア フリードリヒ大王 すべてを守ろうとする者はなにも守り得ない

    精鋭部隊の要件である結束力 戦友意識からくる

    経営悪化時のリストラは最悪の選択。人件費の削減により財務は一時的に改善するかもしれないが、「次にリストラされるのは誰だ」という疑心暗鬼が膨れ上がり、無形の財産である社内の戦友意識を喪失させてしまうからだ。その結果、一丸となって苦難を跳ね返そうとする反発力が失われ、ジリ貧のスパイナルに落ち込むことになる。社員の一割をリストラするくらいなら、全社員の給料を2割減らして辛苦を分かち合った方がいい

    安全と安心はイコールでない。安全とは客観的、科学的な評価であるが、もう一方の安全は主観的、感情的なイメージである

    安全とは素人が多数決できめるものではない

    機関部がシフト式かパラレル式か
    シフト式は2本煙突 抗堪性が高い

    不祥事の教訓を引き継ぐためのポイントは、「形として残すこと」「オープンに語ること」

    論語 過ちて改めざる是を過ちと謂う

    グループシンク 同質性の強い閉鎖的な集団ないいおいて、合意を形成しようとするプレッシャーから、物事を多様な視点から評価できなくなってしまうことだ

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著者プロフィール

1961年生まれ。1984年に東京大学経済学部卒業。警察庁へ。

内閣安全保障室参事官補、愛知県警察本部警備部長、四国管区警察局首席監察官などを経て、現在は警察大学校警察政策研究センター教授。これまでオウム真理教事件、ペルー大使公邸人質事件、東海大水害対策などの危機管理に従事。

企業不祥事の分析を通じて組織のリスク管理及び危機管理を研究。1994年にダートマス大学 Tuck School で MBA,2012年に千葉商科大学大学院政策研究科で博士(政策研究)取得。

著書に、『組織不祥事研究』(白桃書房)、『続・なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』『なぜ,企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社),『組織行動の「まずい!!」学』(祥伝社),『組織の失敗学』(中央労働災害防止協会)など多数。

「2019年 『企業組織の発展段階を知ろう! ベンチャーの経営変革の障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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