ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)

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  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396111519

感想・レビュー・書評

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  • なるほどと思わせ、読みやすい。まあ、一面では優れていても、時代特有の要因もあるから、汎用性のある理論じゃないかもしれない。ヒトラーの秘書官の話題は初めて知ったので勉強になった。

  • 巧みな演説で大衆を扇動した独裁者、諸外国相手に自らの理想の帝国を築こうとし、ヨーロッパ全体に戦火の嵐を巻き起こした男、ホロコーストで大量のユダヤ人を虐殺した男、そして最後は追い詰められて自らピストルで頭を撃ち抜き、波乱の人生の幕を閉じた。その様なイメージしか思い浮かばないヒトラーだが、近年はその政治的経済的手腕を評価するような書籍も多くあり、過去の暗いイメージとは大分変わってきている。勿論、ヒトラー始めゲーリング、ゲッペルスにヒムラー、そしてアイヒマン等、後世に悪名を残す人材に支えられた国家社会主義ドイツ労働者党、通称ナチスがしてきた事実は人類史上恐るべき悪事である事に変わりはない。
    その様なヒトラー及びナチスがどの様にして表舞台に現れ、その後どうやって第一次大戦後のベルサイユ条約下で荒んだ国家を短期間で建て直していくか、主に経済・財政政策を中心に見ていく内容。
    当時ドイツは前述の条約により天文学的な賠償金を課され、永久的に諸国の奴隷になるしか選択肢の無い様に見えた時代。よく知られるアウトバーン建設などの大規模公共工事による失業対策に始まり、労働環境の改善、海外資本を呼び込み復活した工業力や輸出産業、政治の面でも力で近隣諸国を押さえつけて来たのかと思いきや、意外にも当初は驚くほど平和的に領土拡大を成功させていく。その手腕たるや現代政治家ではまず居ないだろうと読み進める中ではっきり認識する。勿論その背後には様々な経済施策を繰り出したシャハトに代表されるように、その道の大家を積極的・効果的に登用し、現代社会にまで残る数々の輝かしい制度作りを推進できた事が評価に繋がっている。ベルサイユ体制下のドン底の生活状態、世界恐慌、そして周辺諸国(特にフランス)の決して上手くない仕返し等、どれも現在の状況とはあまりにかけ離れており、当時の様な極端な状態だからこそ上手く行った点は多いだろう。とは言え、有給休暇制度に定期健康診断、従業員の福利厚生、8時間労働などの今では当たり前の制度がここナチスによって作られてきた事実には、最初に書いた様な、単なる悪の組織というイメージだけが戦後に敢えて作られたと言う記述に納得感もある。
    繰り返すがナチス・ヒトラーを単純に賞賛する内容とは違う。冷静に手腕を評価し、現代社会がそこから何を学ぶべきか考えるための書籍である。

    読み終えた皆さんは今後オリンピックを見るたびに総統(フューラー)の姿をスタジアムに見るのではないだろうか。

  • そりゃ、このぐらいやれば国民もついていくよなぁと思った。

  • 前半部分の評価と分析で引き込まれて、一気に読んだが、後半の定性的な分析が少し残念。

  • いやね、読みやすいです。分かりやすいのだと思います。だから楽しいです。
    年末の作業で疲れましたぁ!ちょっと途中でお休みいたします!すいやせん!
    主張が明確ですよね!敢えてナチスを引き合いに出して
    みんなが思っているような異常さはねえぞ!
    ちゃんとその営みや過程を吟味しないといけませんなぁ。
    国債の政府預かりについては近頃新しい理論的基礎付けが行われています。MMT?
    インフレを招くとか言う理由で、否定的な意見が今現在でもなされております。
    デフレ期なのに!適度なインフレは健全な社会状況だという認識がされておりま
    せんですし。ま、これ自体も成否は正しいのかわかりませんが。

  • ユダヤ人はロシアを含むヨーロッパで長く虐げられてきた。反ユダヤ主義は新約聖書に始まる。虐殺は幾度となく繰り返されてきたがナチスによる虐殺はスケールが異なった。ユダヤ人がまともな人間として扱われるようになったのは国民国家が誕生したフランス革命以降のことである。彼らはヒトラーを絶対悪と規定することでユダヤ人差別の解消に成功した。更に金融・メディアを牛耳ることで世界経済に影響を行使し得る権力を獲得した。イスラエル建国に際してはロスチャイルド家が資金提供し、ユダヤ人の帰国事業をプロデュースした。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/11/blog-post_25.html

  • なぜヒトラーは台頭したのか?現在の日本の政治の混迷を理解するためにも、その理由を探っておく必要がある。

    歴史教育では、ベルサイユ条約・ワイマール憲法は、平和条約・平和憲法と教えている。しかし、これはとんでもない誤りであることが分かる。歴史は常に勝者によって歪められる。ベルサイユ条約は英仏によるドイツいじめの条約以外のなにものでもない。

    多大な賠償金支払いを押し付け、軍事力を失っていることをよいことにルール地方を占拠する。ベルサイユ条約破棄はドイツ民衆の念願であり、共産党の台頭を快く思わない政財界の後押しも追って、ヒトラーは首相に押され、そして全権委任を獲得、独裁体制を敷いていく。

    ワイマール憲法下では、多数の政党が乱立し、安定多数の与党は誕生しなかった。ナチスの登場・独裁により、はじめて安定した政権運営をできたことになる。

    もともと軍事政権を目的としていたわけではなく、どちらかというと労働者保護的な経済政策中心の政権運営だった。結果的に、工業生産高は回復し、失業率は激減した。しかし、工業生産の回復は、英米仏に脅威となる。決して、ドイツも戦争を望んでいたわけではないが、英米仏のブロック経済に阻まれ、戦争への道を余儀なくされる。

    翻って現在の日本。まさにワイマール憲法下の政党乱立の状況と瓜二つである。我々日本人にも、強権的な独裁政権が必要なのだろうか?


    <目次>
    序章 ケインズも絶賛したヒトラーの経済政策とは
    第一章 600万人の失業問題を解消
    第二章 労働者の英雄
    第三章 ヒトラーは経済の本質を知っていた
    第四章 天才財政家シャハトの錬金術
    第五章 ヒトラーの誤算

    <メモ>
    ドイツの失業者数
    1927年 132.7万人
    1928年 136.8万人
    1929年 189.9万人
    1930年 307.6万人
    1931年 452.0万人
    1932年 557.5万人
    1933年 480.4万人
    1934年 271.8万人
    1935年 215.1万人
    1936年 159.3万人
    1937年 91.2万人
    1938年 42.9万人
    1939年 11.9万人

    工業生産
    1929年 100.0
    1930年 85.9
    1931年 67.6
    1932年 53.3
    1933年 60.7
    1934年 79.8
    1935年 94.0
    1936年 105.3
    1937年 117.2
    1938年 127.6

    自動車販売台数
    1932年 4万台
    1933年 7万台
    1936年 21万台

    雇用
    ・青年より中高年を優先
      青年はナチス突撃隊へ
      結婚貸付金
    ・女性よりも男性を優先
      男性失業者の方が社会不安を増長させるから

    現在のドイツ社会・世界にも踏襲されている(?)
    ・アウトバーン
    ・商業オリンピック、聖火リレー
    ・有給休暇制度?
    ・歓喜力行団(クラフト・ドウルヒ・フロイデ)?
    ・源泉徴収制度

    税収
    1929年 73億マルク
    1933年 51億マルク
    1934年 59億マルク 減税
    1935年 75億マルク
    1942年 347億マルク 戦争のための増税

    第一次大戦の賠償金 330億ドル
    年間25億マルクの支払い、1988年まで。

    金保有量
    1931年 17.11億マルク
    1932年 8.38億マルク
    1933年 4.57億マルク
    1934年 1.58億マルク
    1935年 0.86億マルク
    1936年 0.69億マルク
    1937年 0.68億マルク

    2012.12.09 借りる。
    2012.12.12 読書開始
    2012.12.16 読了

  • ヒトラーに魅力を感じた人達が多かったというのは分かるけれど、内容に沿うなら、題名は「シャハトの経済政策」であろうなぁ。
    日本も参考になる点があるのは分かるけれど、独裁政権だったというのが一番のポイントではなかろうか。

  • 新しい視点を与えてくれる本だった。ホロコーストが注目されがちだが、なぜナチスが人気だったか、支持されたか理解するために読む価値は十分ある

  • ユダヤ人迫害や他国侵略ばかりが言われるナチスだが、人々が熱狂したのには理由がある。それが徹底的に社会福祉とナショナリズムを遂行した経済対策の妙だ。それも右左ではなく資本主義と社会主義の良いとこ取りをした考え方に共感した。

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著者プロフィール

1967年生まれ、福岡県出身。出版社勤務などを経て、フリーライターとなる。歴史の秘密、経済の裏側を主なテーマとして執筆している。主な著書に『ナチスの発明』『戦前の日本』『大日本帝国の真実』『大日本帝国の発明』『福沢諭吉が見た150年前の世界』(ともに彩図社)、『ヒトラーの経済政策』『大日本帝国の経済戦略』(ともに祥伝社)等がある。

「2022年 『吉田松陰に学ぶ最強のリーダーシップ論【超訳】留魂録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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