その生きづらさ、発達性トラウマ?: ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント

著者 :
  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393365625

作品紹介・あらすじ

「不適切養育」の呪縛から逃れるには? いま注目される、生きづらさ、自己不全感を抱える「発達性トラウマ」をポリヴェーガル理論に基づく神経系システムから解きほぐす。身体に刻まれた記憶と向き合うための実践的ヒントを提示、トラウマ後成長を目指す。

感想・レビュー・書評

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  • 花丘ちぐさの国際メンタルフィットネス研究所
    http://i-mental-fitness.co.jp/

    その生きづらさ、発達性トラウマ? - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも
    https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365625.html

  • 自分の生きづら、今まで格闘してきたことが、じわりじわりと癒やされていくいい本でした。「よくここまで来たね」と言ってくれる感じ。名言がつまってます。クライエント側が読めるようになるべく平易な言葉で書かれた本、とのことで、それでもちょいちょい難しく思うこともあるけど、これなら読めるかな。しかし引用文献からみても経歴から見ても、全く違う仕事をしていた筆者が、自分の苦しみと向き合い、癒される術を求め、国内外の文献をかきあつめ探ってきた猛者なのだということがわかる。すごい人に出会った。一応私もセラピストの端くれを名乗る者なので、当事者ながら、これからも学びを深めていきたいと思う。

  • 子供の時の心の傷が人生にわたり生きづらさを生む仕組みを、「ポリヴェーガル理論」という神経系発達の理論をもとに説明しています。
    発達性トラウマは別の言い方だと「複雑性PTSD」に近くて、長期間にわたる反復的な心的外傷なのだと言える。
    ○○理論って出てくると堅苦しく感じるけど、全然難しくなくて、読みやすいです。
    すべての子・親に読んでもらいたいくらい。

    「毒親」という言葉があるけど、私はこの言葉は親の人格を責めるようで、個人的に好きじゃないです。
    この本では子に悪影響のある環境を「不適切養育」としている。
    それは親を責めるものではなく、病気や災害など、不可抗力でなってしまうものも「不適切養育」に含まれている。
    親自身がトラウマを負い、無自覚に子を責めていることもある。
    親個人だけの問題にせず、不適切養育が生じる環境に着目しているところが良いし、実際に問題は環境にある場合も多いと思う。

    生きづらさについて書かれた本は今まで沢山読んだけど、(アダルトチルドレンやパーソナリティ障害、HSPなど)この本が私には一番しっくり来ました。
    自分の状況がまさにこれ、というのもあるんだけど、科学的に「こういう神経の状態」と説明されたのが良かった。努力の問題ではなかったのだと。
    逆に言えば、発達してしまった神経の問題だから、努力で解決できないものがはっきりしてしまったとも言える。
    この本で言う「腹側迷走神経系が発達した人」基準で社会は作られているから、自分がどのように社会と折り合いをつけていけるのかなんだな、と思う。

    発達障害が増えていると言われるけど、脳の機能的な発達障害だけでなく、この「発達性トラウマ」が増えているんじゃないかな、というのが個人的な印象です。不適切養育をされても、フォローしてくれる人が周りにいればトラウマにならないらしい。
    けど家庭が密室化している現代では、環境的に難しい問題なのだろうな、と思いました。

  • ポリヴェーガル理論を翻訳された方の著書。
    不適切養育や上記理論をわかりやすく噛み砕いて説明した、一般向けの本。
    すでにポリヴェーガル理論を読んでいる人には、新たに得るものは少ないだろうが、全体的に優しい記述が多く、読んでいて楽になった。

    個人的には、著者は来歴が面白かった。
    昔から心理畑にいたのではなく、当事者としての経緯があってこそ、翻訳者として活躍されるようになったと知り、やっぱり人生捨てたもんじゃないよな、と独りごちた。

  • セラピストがクライアント向けに書いた、ポリヴェーガル理論の本です
    噛み砕いた説明で分かりやすく、1冊目に最適でした

    副交感神経にメスを当てており、リラックスだけでなく心拍数や呼吸数が下がるストレス反応を起こす背側迷走神経という理論があるそうです
    正しいかどうかは分かりませんが、自身に起きているトラウマ反応に説明できる材料になります
    脈絡なく侵襲してくるフラッシュバックに、「背側迷走神経、乙〜」とクッションを挟んで対応することができるようになりました
    フラバなどのトラウマ症状を、理論立てて解けるようにすることで、性格と病状を離して捉えやすくなります
    花丘ちぐささんの「トラウマのしっぽ」解釈は私も好きで、恥を除いて自責から放ってくれるような言葉が添えられていて、読んでいてホッとしました

    挙げられる事例が、ほぼ毒親の類型なのは他の読者の通り目につくことも分かりますが、分かりやすさ重視であえて絞っているそうです
    たた量を削って理論説明に紙幅を割いてくれたほうが嬉しかったかなとは、確かに思いました

    まだポリヴェーガル理論の1冊目で、軽い理解に留まっています
    これから自己理解、症状寛解に向けて他書籍にも手を付けてみようと思いました

  • 自らも当事者であり、同時通訳者から心理学への道へ入るという経歴の 花丘ちぐささん著。
    発達性トラウマとポリヴェーカル理論について書かれた本です。

     ポージェス博士のポリヴェーカル理論について、一般向けに優しく書いた本、とのことですが、読んでみて感じたのは

    ・基本的なアウトラインの理解がある方が(当然ながら)読みやすい
    ・全く知らない状態から読み始めた人にとっては、あやふやな知識だけで終わりやすい(それでどうしたらいいの? となるかも)
    ・行間やフォントなど、一般向けに作られたのだろうなという工夫を感じる
    ・とはいえ、もう少し図やイラストが多い方が一般向き書籍になりそう(羅列されているだけの治療法は蛇足に感じる)

     ということです。
     ずらずらと並べましたが、個人的な感想として

    ●前知識がある人にとっては中途半端
    ●前知識全くない人にとっては難しい

     という感じになりそうだという印象でした。

     著者としては「ここまで入れたい」という情報がきっちり詰め込まれているのだろうな、と思うのですが、全く前知識がない一般読者向けなら、発達性トラウマを持つ人の具体例だけでなく、ある程度自分の傾向が知れるチェックリストとか、項目別の一覧みたいなものがある方がより理解は深まりやすいんじゃないかな? と思いました(様々な制約があって掲載されていないのかもしれませんが……)。
     途中、ソマティックなセラピーというのをずらーっと挙げている(だけ)のところがあるのですが、これなんて「知らない人は自分で調べてね」「こういうセラピーもウチはしてます」という印象を受けました。

     私は自分について知りたいと思っていてこの本に出会った一般人読者ですが、この本を読んでいて「誰向けの本なんだろう?」という印象を受けました。当事者が読んで理解したうえで、精神科やセラピーにかかる足掛かりでしょうか、当事者の親向けなのでしょうか。
     それとも、医療職や介護職などの「当事者ではないが当事者と関わる可能性のある人」向けでしょうか。
     それとも、本を出すために世間一般に向けて知識を周知するためなのでしょうか。
     私としては、この本は当事者向けではないと感じました。知識として知って腑に落ちるだけで楽になる人はいると思いますが、「これは著者の辿ってきた軌跡であって、心理学の分野で著者が得た知識であって、でも切り貼りされた記事のようなもの」と感じました。
     私はこれ以前に『身体はトラウマを記録する』(べッセル・ヴァン・デア・コーク 著)を読んでいたので、余計にそう感じたのかもしれません。

     この本を読むかどうか迷っている方にとって知りたいのは、

    ・発達性トラウマとは何か
    ・どういった症状が出るのか
    ・対策、治療はどうしたらよいのか

     ということだと思います。

     本書は上2つについてはしっかり説明されていますが、実際のところ、発達性トラウマというのは、この本を読んで解決するという類のものではないと思いました。
     本書に掲載されている、自分でできる対応としては

    ・歌を歌う
    ・散歩や運動をする
    ・座り仕事から自由になる
    ・神社仏閣など崇敬の念を感じる場所を訪れる
    ・動物とあそぶ
    ・ヨガ・ダンスなどをする
    ・笑う
    ・栄養バランスをよくする
    ・自律訓練法
    ・あそび
    ・体に触れるリラクゼーション
    ・3つの良いことを振り返る

     といったものが掲載されています。
     自律訓練法や「あそび」についてはさらっと触れられる程度で、本格的に知るなら別の書籍を当たらなければならない(この本だけでは不十分)と感じました。
     
     この本の活用方法としては、

    ・当事者にとっては、全体像を理解したうえでセラピーにかかる、自律訓練法やあそびについての本へと続く中間地点となる
    ・医療職など当事者と関わる可能性のある人にとっては、全体像をおおまかに理解する(ポリヴェーカル理論についてざっくりと知る)

     というところでしょうか。
     具体例をあげている部分で、「親が発達性トラウマを持っているかもしれません」と何度も本文中に出てきますが、その親本人が具体的にどういうことをしたらいいか(発達性トラウマに何ができるのか)、ということは記されていません。(=読者層に親は含まれていない?)

     ポリヴェーカル理論について知りたいと思い、いろんな本に当たっているのですが、この本は特に誰におすすめとか、刺さるとも言えないですね。
     強いて言うなら、表紙がゆるふわでとっつきやすい、手に取りやすい。でも、本文にはかなり主観が強いように感じましたし(著者が当事者だからというのはあるかも)、著者の経歴を知らない人からしたら「うーん?」という感じが否めないです。専門書でもないし、一般書というのともちょっと違う気がします。

     買う前に図書館で借りるか、書店で中身を少し見せてもらう方が良いと思います。
     参考になれば幸いです。



    ***蛇足*************

     私は歴史は詳しくないし、思い違いかもしれないですが、著者は「われわれは狩猟採取民」という言葉を何度も用いています。
     「それって日本のこと? 日本人は農耕民族じゃなかったっけ?」と疑問に思いました。
     これについても後々調べてみようと思います。

  • 題名だけ見ると「自分は関係ない」と思うかもしれないけど、
    「おおらかでいられないことがある」と感じる
    ほとんどの人がこの本に助けられると思う。

  • 【要約】
    ■ポリヴェーガル理論とは
    ポリヴェーガル理論とは「複数の迷走神経」を表す。人間には交感神経と副交感神経があるが、副交感神経には消火や休息を促す背側迷走神経系と人と関わることを促進する腹側迷走神経系があるという理論。哺乳類にとっては、他者との関わりやともに分かち合って生きることが不可欠であり、それがうまくいかないと精神的にも身体的にも不調が現れるとした。

    ■自律神経系の切り替え
     交感神経系・・・闘争、逃走の反応
     背側迷走神経系・・・凍り付きの反応
     腹側迷走神経系・・・思いやり、助け合いの反応
    周囲の環境や相手の様子を無意識のうちに評価し、その状況に合うように生理学的状態(神経系の状態)を調整している。
    「安全」「危険」「命が脅かされている」といった合図によって切り替えるが、トラウマを抱えている場合、本来なら安全であるのに周囲に多くの危険信号を読み取ってしまうこともある。逆に危険を読み取れないこともある。

    ■不適切養育と自律神経系の関係
    幼いころに養育者からの適切な関わりがないと、腹側迷走神経系が十分に発達せず、交感神経系が優位な「高止まり」の状態や、背側迷走神経系が優位な「低止まり」の状態、または両方を乱高下するといった神経系の調整不全の状態になりやすい。→「メンタルが弱い」のではない。神経系の調整をうまくする方法を身につけていない。

    ■今からでも腹側迷走神経系を発達させるために(トラウマからの解放)
    身体に刻み付けられたトラウマを解放していくことは簡単ではないが、少しずつ自分に「快」の感覚を与えていくことで、大人になってからでも腹側迷走神経系を発達させることは可能。「安全である」という感覚を膨らませていく。
    例)散歩、自然、寺・神社、動物、ダンス・ヨガ・スポーツ、笑う、歌う、聴く、あそび、腸内環境、良かったこと探し、タッチ、セラピー・・・

    ■注意すること
    ポジティブ思考(認知を切り替えよう的な)、マインドフルネスは、自罰的になったり「今ここ」によりフラッシュバックするかもしれないので注意が必要。トラウマ専用の手法を用いた方が安全。

  • 私がよくなる「凍りつき」について詳しく書いてある。
    発達性トラウマの辛さに寄り添ってくれる本。

  • 今まで発達トラウマについて全く知らなかった。
    有名ではない分、陰で悩んでる人は多いのではないか。

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著者プロフィール

ポリヴェーガル・インスティテュート・インターナショナル・パートナー、ソマティック・エクスペリエンシング・ファカルティ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業、米国ミシガン州立大学大学院人類学専攻修士課程修了、桜美林大学大学院国際人文社会科学専攻博士課程修了。博士(学術)。公認心理師。社団法人日本健康心理学会公認指導健康心理士。A級英語同時通訳者。
著書に『その生きづらさ、発達性トラウマ?』(春秋社)、『なぜ私は凍りついたのか』(共編著、春秋社)、訳書にS・W・ポージェス『ポリヴェーガル理論入門』、D・デイナ『セラピーのためのポリヴェーガル理論』、S・ローゼンバーグ『からだのためのポリヴェーガル理論』、M・デラフーク『発達障害からニューロダイバーシティへ』、P・A・ラヴィーン『トラウマと記憶』(以上、春秋社)、ケイン&テレール『レジリエンスを育む』、F・G・アンダーソン他『内的家族システム療法スキルトレーニングマニュアル』(以上共訳、岩崎学術出版社)などがある。

「2023年 『ポリヴェーガル理論 臨床応用大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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