戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

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  • 産能大出版部
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  • / ISBN・EAN: 9784382053212

感想・レビュー・書評

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  • 戦略の構築方法を論理的かつ網羅的にに説明した一冊。
    ピュア(クラシカル)な戦略コンサルタントが戦略を策定する道のりがわかりやすく言語化されており、戦略論を2回連続で落とした自分にもわかりやすかった。
    本書は1995年に出された本であり実際の現場で求められることとは変わりつつあるものの、中身は至ってベーシックであり今の戦略立案においても中核をなす思考方法だということは変わらない。
    読んでて思ったこととしては、コンサルタントの価値は変わり続けるだろうが、意味のある存在という点では変わらないのではないかということだ。なぜなら、企業の意思決定は内部者だけでは合理的なものになりづらいと考えられるからだ。たとえば、企業の戦略を考案するものとその戦略を実行するものが違う場合、互いの利益相反が起こる可能性がある。ここに外部者であるコンサルタントが入ることで企業の最適な戦略的意思決定に導くことができ、この価値はこれからも変わらない部分である。(本質的かどうかはわからんけど)

  • 【星:3.5】
    他の著者の経営論の本が良かったので手に取って見たが、この本は普通と言った感じ。

    よく聞くようなマーケティングの話や、戦略策定の基本的な流れ、フレームワークなどを淡々と説明している感じである。

    ただ、タイトルにあるように「戦略策定」という点から経営論を書いた本というのはあまり見たこともないので、その点は新鮮であった。

  • 戦略には目的、戦術、競合の3つが必要であり、整合性、優位性、持続性が保たれていることがこれも必要である。
    戦略策定は分析、発想、具体化によってこれを行う
    必要な力は統合力、創造力、論理力、分析力

    わかりやすく網羅的に整理されており、当時は名著であったことが想定される。
    現在においてはテクノロジーの進化等もあり、アップデートが必要な内容になっている。、

  • 非常にいい本。
    戦略について
     ・全体戦略
     ・個別戦略
       ・事業戦略
       ・機能別戦略
    に分けて全体観を見せてくれる。
    さらにそれぞれを考える上で必要となるフレームワークを提示するとともに
    使い方をしっかりと例示つきで解説する、というすぐれもの。

    この本で、いろいろな関係が見える。
    これで、いろいろな分野を勉強するための全体像が見えた。

    研究者時代も思ったけど、ある分野の全体像、それぞれの関係性を
    示せる人って、かなり頭いい。

  • 95年発行の本ながら、定義や必要条件、事例などが丁寧にまとめられていて、まさに戦略策定の基本を学ぶのに適した良書。事例が古かったり、インターネット(スマホやSNSなど)までの言及は当然ながら含んではいないが、95年時点で既に本質的な考え方はここまで揃っていたのかと驚かされる。印象深かった事例として、「内製か外注どうするの?」という戦略上避けては通れない問いのところで、キーエンスのファブレスを取り上げていたところ。気になって確認してみたら、当時、個別株を買っていたら、現在(23年時)で約40倍になってる。。本質的な戦略が見事にハマってて、波頭さんの目のつけどころに脱帽。

    個人的に、あえて3つにまとめるならば、

    ・必「目的、施策、競合」十(整合性、優位性、持続性)
    ・戦略策定は①分析②発想③具体化
    ・戦略効果=戦略内容×実行の歩留まり。組織化超重要。

    「目的」と「施策」は、「当たり前だよね」と思えたけど、そこに「競合」ときて、最初「ん!?」となったが、確かに、そこをおかずして成立しないという納得ができてスッキリした。この本の大きな収穫の1つ。

    戦略の必要条件と十分条件を必ず明確にし、ファクトに向き合い、柔軟に発想して仮説検証を回し、5W1Hで細部まで詰めて実行しきれるように人員配置、組織設計をすることが重要だなと。組織については、別冊にて。


    以下は、見返し用

    ・「戦略」の意味合いを正しく理解することこそ、「企業戦略策定」の起点であろう。

    ◎定量的な目標が示された設定でなければならない。

    ・目標とする指標の大きさによって、採用すべき戦略の内容が大きく異なってくる。

    ・戦略目的自体が合理的に設定されていることこそ、戦略策定の第一歩と言える。

    ・戦略は、その実行に携わる組織や人員の実際の行動に結びつく具体的な施策として示されている必要がある。

    ◎戦略は、競合の存在、競合からのリアクションを考慮して立案されていることが必要である。

    ・戦略とは、競合があって、初めて成り立つものであり、自社の強み、弱みやリアクションを予測、計算して行う駆け引きなのである。

    ◎潜在的な競合や直接的ではない競合を意識すべきなのである

    ・代替品に置き換えられてしまうリスクへの対応は不可欠である。ビール会社の競合は、他のビール会社だけではなく、「食卓を楽しくするための飲料」として事業を捉える。

    ◎策定された戦略が大きな効力を持つためには、その戦略が包含する個々の具体的施策が全体として一環した狙いやポリシーによって、調和的に束ねられていることが重要である。収益向上でコストダウンと高級層開拓は不成立。

    ◎自社の弱みを強みに転化させるような、あるいはトップ企業の強みを弱点に変えてしまうような戦略を狙ってみることが有効になってくる。

    ◎戦略目的の達成が持続的に実現するのでなければ、良い戦略とは認められない。

    ・有効性が持続的でない戦略を実行してしまう事は、その結果として貴重な経営資源を浪費してしまったり、競合との相対的ポジションをかえって悪化させてしまったりすることにつながってしまうことも少なくない。

    ・分析フェーズでは、有効な戦略にたどり着くための核となるようなクリティカルイシューを把握することが重要であり、そのためには種々雑多な現象や課題を企業目的に照らし合わせながら絞り込んでいくことが大切である。

    ・発想フェーズでは、分析フェーズで絞り込まれた、クリティカルイシューについて、効果の大きい課題達成のための方策を見つけ出すことが目的であり、そのためには様々な現実的常識的制約を一度全て忘れて、自由に案を出してみることがポイントになる。

    実際に起こった事は、何かと言う事実のみに基づいたファクトベースでの判断こそが、客観的な状況把握を可能にする。

    ・機能面での優位性で売れていると思っていた商品が、実はそれを買っていた顧客は、価格の低さや広告のイメージを購入動機にしていたという例もある。

    ◎「多分こうであろう」という思い込みや恣意を捨て、すべての判断をファクトベースで行えるかどうかが有効な戦略にたどり着くための第1のカギとなる。

    ・独立の関係と因果の関係を解明することが、この分析フェーズの目的とも言える。

    ・例えば「シェアが下がっている」という事実と、「製品開発部門の人員が増加している」という事実は、一見無関係そうに思われるが、因果の関係で結ばれることもあり得る。

    ・問題解決思考で、常識や慣習にとらわれない発想こそが、有効な戦略の策定には不可欠である。

    ・発想フェーズにおける第二の留意点は、「仮説の設定と検証」を繰り返し行うということである。

    ・ファクトベースに基づいた分析だけでは不明なイシューが多すぎる場合が多い。その時に調べてみないとわからない事柄の全てについて、実際に調査してみて、その結果が得られた答えを使ってのみ次のステップへ進んでいくと言う方法論をとっていたならば、調べなければならない事項が多すぎて、非効率な施策作業にならざるを得ない。

    ・仮説に基づいて戦略の基本骨格をいちど作り上げてみることが大胆で有効な発想を生かすためにも、また同時に効率的な検討作業を行うためにも不可欠なのである。

    ・我田引水的なアンケートや実験にならないよう、細心の注意を払わなければいけない。

    ・個々の組織、人員の現実的な動きに落とし込んでおくことがポイントとなる。

    ◎「戦略の効果とは、策定された戦略内容のクオリティーと実行段階でのイールド(歩留まり)の積で決まる」。100点満点の素晴らしい戦略を作り上げても、実行が2割しかなされなければ、効果は20点でしかなく、50点の戦略であっても8割実行して40点取った方が大きな成果を得られるものだということを忘れてはならない。

    ・同じファクトやデータでも、当事者によって、その戦略目的によって、抽出すべき意味合いと、そこからさらに、引き出せる施策、アクションへの示唆は全く異なる。質の高い戦略的分析とは、戦略目的を効率的に達成させる的確な施策を客観的情報から導出することなのである。

    ◎「このようなアクションをとれば、ほぼ確実に望ましい戦略効果に結びつく」という戦略策定者の確信水準こそが掘り下げていかなければならない分析のあるべき到達点である。

    ・戦略ドメインは、どの市場層のどのニーズにどのような独自能力によって対応するかによって決定される。

    ・戦略ドメインを設定した後の次のステップとなるのが、「基本戦略方針の決定」である。基本戦略方針とは、設定された事業ドメインに到達するための企業運営の基本的方法論を指すものである。例えば、シェア至上主義、技術開発力重視、マーケティング重視といった方針。

    ・KFS(成功の鍵)を理解することが、業界分析を通して獲得すべき最も重要なアウトプットである。

    ・競合の分析を始める前には、まず行わなければならないのは、「適切な競合の見極め」である。

    ・市場の成熟化が進む近年では、限られたパイの中で高シェアを獲得するためには、市場にある競合企業に対して、いかに優位性があるかが問われるようになってきた。

    ◎ユーザーだけではなく、「誰に働きかけることが有効なのか」と言うことを明らかにすることが重要。

    ◎戦略案を出すこととターゲットセグメントを決定する事はある意味で同義。

    ・戦略の立て方は様々であるが、従来の商品サービスでは満たされていなかったニーズを取り込んだ形での新しい商品サービスの開発と訴求が、共通のポイントとなっている。

    ・戦略案を出す際は、同時に、想定される期待成果と投入資源の算定を行わなければならない。マーケットサイズがどのくらいで顧客ニーズの強さや持続性はどうなのか、売り上げ、利益率がどのぐらいになるのかと言うように、想定される状況を可能な限り定量化しておくことが必要である。

    ・戦略のアイディアが本当に実行できるかと言うことを、人材、資金、技術、その他の事業資産の面から診断することが必要。その戦略に即効性があるのか、効果が出るまでに何年かかるのか、その効果持続性があるのかどうかを検討していく。その戦略の実行に伴って発生するリスクを把握したり、最悪のケースを想定し、そのダメージの程度を検討しておくことも忘れてはならない評価軸である。資金面だけではなく、戦略遂行に伴う企業、風土上のリスクも確認しておくべきポイント。社員のモチベーションが下がってしまうようでは戦略の遂行は困難となる。

    ・具体化、スケジューリング、モニタリングと三要素が整って、初めてアクションプランは実行に結びつくのである。

    ・戦略に関わるメンバー一人一人がどのような行動を取ったら良いのか、納得できるようなマニュアルやフォーマットを作成することが望ましい。

    ・具体的施策をさらにアクションプランへ展開し、その施策の準備、実施の開始時期や実施期間を決定することと、加えて、その施策の責任者、責任部署及び実行者を規定して、誰が何をするのかというところまで明示することの明確化を示している。

    ・各具体的施策ごとに期待成果とその成果を図る評価基準を明らかにしておく。

    ・モニタリングの進捗管理を行うには、モニタリングを担当する機関が必要となる。現場にモニタリングの役割を任せてしまうと、現場の利害からの言い訳が横行し、どうしても客観性にかけた評価となりがちであるためである。

    ◎誰が何をいつまでにどこでどのように動くのか、そしてどのようなことが達成されれば、適切な成果とみなすのかと言うことを明確に決定することが戦略遂行のカギであると理解されたい。

    ◎商品特性ごとにチャネルの数は、「適正規模」というものがあり、少なすぎても商売にならないし、多すぎても採算が合わないことになる。全国どこでもアクセスできるのが郵便局であるが、その数は25,000。つまり全消費者がアクセス可能な全国配置の最低規模とは25,000程度と理解できる。最も多いチャネル数は、美容院で300,000と言う数が、チャンネルの最大規模と考えることができる。このように、適正なチャネルの数についての目安を持つこともチャネル戦略上重要である。

    ◎内外作の判断の基準は、どちらが「より良いものを、より安く、より早くかつフレキシブルに」できるのかと言う観点である事は、生産戦略の基本軸として同様である。

    ・センサーの製造販売会社であるキーエンスは、強力な製品、開発力を武器に、設計と製品の販売に注力し、製品の生産は主に外作することにより、高収益を獲得し、競合優位性を発揮している。

    ◎コストミニマムを実現するために内外作の使い分けは極めて重要であるが、内作による技術蓄積の価値も競合優位性形成の重要要因となることもある。

    ・一見、多ブランドが存在するように見えても、OEMによって、事実上1社独占、数社の寡占状態にある製品分野は意外に多い。

    ◎トラック輸送の場合、いくら効率よく製品を満載して郵送したところで、戻りは当然ながらガラである。効率の観点からすれば、ここにも改善の余地があると言うことになる。戻りの便も何かに活用できないか、そう考えると、効率的物流は、企業や業種の枠を取り払った発想が必要になる。こうした発送により生まれたのが共同配送である。

    ・物流システムの構築に伴う膨大な投資を回避し、物流機能を外部の物流専門企業に任せようとするアウトソーシングの動きにも対応する動向である。

    ・情報システムを構築する主目的を達成するために必要となる情報の種類を明確にすることである。

    ◎今ある情報、収集可能な情報にとらわれずに、「この情報さえ獲得できたら、顧客の支持を得られ、他社を圧倒することができる」といった戦略的なメリットが明確に見える情報を見つけ出すのである。

    ◎例えば、ある商品に対して、個人個人の購入意欲の高まり、時期や、購入の必要に迫られるタイミングを知ることができたら、販売の効率は大幅に高まるだろう。かつてトヨタは、個人の車検の時期のデータが入手できたら、新車の販売に極めて有利と判断した。同様に、各家電販売店は、新しく家屋を購入する人たちのリストを素早く入手できれば、有利な販売を展開できるし、旅行会社なら、婚約したカップルのリストがあれば、海外での挙式や新婚旅行のセールスをかけられるといった具合である。

    ・戦略的企業経営の実現というテーマに対して、「良い戦略」は必要条件、「戦略整合的な組織制度」が充分条件と言うことになる。

    ・戦略を遂行するのに、都合の良い組織や制度が採用されなければ、現実的な戦略効果は極めて小さくなってしまうことが多い。

    ◎「組織は戦略に従う」という認識で落ち着いている。

    ・競合や顧客との関係に基づいて戦略を策定し、その戦略を実行するために適当なように組織と制度を合わせなければならないという考え方が主流になってきている。

  • 戦略を立案するための思考の全体像を理解できました。

  • "戦略"というものを体系的に解説した、戦略策定における基本書とも言える一冊。
    とかく曖昧に用いられがちな"戦略"という概念を、全体戦略と個別戦略に大別し、それらをさらに「戦略ドメイン」「基本戦略方針」「事業戦略」「機能戦略」に分解した上で、それぞれについて論じている。
    個々の要素要素は目新しさは少なく、また1990年代半ばの著書ということもあって記載の古さも否めないが(例えば、情報システムの記載はあっても、インターネットに関する記述は全く出てこない)、戦略策定の全体観を理解するには最適な一冊と思う。

  • ■感想
    戦略について体系的に理解するのに役立ちます。概論とはいえ、ビギナーだけではない。言葉の定義がしっかり書かれており、迷ったときに立ち戻る本でもある。

  • 2020.3.11、1度目通読。

    戦略策定概論の表題のとおり、全社戦略、事業戦略、機能戦略、のそれぞれの基本的な考え方がコンパクトにまとまっている。
    1995年に執筆された書籍だが、今なお色褪せない本質的な内容が網羅されている。文章が縦書き点が玉にキズだが、縦書きだからこその古典感は醸し出されている。

    経営戦略の学習としては、まずは本書を繰り返し読み込み、考え方の枠組みを頭にインストールしたのち、より詳細な書籍に手を出すのが良いだろう。
    本書で戦略を検討する際の視点を獲得し、他の書籍でより具体的な実務や事例をカバーする形か。

  • 体系的にまとまっていて非常にわかりやすく、理解が深まった。
    それぞれの項目ごとにはわかっているつもりでも
    体系的に理解することで
    戦略レベルが格段に上がると感じた!

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう):1957年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業。マッキンゼーを経て、88年㈱XEEDを設立し独立。戦略系コンサルティングの第一人者として活躍する一方で、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目される。著書に、『プロフェッショナル原論』『成熟日本への進路』『論理的思考のコアスキル』(以上ちくま新書)、『知識人の裏切り』(西部邁との対談、ちくま文庫)、『経営戦略概論』『戦略策定概論』『組織設計概論』『思考・論理・分析』『リーダーシップ構造論』(以上、産能大学出版部)、『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎)ほか多数。

「2021年 『文学部の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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