中高年ひきこもり (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344985810

作品紹介・あらすじ

内閣府の調査では、40~64歳のひきこもり状態にある人は推計61万人と、15~39歳の54万人を大きく上回る。中高年ひきこもりで最も深刻なのは、80代の親が50代の子どもの面倒を見なければならないという「8050問題」だ。家族の孤立、孤独死・生活保護受給者の大量発生――中高年ひきこもりは、いまや日本の重大な社会問題だ。だが、世間では誤解と偏見がまだ根強く、そのことが事態をさらに悪化させている。「ひきこもり」とはそもそも何か。何が正しい支援なのか。第一人者による決定版解説書。

感想・レビュー・書評

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  • この前に『ケーキの切れない非行少年たち』を読んで
    「非行少年、まわりにいないし…」と思いました。

    しかしひきこもりは、まわりに結構います。
    たくさん。
    ただ、自分のそばにいて、悩んでいる状態ではありません。
    もし現実にそういうことがあったら、
    再読したい本です。

    ひきこもって、暴力までふるってくる人がいる。
    そしてその対策は、ガラス細工を扱うよう。
    「まず予防じゃないか?」と思いました。
    でも斎藤環さんはこういうのです。

    〈再び根拠なく断言しますが、もしひきこもることが100%容認される社会が実現したら、長期間ひきこもってしまう人は激減するでしょう。
    予防という発想を捨てることが、最大の予防策になる。
    30年余りの実践を通じて、私はいま、そのように確信しています。〉

  • 今の三大関心ごとのひとつのひきこもり。これは当事者というよりも、その周りの人、自分には関係ないと思っている人向けの本かも。
    何故ひきこもりとなるのかや、しんどさの原因を明らかにして対策を伝える。
    中高年に特化した内容というより全般的なものでした。

  • とてもよかった。ひきこもりの状態は、本人も苦しんでいる。ひきこもりの捉え方、家族の関り方、家族への支援の仕方が丁寧に書かれている。支援を必要とする状況の人に対して、理解と支援の和が広がることで、支援される人にもする人にもよい循環が広がることと思う。ひきこもりに限らず、様々な立場の人が暮らしやすくなることを願う。

  • 自殺既遂きすい 彼等の自己愛は「プライドは高いが自信がない」という歪さを持っています。この時彼等のプライドは、理想とはかけ離れてしまった自分自身を批判することによって、辛うじて担保されます。このような、自己批判の形を取った自己愛を、私は「自傷的自己愛」と呼んでいます。 「仲の良いお友達のお子さんを預かっているような感じ」で我が子に接しているそうです。理想的な距離感を上手く言い表した言葉だと感心しました。 「欲望は他者の欲望」 「割れ窓」理論 抑圧も受容もしない「拒否」という選択肢があるのです かこん禍根 かなり先駆的な内容だったと言えるでしょう スティグマ(烙印) その概念を換骨奪胎し 時として凡百の治療を凌駕する成果を齎し得るということ 一つの新しい潮流が生まれつつあります 恰もオマケや副産物のようにして ダイアローグ(対話) モノローグ(独白) 動かし難い結論が先にあることから生じる無力感が原因だった 紋切り型のフェイクニュース 「社会の成熟度と個人の成熟度は反比例する」 謂わば「若者の高齢化」という語義矛盾のようなことが起きているわけです ネオテニー(幼形成熟)的な人物が人気を博す社会 せんえん遷延化 未成熟化の帰結としての非社会性 生産性の有無で人の価値を判断するという発想は 社会は常に「無為で怠惰(に見える)二割」を必要としている 白眼視 8050問題 緻密な校閲で迅速な仕上げ

  • ・機会あるごとにアプローチを試み、御用聞きのようにニーズの有無を尋ね、断られれば次の機会をうかがう。「マイルドなおせっかい」という支援のあり方。

    ・ひきこもり支援は、さまざまな点で依存症の支援と似ている。

    ・未成熟化、非社会化

    ・就労はもはやかつてのような義務では無い。就労したいと望むのは基本的に「承認欲求」のため。他者から尊敬されたいという欲望、いまある承認を失いたく無いという不安。

    ・家族から受容されることで社会参加の意欲が生まれる。

  • ひきこもる時もあるくらいの気持ちも許容される集団の方が健全なんだなと改めて実感。

  • 安心して引きこもれる環境を作ると、人は「そろそろ外に出ようかな」という気になる、ということでしょうか。確かに余裕がないと現状維持を望みがち。しかし、語り起こしで作ったんですね、この本。

  • 同じ著者の「社会的ひきこもり」を読んでいた。その後、8050問題などと騒がれているので、ひきこもりの高年齢化についても知っておきたかった。果たして現状は何となくわかった。問題点も浮かび上がってきた。さて、親の対処の仕方である。そこが最も興味がある。何しろ、我が家でも同じ状況が起こらないでもないからである。長男は中学で不登校気味に。内部進学ができず、他の高校を受験。入学して1ヶ月も経たずに家出。そして退学。通信制の高校へ編入。一浪して、現在は私立大理系1人暮らし。まあ、1人暮らしをしているので、もう我が家にもどってのひきこもりはないかも知れない。下の娘は順調に地元公立大へ。さてさて、バイトを始めて1ヶ月もしないうちにもう辞めると言い出している。どうなることやら。さあ、この親の対処の仕方だが、私には到底できそうにない。家庭内暴力はこれで必ず収まると言われても、実際にそういう場面に置かれたとき、あわてふためいて、そんな、「暴力は嫌だからしばらく家から離れる」とか「警察に連絡する」とかできる自信がない。社会問題としてとらえたとき、まあ、2割くらい働かない人がいてもいいのかなあ、と考えることはできそうだ。18歳で選挙権を持たせたわりに、若者というのが40歳くらいまで引き上げられているようだ。まあそれもそうだろう。私も50歳を過ぎて、両親の死に直面したことで、やっと大人になれたのかなあ、と最近思っているところだから。ふだんは手を出さない版元だけれど、本書は別格なので購入した。そうか、近いところでは、井上章一さんの本も買ったなあ。

  • 2022年11月29日

    宮台真司を、殺意を持って襲った、とされている
    41歳の倉光実容疑者

    一度も、就職したことなく
    ずっと引きこもっていた、らしい

    神奈川県相模原市の一軒家で、
    水道工事業を営む父と母の3人で暮らしていた。

    姉が2人おり、倉光容疑者は末っ子だった、らしい

    仲の良い普通の家庭だった
    と近所では見られていた
    お母さんがエホバの証人の信者で

    数年前にお父さんとタバコを吸って立ち話をしていた時、『女房が宗教にハマって困る』とぼやいていた、そうだ

    倉光実容疑者が自殺した場所は、彼がひきこもっていた離れの家でもあり、彼の母親が「エホバの証人」の集会所にした建物でもあった。

    倉光実容疑者はスポーツが得意で
    野球の強豪校で有名な私立高校にスポーツ推薦で進学したけど
    その頃からひきこもりがちになったみたい


    本書は、2020年1月30日が 第一刷発行(だいいちずりはっこう)だから

    この事件には触れられてないけど

    本書の最後に述べられている
    「ひきこもりもいる明るい社会」のイメージは
    とても現実的なものだと思う。

  • 斎藤さんは、ひきこもり問題で検索するとよく出てこられる方で、YouTubeの動画もみていましたので、本書も読んでみたくなり読みました。

    ひきこもりの問題は表には出てこないが、秋田県、山梨県、佐賀県での調査から、政府調査の115万人どころか、全体では200万人と考えるのが妥当。
    確かに「ひきこもり」の定義によっては、家事手伝いの女性や、中高年・高齢者等を含めますと、相当数の様々な境遇・状況下の「ひきこもり」達が存在していそうです。

    アメリカ・イギリスなどでは、日本でひきこもりになるような人たちはホームレスになることが多いことから、社会参加できないひきこもり達を無理矢理外へ出せば、大量のホームレスたちが発生する。
    なので、社会参加が容易になるような支援をしていくべき。

    抜け出すには(自力ではなく)家族以外の支援が欠かせない
    まったくその通りで、当事者や家族達は視野が狭くなる悪循環に陥ってしまっているので、色々な意味で、Webでも電話でも相談するのでも、抜け出していくために何がしかの「ヒント」的なものを第三者から得ることは、必ず必要なことです。

    悪徳業者は問題外・論外
    長田百合子・杉浦昌子等の思い上がった手法で、実際に死亡事件まで起きた。
    長田隆宏も評判が悪い。

    第四章家族のための対応のヒント
    この章でのお話の内容は、すべてのひきこもりのご家族の方々にぜひとも読んでほしいお話です。
    ・安心してひきこもり、社会参加の意欲が生まれるように、何がしかに取り組んでいくためにも無制限ではなく小遣いなどのお金を与え、対話は欠かせないし、議論・説得ではなくて、親切に、どうでもいいような会話をしていくべき。

    まずは、公的支援機関のひきこもり支援窓口に相談することが第一

    医療以外の支援、親亡き後のライフプラン=「お金」の問題を考えることは、必要不可欠。
    「急にこの生活が終わる」と強い不安に感じてしまうことが起こりえる。
    「あなたを扶養できるのは後××年が限界だ」と宣言する。
    あと何年は経済的に心配しなくてもいい、と安心して働けるようになること等がある。
    年金・生活保護等、将来必要になる手続きを申請する権利があることを早い段階で認識してもらうこと。

    第六章ひきこもり問題の歴史・現状・未来
    「すでにひきこもりから抜け出しつつあるような人たち」にとっては、就労によって元気になるケアとしての就労移行支援事業は高い可能性がある。
    しかし、抜け出しつつある状態までの段階ではない当事者の場合には、就労支援は「苦痛」でしかない。

    第七章成熟化した社会と未成熟な大人たち
    当事者は社会に出ても、どんどん社会で「成熟していく上位グループ」としてではなく、社会性のない、「非社会的な」ひきこもり的な現状を宿命的に受け入れ、「現状は変えようがない」と絶望し、「下位グループ」の地位でありつつづけることを宿命のように自ら進んで受け入れてしまう点。
    しかしそれでは、社会で人々間の断絶化を深めていき、当事者たちは非社会性の一途をたどるほかない。

    とても読んで良かった本でした。

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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