- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344984875
作品紹介・あらすじ
「貸出先がない」「銀行数が多い」という銀行の常識は正しいのか。「十分な担保・保証がある企業以外には貸し出しをしない」という「金融排除」を銀行が疑いもしないのはなぜか。人口減少の激しい地域で、この問題を放置すれば、地方の衰退を招くだけでなく、金融機関の自滅にも繋がる。そこで金融庁は、排除の克服と「未来の健全性」を重視した銀行検査に着手。本書では「金融排除」の実態を明らかにしつつ、革新的なビジネスモデルで挑戦する金融機関の事例も紹介。「銀行消滅」に怯える前に、地方金融が活性化する方策はいくらでもある!
感想・レビュー・書評
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これはまさに人間ドラマだ!
あの「捨てられる銀行」の著者橋本卓典氏の最新刊「金融排除」(幻冬舎新書)。
橋本様から謹呈いただき拝読させていただきました。
見る方によっては様々な意見があると思いますが、率直な私の感想は、まるでオムニバス形式の映画を見ているかのような、なんとも言えない感動がそこにはありました。
しかも全て橋本氏の取材に基づいた事実。
地域密着型の支援とはこういうことなんだと、全国各地で同じ思いを持った方々が、手法は異なれど一生懸命に取り組んでいる姿に感動し涙がでました。
人として「困った人を助ける」。
当たり前のようでそれが出来ないのは何故か?
金融関係者のみではなく、地域にいる全ての方々に読んでもらいたい、まさに感動の一冊です。
#金融排除 #橋本卓典 #幻冬舎新書 #捨てられる銀行 #包摂 #金融庁 #金融機関 #信用保証協会 #ギャレス詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
捨てられる銀行1の続編的な内容。著者、記者なんだけど、熱量高い書き方する人で、個人的に、熱量高いと勢いで誇張が含まれやすいと思ってるので、警戒しながら読むから、ちょっと疲れる。内容自体は、自分の知らない世界の話で面白い。前の本にも書いてたけど、組織の方針に合わせて人事評価制度を作らないと、へんな最適化が起こってしまうとあって、これは重要。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712808 -
金融排除の仕組みについて勉強になった。橋本さんの講演会を聴いたことがあるが、勉強になった。。
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金融排除とは何のこっちゃ?と思い読み始めたが、そういうことか、という感じ。金融機関側の人間から考えると、行ってしまえば当然の考えであって、それを排除という過激な言葉を使っている印象。される側からしたらそうなんだろうけどね。こちらからしたら、一度破産なり経営がずっとずっと下向きの会社をそんなすぐに信用できるか、というとそんなことはないという話で。でも完全に排除するかどうかは別の話で、歩み寄れるかどうか(それでも少しずつだと思う)は財務面以外の信用がある人のみだろうなと。
あくまで本書で行っていることは理想論であって現場に下りてくるには経営レベルでそういう判断をしてくれないと、現場レベルでは極めて困難だろう。その中でも、みちのく銀行の戦略ミーティング、京都の信用保証協会の共同支援スキーム、そして塩沢信組の取引先の人材育成スキームは素晴らしいと思った。こういう金融機関なら、これからの若い人も入りたいと思うだろうし、そもそもこういう取り組みは今後地域の発展のために必要不可欠だろうなと。
他、第二地銀の成り立ち等含め、色々と勉強になりました。 -
巻末近くの信金信組の成り立ちと存在意義についての下りは初めて知った。銀行とは成り立ちが違う。
金融機関、そして中小企業の未来は「金融排除」を解決できるかどうかにかかっていると言って過言ではない。 -
「金融排除」橋本卓典
金融排除が拡がった理由は、金融庁が金融検査マニュアルによって全ての預金取扱金融機関に融資先の債務者区分の判定を行わせ、かつそれを金融検査で厳しく検証した為。結果、企業からするとどの金融機関から借りても同じ債務者区分をつけられる為、金融機関の多様性が失われた。
銀行法第一条
国民経済の健全な発展に資する
無尽とは、講の発展型で、早く拠出金を受け取る者は金利を払い、最も遅く受け取る者は配当を得られるというもの。まとまった資金を受け取る時間差によって生まれる不公平を利息や配当で標準化した。この無尽会社がのちの相互銀行。
相互銀行には、相互掛金制度が認められていた。予め掛金の金額や払込時期を決めておき、前倒しで払い込む場合は預金者の実質利回りが上昇する。掛金の最小単位は1,000円。
信金の課題解決型金融は、過去の金融ではなく将来に向けた金融。鍵は過去の経営結果である財務情報にあるのではなく、その原因である非財務情報、特に利益を創造する為の経営プロセスそのものにある。会員の非財務に係る課題を共有し、共に解決していく事で、営業利益の改善や将来的な成長が、信金については信用リスク、コストの縮減化を目指すもの。これこそがリスク仲介機関としてのコアスキルであり、持続的な競争優位の源泉となる。
信金の重要三要素
1.人と人との繋がり度を示す社会資本をKPIにして見える化
2.会員・お客様と対話するビジネスモデルとその見える化
3.会員による自治を基本としたガバナンス
京都信用金庫のビジネスマッチング掲示板
顧客からの販路や仕入先の紹介依頼が掲載されている。
クレドとは誰か一人が決めて、従業員が従うものではない。多くの共感を集めたエピソードを蓄積していく事で、いつしかそれらのエキスが結晶化したもの。
金融機関の顧客への販路拡大支援メリット
1.顧客の売上が増えて、信用格付が上がると回収できないと損失処理をしていた貸倒引当金が銀行に戻ってくる。
2.銀行の手数料が増える。
3.顧客の増加運転資金、新規の設備投資資金が生まれる。
問題は仕事の忙しさではなく、仕事に意味と使命感と満足感を持って打ち込めるか?毎朝出勤するのが楽しみで仕方ないか?
2016年、「協同組合」はユネスコ無形文化遺産に登録された。登録理由は、「共通の利益実現の為に、協同組合を組織するという思想と実践」であり全世界の協同組合が対象。
銀行は銀行法、信金は信用金庫法、信用組合は中小企業等協同組合法に基づいている。信金信組は非営利組織。
信金は会員、信組は組合員と呼ばれる顧客自身が信金信組と出資関係を結ばなければ融資を受けることはできない。
会員、地域社会の共感の追求が協同組織の真髄。
経済を伴わない道徳は寝言である。道徳を伴わない経済は罪悪である。-二宮尊徳
相互に信頼関係がある(仁義礼智信を守れる人)人だけが参加して融資する仕組みを五常講貸金と言う。
協同組合の第一号とされているのは1844年マンチェスターの「ロッチデール先駆者協同組合」。織物工などの労働者が資金を積み立て、自分たちのより良き生活の為に生活必需品(食料)を市場価格で取引できる店舗を設けた。組合員は平等に一人一票持つ。ロッチデール原則。
尊徳の五常講はロッチデールより20-30年前に設立されていた。
歴史とは善悪ではなく、作用と反作用の妥協点とその積み重ねである。
ヒトモノカネ情報、信頼が域内循環する地域社会同士が繋がり合う事でさらに地域社会を豊かにする。
日本は国民の6人に1人、約2,000万人が貧困。OECD最下位。
グラミンバンクは社会問題の解決が問題である為、投資家には投資額しか還元されない。
地域の結びつき、絆を社会関係資本と捉え、その社会関係資本が蓄積され、濃厚であればあるほど相互のやりとりが活発になる互酬性の規範が生まれる。目指すべきは担保・保証によらない融資そのものではなく、社会関係資本を豊かさにする事。
ダイバーシティで問われているのは女性や高齢者の雇用比率という形式ではなく、価値観。新たな発想、ビジネスモデルを阻む排除を乗り越えていく事が真のダイバーシティ。 -
金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実
(幻冬舎新書)2018/1/30 著:橋本 卓典
日本型金融排除とは、十分な担保・保証のある先や高い信用力のある先以外に対する金融機関の取り組みが十分でないために、企業価値の向上が実現できず、金融機関自身もビジネスチャンスを逃している状況である。
本書は、上記の排除を考える本である。排除を生み出すメカニズムは一体どういうもので、なぜ拡大するのか。歴史的な経緯は。事業者から見た排除の風景はどう映るのか。それらを根本として以下の6章から構成されている。
①「食い違い」から始まる排除
②事業者から見た排除の風景
③金融排除とは何か
④見捨てない金融
⑤「排除」の大河に架ける橋
⑥排除の終焉と協同の時代
地域金融機関にとってのビジネスモデルの方針のひとつとして掲げられているのは「顧客との共通価値の創造」である。
大切なのは共通価値の創造。「共通」が大きなキーワードとなる。「共通」を満たすために必要なことは何よりも「対話」である。それは金融機関と金融庁との対話だけではなく、金融機関と顧客との間の対話が何よりも大切なことを意味している。
日本型金融排除なんてない。
そう言えば、確かに楽なのかもしれない。
しかし、火のない所に煙は立たぬとはよく言ったもので、この日本のどこかであることは事実であり、自分の近いところではないとは信じたいものの、何よりもそうなってはいけないということは常に認識する必要がある。
組織の形態、規模、置かれた環境などにより役割は全く同じではないかもしれないが、共通価値の創造や顧客の笑顔や満足をえるために仕事を行うというのは金融機関の共通の業務であり、やりがいにもつながることは疑う余地もない。
まだまだ出来ることはある。
まだまだやらなければいけないことがある。
仲間との対話も増やし共に笑顔を創り上げていきたい。 -
東2法経図・開架 B1/11/486/K
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この著者が考えるベストプラクティス集のような本だと感じた。
教えられるところはあったものの、サクサク読めた「捨てられる銀行」と比べると、やや冗長な感があったように思えた。
AIやフィンテックといった技術導入により、この先金融がどうなっていくのかはわからないし、もしかしたら、金融の場において審査という概念が大きく小さくなってしまうのかもしれない。
しかし、機械がきっと理解できないような「社長の熱意や仕事への真摯な姿勢」を感じ取ることができるのは人間だけで、そのような社長の性格を見極める泥臭い与信判断が、これから先の「人間が行う与信判断」になっていくように思う。さらに言えば、それができない審査マンは、融資の場にITが導入される中で排除されてしまうのかもしれない。
また、与信判断や再生支援といっても何も難しいことはない。結局は、相手が信頼できる人間かを確かめたら、あとは自分が汗をかいて応援するだけのことだと感じた。
もちろん、金融機関には人的リソースの制限があるため、どこまでできるかという問題もある。しかし、繰り返すようだが、金融の世界に攻め込んでくるフィンテック企業と差別化するためには、泥臭い仕事に邁進していくのが大切なのだと感じた。