世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記 (幻冬舎新書)
- 幻冬舎 (2012年1月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344982475
作品紹介・あらすじ
半導体ビジネスは毎日が世界一決定戦。世界中のライバルと鎬を削るのが当たり前の世界で働き続けるとはどういうことなのか? フラッシュメモリ研究で世界的に知られるエンジニアによる、元気の湧く仕事論。
感想・レビュー・書評
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どんなことでも、地道に努力する以外に成長する術はありません。自分以外に頼るものがない状況に追い詰められた方が、人間は本気になれるのだと思います。
守りに入って生きていて、のけぞって後ろに倒れそうになると、人は案外冷たいものです。その一方、果敢に挑戦し、前のめりになって、つんのめりそうになると、人は手を差し伸べてくれる。
自分の中でやると決めたことに、常に最大限の努力をそそぐことは自分の中では当たり前のことだ。
何の為にを忘れないように心掛けることができれば、できるはずだ。できないことはないはずだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東芝の技術者からスタンフォードのMBAを取得して、
今は東大の研究室に所属する著者の本。
製造業の最先端で起こっている激しいトップ争い、
技術だけでなく、経営の知識も必要とMBAを取ったときの話、
東大の研究室をゼロから立ち上げた話、
どれを取ってもとても面白かったです。
2番じゃなく、1番を目指す、
走りながら、考える等、
これからを生きていく上でのヒントがたくさん詰まった本です。
製造業の最前線が、こんなにも熾烈だったとは…。 -
元東芝のエンジニアでフラッシュメモリーという技術でグローバルな世界で戦った自らの経験を書いた本。東大工学部准教授を経て、今年次の機会を求めて4月1日付で中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科に移籍した。ある意味、エンジニアとしてはこうありたいというロールモデルにもなるのではないだろうか。
著者のキャリアは、フラッシュメモリー技術をほとんどゼロから少人数のチームで立ち上げ、東芝という大企業の中で大きなマーケットを有する主力商品に育て上げ、業界トップ企業の代表選手としてグローバルな競争相手や協業相手に立ち回る。スタンフォードでのMBA取得の下りなどを読んでいると、我と押しが強いところはあるのだろうと思う。それは成功のひとつの条件なんだろうか。「仕事術」とタイトルにあるが、副題の「激走記」の趣の方が強い。
本書の中で出身の東芝という企業のことを自分を育ててくれたいい企業だと言っている。ただ、著者も含めてフラッシュメモリーに関わった人間がこの辞めていっているのは寂しい気がする。「私が在籍していた東芝は、大学やベンチャー企業、外資系企業に移るエンジニアが比較的多い会社です。しかしこれは、日本の大企業のなかではかなり例外的です」(p.187)とポジティブに語っているが、転職できない人間は、そのまま東芝に居続けるわけなので、人材の逆フィルタリングがかかっているのではないのだろうか心配になる。
ちなみに著者はTwitterで、マイクロンのアノビット買収のニュースに受けて、本書の中には敢えて書かれていない内容を含む次のようなツイートをして、考えさせる。
@kentakeuchi2003
私に最初にヘッドハンティングに来たのも、師匠を引き抜いたのも、部下を引き抜いたのもマイクロン。今度は、共同研究先を買収ですか。腐れ縁で、離れられない。機敏過ぎて、めんどくさい相手だ。
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エンジニアとしてのキャリアを考える上で、自分のこれまでの反省を促す点も含めてとてもためになる本だが、その中でも特に次の2つ箇所を挙げておきたい。
「そんなグローバル競争を戦い続けてきた私が、いままでの経験から確信をもって言えることがあります。それは、どんな分野でも、将来はまったく予想できない」(p.198)
「いざというとき誰かに助けてもらうためには、自分はいつも最大限の努力をしていなければなりません。熱意をもってコツコツとがんばっていれば、それを見ていてくれる人は必ずいます。そして他人の善意を信頼し、自分も他人の信頼を裏切らないこと。」(p.103)
"Chance Favores the Prepared Mind" (Louis Pasteur)の言葉を肝に銘じてやっていきたい。歳もそれほど離れていない。勉強になりました。Never Too Late.なのかな。 -
半導体の研究者の方の本。スキマ、橋渡し、経営、マーケティング。
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母校の中大電電の同窓会誌にて、新任教授として著者の寄稿があり、その挨拶の中で紹介されていた本。どこかで会うかもしれない新しい先生がどんな人か気になって読んでみました。半導体の、特にフラッシュメモリの世界では最前線を駆け抜けてきた人だけあって現場の話も、世界の話も細かい技術の話もわかりやすく書いてあってとても興味深く読めました。「日本を良くするのは俺しかいない!」そんな風に言える技術者に出会ってみたいと、自分もその端くれとしてもっと頑張らないといけないなと思った一冊でした。
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著者は東芝でフラッシュメモリ開発に携わり、退職後に東大、中央大と渡り歩いている。
エンジニアの竹内氏が問題意識を持ち、歩んできた道が描かれている本作は理系出身の自分には非常に納得できる内容だった。「誰もやっていないことをやりたい」がスタート地点にあるあたりも共感。誰かのやってきたことをそのままなぞるなんてつまらないし、何か自分が変えたいと思う。この本は工学系のことを書きながら、実は普遍的な内容で、さまざまなことで感じる問題点にどのように立ち向かってよけば良いのかも書かれているように思う。それはエンジニアでありながら、MBAを取ったという経験、考えからもくるものだと思う。
キャリアデザインに悩む自分にとっても、非常に参考になった。 -
東芝でフラッシュメモリを開発、その後留学、MBA取得を経て、iPodをはじめ一連のアップル製品群での採用以降、フラッシュメモリ市場の成長を駆け抜け、東京大学へスピンアウトした著者による一冊。
事業仕分けで発せられた「2番じゃダメなんですか」という疑問に対する明確な回答を得たと感じさせられた。
経営は、技術を守り育てなければならない、技術はそれに報いなければならない。
このループのなかで一定のテンションを維持し、投資回収を維持するために必要な観点は、信頼関係そのものであり、これはシリコンヴァレーにおけるウェットな人間関係にも通ずるという部分は意外だった。 -
東芝、東大で、フラッシュメモリー、今はSSDなどでパソコンの保存装置に標準装備されつつある半導体の世界一を競争して、世界で闘っている技術者、学者の自叙伝的エッセイ。
女川町からの帰りの新幹線の中で、隣の渡部のおかあさんがこっくりこっくりしている間に読了。
端的にいって、ものすごく厳しい競争の中で、その時点で世界一の製品をつくると、アップルとかいろんなメーカーに導入できて一人勝ち、2位以下は完敗するという世界。連ほうさんの2位じゃだめですかの回答がはっきりわかった。
しかし、その世界一もどんどん入れ替わる、どんどん、新しいアイディアをだして革新していかなければならない。その世界に生きている先生の言葉は説得力がある。
(1)職場以外のリラックスした環境のなかで、アイディアがひらめく。(p157)
(2)今は、垂直統合から、水平競合の時代だが、うまく水平統合にもっていくと勝機がある。(p179)
昔は、東芝が、CPUから製品製造、販売までやっていたが、今は、CPUはインテル、メモリは三星電気、OSはマイクロソフト、組み立ては中国企業、販売はデルといったように水平競合になっている。それぞれの企業が世界1をめざすと、得意分野に集中するから。
竹内先生は、それだと各分野でばらつきがでてむだがでる、そのコーディネートをうまくやっていく水平統合がビジネスチャンスだといっている。
これは、復興にも役立つ発想。基盤整備、住宅、建築、産業復興、景観などばらばらに専門家がかってやっても効率的早期に復興しないので、そのコーディネートをうまくやっていく水平統合が大事だと思う。
(3)どうせ将来が見通せないのであれば、一番大事なのは、環境がかわっても生き残れる適応力や精神力を身につけること。(p199)
心したい。
幻冬舎新書はあたりはずれが多いが、これはヒット作だと思う。 -
東芝でフラッシュメモリ開発の立役者として活躍した竹内さんの「仕事歴」とも言える本。現在の技術屋の仕事感を見事に書き上げている。
これから着く仕事に悩む理系学生、現在活躍しているエンジニア、子供と将来を話し合う親に読んでほしい。
印象に残ったのは、フラッシュメモリという市場が無い所から市場を作ったような製品でも数年後にはどうなるか分からないという点だ。
技術はグローバル化し、技術屋も切磋琢磨しているので学生の時点で成長市場の仕事を目指しても、仕事につく頃には市場が死滅している可能性もある。だからこそ、自分が本当にやりたい仕事でないと意味が無い。
「物作りを極める技術者は世界一でないと生き残れない。自分はそれ程優秀じゃないので、常に技術と技術を繋ぐこと、隙間を探しながら仕事をしてきた」
という言葉は彼の技術者→MBA→東大勤務という経歴からも伺える。
理系の仕事をしている人には是非読んでほしい一冊だ。