満洲難民 北朝鮮・三八度線に阻まれた命 (幻冬舎文庫)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344430365

感想・レビュー・書評

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  • 2020年12月21日読了。

    私の父は満州からの引揚者で、母は南樺太からの引揚者だ。
    父は満州で生まれたが、太平洋戦争が始まる間際に本州に引き揚げてきた。祖父はその後海軍に従軍し、無事に帰国。

    この本は父の生涯を考えると他人ごとではなかった。
    今まで、語られることのない「満州難民」、読んでいて何度も「これがノンフィクションではなく、フィクションであれば」と考えるほど過酷な運命にさらされた満州居留民。

    戦前の国策で、夢を抱き大陸に渡り、安定した生活を営んでいたところから、まさに奈落の底に叩き落された人々。

    でも、難民として現在の北朝鮮まで引き上げてこられた人はまだ幸せだったという事実。

    本作では語られていないが、満ソ国境付近で暮らしていた人は、ソ連の宣戦布告の直後に蹂躙され、略奪・暴行にあい、シベリアに送られて死んでいた人たちがたくさんいる。

    その人たちに比べれば、まだ命あるだけでましなほうだが、こちらも十分地獄絵図である。

    1910年の挑戦併合から35年、日本という国が朝鮮で朝鮮人相手にどんなことをしていたかを細かく書くつもりはないが、1945年8月15日に日本が敗戦し、状況が一変し、また米ソの冷戦に巻き込まれる満州難民たちを憂いずにはいられなかった。

    NHKスペシャルとかでやったことあるのかな?

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1381147

  • 涙なくして読めない、生々しくただ生きることだけの毎日の記録を噛み締めました。
    先に読んだ、「流るる星は生きている」「太平洋戦争の収支決算報告書」の内容と重なるものがあり確認したり深い背景を想像できました。

    満州を脱出しまずは現在の北朝鮮にあたるところで留め置かれる。現在の少ない北朝鮮情報でも、冬の寒さは北海道を超えるものだと想像できる。
    劣悪な環境の終わりが見えず、蔓延する病と不衛生な環境に次々と倒れていく。
    日本の植民地となって様々な恨みを持った中国・朝鮮の人たちに仕打ちを受けて、それでも見かねて手を差し伸べる北朝鮮の人も。
    土まんじゅうに祈りを、そして終戦を外地で迎えた日本の先人たちに哀悼の気持ちを込めて。

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著者プロフィール

一九六五年、山形県生まれ。慶應義塾大学卒。毎日新聞社で外信部や社会部、サンデー毎日編集部の記者やローマ特派員、学芸部編集委員を務め、コソボ、パレスチナ紛争などを取材。イラク戦争で米海軍に従軍した。現在、公益財団法人「安達峰一郎記念財団」理事。

「2020年 『満洲難民 北朝鮮・三八度線に阻まれた命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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