ミ・ト・ン (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344429185

感想・レビュー・書評

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  • 大人の童話のような淡々とした展開だが、とても悲しい物語だった。
    北欧のルップマイゼ共和国(ラトビアがモデル)に生まれた女の子マイカとミトンに纏わる一生を描いている。ミトンとくれば鍋つかみぐらいしかイメージ出来なかったが、調べてみると赤ちゃん用の手袋が多数売られているんですね。
    女性は12才になると試験があってミトンを自分で編めるようにならないと国を出されてしまうとのこと。結婚式までに長持ち一杯にミトンを詰めるぐらい編んで、お客様に配らなければいけない。夫には5本指のミトンを編んで渡す。
    幸せな夫婦生活も他の国の侵略を受けて暗転する。
    ラトビアがソ連の侵攻を受けた史実からの物語だが、今のウクライナ侵攻もあり、事実の重さが読んでいて加わって来る。夫が他国に連行され、マリカは30才から77才で亡くなるまで、たった一人でミトンを編み続ける。幸せだった二人の生活を楽しく読んだ後だけに、落差が大きすぎて辛くなる。

  • ラトビアがモデルになっているルップマイゼ共和国に住むマリカの物語。
    とても素敵な国の人々。
    静かに流れる物語。
    でも、夫が「氷の帝国」に連行されてしまう。

    「このクルミを兄弟3人でみんなが納得するように分けるにはどうしたらいい?」
    「年の順に分ける。
    「全員に等しく分ける。」
    「一番下の弟にたくさん食べさせるんだ。だってまだ小さいから。それでまんなかの子には少しだけ。いちばん上の兄は、がまんして食べない。」
    「がまんはしなくてもいいよ。いちばん上のお兄さんだってちょっとは食べたいだろ?でも、正義っていうのは、だいたいそういうことだ。」
    マリカ「クルミを土に埋めて、大きくなって実がついたら、みんなでおなかいっぱいになるまで好きなだけ食べるの。」

    読後感も素晴らしく、次に読む本をどうしようか悩んでしまいました。

  • 可愛らしい絵に可愛らしいお話の始まりかと思っていたら、今現実に世界で起きているのと同じ悲しい出来事のお話しだった。
    主人公の明るさと真っ直ぐな性格が悲しいだけのお話にはしなかったけれども。
    知らなかった歴史を知り、海外にあまり興味の無かった私が舞台となったその国へ行ってみたいと思いました。
    私たちが生きるのは、善悪や美醜のある二元の世界。でも主人公は嬉しさを見つけて生きていく。
    悲しみを包んだ温かなお話しでした。

  • たいして長い本ではないけど、人生を一から見ている気がするので、長く感じた。(о´∀`о)

  • この世に生を受け、人を愛し、自然に囲まれながら幸せな毎日を送っていた。
    その国には男の子も女の子も、国民として認められるための試験があった。
    マリカはミトンを編むことがとても苦手で、試験は大変だったけれど、いつしか生きがいになっていく。

    別れを認めること、受け止めること、憎むのではなく、笑顔で暮らすことが周りのひとを幸せにする。
    氷の国に支配される期間はとてつもなく長い。それでもミトンを編み、笑顔で暮らす。自分たちの文化を忘れることなく。

    小川さんは欧州で暮らしたこともあるからこそ、取材を通して得られたものがあるからこそ、こうしたお話を描けているのだと思います。

    手作り品は、既製品にない暖かさがありますよね。
    羊毛つむぎ、毛染めの、手作業から得られる暖かさ。実物を見たらきっとその魅力に取りつかれることでしょう。
    2年前、天然色素で茜色に染めた織物を展示会でみました。すばらしかったのを思い出しました。

  • 以前、中田早苗さんの「エストニアの暮らしとこもの」を読んで、バルト三国や手編みのミトンや暮らし振りを紹介した写真や文章にとても興味を持ちました。また、小川糸さんのエッセイ「針と糸」にラトビアを取材したお話しがあり、この小説「ミトン」のことにも触れてあり、今回読むに至りました。人々の丁寧な暮らし振りやミトンに寄せる想い、豊かな自然が描かれていて、かの国へのイメージが膨らみました。物語は泣けました。淡々とした文ですが、かえってそれが主人公の悲しみや辛さが想像できました。ちょっと童話のような本ですが、心に残るお話しです。

  • 友人に薦められて読みました。
    ラトビアをモデルにしたお話し
    一見牧歌的だけれど厳しい暮らしがある
    そこで自然を大切にあるがままを受け入れる人々の暮らし
    なんて素敵、そして強いのでしょう

    ラトビアは旧ソ連に奪われていた
    自国の伝統を禁止された

    でも人々は悲しい歌は歌わない
    哀しい歌も笑いながら歌う
    森の恵みを謙虚に頂く

    今報道で知るウクライナの惨状
    クロスして辛い

    でも、きっと……

    ≪ そのミトン 祈りと愛の 文様で ≫

  •  ラトビアをモデルにしたとある国に住む女の子が生まれてから亡くなるまでの物語。

    初恋の人と結婚出来たのに、氷に覆われた隣の大国に侵攻されて、、、。悲しい事も辛い事も起こるけれど、ひたむきに丁寧に生きて、小さな幸せを見つけることが上手なマリカ。素敵な女性でした。

     ラトビアの文化や風習についてもたくさん知ることが出来ました。蒸し風呂でお産したり、樹液のジュースを飲んだり、黒パンを焼いたり、ミトンを編んだり、編み物の模様には祈りがこもってたり。いつか行ってみたい国のトップに躍り出ました。

     ラトビア行ってみたいな。

  • 旧ソ連時代に自国の文化を否定されてていたラトビアをモデルにした物語。

    つましくても、豊かで温かな生活を送る事はできるのだと主人公のマリカが教えてくれる。

    子どもができなくても、夫が敵国へ連れていかれ、心を込めたミトンか片方しか戻ってこなくても。

    人は、その相手を赦し、穏やかに過ごすことができるのだ。

    私も、こうありたいと願う。

  • 「ツバキ文具店の鎌倉案内」が欲しくって行きつけの本屋さんに行ったのですが在庫がなくって別の小川糸さんの作品があり手に取ったのがこの本でした。中世風の挿絵が随所にあり童話を読んでるような心地で始まったのですが、読み終えてみると放心状態に、この気持ちをなんて表現したらいいのか見当たらなくって、しばらく考え込んでいました。夜行列車に揺られ吐く息で窓ガラスが白く曇り景色が見えなくなっていくようなそんな気分でした。

    ルップマイゼ共和国の建国と同時期に生まれたマリカの生涯は、この国の歩みとリンクしてるから22才で併合され70才で再び独立を勝ち取るまでの48年間、抑圧された環境の中で暮らしていたんだけど、まわりの愛に支えられながら華やかで希望に満ちて結婚するまでの17年、夫と支えあいながら子供には恵まれなかったけど歩んだ13年その後先細る独居人生が47年続くとか辛すぎる。その間多くの人と死別していったわけだし・・・
    1人でも楽しく生きていける術を見つけなきゃって思いました。
    負の感情も喜びに変えてやり過ごすなんて、作り笑いも1万回もすれば心からの笑顔に変わるものなのだろうか?
    うーん、今の私には理解できそうにないので昇華できないなぁ。

    きっと、まっさらな心でむきあわないとミツバチの声とか聴こえてこないんだろうな。
    どんぐりコーヒーとか白樺ジュースってどんな味だろうか想像してみたけど大柄で素朴な味だったのかな。

    クルミをどうやって分けたらいいかの問答はクリスマス時恒例の問答のようだけど、どれが正解とかゆうものでもなさそうなので、どれも正解なんだ。そもそも、クルミが一つしかないから問題なわけで私なら、リスにあげちゃうかなww あり余るほどあればいいのにねww

    子供の頃不得意だったミトン作りも経験を重ね、はじめて自分のために作った最高の出来のミトンで自信を得たようでその後の人生多くの人から慕われて見送られながらマリカは旅立ていったのだからいい人生だったんじゃないかな。

    ジンジャーミルクティー作りながら今日はハチミツ多めに入れてみようと思いました。

    ※池上彰さんのバルト三国の解説聴いてから読めばよかったかなww

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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