人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344427303

作品紹介・あらすじ

「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた―。病院で彼等を待っていたのは、“おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に周囲は翻弄されていく。

感想・レビュー・書評

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  • 敢えてしばらく、読書サイクルから外していた東野圭吾。そろそろここいらで読みたくなって、積読の中から引っ張ってきた。

    脳死、臓器移植をテーマとして、脳死疑いの娘への、母親の、家族の、愛情の尽くし方、生かし方、生かされ方が描かれた作品。

    重いテーマだが、分かりやすく、練りに練られた展開、読み手を惹き込む文章・ストーリー、特にエピローグは素晴らしく、この難題に対して見事に1つの答えが記されている。

    「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。」

    母親が語ったセリフが、とても印象深かった。

    結論、私にとっては名作であった。

  • R3.7.18 読了。

     本作は題材が子供の脳死や臓器移植がテーマの小説だと知っていたので、この小説を読むことに躊躇していた。
    読み始めてみると、重いテーマであることには変わらなかった。不慮の水の事故で重篤な意識障害に陥った少女とその家族の物語。
     初めから感情移入はできなかったが、この家族の物語を最後まで傍観したいと思った。日本における子供の脳死や、臓器移植の現状や課題、そして医療分野のテクノロジーで障害者の生活のサポートをしようとしている会社などなどはとても勉強になった。
     少女の旅立ちと家族の別れのシーンはごく自然な形で静かに訪れた。正直あっさりした場面だった。
     東野圭吾さんの作品にあるプロローグからエピローグまでの伏線回収、ラストシーン。まさにお見事としか言いようがない。晴れ晴れとした最後に思わず拍手したくなった。
    この重いテーマをここまで深みのある作品として世に送り出して下さった東野圭吾さんに感謝したいです。この作品に出会えたことにも感謝したい。

  • 「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供のために狂えるのは母親だけな
    の」
    自分が産んだ子であっても、そうでなくても、母親にとって我が子と呼べる存在を、思い、守ることは幸せな事であり、当たり前のことなのだろう。
    薫子は“おそらく脳死”といわれた瑞穂ちゃんを思い、守ろうとするほどに、狂気じみていく。それは愛であるはずなのに。
    作中では、薫子と瑞穂ちゃんについて、多くの立場の視点から語られている。共感、同情、罪悪感、拒否感、嫌悪、、、どの感情も間違いではない。だからこそ、辛く感じてしまう。
    ラストまでいろいろ考えさせられた。播磨一家やその周囲の人達がその後幸せであるようにと祈りたくなった。

  • 小説紹介のけんごさんのおすすめで読みました。
    離婚寸前の夫婦、娘の小学校受験が終わったら離婚すると決めていたが、その娘、瑞穂がプールで事故に遭ってしまう。そして、告げられたのは「おそらく脳死」夫婦は考えた結果、臓器提供をせず、最先端の技術を使って娘と暮らすことを決意する。
    すごく、難しい内容だったけどどこまでが“生”でどこからが“死”なのかということについて考えさせられました。私はまだ子供なのでもちろん子供もいないけどもし、自分の家族がこのような状態だったらと考えると考えれば考えるだけ分からなくなってきました。

  • 読んでて辛かった。
    自分の娘が不慮の事故で脳死と判断されたとき、受け止められるか?
    もし、自分なら、、、もし自分なら
    と何度も問いかけながら読み進めた。

    最初は、母親の行為に感動していた周囲の人間が段々、遠巻きになっていくのも納得できる。人間の欲望の果てしなさと傲慢さを見せつけられた。

  • 不幸な事故により植物状態となった娘を持つ夫婦と。
    それに関係する様々な人達の物語。
    家族がこのような状態に陥った時の選択。
    深く重いテーマがそこにありました。
    読んで感じるものはそれぞれだけど。
    これはより多くの事を考えさせられそう。
    魂はなくなっても、その一部はどこかで生き続ける。
    自分的にはそれが救いだとも思いました。

  • 他の作品のところでも記したが、著者の小説(文庫化後であるが笑)には、つい手が出てしまう。
    魅力的なタイトル(どういう内容だろうと興味をそそられる)と、読みやすさから。
    平易な文章と、読者の胸に問いかけるテーマの多様性により、普段あまり本を読まない人々も手に取り、ベストセラーになるのだろう。
    本作のテーマは、諸外国からは遅れているとみなされる日本の脳死と、臓器提供を巡る問題。
    娘の脳死を受け入れられない夫婦が、驚くべき方法(最先端の技術の応用)で、娘との生活を続ける。ここら辺は、如何にも理系出身の著者らしい発想。娘はこの先どうなるのだろうかと、読者は目が離せない。
    そして終盤、現代日本の法制の不完全さを衝く母親の行動には、頁を繰る手が止まらなくなった。
    遂に迎える終局は、著者のストーリーテラーとしての巧みさに瞠目。
    最後、母親が娘の遺影を前に語る。
    「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして、子供のために狂えるのは母親だけなの」
    母は強し!

  • 「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。そして子供たちのために狂えるのは母親だけなの」

    ある日突然子供が事故で目覚めなくなる。
    そんな状況を誰が想像できるだろう?
    しかも「脳は機能していないが奇跡的に体の機能は保たれている」というかなり特殊な状態。
    娘は生きている?死んでいる?そんな曖昧な状態に置かれ、翻弄される母・薫子と家族の物語。

    おそらく脳死、という診断を受けながら、
    娘は生きていてまた目を覚ますかもしれないと希望を捨てない薫子。電気信号を体に流すことで娘の手足を動かしたり、笑わせたり…
    「彼女はすでに死んでいるのに気味が悪い」と周囲との溝が深まっていく。

    それにしても薫子の完璧主義というか、没頭ぶりには鬼気迫るものがあり、「こんな奴いる…?」と途中から若干引き気味…
    薫子の我が子を思う気持ちは十分分かる、けど近親者にこんな人がいたら堪らないなぁ…

    倫理的な問題は、他人と意見を合わせる必要がない
    また、意見を押し付けない
    最終的にそんな境地にたどり着いたとき、私もフッと力が抜けた。

    ラストとキレイにまとまって
    テーマは難しくても驚くほど読みやすくて
    さすが人気作家さんだなぁと

  • これまで自分が読んできた東野圭吾さんの作品とは少し違う類いの作品だなと感じました。

    表現の仕方や登場人物の傾向はこれまでの東野さんの傾向が見られたが内容は想定外でした。

    この物語の中で挙げられた最大の議論に関してはそのような状況下に陥ったことも考えたこともなかったので、初めて知ることがたくさんあり人々の捉え方や決断にただただ感嘆するばかりでした。

    ぜひもっとたくさんの方に読んでいただきたいです。

  • 東野圭吾先生といえばミステリー小説のイメージがありますが、この小説はミステリーではなく、ある事について考えさせられる内容でした。
    大まかなあらすじは、水難事故によっておそらく脳死状態となった子供を介護する母親と周囲の人の物語です。脳死は人にとって死であるのか、臓器移植の在り方は?その問いかけが根底にあるように思えました。

    死というものの定義はとても難しいと思います。
    肉体的(物体的)な死は、蘇生不能な状態が恒久化した時と考えていました。しかし、脳の機能が停止しても心臓や呼吸もすぐに止まらない事例、手に触れた際に指が動いたといった事例もあり、はたしてそれは死と定義し受け入れられるのか?と考えています。それが身内であれば尚更だと思います。
    その一方で、臓器提供は脳死状態の場合と心停止状態の場合では提供できる臓器の種類や数に差があり、脳死の方が提供できる数が増えます。そのため、臓器提供する側としては脳死も死と定義して救える命を増やしていきたいという考えも理解できます。

    物語を通して母親の介護は第三者の視点で見ると狂気的と思えるかもしれません。ですが、もし自分が作中の母親のような状況となったらと考えると、同じような行動をすると思います。それだけ人の死というものは複雑なものだと考えさせられました。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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