鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 1028
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (736ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426511

感想・レビュー・書評

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  • レンガ本。
    持ち歩くのが、重かった・・・。

    今回は火村先生ではなく、有栖さんがメインで活躍。ホテルで暮らせるなんてなんて贅沢なんだろうと思ったが梨田の生活を見てみると色々考えさせられる。まぁ、梨田の場合は御祓の意味も含むからちょっと違うかもしれないけど。
    ただ、最後一番強く感じたのは男性と女性の見た目の変容。気づければこんなことにならなかったのに。

  • ホテル暮らしの老人が亡くなった。
    自殺か殺人か…それを調べるためにアリスが単独で調査を開始する。
    後半で火村先生が合流するまで、秘密に包まれた男の謎をかなり調べあげたアリスがすごい!
    ちょっとずつベールを剥がされていく過程で、驚く事実が分かったりしていくけれど、なかなか自殺か殺人か分からないのが焦れったい。
    どちらかが分かるのは終盤になってから。
    長編なので読み応えがあった。
    謎解きだけでなく老人やホテルの人たちのドラマがあり、とっても面白かった。

  • 死者をひたすらに、深く、深く探っていく。いつもは事件が起こり警察の要請を受けてから動く、火村・アリスコンビが、今回はいつもと少し違った捜査方法で、事件の真相に迫っていきます。

    アリスは面識のない大物作家、影浦浪子の招待を受け、文壇のパーティーに出席する。影浦がアリスを招待した目的は、ホテルで自殺したとされる梨田稔という男の、死の真相を探ってほしいというものだった。
    生前、5年近くホテルのスイートルームに住み、ホテルの支配人夫婦や常連客とも馴染みの深かった彼は何者だったのか。興味を持ったアリスは火村と共に調査を開始しようとするが、折りしも火村は大学の試験監督のため身体を空けられず、アリスは単身、調査を開始する。

    いつもは切っても切れない火村とアリスの名コンビ。しかし今回は、小説の半分以上。400ページ近くアリス単独の調査で進みます。

    ひたすら足と聞き込みで、梨田の人生を追っていくアリス。
    「鍵が掛かった男」梨田の秘められた過去が、アリスの粘り強い調査で少しずつ明らかになってくる。

    この調査の過程はとにかく地味で、そしてなかなかの長さもあるものの、シリーズファンなら、いつもと違う調査といつも通りのアリスの語り口で、自然と読んでしまうのではないかと思います。

    火村から『お前は本当によくがんばったよ』という言葉(この発言、女性火村ファンはクラっとしそう)を引き出すアリスの調査は少しずつ、封印された梨田の過去と罪を明らかにしていきます。そして真打ち火村が後半に満を持して登場。梨田の過去と事件の真相をめぐる物語は、佳境へと向かう。

    アリスの調査と火村の推理で、徐々に梨田の人生が形作られていきますが、彼の数奇な運命と、人生の要所で迫られた究極の選択、そして孤独と救いは、ある意味では事件の真相以上にドラマチックに映ります。
    梨田の死亡事件については、有栖川作品らしくロジックで解き明かされるのだけど、単にロジックだけでは割りきれない、被害者の人生もこの『鍵の掛かった男』では描かれ、二重の意味で面白く読めました。

    そして梨田の人生の最期を知る人物の複雑な感情も、改めて人生の数奇さと、人の感情の割りきれなさを映すようで印象に残ります。

    現場となったホテルのある中之島の風景も読みどころの一つ。自分は国際美術館や、朝日放送、朝日新聞なんかに行ったことがあるので、自然と土地の様子や雰囲気も思い浮かぶのだけど、中之島や淀屋橋回りの川や橋の風景の描写も、風情が感じられました。土地勘がある人なら、より楽しめそうな作品。

    本格ミステリとは関係の薄い、被害者の人生にひたすら焦点を当てるこの『鍵の掛かった男』。
    有栖川さんの作品では、やや異色ではありますが、いつもの有栖川さんと一味違った本格ミステリが楽しめたと思います。

    2016年版このミステリーがすごい! 8位

  • こんなに分厚い有栖川作品初めてかも!
    しかも火村シリーズと位置付けてるけど、434ページまで火村が登場しないという、、。
    本格ミステリには珍しい、謎の多かった故人の過去を調べることにスポットライトが当たる。
    今回は有栖川有栖の探偵ぶりが発揮される作品(本人無自覚)。

    ホテルの一室で首を吊った人が自殺であるとは信じがたい。
    独自に火村と調査してくれと、同じホテルに泊まっていた大御所作家から依頼された有栖は、入試シーズンで忙しい火村の代わりに一人で調査を開始する。
    5年もホテルに滞在し続けて過去を話さず、余生をボランティアと美術館鑑賞で静かに過ごしていた男の自殺の原因は一体何か、黙して語らなかった男の過去に何があったのか、本当に自殺だったのか。調べていっても梨田の本人像が中々見えてこない。
    ホテルのスイートルームに自腹で10日も泊まって調査した有栖に良くやったと言いたくなるよー。
    大御所が調査料は出すって言ってるのに、高潔な精神ですね…。

    途中、怪しいなと思ったけど理由がわからず、火村の質問を受けてる様子から、あれ違ったかな…?と思ったところだったので、最後答え合わせで説明された事でなるほどーと思った。
    火村がヘマ(動揺した態度を犯人に見られた)をしたことで犯人が行動した事で逆に墓穴を掘ったという流れだけど、いやぁ難しかった。
    残念ながら一回行ったきりの自分にはあまりイメージが湧かなかったけど、大御所が書いた淀殿の話や中之島の地理的な話も具体的で、大阪ゆかりの人なら読んでて聖地?巡りの散歩したくなるかも。


    梨田さんの数奇で悲劇的な運命もまさになんでこのタイミング!みたいなことの連続で、梨田さんが生前言った、こちらが何もしてなくても悪意を向けられることもある。というキーワードを表したような作品だった。

    読みごたえがあって人間ストーリーがあって、この作品が火村シリーズでは一番好きかも。

  • 面白かったー!分厚いのでむしろのんびり読み進めようと思ったけど止まらない。じっくりゆっくりのめり込める充実感のあるミステリーでした。登場する有栖川のキャラクターも好印象で、緊張感もあれば独り言のツッコミも面白くて。

    初、有栖川有栖で、ベテラン本格ミステリーの印象に躊躇していたけれど、読みやすかった。そして、火村英生シリーズとは知らなかったので、他のも読んでみたい。

  • 梨田稔の謎がだんだん明らかになっていくのは面白かった。謎が解明されて達成感があったが、事件の本質である犯人あてはここからだった。1冊で2度美味しい本だった。

  • 火村シリーズ、今回はアリスが頑張ってた。
    ホテルで亡くなった男は自殺か、他殺か、そこから不明なため男性、梨田さんの生い立ちや、ホテルで過ごした5年など、様々なことを様々なひとから聞くうちに段々と謎の多い梨田さんの人物像がわかっていく。
    そして段々と真実に近づいていく様子が、アリスと一緒にこちらも一緒に肉薄している気がして楽しめた。

    梨田さんが孫を抱くことを楽しみにしていたのはこちらも目頭が熱くなった。
    我が子は抱けなかったけど、孫が抱けるかもしれない、なんて、そんな楽しみで幸せなことはない。
    それが叶わなかったのは悲しかった。

    犯人の動機はなんとも自己中な気がするけど、人間は多面的な生き物だから。作中でも触れられてたけど、犯人だってその日いろいろな事情が重なって、どうしても快く目の前の老人に席を譲りたくなかったのかもしれない。その行動がまさか、結婚という幸せが手から滑り落ちる原因になるとは思わないだろう。
    逆恨みだって言われるだろうけど本人としてはやるせ無いよなあ。

    物凄く盛り上がりのある作品ではなかったけど、個人的はとても好きな一作。

    火村先生のイケメン設定がなかなかしっくりこない笑

  • 電子書籍でダウンロードして、さくっと読もうと思ったらまさかの大長編だった。

    いつも役に立たない(失礼)助手役の有栖が1人で情報収集に当たっているのがとてもよかった。火村先生にも褒めてもらえて、よかったね。

    少しずつ明かされていく謎が面白かった。
    二転三転する「鍵のかかった男」の秘密。
    ぜひじっくり読んで、有栖といっしょに謎をといてほしい。

  • 分厚すぎ!と思って読み始めたが、話が進むにつれおもしろくて一気に読んでしまった。見た目通り長いので、散りばめられた伏線は綺麗に回収するし、「鍵の掛かった男」の何重にも掛かった鍵も最後にカチッと回されて開かれる。とてもすっきり。
    なので、見た目に反してすぐ読んでしまった。

    今回は半分以上アリスの単独捜査で、真実に肉薄していくのがとても良い。いつもは奇想天外なトリックをぽんぽん言って火村にバカにされがちだけど、今回は違う。地味ーな捜査ながら、足を使って様々な人から少しずつ被害者の話を聞き出し、人物像を形作っていく。読者も同じ情報から、大体アリスと同じような結論に至るので読んでいてとてもわくわくした。
    そして満を持して火村先生のご登場。
    アリスに「お前は本当によく頑張ったよ」と言う火村先生にきゅんときた(笑)
    火村先生により、アリスが拾ったパズルのピースがどんどんとはめられていき、最後にかちっと鍵が開いた。
    禍福は糾える縄の如し、とは鍵の掛かった男の一生を言ったようなもの。最後は孫を抱いて幸せな気分で逝きたかったろうに。

    長い話だけあって、殺人、被害者の人生、そしてホテルへの愛が何重にも絡まったいい話でした。
    いつになっても34歳のアリスと火村先生と、大体共有する時事ネタが一緒になってきて違和感(笑)
    読み始めたの高校生の頃だったんだけどなぁ…

  • 単行本版を既読。そういえば文庫版を買っていなかったな、というのと分厚い本が読みたいな、というので購入した。単行本を読んだのは5年近くまえ。細部を覚えていたりいなかったりしたが『鍵の掛かった男』の死の真相はまったく覚えておらず、初見のように読めた。そしてシリーズのファンならよく知るアリスの取り扱いが他作品とはひとあじ違うという点でも、本書は読みごたえがあるだろう。緊張感を程よく持続させながらぐんぐん読ませるので、700ページがあっという間であった。こんなアプローチをされるから、ミステリから離れられないのだ。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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