森は知っている (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 899
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426436

作品紹介・あらすじ

南の島で知子ばあさんと暮らす十七歳の鷹野一彦。体育祭に興じ、初恋に胸を高鳴らせるような普通の高校生活だが、その裏では某諜報機関の過酷な訓練を受けている。ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも-!?その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとなる初ミッションに挑むが…。

感想・レビュー・書評

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  • 『森は知っている』吉田修一著

    1.購読動機
    202005放送の『路』の番組がきっかけです。
    実際の歴史出来事と人間のドラマを交錯させる見せ方に関心があったためです。

    2.森は知っている から投げつけられたこと
    「死にたいならばいつ死んでもいい。
     今日死のうが、明日死のうがそんなに
     違いはないだろう。
     ならば、今日一日だけでいい。
     ただ、一日を生きてみろ。」

    強烈だった。
    がつんときた。

    3.本書
    幼きころ肉親に捨てられた。
    弟は目の前で餓死。
    自身は孤児院で生き始める。

    彼は、その後ある組織に拾われる。
    名前を戸籍を変えて、別の人生を歩みはじめる。
    そう、産業スパイだ。

    時は水道事業の民営化。
    韓国企業と日本企業の駆け引きが始まる。
    そして、それぞれの国の産業スパイ。

    組織のルール。
    18歳で正式な構成員となるか?やめるか?
    なるならば、肉体に爆弾をうめて奉仕をする。
    拒否ならば、戸籍を無くして、名もなきひととして生きるだけ。

    どちらも酷な運命である。

    4.18歳の主人公と周りからの学び
    組織への裏切りは罰せられること。
    当たり前の顛末。

    ひとは、何かに所属して、何かのさだめを与えられて、一日を生きていけること。
    孤独であることが、どれほど耐えづらいものなのか?ということ。

    #読書好きな人とつながりたい。

  • 「国宝」の書評やレビューをみて、吉田修一さんという作家を知り国宝が文庫になったら読もうとおもってたんだけど、我慢できずに手に取った一冊。

    のほほんとした島の生活にカモフラージュされた、壮絶な組織の中での任務。二つの対比の振り幅が大きいからこその魅力だと思う。
    冷たく機械的な対応としかおもえないAN通信の人々。そもそもの出自が幸せとはいえない人の集まりなのだから仕方がない、という思い込みはみごとに裏切られた。
    想像をはるかに越えるおもしろさで、吉田作品にはまりそう。

  • 吉田修一の鷹野一彦シリーズの第2作目。(2015年4月単行本、2017年8月文庫本)。
    第1作目の「太陽は動かない」の主人公、鷹野一彦がエージェントへ訓練されていく17歳高校3年生時代の物語。同時に上司の風間武が記者からAN通信のエージェントになる背景も明かされ、鷹野と風間の強い絆も描かれる。
    鷹野と同じ境遇の親友の柳と共に沖縄の離島で高校生活を送りながら訓練を受けていたが、柳が突然姿を消す。逃亡したと思われたが、姿を消した背景にどんでん返しの結末が待っていて、これは面白い。
    鷹野のエージェントとしてのテストを兼ねた初ミッションの仕事ぶりが「太陽は動かない」での31歳の円熟した優秀なエージェントとしての片鱗をうかがわせる。そして同世代あのデイビット・キムとも絡み、「太陽は動かない」での鷹野とデイビッドとの敵でありながら味方にもなる不思議な関係の背景を見た感じがする。
    4歳で保護され11歳で軽井沢の風間に引き取られた鷹野は、家政婦の北園富美子に息子のように育てられ、沖縄の高校時代はエージェントの訓練を受けながら知子婆さんに世話になる。いづれもAN通信から派遣された人材らしい。
    高校3年生の時に転校してきた菊池詩織に初恋をするが、卒業して詩織はニューヨークへ留学、鷹野はエージェントとして上海へ出張、偶然旅立ちの成田空港で出会ったところで物語は終わる。
    いつかまたこの二人に出会いがあり、新しいドラマがあることを期待したい。8/6に発売されると聞いた文庫本、シリーズ第3作目の「ウォーターゲーム」も是非読んでみたいと思う。

  • 『太陽は動かない』をまだ読んでいないので、いきなりの『森は知っている』なので何も知らないで南の島での謎の冒険?と思って読み始めました。
    違いました。
    ストーリーは面白かった。
    主人公達がそこに至るまでの経緯は正直辛かった。

  • 1冊の本としては前作『太陽は動かない』の方が好きだったけどAN通信と鷹野の過去、風間さんの人柄とか知れてうれしかった鷹野にもちゃんと少年時代があったんやなーてなった

  • 映画は、「太陽は動かない」と本作品「森は知っている」をあわせて、また違った作品を構築していた。
    どちらも、時を忘れて楽しめた。
    次巻の「ウォーターゲーム」を早速読み始める。

  • 鷹野第2弾。今回は高校生時代に始まり、産業スパイになるまで。南の島で高校生活を送りつつ訓練し、諜報員になるテストで実際の活動(自作につながる水問題)をする。青春ものでもあり、恋も友情もあり、今回は風間と鷹野の絆、そして、誰が裏切り者か、満載であっという間に読み終わった。3作の中で一番熱いかな。風間の「生きてみろ」という叫び熱い想いが伝わってきました。鷹野は壮絶な人生を送っているな、鷹野が35歳を迎えその後まで物語は続けて欲しいものです。深すぎず、軽すぎずよかったです。

  • 鷹野を主人公とするAN通信シリーズの2作で彼の生い立ちから若かりし頃を描く時系列としては一番初期の作品となる。『ウォーターゲーム』を手に取ってその前に全二作を読んでおこぅと先にこの本を手に取った。スパイアクションとしても鷹野の青春譚としても面白く読めた。それにしてもいろいろな作風の小説を書く作者さんだなあ。

  • 「太陽は動かない」と「森は知っている」
    並んでいたので本書を手に取った。
    間違えたかな?
    こちらはシリーズ二作目だった!
    しかしながら、主人公の若かりし日のお話。
    過去の出自から、人間関係まで描かれていたので、スイスイ読めました。
    AN通信社のやってることって、鷹野くん達、子供にとっていい事なのか、どうなのか。
    物語としては、理解できるけど。
    子供の虐待や育児放棄など、最近よく聞くニュースになっているが、AN通信社が有れば救われた命もあったのかも…

    残業スパイとして成長した、鷹野一彦に会いに行かなくちゃ!
    「太陽は動かない」読まないとね!

  • 鷹野一彦シリーズ第2弾。
    「太陽は動かない」の主人公、AN通信エージェント鷹野一彦がエージェントへ訓練されていく17歳高校3年生の物語。
    沖縄の南の島で暮らしている鷹野一彦、ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。

    面白かった!!

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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