パリの国連で夢を食う。 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426177

感想・レビュー・書評

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  • こういうの、大好物です。留学だとか、海外赴任だとか、海外で奮闘する話や、社会人で大学入りましたなどの、せんでもいい苦労を自ら進んでして、自分のやりたいことを成し遂げた話とか、「すごいわ、えらいわ」と感心しながら読むのが大変、好きです。おそらく憧れがありつつもなかなか自分では行動できないために、疑似体験させてもらっているんだと思います。

    本書なんて、パリですよ、憧れのパリ。しかも国連。将来は英語を使って海外で仕事したいなーなんて夢見る中高生なら一度は憧れるのではないでしょうか、国連。大人になるにつれ、自分にはそんな器もなけりゃ、頭脳もないと、薄々気づき始め、国連なんて遠い遠い存在になっていきますが、そこで、働いたと申されるのですよ、この著者は。ということで、本書を知ってすぐ図書館で予約しました。
    ところで、国連で働きたいならフランス語を勉強した方がいい、なんて大学で第二外国語を選ぶときに風の噂で聞いたことがありますが、本当なんでしょうか。そこらへんも読んでいくうちにわかっていくでしょう、と読み始めました。

    パリだとか、国連だとかいう前に、この著者、川内有緒さんに度肝を抜かれました。なんてパワフルな方なんでしょう。なんというか、狭い日本で、いわゆる一般的なレールを歩いてきた私からしたら、アリオさん(同僚に「アリオ」と呼ばれていたようなので、ここでもそう呼ばせていただきます)ご自身がアンビリーバボーです。
    映画を撮りたくて日大芸術学部に入学し、大学院は突然アメリカへ。スペイン語修得のための短期留学中には、ホストファミリーの反対を振り切って、バスもめったに通らない小さい村へ突撃訪問。シンクタンクやコンサルティング会社勤務ののち、かなりの倍率を突破して国連職員へ転身。その貴重なポジションも6年ほどで手放し、フリーランスの作家になる。
    どうです、ざっと書いただけでもこんな感じです。
    さらに国連を辞める直前には「何か残したい」と映画を撮る・・・。す芸。すげぃ。

    読む前から、国連を辞めたことはわかっていたので、「なぜ?どうして?」と思いながら読み進めたのですが、読めば、わかります。ここはもうとにかく読んでみてと言うしかないです。なんというか、国連という器に収まらないんですよ、アリオさんは。というか、どの器にも収まらない。その時、内から外からやってくる波に乗っていく、そんな人だと思いました。

    国連の仕事を知りたいというのなら、本書はあまり役に立たないように思います。そこの分量はそんなに多くないです。しかしながら、パリでの生活や、アリオさんのプライベートなことは、結構書かれていて、期待と違ったけれど、良い意味で裏切られて楽しい読書となりました。

    私はとにかく「国連」と「パリの生活」に興味津々で読みました。
    「国連」とひとくくりにまとめても色んな仕事があり、忙しさも色々だと思いますが、アリオさんがおられた部署はおもしろくもあり(特に同僚たちが)、ガッカリでもあり・・・といった感じでした。だって、予算がないから仕事がない、なんて!すんごい優秀な人ばっかりいるのに、貴重な才能と人件費を無駄にしているようでして。そうは簡単にいかない事情もあるのでしょうが、「(人材が優秀かはさておき、人件費の無駄は)なんだうちの職場と変わらないじゃん」と思ったり。予算がないという理由だけで仕事が進まないんじゃ、世界平和も進まんよ、と思ったり。それでも、実際に内部におられた人の話として本当に興味深かったです。ちなみに、国連での公用語は6か国語らしいです。

    そして、パリでの生活。こちらも大変興味深かった。パリでの家探しは、難攻不落のお城のように、移住者の前に立ちはだかるし、引っ越し業者は時間通り来ないし(これは海外あるあるかな)、システムの不具合で引き落とされた払う必要のない家賃は自分で大家と交渉しなきゃだし。あれ、「住」に関することばかりだ(笑)まぁ、パリは住むというより旅行でいいかな、と思いました。しかし、パリ市内をあちこち散歩したり、大好きな公園でジョギングするとか、はぁ、やっぱりステキ・・・

    本書で自分の「作品」として、パリで出会った人たちについて文章を書いていたアリオさんは、その後「パリでメシを食う。」として本を出版したらしいので、そちらも読んでみたいところです。

    あとがきで、国連で働きたいけれど、という相談に対して、アリオさんはこう書いています。「どこか特定の組織で働くといったような代替不能な目標を立てて、そのハードルの高さに思い悩むよりも、今この瞬間にその足を軽やかに前に出して泳ぎだしてごらん」と。「日々積み重なる「今日の自分」という経験ほど、絶対的なものはない。それは、どんなことがあっても誰にもとられない。」と。この言葉こそ、アリオさんの生き方なのだと思いました。

    面白かったです!

    • もじこさん
      はじめまして。突然のコメント失礼致します。
      この方の別の本を読み終わったところでした!!この本も気になります✨読んでみたくなりました。
      はじめまして。突然のコメント失礼致します。
      この方の別の本を読み終わったところでした!!この本も気になります✨読んでみたくなりました。
      2024/03/18
    • URIKOさん
      >もじこさん

      コメントありがとうございます!
      本書、面白いですよ~。この作者の行動力のすごさに感心します。
      もじこさんが読まれた本...
      >もじこさん

      コメントありがとうございます!
      本書、面白いですよ~。この作者の行動力のすごさに感心します。
      もじこさんが読まれた本は、全く違うタイプの本のようですね~!
      2024/03/18
  • 著者の川内有緒さんが、パリの国連に採用されてから辞職するまでの経験や葛藤の記録。

    国連は、目指すゴールは立派だが、200ヶ国近くの公平性などを考慮する必要がある大所帯で、外から見ているときに描いていた"国連像"と実態はかなり違うということがよくわかる。
    職員の福利厚生は手厚いが、組織内のリサイクルルールを決めるだけでも大モメするようなところ。職員の間でも、雇用の形態によってその処遇は大きく違う。
    世界の貧困や紛争をなくすことに貢献したいと思っても、現地に行くことはおろか、担当になることも簡単ではない。

    夢と意志を強く持っている職員が離職するのもムリもないかも。
    一方で、そうしたインターナショナルな環境で働くことは大変なことも多いが、いろんな考えを持った人たちにも会えて、とても魅力と刺激に溢れていることも間違いないだろう。

    著者が離職を決めてから、職員に行ったインタビューで、仕事で嬉しかったことを答えられる人がいなかった一方で、"あなたにとって国連とは?"と質問したら、"ドリーム"と答えた人が複数いた、というのが印象的だった。
    やはり、日常的にはどうであれ、根幹には、平和な世界という人類の夢を実現するための組織だという意識を持って働いている人がいると思うと、応援したくなった。

    著者は、アメリカでマスターを取って、日本のシンクタンクに務め、国連の直接公募するポストに採用されたくらいだから、元々能力が高いのだと思うが、そのバイタリティーに感服。と同時に、自分に正直に、思い切りよく決断できることを羨ましくも思えた。

  • 興味深い人生を送っているうえに、それを面白おかしく文章にする技術があるってすばらしい。
    パリもバルセロナも大好きだからすごく楽しめたし、単純にうらやましかった。
    パリに住みながら、リーガのサッカーライターの彼氏がいる人生とか、最高最強なのだが。
    しかも仕事は国連の正規職員。
    わたしなら一生を捧げる。
    そして地道にのしあがる。
    「今日」をしっかり生きていこう、と呼びかける あとがきがよかった。
    巻末にスナップ写真が載っていたけど、もっと見たかった。カラーで。

  • 川内有緒さんの著書を初めて読んだけれど、鋭い着眼点と思いの丈を言葉に表す技術とセンスが抜群な印象でした。

    おそらくアリオさんと同じ境遇で同じ生き方をしていても、アリオさんにしか気付けない発見や面白みがあって、それを敏感に感じ取り、面白く巧みに文章にするスキルが羨ましく、興味津々で読み進めました。

    「L字ウォーズ」や「椅子を巡る下剋上」など、標語付けのセンスも最高。

    ただ面白いだけではなく、国連のリアルな内部事情や働く人たち、パリの文化、異邦人ならではの心境など、学べる部分がとても多く、目から鱗でした。


    「誰もが誰かと一緒だった。いやおうなしに、自分は一人だと思い知らされた。自分には、知っている場所もなく、電話する人もおらず、一緒にご飯を食べる人もいない。でも、それは寂しいというより、愉快な気分だった。私は、ここからまた一人で出発するのだ」

    この文章にアリオさんのポジティブさが詰まっていると思う。
    私だったら愉快な気持ちにはなれないかもしれない、、
    新しい生活、人間関係を存分に楽しむ。
    悲しみや苦しさが相まっている時も、その経験自体を誇りに思う。
    生きていることを存分に味わう。

    沢山のことを教えてくれる素敵な本でした。

  • 日本のシンクタンクを辞め、パリの国連機関に就職し、退職するまでのパリの生活を綴ったエッセイ。

    フランクな文章が、読みやすいけど好みど真ん中ではなかった。著者の行動力から学ぶべきことは多いけど(はあちゅうさんが解説で言うように、それまで築き上げてきたものを捨てる勇気を持って、自分の意志で新しい道をがっちりと掴むからこそ、夢は叶えられるのだ)、もう少し内省的な文章の方が個人的な好みに近いんだと思う。

  • 夢を叶えた自叙伝ですが、本当に映画の様な人生で、川内さんの魅力にあっという間に引き込まれてしまいました。
    はあちゅうさんの解説もとても素敵です。

    「大きな決断というのは、人から見ると時に突然で、大胆なように見える。しかし、本人の中では、一滴ずつ水がしみ出すように始まっている。その水は、いつか流れになり、小石を動かす。小石とは自分の奥深くに堆積した塊。ふだんはじっと動かないので、気にもとめない。」
    という部分が大好きです。大きな決断をするのに大きな石を動かす必要があると思ってしまっていましたが、小石が転がるような一歩でもいいんだと思うとなんだか勇気が出てきました。

    そして「私は世界を変えたかったのではない。いつも自分を変えたかったのだ。」という言葉が印象的でした。
    国連で働きたい人、行ってみたい場所がある人、やりたいこと、やりたい仕事がある人。
    今の自分を否定する「変わりたい」ではなく、もっと自分のことが好きになるために「変わりたい」と思う。そんな「変わりたい」気持ちが芽生えること自体が幸せな人生なんだろうなと思います。夢がゴールではなくて、もっと大好きな自分になること。そのために皆生きているのかもしれないと思いました。自分をアップデートさせたくなる、とても素敵な一冊です。

  • 誰もが踏み出す前は「未経験」なんだよね。
    この人は、あらゆることに踏み出す天才なんだなと思う。

    二年前ごしに国連から面接の案内が届き、えいやあとパリへ。
    合格するかどうかも分からないけれど、それまでに働いていた日本の勤め先ではもう働けないと思い、辞めてしまう所から始まる。

    国連で働いた五年間の話が、とてもスムーズに読めて、面白い。
    ……のだけど。
    結局、アリオさんは国連で何をしたんだろう、そしてなぜ辞めたんだろう、そのことが、書かれているのに掴めないまま終わってしまったような気がしている。

    ソルボンヌ大学で講義を受けるつもりが、先生になるくらいだから(笑)きっと、たくさんのメッセージや経験を持っているはずなのだけど。
    どちらかというと、生活上のあれこれが中心になっているエッセイだった。

    自分自身のために、働くこと。
    アリオさんには、譲れないものがある。
    そして、それを譲れないと決断できる彼女には、どうしたって憧れるなぁ。

  • 国連で仕事をしていた体験談を綴った本。国際的な話と接点のない人でも知らなかった世界が顔を出して、びっくりすること間違いがない。日本も世界の一部分でしかないのだと気づくことだろう。

  • びっくりするほど読みやすい!!!

    というのがこの本の第一印象。

    気がつけばペラペラページを読み進める手が止まらなくて、
    後々作中にて筆者のやりたいことについて触れていく描写もあるんですけど、「あ、これは文章を書くのが好きな人の文章だ。」と読んでいて何度も感じました。

    内容としては作者が思いがけないきっかけ(?)で国連に勤める話。(タイトルのまんま)

    中々勤めたくても勤められない国連で、しかも勤務地は花の都パリ!
    満期まで働けば年金も一生分貰える、

    なんてラッキーな仕事に就くことが出来たんだろう!


    というスタートから始まるこの本ですが、
    国連で働くにつれて自分の中の本当にやりたいことや、「自分は人生この先どうしたいんだろう…」という、生きていたら1度はぶち当たる悩みにゆっくりと、でも着実に向き合っていく描写が描かれています。

    前半部分では国連での仕事や、人種も国籍も違うユニークな同僚達の話ばかりなのと、また感想を書いている私自身が大学で国際関係を学んでいたのも相まって「うわー国連なんて羨ましい…!めっちゃ楽しそう!!」と飛び付いてしまいそうになるのですが、

    いくら環境が華やかで同僚や先輩が優しく面白い人達で溢れていても、自分の中の心の声には目を逸らせられないんだな、ということを深く感じた1冊でした。

    ・国際機関の仕事に少しでも興味がある
    ・異国間の交流に興味がある
    ・ふふっと笑えて元気の出るエッセイが読みたい
    ・ゆるっと自分の背中を押してもらいたい

    上記に該当する方には是非オススメの1冊です!

  • 私は今、転職する直前でこの本を読んだ。
    パリとか国連とは、私には遠い存在ではあるけど、登場する人物が面白い方ばかりで。出来事が面白いことばかりで。アリオさんの人柄がそうさせているような。
    終盤の方の心境、今の自分と重ねてしまうところもあり、とても共感した。どこにいようと、どこで働いていようと同じことを感じるものなのかと思った。
    どうなりたいのか。何をしたいのか。

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著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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