有頂天家族 二代目の帰朝 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2901
感想 : 193
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425828

作品紹介・あらすじ

狸の名門・下鴨家の矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり買っている。皆が恐れる天狗や人間にもちょっかいばかり。そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎ"二代目"が英国より帰朝し、狸界は大困惑。人間の悪食集団「金曜倶楽部」は、恒例の狸鍋の具を探しているし、平和な日々はどこへやら…。矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ!

感想・レビュー・書評

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  • 京都を舞台に狸と天狗と人間の織り成す、予測不能の傑作エンタメです。天狗の赤玉先生の二代目が帰国し人間で半天狗の弁天と戦ったり、狸界の頭領、偽衛門の称号をめぐる陰謀があったり、めくるめく展開が毎回凝縮されています。
    にもかかわらず、しっかりしたストーリーの構成と「鶏群の二鶴」のような漢文調の熟語が効果的に散りばめられ格調高く物語が構成されています。
    何も考えず、ストーリーの赴くまま、躍動する登場人物たちを追いかける。次か次かとワクワクしてページをめくっていく。これぞエンターテイメントですね。
    森見さんの作品の荒唐無稽さに挫折を繰り返してきましたが、本シリーズは狸や天狗、京都という舞台設定が絶妙で違和感なく楽しめました。
    笑えるのは物語の描写の中に、怒涛の展開、意表を突く展開を自分で描いといて「なにゆえ…理解に苦しむ。」とか、「訳がわからなさぎて言葉にならない。」などとツッコミを入れているところです。
    森見さん自身もそうなのでしょうか(笑)
    狸がかわいらしく、キャラの一人ひとりが光ってました。とても楽しめました。読書の楽しみや奥深さがまた広がった一冊です。

    • misachi68さん
      ちゃたさん、こんばんは!
      続編でこんなに楽しいなんてすごいですよね。
      私も可愛い毛玉を愛でたいなぁ、とか思ってました。
      ちゃたさん、こんばんは!
      続編でこんなに楽しいなんてすごいですよね。
      私も可愛い毛玉を愛でたいなぁ、とか思ってました。
      2022/07/13
    • ちゃたさん
      misachi68さん
      本当に素敵な本を紹介くださりありがとうございます。
      ラストが近づくにつれページをめくるのが惜しくなるほどでした。毛玉...
      misachi68さん
      本当に素敵な本を紹介くださりありがとうございます。
      ラストが近づくにつれページをめくるのが惜しくなるほどでした。毛玉たち最高でした!
      2022/07/14
  • 「古代の王政」

    物語の面白さ、大団円、ラストシーンの憂いといった物語体験そのものの楽しさはもうみんな認めることだろうと思うから、楽しかった!面白かった!のひとことふたことで充二分。

    その上で、この物語における人間、天狗、狸の関係性について。

    三つ巴、三方塞がり、いろいろと言い方はあるだろう。

    しかし、およそこの自然においては三つ巴とか三方塞がりとかさんすくみ、ピラミッド、ハイアラーキー、三権分立という形態は理想なのかもしれない。

    3という数字は決して阿呆の数字ではなく緊張感がうむ深遠なる美しさを表すように思える。

    三権分立とは、それぞれ相互に重ならない権力を持ち、相互に監視し、持ちつ持たれつの関係性を作る。

    これら三つの権力は互いの境界を侵犯することは法の精神から赦されない事だ。

    「三権分立が理想ぢゃ」と言ったのはモンテスキューが最初ではない。

    ルネサンス期の偉大な思想家ニコロ・マキャベリも古代ローマを参照しつつ「古代の王政」を評価した。

    というより、モンテスキューがマキャベリを参照して三権分立を着想し提案した事は意外と軽視されているし、「マキャベリ思想即ち非共感・簒奪・現実主義である」などと自己啓発・ビジネス書界隈で履き違えられている事は唾棄すべき現象だ。

    古代の王政とは即ち、古代ローマにおける独裁官(執政官)・元老院・市民(民会)の三権力である。

    独裁官による暴政を元老院が監視・阻止し、元老院の無能を市民が監視する。

    当時の市民権は民兵のみが持っていたから、市民が都市を捨ててカンピドーリオの丘に立て籠ればローマは蛮族の侵攻から無抵抗となり、資産持ちの元老院はそれを恐れた。

    そして、三権においてどこかがどこかの境界を侵犯せんとすると、いわゆる政治的不安定が起きる。

    カエサルのルビコン渡河、ワイマール憲政下の国家社会主義者労働党、フランコ総統、そして・・・

    この物語における架空都市「京都」も人間・狸・天狗という三主体が相互的な緊張・協力関係にある事がわかる。

    赤玉先生は二代目と弁天という人間界から攫ってくるという人間界に対する侵犯、夷川早雲は狸でありながら金曜倶楽部に与する狸界への裏切り。

    こうしたそれぞれの境界侵犯が天狗大戦云々といった大騒動を巻き起こす。

    しかし、主人公矢三郎もまた、狸でありながらに境界を侵し、天狗と狸の間を、狸と人間との間をうごうごする。

    この物語を通じて、それぞれの持ちつ持たれつという、ほどよい関係性の大切さ、甘えて甘えられるという事の自然さを実感する。

    自然でほどよい関係性とは即ち優しさに他ならない。

    P.367「私はいつでも優しかったわ」

    この台詞の重さが染み渡る。

    そしてなぜ彼女は優しく可哀想なのか。

    それは自身が人間でもなく天狗でもなくましてや狸でもないというボーダーラインの心性であるという点に他ならないのではないか。

    こんなようにも思う。

  • 森見登美彦さんの作品にはずれなし!でした。
    ストーリー展開や表現方法、キャラクター等が、とても魅力的で、グイグイ読んでしまいました。
    ぜひぜひ読んでみて下さい

  • 狸界の破壊的なドタバタコメディー。
    個人的にとってもツボだったのは(何度か出てきた表現だったと思うんだけど。)「幼き毛玉だった頃」っていう言葉。ピンポイントで心を掴まれてしまいました。

  • 今回はシリアスな場面多し。それを象徴してるのがラストの矢三郎と弁天の2人っきりの場面じゃないかしら。ちょっとちょっと!胸がどきどきしちゃったじゃないの。いつもの阿呆な矢三郎は何処いった?雨脚が強まる沖。ひっそりとした洋館の中。涙をぽろぽろこぼす弁天の髪を撫でる矢三郎。想いも淋しさも悔しさも孤独感も何もかも全部ひっくるめて、全てが届きそうで届かないって感じ?決して成就することはないとお互い分かってる。矢三郎はやっぱり弁天のことが好きなんだろうけど、弁天は矢三郎のこと恋愛対象じゃないと思うの。ただ今弱っちゃって、矢三郎の優しさや愛情に甘えてしまったんだと思う。そんな想像しちゃったら、辛いよね。しんみりしちゃう。弁天と二代目は、憎しみあってるけど心の奥底で求めているものは同じなんじゃないかしら?まぁそんなこと人間のわたしには想像もつかぬこと。だって彼らは(人間だ、天狗にならないとほざいたところで)天狗なのだから。

  •  有頂天家族第二弾。阿呆の血が濃い狸の下鴨一家と暮らす京都の雅かつ愉快な一年。個人的にはこのシリーズの天狗たちにあまり興味を抱かないが、終盤の赤玉先生には何故だかジンとさせられた。本書の目玉は狸乙女である玉瀾と海星。2頭ともいじらしくて愛くるしくて堪らん。次作では矢二郎と星瀾の赤い毛が絡まり合う様も拝みたい。
     二代目は強いのにどうしたいのかわからなかったり、弁天も謎めき過ぎていたりともう少し天狗の心の裡が垣間見えれば、天狗と狸が程良く絡まり合い良い塩梅になったのではと思う。

  • やっと、やっと読んだ!!!
    流石は森見登美彦先生、前作に引き続きオモチロキ作品だった。けど最後はちょっと雲行き怪しげかな?
    夷川早雲たちの陰謀としぶとさ、赤玉先生と二代目との間にある確執、矢一郎と玉蘭の逢瀬→結婚などなど。狸への愛と不思議に溢れた小説だった。早く続きを読みたいので書いてくれぇ!!頼む!!!

  • 「森羅万象これエンターテイメントよ」

    狸・天狗・人の巴模様!

    予測無用の狸思考。

    ツチノコ探せば将棋で語り
    跡継ぎ決めれば恋に戸惑い
    人に化かされ地獄に墜ちる。

    こんがらがるがる、
    運命の毛糸玉。

    「まったくもってごちそうさま!」

    /////

    タヌキ目線の小説なんてなかなかお目にかかれません!三部作第二章となる本書もぽんぽこ大暴れでした。

    読んでると「あれ?タヌキってこんな賢かったっけ?」と脳がバグり出し、読み進めると「やっぱ抜けててカワイイな」と安心できる神の匙加減。いい塩梅です。続編も楽しみです

  • 一作目より面白く、読み終わりたくなかった…

    毛玉たちがかわいすぎる。
    色んなドラマが巻き起こり、赤玉先生もなんだかかっこよく、早雲にも見事に化かされ、阿呆の血も愉快。
    淀川先生も大活躍の狸愛。

    弁天も怖くてかわいくて、次巻が楽しみすぎる。
    最後気になる!

  • 実に見事な二巻だった。二代目の帰朝とは赤玉先生の二代目であり、夷川の二代目であり、下鴨家の二代目のことでもあるんだろうな。退場したかに思えた先代達に変わって二代目たちが活躍する話かと思いきや、先代もまだまだ負けてないぞとばかりに出張ってくる。一巻であまり触れられなかった海星やその他の問題にもきちんと解答がでて、ようやく役者の準備が整ったような感じ。いつ出るのやらわからないが、続編も楽しみだ。話の筋としては、舞台説明を含む一巻を下敷に流れをなぞっていくようなイメージ。序盤の平和な物語でも最後に向かって不穏な雰囲気を上手に配置していく文章力が素晴らしい。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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