- Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344419797
作品紹介・あらすじ
高校に入学したばかりの沙織は、クラスメイトの孝子に「未来から来た」と告白される。未来の世界で二十七歳・無職の孝子だが、イケてなかった高校生活をやり直せば未来も変えられるはずだ、と。学祭、球技大会、海でのダブルデート…青春を積極的に楽しもうとする孝子に引きずられ、地味で堅実な沙織の日々も少しずつ変わっていく。せつなくもきらきら輝く、青春小説。
感想・レビュー・書評
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子どもに勧められて。
塾の国語のテキストに使用されていたらしい。こんな楽しい話しを題材に勉強できるなんてうらやましい限り。
タイムスリップしてきたという同級生の告白から始まりますが、内容はごくごく普通の高校生の日常がメイン。エッセンスとして人生を16歳からやり直したかった話題が出てくる感じで、それがとても良かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
豊島ミホさんは、二冊目。
随分前に『陽の子雨の子』を読んでレビューも書かずにいるけれど、湿気を含んだような二人の感じが拭えずに今もある。
この『リテイク・シックスティーン』は、ある本で紹介されていて手に取った。
二十七歳の孝子が、シックスティーンをリテイクするという不思議な設定の話。
じゃあ孝子がやり直した高校生活をどう感じるかが主軸なのかと言うと、視点である沙織、そして大海と村山くん、それぞれの生が描かれていて、楽しめる。
しかし、ずっと残るのは二十七歳という中途半端な年齢で、どうしてリテイクしようと考えたんだろう。
もちろん、ああ、やり直したいなあーと考えることは単なる願望として、ある。でも、やり直したって、今以上の良きものになる自信も、ないのだ。
永遠に回っていればいい、という沙織の言葉の投げかけは、生きていることの意味を見出せない孝子には凶器だっただろう。
ただ、リテイクしたいという執念だけで超越してしまう孝子の闇は、なかなかに凄まじいものがあるのだと思う。
作品では、そんなハードな面はほとんどと言っていいほど描かれない。だから、謎は謎として私の中にぐしぐしと残ってしまう。
沙織の視点から見ると、丸く収まる青春小説。
けれど、孝子の視点から見ると、そこにまったく別の怖さが佇んでいる。
裏リテイク・シックスティーンとして、この前提をひっくり返すようなもう一冊が出て欲しい。 -
ほんと、職人芸だよ。
こんなにも強烈に「豊島ミホにしか書けないもの」なのに。
なのになのになのに。
これだけの才がありながら離れていくなんて。
なんてばかなんだ。なんて豊島ミホらしいんだ。
私、豊島ミホの目の前であなたが好きだよって叫びたいよ。
どうせ残るものなんて少ししかないのに。
せっかく残ったものなのに。それがあなたなのに。 -
地方在住高校生の青春を描かせたら右に出るものはいない豊島ミホさん。輝きと切なさと愛しさが滲み出る、そして大切な何かを思い起こさせる青春小説。
未来の自分が何者かが判っていれば、高校生活は変わるのかというテーマ。ただし、未来から来たのは友人の孝子で、主人公は自分に自信を持てない沙織である。この配役が、設定に嘘っぽさがなくなって、ストーリーにリアル感を持たせている。あの日あの時こうしていれば…って、後悔する青春を送った全ての人に読んでほしい。 -
私は、豊島ミホさんが好きだ。
彼女は、自分のことを作品に表現しすぎる。
私はそういうところが好きだし、共感もした。
卑屈で、頭でっかちで、自意識過剰で、小心者。
そんな彼女の人間性と、彼女の作品がたまらなく好きだ。
いつか、彼女が完全復帰してくれることを願う。 -
文庫化にあたり再読。
あぁ、そうだ、こういう話だった、とぶわっと思い出す。
経験とか、リアルさだけじゃない青春の物語とはまさにこれだ……と次々ページをめくった。
あの頃の痛みがいまの自分にもどこか通じて、それはきっと孝子が27歳まで生きて、高校生に、16歳に舞い戻ってきているからだ。
ふがいなさや、逃げ出したくなる気持ちや、諦め。目を反らしたい負の感情と、きちんと向き合えと読者に訴えかけてくる。
豊島ミホさんすきだー。 -
「高校時代をやり直しに未来から戻ってきた」と主張する友人を中心に描かれる青春小説
ぶっ飛んだ設定とは裏腹に、内容はあまり特異な事は起きず、
かえってそれが主人公の内面の描写を引き立てていてよい
一度きりの人生をどう生きるかに帰結するエンディングもベタではあるが良かったと思う
一方で、同級生・父等の男性陣の描写が少々薄いような気も -
ラジオドラマがきっかけで購入。
高校生活のありふれた日常かと思いきや、友人・孝子が未来からやってきたという設定で、面白かったです。
もし、孝子が主人公となると、北村薫さんの「スキップ」の逆バージョンな展開?などと想像を掻き立ててしまいました。
未来がわからない主人公・沙織と未来がわかる貴子とのアンバランスな関係ながらも他のクラスメイトを交えながら、高校生活を送る様が、甘酸っぱく爽やかでした。SFな設定なのに青春小説の雰囲気を醸し出していて、あまり違和感なかったです。
一応、タイムスリップものですが、孝子は本当に未来から来たのか?タイムスリップの真相は?というものはなく、ひたむきに生きる高校生達の進路、悩みなどを重視して描かれています。ちょっと多めの量ですが、あっという間に読めました。
未来を知ってからのやり直し人生とこの先知らないままの人生、どっちを選ぶかといったら、後者かなと思いました。
何度もやり直したいなとは思う時もありましたが、今までのことを修正するのではなく、新たに描くことが面白そうかなと思いました。
でも一瞬だけ高校生に戻りたいな…。 -
再読。高校一年生になってできた親友が、なんか妙なことを言い出した。可愛くて胸も大きくて、頭も良い、彼女はほんとうに「うらやむべきひと」なのか……?
おそらく初読とは違ったところにはまった。孝子のどうしようもないきもちがぐっときた。それぞれに辛く思うようなことは存在していて、でも、辛いことだけでもない。ちょっとずつ、生きていくんだなあ。豊島ミホさんの作品では、私はこれが一押しです。 -
あさのあつこさんの解説にあるように、ただのタイムスリップものではない。大人の記憶をもって人生をやり直すと考えたときに、16歳に戻るというのは確かに魅力的。主人公よりもリセットした元27歳のほうが自分との共通点が多くて、切なかったり辛かったりもするけど、最後まで面白く読んだ。