いつかの岸辺に跳ねていく

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344034747

作品紹介・あらすじ

2019年8月9日「王様のブランチ」で紹介!

あの頃のわたしに伝えたい。明日を、未来をあきらめないでくれて、ありがとう。生きることに不器用な徹子と、彼女の幼なじみ・護。二人の物語が重なったとき、温かな真実が明らかになる。

感想・レビュー・書評

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  • 『ワケわかんないから、面白い。ワケわかんないから、知りたくなる』

    色んなことが知り尽くされたと思われる現代社会。その一方であれも” ワケわかんない”、これも” ワケわかんない”、と実際にはこの世の中は”ワケわかんない”ことに満ち溢れています。そんな中でも”ワケわかんない”のは、人の心の中でしょう。何十年と一緒に暮らす夫婦や家族だって、相手の心の中がスッキリと見通せることなどありません。それが、クラスメイトとなってしまうと、理解できないもしくは理解し合えないことは多々あると思います。しかし、その”ワケわかんない”が突き抜けてしまうと、逆にその人に興味が沸き、その人のことをもっと知りたくなってしまうということもあるのかもしれません。

    例えば、ある女性の友人が『登校中にいきなりクラスメイトの女子の手をむんずとつかみ、早足に歩き出した』としたらどうでしょう?『二人は別に、仲良しでも何でもない』という関係だとしたら、それは全く意味不明な行為です。また、『道ばたでいきなり知らないおばちゃんに抱きついて、死ぬほど相手を脅かし』たりしたらどうでしょう?子どもだからまだ許されたとしても大人なら逮捕されても文句が言えない行為です。では、そんな行動を取るクラスメイトが身近にいたとしたらあなたはどのような態度でその子に接するでしょうか?

    この作品は『徹子ほど、何を考えているのかわからない人間を、他に知らない』というその”ワケわかんない”女の子の存在を意識する少年の物語。でも、『ほんとにワケわかんなくて、面白いと俺は思っている』と、逆に”ワケわかんない”女の子の存在が気になってしまうという少年の物語。そして、そんな” ワケわかんない”女の子の行動に隠されたまさかの真実を目にする物語。”ワケわかんない”が全て明らかになる、その衝撃的な結末に、読者が打ち震えることになる物語です。

    『およそこの世の中で、一番ワケわかんなくて、一番面白いのは人間だよな』と思うのは一編目の主人公の森野護。そんな護は『平石徹子という人間は、ほんとにワケわかんなくて、面白い』と語ります。『家が近所で幼稚園から中学までは一緒だったから、まあ幼なじみと言っていい』という二人。そんな護は徹子が『登校中にいきなりクラスメイトの女子の手をむんずとつかみ、早足に歩き出したり』、『道ばたでいきなり知らないおばちゃんに抱きついて、死ぬほど相手を脅かしたり』と『意味不明な行動』を取るのが『まったくもって謎』だと考えていました。『単に〈変な人〉でくくるには、納得しがた』く、『落ち着いていておとなしく、むしろ生真面目な優等生』という印象の徹子の不可解な行動。そんな徹子は『前髪はすがすがしいほどぱっつんと、横一文字に切り揃え』られていたり、『制服のスカートが染みだらけ』と、『外見や身なりに無頓着』という側面がありました。それがクラスで話題にされているのを知り、母親から得た『お得情報を、ぜひとも徹子に報せてやらなきゃ』と思った護は彼女の後をつけました。土手を上り河原へと降りていく徹子。『ただぼんやりと水面を眺めて』いる姿が『とても寂しそうに見えた』という徹子の後ろ姿を見る護は小学校一年の時に『下校途中で交通事故に遭った』ことを思い出しました。『人生初入院をすることにな』り、『四人部屋だけど、その日はたまたま俺一人で、誰かと話すこともできない』という環境の中で目を閉じた護。そんな時『顔の上に、ぽとっ、ぽとっと、何かが落ちてきた』と驚いた護の前で徹子が泣いていました。『え、なに?どうしたの?何でいるの?何で泣いてるの?』と思うものの逆に目を閉じたままやり過ごそうとする護。諦めて立ち去ろうとする徹子が『ごめんね、マモルさんと言ったように聞こえ』たという護。そして、『どうして今、そんな古いことを思い出したりしたんだろう?』と思う護は、『埒が明かないので、俺は周囲の手頃な石を集め、そのうちの一つを川に向かって投げてみ』ました。『水面で、石が一度だけ跳ねて、沈んだ』というその瞬間、徹子が振り向き目が合います。『千円カットの美容院』が『第二と第三の水曜日は、カット代、半額になる』、『公園の側のクリーニング屋』が『頼めば追加料金ナシでけっこう早く仕上げてくれる』という『お得情報』を伝えた護。そんな護に『ねえねえ、さっきの、もう一度やってみて?私あれ、できないんだ。石を水の上で跳ねさせるやつ』と言う徹子。『コツがあるんだよ。なるべく平たい石でさ、こうやって…』と教えてあげた護に、『どうも、ありがとね、護』とぽつりと言う徹子。そんな二人がお互いを違う視点から意識し合う中で、徹子の不思議な行動に隠されたまさかの真実が明らかになる物語が描かれていきます。

    二つの短編が連作短編の形式を取るこの作品。一編目の〈フラット〉が森野護、そして二編目の〈レリーフ〉が平石徹子と、それぞれ一人称視点で物語が描かれていきます。『家が近所で幼稚園から中学までは一緒』という『幼なじみ』の二人。登場人物がそれぞれの視点から見えるものを順に描いて連作短編にするという構成の作品は他にもあります。私もこの作品を読み始めてすぐにそういう構成だろう、と予想しました。そして、そんな一編目は、森野護視点で描かれる物語。そこには定石通り、護の目から見える徹子の姿が描かれていきますが、それは『徹子ほど、何を考えているのかわからない人間を、他に知らない』という異物感のある幼なじみの姿でした。『とにかく内心が読めない。口にする言葉の意図が測れない。そして、その行動も目的も読めない。意表をつかれる、とでも言えばいいだろうか』と不可解な行動を取る徹子の姿は、読んでいて痛々しく感じられるほどです。クラスメイトとも、母親とも関係が上手く築けず、あまりにも”生きづらい”世の中を生きる様が描かれていく物語は、一方で小学校から、中学校、そして…と、大人への階段を上っていく二人の姿を見るものでもありました。『俺が中学の三年間で確立したポジションは〈熊〉である』と、『柔道なんてモテそうにない部活に所属してい』たこともあり『熊』と呼ばれる護の学校生活が描かれていく物語は、これは”青春小説”なんだ、という雰囲気感満載に展開していきます。そんな中で徹子も成長を見せます。中学に入って『〈ちょっと風変わりだけど、真面目で成績優秀な優等生〉的なポジションを獲得』した徹子は、『皆から頼られる平石さん』と物語の中に丸く収まっていきます。受験あり、恋模様あり、そして成人式へと続いていく物語は、何の変哲もない普通の”青春小説”そのものです。しかし一方で、これは何なんだろう?という思いが逆にこみ上げます。それは、『優等生』となっても徹子が時々垣間見せる不思議な表情、目的のはっきりしない行動の数々です。そんな違和感を感じながらの一編目は、どこかゴツゴツとした文体で、正直なところ、”あんまり好みじゃないかも”という印象を持ちながらの読書となりました。”この作品は何を言いたいのだろう?”と、あまりに静かすぎる”青春物語”が故に、逆にもやもや感が募る読書。結果、正直なところ、少し読む気力が萎えたのが一編目読了時点の気持ちでした。

    それが二編目〈レリーフ〉に入ってそんな気持ちが一変します。『幼い頃、私は神様と出会った。あの人はきっと、神様だったんだと思う』、と唐突な表現で始まるその冒頭は、全く別の物語が始まったのか?と錯覚するほどです。そして『あなたの未来を祝福します。おそらく、そう言っていたのだ』と徹子が幼い頃に出会ったおじいさんの記憶を辿る不思議感いっぱいの冒頭が印象的に物語を進めていきます。そんな物語は、一編目からは考えられないほどの不穏な空気感に終始包まれた中に展開していきます。予想通り、平石徹子の一人称視点で描かれる物語。しかし、そこに見える景色は一編目で森野護が見ていた一般的な意味合いでの”生きづらい”少女が見る景色ではありませんでした。人は自分の理解を超えた存在を目にした時、それを正しく表現する術を持ちません。人が表現できるのは自らの経験を背景にしたものだけです。経験したことのない未知のものを目にした時、それが『ワケわかんなくて』、となるのはある意味当たり前です。一見普通の少女であるはずの徹子が一編目で見せた数々の不可解な行動の数々。その根底には『私は、必ず叶うはずだった、護の夢を潰してしまった。私が、護のあの光り輝くような未来を、粉々に打ち砕いたのだ…』と読者が全く想像だにできない思いが隠されていました。『私は護に対して、とても払いきれないほどの負債を抱えてしまった。この先、どう償っていいかもわからない』と思い悩む徹子。そんな徹子は『私のこれは、いわば天賦の才だ。特にこれといった美点を持たない私に唯一与えられた、人の役に立つ力なのだ』と自らが持つある『力』を認識する一方で、それにより結果的に取る行動の数々を『周囲の人間からはさぞかし、おかしな子だと思われていることだろう』と自身が取る行動が他の人にどのように見えるかさえ理解していました。そんなこの二編目は、一編目で読む気持ちが少し萎えかけていた私の頭の中を一気に覚醒させました。まさしく怒涛のようなと言っても構わない驚愕の物語がそこに展開していきます。一編目のあの事象、あの言葉、そしてあの行動の全てが巧妙に張り巡らせられた伏線であったと気付かされる物語。一編目の一種のどかな”青春物語”が雲散霧消し、加納さん的”イヤミス”とも言える物語が大胆に展開していく二編目〈レリーフ〉。そんな物語は、『失敗するとわかっている努力やチャレンジなんて、誰だってしたくない。先々、不都合が生じるとわかっている道は、はなから選ばないに決まっている』と一人で思い悩み、『選択肢が減って残った細い道を、私は恐る恐る辿っていく。その先には何が待っているのか?』と、孤軍奮闘する徹子の見ていて切なくなるような物語が描かれていきます。読み応え十二分なその物語を本当はここにレビューしていきたくて仕方がありません。しかし、これ以上はどうしてもネタバレになってしまいます。そして、この作品はネタバレでは決して読んではいけない、新鮮な驚きの中に読むべき物語です。ひと言、この作品の表紙が絶妙に暗示する物語とだけ記しておきたいと思います。そして、そんな物語は加納さんらしい清々しさを感じるまでの幸福感と寂寥感に満たされる中、静かに幕を下ろしました。

    『私はただ一人で、残酷な未来と対峙するしかないのだ』と孤軍奮闘する徹子。そんな徹子が『ただ一枚の切り札を、私は使った』という先の苦悩の日々を描く物語。そして、暗闇の中を彷徨った末に、暗闇の中を彷徨ったからこそ行き着くことのできる圧倒的な幸福感に包まれる物語。それは、「いつかの岸辺に跳ねていく」という書名の中に、明日を、そして未来を見つめる主人公・徹子が祝福された未来を精一杯生きる物語でした。

    加納さん、感動とはこういった気持ちのことを言うんですね。素晴らしい絶品の物語をありがとうございました!

  • 主人公「平石徹子」の優しさと強さに、読み終わってしばらく心がもっていかれてしまった。

    徹子には「護」(まもる)という幼馴染がいる。
    第一章は護の視点で徹子を、(ワケわからない部分も含めて)見守り続ける、青春ストーリー風のほのぼの系描写で、癒され、楽しめた。

    でも、第二章は、徹子視点で、驚きと怒涛の流れに飲み込まれる一変した展開。
    一章のなかの徹子の不思議なワケわからない行動の理由が明かされたりする内容で、頁をめくる手が止まらなくなった。

    実は徹子は誰にも言えない秘密を抱えて、一人きりで周りをずっと…、助けようとしていたのだ。
    私はとても胸が苦しくなりながら読み進めた。
    徹子は周りのみんなを、さらにはちょっと冷たい母親でさえ思いやる所があって、とても素晴らしい人だった。
    でも私は、かわいそうでかわいそうで仕方がなかったな。
    自分を犠牲にしてまで行動する所は、どこまで他人想いなの-!って、私には苦しく辛くなってしまって。

    人生において、いちばんキラキラ輝いて楽しい時代。
    学生時代、受験、成人式、結婚するかどうするか、など、徹子は常に自分を二の次に考えて過ごしている感じ…。
    みんなにはそれとわからないように自然な感じで過ごしていて…。
    でもね、辛かっただろうな…とてもとても…。

    もし、徹子が私の娘だったらって、母親目線で見てしまって、かわいそうとしか思えなくなってしまった。

    親友のメグの夫が、サイコパスな「カタリ」という酷すぎる人間。
    背筋もこおるような怖過ぎる人物。

    でも、やっと…最後のシーンには、ハラハラドキドキ痛快な展開があって、良かった~

    徹子をカタリから護と仲間たちが守った所は、本当にほっとした。
    「俺は、徹子の幼馴染だーっ」って。
    カッコ良かった。

    仲間たちも頑張ってくれて感激する場面がやっと来た、最後の頃に。
    遅いよーって凄く思った(笑)
    もっとはやく徹子を何とか救って欲しかったな…と…長く感じてしまった…!

    「徹子ちゃんの周りの徹子ちゃんが大好きな人は、徹子ちゃんが幸せじゃないと、幸せになれないんだよ-」
    これはホントにその通りだと思う台詞。

    そして、その後は、やっと幸せに暮らせたから良かったなあ。
    ハッピーエンドで良かった。
    最後は本当に救われて、じんわりきた。

    護の存在は、とても優しく大きく、名前のようにまもってくれた…

    徹子は
    まっすぐに前を向く
    強さある優しい女性でしたね…
    タイトルも素敵です!


  • 「あの頃のわたしに伝えたい。明日を、未来をあきらめないでくれて、ありがとう」ですと?
    ……久々に泣きました(T_T)
    ファンタジー+ミステリー✕青春=感動というのかな…めっちゃ好みの話でした。

    幼馴染の護と徹子の物語。
    前半は護の「フラット」、後半は徹子の「レリーフ」という章題でそれぞれ語られる。
    特に「レリーフ」の章は、徹子の苦しみ、焦り、不安が痛いほどよく伝わってきた。
    その二人の物語が重なると、そこに真実が見えてきて、静かに感動が押し寄せてくる。
    読み終わりたくなくて、ラストに向かうに連れ、ページをめくる手を止めるようにゆっくりと読み進めていった。
    そしたらラストに二人の接点がっ!作者の加納さんは上手にお話を持っていきますね…(T_T)

    多くのブク友さんが読まれ、皆さんのレビューからとても気になったので借りてみました。出会えて良かったです。
    初読みの作家さんでしたが、さらに追いたいと思いました。

  • 『空をこえて七星の彼方へ』がめちゃくちゃ良かったので、他のも読もう!と固く誓った加納朋子さんでしたが、だいぶ間が空いちゃいました

    こちらも超良かったです

    幼なじみの護と徹子、第一部は護視点でちょっと変わった女の子だけど、いつも他人のために一生懸命な徹子が語られます
    徹子には何やら秘密がありそうで(表紙でややネタバレ)…から第二部は徹子視点で謎が解き明かされていきます

    いやー凄いのよ
    このね、敵役がとんでもなく嫌な奴なんよ!
    もう完全にサイコパスなんだけど、もうこのキャラを創り上げた時点で加納朋子さんの勝ちやわ(勝ち負けなの?)
    この超絶嫌な奴をどうやって懲らしめるかの物語なんだけどさ
    もう、スカっと感ハンパないのよ

    もう下ごしらえ完璧でスカッとハッピーエンド!大好きなやーつです
    (加納朋子さんはハッピーエンド派なのでネタバレにならないと思われるが一応フィルターかけとこ)

    よし、加納朋子さん続けて読むさー

    • ひまわりめろんさん
      うんそうね、なんか加納朋子さん上級者的立ち位置感出しとったけどそうね
      うんそうね、なんか加納朋子さん上級者的立ち位置感出しとったけどそうね
      2023/08/03
    • ゆーき本さん
      ひまめろさんの大好きなAマッソの加納ちゃんの作品なのかと思ってしまいました。あちらは愛子ちゃんなんですね。
      ひまめろさんと みんみんさんの推...
      ひまめろさんの大好きなAマッソの加納ちゃんの作品なのかと思ってしまいました。あちらは愛子ちゃんなんですね。
      ひまめろさんと みんみんさんの推す加納朋子さん、面白そうです!
      2023/08/04
    • ひまわりめろんさん
      わいとみんみんは単純明快勧善懲悪大好きなんで、ゆーさんもそうならマジオススメです!( ー`дー´)キリッ
      わいとみんみんは単純明快勧善懲悪大好きなんで、ゆーさんもそうならマジオススメです!( ー`дー´)キリッ
      2023/08/04
  • 幼なじみである、森野護と平石徹子の双方の視点から成る物語です。
    護目線のフラットは、主に青春時代の出来事で、自身の学生時代と重ね合わせて楽しく読めました。
    フラットの最後は、急展開の出来事が説明不足のまま手短に語られるので、何が起こったのか知りたいという気持ちでいっぱいになります。

    「幼い頃、私は神様と出会った。」 で始まる徹子目線のレリーフのページに入ってからは、もう一気読みでした。
    神様と言っても、駅で会った白い髭を生やしたおじいさんです。
    そのおじいさんは、徹子と出会えたことにいたく感激している様子でした。
    その時に言われた 『あなたの未来を祝福します』 という言葉が繰り返し思い出されるので神様だったのかもと徹子は幼心に思い込んでしまいます。
    だから、思い出すたびに、「祝福された未来を生きている。」と感じてしまうのでしょう。

    このレリーフの最初のエピソードがこんなに効いてくるとは思いもしませんでした。
    そして最後に自ら 『あなたの未来を祝福します』 と口にする場面はとても感動的でした。

    とてもいい本に出合えました。
    皆様にも1日で読み切れる時間のある時に一気に読んで欲しいと思います。

  • 幸せな気分に包まれた。「フラット」から「レリーフ」へ、ガラっと世界が反転する感覚に感嘆のため息吐息。

    そういうことか…。
    人生という舞台の裏で、二つの使命を胸に一人けなげに走り回って跳ね回っている徹子を思い浮かべながらの時間は苦しさとせつなさでいっぱいの時間。
    まるで何回もよじれて絡まっていた一本のリボンが綺麗に大きな蝶結びを作った読後感に一気に心は幸せ気分に包まれた。
    人って、大切な人が幸せじゃないとダメなんだなぁなんてこともそっと教えられた気分。

    こういう作品に出会えた幸せなこの瞬間は読書の喜びを噛み締められる瞬間。
    たまらない。

    • あいさん
      おはよう(^-^)/

      凄く幸せになれるレヴュー!
      読んでくれてありがとう♪
      この本のよさってあらすじだけではわからないよね。
      ...
      おはよう(^-^)/

      凄く幸せになれるレヴュー!
      読んでくれてありがとう♪
      この本のよさってあらすじだけではわからないよね。
      読んでみて初めてじんわりとくるよ。
      2019/10/15
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよう♪

      ご紹介ありがとう♡
      めっちゃ良かった…!!うん、読まないとわからない良さがいっぱい!
      この構成も驚きもラストの繋がり...
      けいたん♪おはよう♪

      ご紹介ありがとう♡
      めっちゃ良かった…!!うん、読まないとわからない良さがいっぱい!
      この構成も驚きもラストの繋がり方も良かったねぇ(*´ `*)
      神さまっているんだね♡

      またご紹介よろしくお願いします(*≧∀≦*)
      2019/10/15
  • 二章から成る、幼なじみの男女の物語。

    始めの章では、護の目から見た徹子の姿が描かれている。
    徹子がいかに変わった子であるか、そしてそんな徹子が自分にとってどんなに大切な存在であるか。
    「自分の中の一番きれいな場所に、そっと置いておきたいこの感情を、それでもやっぱり恋とか愛とか名付けてしまいたくはない」
    そんな護のふんわりほんわかした気持ちに癒されながらも、徹子が何かを抱えている様子が気になる前半。

    後半は徹子の目から見た護の姿がふんわりほんわか描かれるのだろうなぁと予想しながらページを捲ると、徹子が抱えていたものが予想を遥かに、それも斜めの方向に超えまくっていて、まぁびっくりします!そこからはページを捲る手が止まらない!一気読みです!

    それにしても護はいいヤツ!
    こんな幼なじみがいたらいいなぁと女子なら誰でも思うと思うよ。

  • いい意味で予想外の内容でビックリです(*_*)
    表紙は河川敷きのキラキラ輝く子ども達に鳩

    生きることに不器用な「徹子」幼馴染の優しい「護」
    2人の紆余曲折ある恋愛ものかと…

    「フラット」「レリーフ」の2章構成の作品

    フラットでは護の一人称で幼馴染の徹子との幼稚園時代から大人になるまでが語られる。
    いかに徹子が変わった子で目が離せなかったか。
    2人の間にどんな出来事があったのか、優しい語り口で終わるのです…が‼︎

    第2章レリーフでもうビックリです∑(゚Д゚)
    ネタバレなので書きませんが!
    もう予想もしてなかったというか!
    鳩が豆鉄砲くらってしかも斜めからみたいな笑
    うわーー‼︎ってそういう事かー‼︎

    ハッピーエンドに向かって小石が跳ねました♪
    めちゃくちゃ面白く読ませていただきました*\(^o^)


  • 「未来なんて、ほんの少し長生きすれば、誰だって見られるでしょ?あたしらが死んだって、子供達がその先の未来を見てくれるでしょ?そっちの方が、すごくない?」
    弥子ちゃんの優しい言葉に読んでいる私まで泣けてきた。
    そうだよね。
    未来は今の続きでしかない。
    日々を生きていれば、誰でもいつかは辿り着く、そんな当たり前のもの。
    大切な人達と過ごす穏やかでフラットな日常こそが幸せな未来に繋がっていくのだ。

    真面目で不器用な幼なじみの徹子と護、二人それぞれの目線から追った物語。
    川に投げ込まれた小石が水面から跳ねて方々へ飛び散っていくように、幾通りもの未来があちこちに散らばっている。
    その無数の未来の中から二人が掴みとった、たった一つの未来は、神様から祝福された柔らかで温かいものだった。

  • フォローさせていただいてる皆さんの本棚で見つけた作品。
    装丁の可愛らしい雰囲気から、ほんわか優しい系だと。。すっかり騙された。
    徹子と護は同級生。親同士もお付き合いのある、距離のとても近い二人。
    前半の「フラット」の章では、真面目で心優しい柔道部の護の目線で、ちょっと変わり者で周りから浮いている存在の徹子が語られる。護はそんな徹子を優しく見守り、支えようとする。微笑ましく、そしてちょっぴり切なく二人の成長物語が進んでいく。
    しかし後半の「レリーフ」の章に入ると状況は一変する。
    二人が生きてきた時間が徹子目線で語られ始めると、現実の影に隠されていた真実が次々と露呈する。
    徹子は実は大きな秘密を抱え、一人残酷とも言える運命と懸命に闘って生きていた。
    そこから延々続くヘビーな展開は正直辛すぎたが、最後の最後に怒濤の愛と優しさ祭り。
    孤独に頑張って生きてきた徹子の努力が報われ、心底ほっとした。。
    ハッピーエンドで良かった。。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加納朋子の作品

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