十五の夏 上

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032705

感想・レビュー・書評

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  • 私も埼玉の県立高校に通っていたので、浦和高校の学力水準は良く知っているが、合格して集まってきた高校生がどの様な雰囲気を作り出すかは別。そんなリアルな浦和高校のイメージを想像したことはなかった。
    でも、この本を通して、いや佐藤優氏の描くた浦和高校を私のイメージに被せることで、あながち遠くないであろうその当時の浦和高校が浮かび上がらせることができた様に思う。
    ひとことでいうと、私が高校生の時代に見ていた世界とは違う世界を見ている高校生が多いということだ。この本の著者佐藤優氏もまたそのひとりだ。
    それは、部活が終わって家に帰ると、必ずテレビのスイッチを入れて、翌日にはその内容で盛り上がる中学生時代を過ごし、高校に集った仲間たちが作る世界。

    そんな世界を基準に世の中を見てきた同じ年齢の私が、15才の佐藤優君が育った環境世界を通して、彼のこの東欧のひとり旅を読むことはなんと、スリリングなことか。

    時折でてくる、東欧の国々の歴史の知識や、英語のコミュ二ケーション力、飛行機や時計、車(特に東欧の)に対する知識の量は、私のやっかみから、大人なってからの後づけの知識だと割り引いて読ませていただいたが、それにしても、15才の夏といえば、ちょっと前までチュウボー(中学生)ですよ。言葉も、文化も、そして身の安全も保障されないような、東欧にひとりで旅行に行こうなんて…。
    両親の彼への厚い信頼からのプレゼントととは言え、自ら作り上げるペンフレンドと逢うための東欧のひとり旅行の計画、これを周囲の人たちの助力を惹きつけないわけがない。

    実際の佐藤優氏の人生もこの“15の夏”以上にスリリングだ。そんな佐藤優氏はこんな15才を経験したから出来上がったとも言えるし、この15才の経験が佐藤優氏の人生を裏付けているとも言える。

    上に、違う世界を生きていた佐藤優君と書いていたが、読んでいる私のなかに残っている15才のピュアな志しにも彼と同じく『この世の中を生きていく力を試してみたい』、『既成のものでは意味がない』といったことへの渇望かあった。その余韻は確実にあった。そのことを思い出させられながら一気に読み終えた一冊。

  • 読書による人格形成、その影響は旅に出た時ほど大きくは無い。しかし、少なからず自らの血肉にはなっている。佐藤優の本を好んで読んだ。だからこそ、そのルーツを知りたいという気持ちがあった。楽しみにしていた読書。外れなしの紀行文。

    旅と言えば、出会い、食、見聞、トラブル。全てが盛り沢山の本著だが、なぜだろう、食に目がいく。そしてあまりにも美味しそうに、リアルに表現されるから、自らも旅行し食している気分になる。トラブルに関しては、高校一年生の一人旅の割に少ない。周到で堅実、解決力が高いからだからだろう。出会いは多い。こんなに上手く交流できただろうか、脚色もあるだろう。あまり観光地は巡らない。目で見るより、話し、味わう。この辺の比率は佐藤優独自のものだが、若者の旅、青春を共に。

  • 佐藤優さん高校一年の夏休み東欧ソ連一人旅の記録。
    さすが未来の大物はちがう。

    400ページ以上もありさらに下巻があるから早く読まなくちゃいけないのに、自分のいろいろなことを思い出して、何度も立ち止まってしまいました、とても面白い内容なんだけど。

    佐藤少年が海外一人旅をしたという高校一年の夏、私は毎日家と高校の往復でした。
    水泳部だったからです。
    自分で進んで入ったのに、嫌でたまらなかった記憶がずっとのこっていました。

    でも、佐藤さんが旅先でいろいろな人と関わった記録を読んでいて、「そういえば夏休み中は大学生のOBの人たちが毎日かわるがわる来てくれて、嬉しかった」ということを急に思い出しました。

    嬉しかった理由が二つあります。
    まず、私は二年生の先輩のこと、怒られてばかりだったので嫌いだったけど、OBの人たちはみんな優しかったのです。
    「この子には皆と同じ練習は無理だから」と、他の部員と別にしてマンツーマンで教えてもらったことがたびたびありました。

    そして、私たちに威張っていた二年生先輩がOBには頭が上がらない。
    時々わがままなOBが理不尽な理由で二年生先輩にパワハラするのを見て気分良かったです(笑)。

    そんなことを思い出し、「私の高1の夏休みもなかなか良かったじゃないの」と。
    だからこの本を読んで良かったです。
    佐藤さんみたいにきちっと書き残していれば、そして文才があれば、小説が書けたのに。
    しかし、本当によく記録していますよね。
    40年以上も経って本にするとは思っていなかったのだろうけど。

    この上巻はハンガリーが中心になります。
    今度は自分のハンガリー旅行を思い出しました。
    日本語が上手なガイドさんがとても面白く、私がひとりで電車に乗りたいと言ったら切符を買ってきてくれてお金をとらなかったこと、ソ連のこと嫌いと言っていたことを思い出しました。

    また、電車の中で路線図と自分のガイドを見比べて困っていたときに、ご婦人が「どうかしましたか」と声をかけてくれた。
    そんな経験はハンガリーだけでした。

    日本にいる私から見ると東欧の国々は同じような感じだけど、現地に行くとずいぶん違うんだなあと思いました。
    下巻はソ連が中心になります。
    上巻に出てきた人たちのその後も気になります。

  • 著者は1960年生まれで1975年は高校一年生。
    進学校の浦和高校入学したてで夏休みにソ連、東欧の一人旅に出かける。
    自分は著者より2学年上だが、とてもとても足元にも及ばない。
    佐藤優氏の著作は何冊か読んだが、こういう育ちをしたのか、と感じ入ってしまった。

  • 海外は旅したことないけど、旅しているかのように思える。内容を読んでいると山並みや異国の情景が目に浮かぶ。列車の乗り継ぎや駅員が不愛想だとか、じわりじわりと面白い。小咄ってよく分からなかったけど、小話(アネクドート)って落語みたいなもんなんだなぁ…と、ワルシャワの「文化宮殿」のネタを読んでいて、そう思った。


  • 私が今まで持っていた佐藤優氏のイメージは『昔逮捕されたことのある官僚=悪人』でした。

    ある時、新聞に載っていた佐藤優氏のコラムが読みやすくて、『15の夏』分厚いけどちょっと読んでみようかなと軽い気持ちで図書館で借りました。

    読んだらもう、引き込まれてしまいました。
    佐藤氏の両親思いで優しさが見てとれる人間性や食べ物の描写が多くて、しかもとても美味しそうに描かれていて食べることが好きな人なんだなと今まで持っていた悪人のイメージは全くなくなりました。

    東欧の街並みの描きかたも綺麗でいつか行ってみたいなと思いました。

  • なんと高校1年の夏休みの40日間の東欧・ソ連一人旅。これが少年佐藤優の初の海外旅行。みずみずしい感性あふれる青春の記録だ!このような経験を15歳の少年がしたということに驚くとともに、両親の素晴らしい決断を痛感する。ハンガリーのフィフィというペンフレンドを訪問することから、スイス、西ドイツ、チェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニアを経てソ連・キエフまで。少年は実に観察力、初対面の人とのコミュニケーション力を備えていることに驚嘆した。またこのような詳細な記憶?記録?がこの人の非凡な能力を感じさせる。1日3度の食事に至るまで実に細かく覚えている!ハンガリーの人たちの自由で楽しそうな世界に比べ、ルーマニアの暗さ。危機的状況に少年佐藤でさえも嗚咽する場面は、あまりにも酷い国だと感じさせられた。自らの目で共産主義の東欧諸国を見ていたことにこの人の後の日の強さを感じる。

  • 高校1年であれだけ色々興味を持ち、また日本についても語れるというのがすごい。
    旅に出るまでの準備過程から面白かった。


  • 10代特有の瑞々しい感性が描かれている、素晴らしい良書である。

    西ドイツでスーツケースに書かれた名前を他の乗客が笑った事からなんとなく全ての人が嘲笑っているように感じて食事も喉に通らなくなる。若い頃に海外に出た人間ならばそんな経験があるのではないか。

    筆者の著作は何冊か拝読していたが、ここまで「小説」を描ける人とは認識していなかった。読者にイメージさせる為に風景描写からインクの匂いまで使って、東欧を表現している。これは十五の夏に描いた作品と勘違いしてしまうぐらい素晴らしい感性だ。

  • 15歳の少年が単独で東欧、ソ連を旅行したのには驚いた。そればかりではない、いく先々の国で交流をして観察している。すごい少年だ。それが、現在の佐藤優の原点だと思うと、今の活躍も理解できる。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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