人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院のリクエスト食

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028265

作品紹介・あらすじ

余命わずか3週間-あなたなら何を食べますか?最後に選ぶ食事に、その人の生きた証が詰まっている-末期のがん患者14名と、彼らを支える家族、医師、スタッフの物語。

感想・レビュー・書評

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  • ‘自分という人間が、誰かにとってかけがえのない存在であると意識することで、人は自分の「生」を大切に思うことができる。ホスピスは「死ぬ」ための場所ではなく、最期まで「生きる」ための場所なのだ。’p154

    大阪にある淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院で「リクエスト食」というものがある。週一回患者さん自身が食べたいメニューを作ってくれるのだ。

    正直、読んでいて羨ましいと思ってしまって、そんな自分に後ろめたさを感じています。余命数ヶ月と宣告された、末期のがん患者さんばかりなのですが、自身の食の思い出やライフヒストリーを語る姿は文字通り、‘生き生き’とされていて、お幸せそうなのです。最期を迎える場所で大切にされている実感があると、後悔や間違いもあった自分の人生そのものまで肯定できるのかもしれない、と感じました。

    わたしも家族もこの病院に入ることはできないだろうが、自分は確かに‘生ききった’と言える人生にできるだろうか。
    家族が死を間近に感じたとき‘生ききった’と思えるように、あなたが大切だとメッセージを送っているだろうか。

    いろいろ改めて考えることができました。ありがとうございました。

  • ホスピスでの食の取り組み。食べたいものをリクエストできるリクエスト食によって、最期を迎えるのが近いのに、いきいきと今幸せだと語る方々。食によって自分の人生を懐かしく思い返して、穏やかに大事な時間を過ごすことの大切さ。毎日の食生活が人を育むのがよくわかった。

  • 「海をあげる」で知って読んだ。
    1番心に残っているのは「好きなものを食べて医学的に病状が良くなることはあるか」の問いに医師が心外そうな表情したところ。
    リクエスト食を通じて思い出を振り返る明るいさま、食欲が回復する様子が描かれていたので私もその疑問を持っていた。
    この医師へのインタビューでホスピスがどういう場所なのか思い出させられたし、尚更現場で働く人々の心情に思いを馳せられた。

  • 元気な時「お鮨は別腹」と茶目っ気たっぷりに話していた母。
    試行錯誤の介護生活だったけど
    食の楽しみを介護の中心に置いたことは自慢してもいいのかも?
    読みながら晩年の母との暮らしを懐かしく思い出しました。
    写真も文章もとてもやさしく美しい本。
    さて、私だったらなにをリクエストするかな。

  • ホスピスで有名な淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院が取り組むリクエスト食についての物語。
    実際に入院された患者さんへの聞き取り、出された食事、メニュー、また患者さんたちをケアする看護師、管理栄養士、調理する方、病院副院長へのインタビュー等を通してこの病院の病気や患者さんたちへの姿勢等を浮き彫りにする。
    14名の患者さんたちはそれぞれに自分が食べたいリクエスト食を述べながら、なぜそのメニューに至ったかを自身が歩んできた人生や家族等の思い出と共に著者に語っている。たった一食の食べたい料理ではあるが、そこから紡ぎ出される物語に感動する。
    人は「死」が近くなると自分の来し方を振り返り、これほどの「物語」を語れるのかという驚きと登場する患者さんたちの穏やかな語り口、時に冗談さえ交えながら語り限られた命の日々を前向きに過ごそうとする強い意志にも感動する。
    そして誰もが「今」この状態が本当に幸せだと述べている。これは患者さんたちを支えるスタッフのすばらしさに起因するのだろう。
    15床のホスピスなのでなかなか入院は出来そうにないようだが、このようなすばらしいホスピスで希望する誰もが最期を迎えられたらよいのにと感じた。

  • 学校の先生からおすすめされて読んだ本。
    「あなたの最後の晩餐にはなにを選びますか?」という問いかけとともに。

    この本を読んでいて思ったのは、やはり人は食と、食にまつわる記憶で培われてきているのだということ。
    だからこそ、普通の病院で、美味しくない・栄養管理に偏りすぎていて見た目などの”食べる楽しみ”の面での工夫がされてない食をたべると、次第に生きる楽しさ・気力がすり減っていくのではと。

    この本の中では主に筆者が患者15名に対してインタビューして見聞きしたことをベースに綴られている。あと、ホスピスのスタッフ側の人のインタビューも。

    このホスピスにとって「リクエスト食」とは、「あなたのことを大事に思っていますよ。」という心の表れなのだそう。金曜日に栄養士が何を食べたいかの聞き取りをおこなって、土曜日に家族などを交えてみんなで「リクエスト食」を食べる。その食に関する想い出を語りあったりしながら。

    「体にいい食」と「食べるのが楽しい食」のバランスが重要な気がする。自分のこれからの生き方を改めて考えさせられる本。

  • ずいぶん前に、母親が入院していたので、淀キリにはよくお世話になっていました。新しいホスピスができたのは知っていましたが、こんなによいものとは知りませんでした。
    しかし、自分がああなったときに、人生を振り返って、こんなに想いがあるかというと今のところ自信がありません。
    なので、ここに登場された皆様がちょっと羨ましくもありました。

  • とても良い本を読みました。
    淀川キリスト教病院ホスピスの、食の取り組み。

    以前より、所謂病院食というものに違和感がありました。
    美味しそうじゃない。美味しくない。
    栄養のこと「しか」考えていないのかしら、それでいいのかしら?と思っていたら、
    ある人からは栄養のこと「すら」充分ではない、という見解をもらって、さらにがっかりしました。(ここでいう「栄養すら」というのは、ある特殊な状況;例えば身体に大きな傷を負い、その修復には特定の栄養素をより多く採った方が良い、といった意味の栄養です。おそらく、一般的な意味での栄養は一通り考えられているのかなとは思いますが。)

    美味しいものを食べて、嬉しくなる、気持ちが明るくなる、前向きになる。
    そういった副次的な効能は、果たして見過ごされていて良いのか。
    ごく平和な日常生活の中ですら、食が力を与えてくれる場面は少なくないのに、弱っている人間に対するその力を軽視するのは、納得がいかない。
    そう思っていました。

    本書は、ホスピスに入っている患者さんへの食の想い出に関するインタビューを中心に構成されていますが、
    合間に挟まれる「リクエスト食を支える人たち」というコラムがとても良い。
    調理師さん、看護師さん、お医者さん…それぞれの立場での、患者支援に対する思い。
    食事が病状を劇的に改善することはない。けれども、「あなたを大切に思っている」というメッセージを軸に、食を含む全てのケアがつながれば、患者さんの痛みや苦しみを、少しでも和らげることができるのではないか。最後までその人らしく「生きる」支えとなることができるのではないか。

    「リクエスト食」という週1回の、謂わばイベント的な取り組みを紹介してはいるのですが、単に余命の短い人に好きなもん食べてもらおう、という主旨ではないところが良い。生命力への信頼であり、応援であり、その人の人生の肯定であるということが肝なのだと感じます。

    「料理は愛情」という表現は、どうにも自分中心な感じがして好きではないのですが、
    一料理好きとして、家族や身近な人への食事を担当する人間として、食事の力やその責任は忘れたくないし、食事でもってその人を応援できる力が多少でもあることには誇りを持っていたい、そして、私個人の力が限られているにしても、精進していきたいと思いました。

  • 食は記憶と結びつきが強い。おいしいものをたくさん食べ、幸せな思い出をつくっておきたい。

  • 一気読みした。
    徹頭徹尾暖かさに溢れてた。
    読んでてこちらも暖かい気分になった。
    「人は自分宛てのメッセージを聞き逃さない」の最たる例のような気がした。
    あなたのために治療をしています。
    あなたのために看病しています。
    あなたのためにご飯を作っています。
    そういう『あなた宛のメッセージ』が食を通して語られた。そんなお話でした。
    食にフォーカスしたお話やけど、食を媒介にして様々な人の暖かさに触れた気がする。
    いい本読んだなー。

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著者プロフィール

フリーランスの編集・ライター。1971年神戸市生まれ。神戸松蔭女子学院大学非常勤講師。対話型文章講座を主宰。著書に『人生最後のご馳走』(幻冬舎文庫)、エッセイ『ほんのちょっと当事者』(ミシマ社)。共著に『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)、震災後の神戸の聞き書き集『BE KOBE』(ポプラ社)などがある。

「2024年 『元気じゃないけど、悪くない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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