殺人者の涙 (Y.A.Books)

  • 小峰書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338144285

感想・レビュー・書評

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  • 「粗暴な殺人犯アンヘル(強盗殺人の常習犯)が気まぐれから殺した相手の子供パオロを育てる内に愛情に目覚め、自分の犯した罪に苦悩する」
    あらすじを把握して「やだ、そんな話わたし大好きだわ決まってるわ」と思ったら案の定大好きだったけど好きなだけに終盤の展開がきつかった!

    アンヘルが犯した罪の報いを受けたのは、そりゃこの展開で逃げ切って幸せに暮らしました、はないと思ってたけど、本格的な報いの瞬間がもうきっつい。
    ほんのちょっと色々なことが違っていたら、もっとマシなその後が始まったはずなのに、ほんのちょっとの不信や言葉に出来なかった想いがすれ違ってこの惨事。そしてその後に続く無理解の連続。

    「殺人者が子供にまともな愛情を注げたはずがない」「子供があんな人殺しを愛せたはずがない」「愛してると思ってもそれは錯覚だ」と決めつけて、誰も二人の絆を理解しようともしなかった。

    アンヘルの最期の日々が全く描写されなかったのがまた……せ、せめて手紙を書いていたとかそんなのを、ずっと『死ぬほど心配』しててでも再会は果たされずに終わったとか切なすぎる! と思ったので、最後に彼らの絆を知っていた人物が再訪したこととにほっとしました。それでも、もう一回だけでも、会わせてあげたかったな。

    アンヘルのしたことは許されないことだけれど、パオロを愛したことが彼の「罰」になったと思う。煉獄の炎で焼かれた後は天国に行ってほしい。樵とその妻子に謝って、向こうでパオロと孫と幸せに眠ってほしい。そんな夢想をするくらいには切なかったです。

    物語の始まりで終わりとなる世界の果ての澄んだ空気と、そこに流れる砂埃がさっと払われるかのような瑞々しい心象が美しい、心に来る一冊でした。

  •  図書館でとても気になって借りてきた本。レビュー書かずに返してもうた。ギャア。うろ覚えになってしまうけど、とてもいい本でした。

     舞台はチリのほぼ南端、プンタ・アレナス。天使と歓喜の名を持つ殺人者アンヘル・アレグリアと、彼に両親を殺された少年パオロの共同生活がはじまる。そこへ裕福な青年ルイスが加わる。ストーリーは心底うろおぼえです。でも超いい本だったよ! 信憑性ないな!

     ストーリーは結構忘れているが、何を思ったかは少し覚えている。
     少し前に読んだ『童話物語』に、「変われるってことはいつでも可能性があるってこと」的な言葉があった。どうしようもない凶悪な犯罪者だったアンヘルは、パオロに出会って変わることができた。
     だけど、アンヘルが生まれ変わったなんて、誰も知ることはできなくて、あの結末をむかえてしまう。
     人が人を裁いて、命を奪うっていうのはやっぱり重いことなんだな、と思った。

     あときこりのじいさんの木材がアレになったくだりはズゴーンときた。

  • チリの最南端の町からも離れた荒野に夫婦二人で営む農場があった。息子のパオロとひっそり暮らす夫婦は、時折訪れる旅人(冒険家だったり地質学者だったり…)にワインを提供する質素な静かな暮らしをしていた。そこへ突然訪れた殺人者でならず者のアンヘルは、夫婦をナイフで殺害し残されたパオロと家畜たちとともに、この農場で暮らし始める。
    乱暴者のアンヘルも、落ち着くところを求めていたのだ。
    あらくれ者のアンヘルと無垢なパオロ。不思議な信頼関係が築かれていく。そして、放浪の若者ルイスが加わり新たな農場生活が始まる。

    パオロの年齢ははっきりしないが、目の前で両親を殺したアンヘルに恐怖心を持たずにいること、やがて両親との生活が完全に忘れられていくこと、最後まで納得できなかった。ストーリー後半の流れはわからなくもないのだが、パオロのその感覚が作品全体を虚構の作品と感じさせてしまっているように思った。

  • 殺人者が殺してしまった夫婦の子どもを育てるうちに、人としての感情を取り戻す話。
    さらっと1日で読了。
    子どもが何歳なのかが分からないが、子どもに頼られることで殺人者が幸せを感じていく。
    子どもの両親や、子どもを守ろうとしてくれていた心優しい年老いた木こりの死。
    そして人の愛情や詩や音楽の素晴らしさを知り、罪の深さに気付いた殺人者の苦悩。
    お腹が空いて凶暴になってしまった、可愛がっていたキツネの死。
    何ともやるせない気持ちになる内容がたくさんあった。
    愛されてこなかったから愛せない。人の気持ちが分からない。
    子どもがみんな大人から大切に愛されて、暖かい絨毯のような心地よい環境や教育を受けられますように。

    最後は少し救われた気持ちになる内容だった。

  • 主だった主人公は人殺しのアンヘル・アレグリアと、彼に両親を殺された少年パオロ。
    あるとき、チリの末端、世界の外れとも思われる荒野で暮らしていたパオロたち家族のもとに、人殺しのアンヘルが訪れます。
    逃亡生活に区切りをつけるべく、荒野までやってきたアンヘルはパオロの両親を殺し、その家に居座ることにしたのです。
    それまで両親からの愛情を全く受けてこなかった少年パオロと、他人へ愛情を抱いたことの無かったアンヘルとの不思議な共同生活が始まります。

    次第にパオロへ愛情を抱く自分を自覚し始めるアンヘルと、そんなアンヘルと親子のように育つパオロでしたが、不器用な二人は「正義」や「安心」を標榜する社会に振り回されることになります。

    パオロ自身の成長よりも、殺人者アンヘルの心理描写に心を打たれることが多かった作品でした。
    必ずしも「ハッピーエンド」と言い切れる物語ではありませんが、読後感は決して悪いものではありませんでした。「ハリウッド的」なエンディングではなく、「黒沢映画」的な、「それでも人生は続く」といった印象です。

  • もし、もっと早く出会えていたら、違っていたのかも。
    でもそれはあなたのせいじゃない。

  • 376

    2017年では10冊目

  • チリが舞台のヤングアダルト向け小説。
    おすすめされて読んでみたものの、なんだかふしぎな話でした。
    タイトルの割に、物語は淡々とした印象をうけます。
    あまりにも淡々としてたので殺人者の涙もあまり印象にのこらず、涙の意味がよくわからないまま終わってしまった…。
    フランスの小説ってみんなこんな感じなんでしょうか??

  • 読友の御推薦本。物語の舞台は南米チリの最南端の街Punta Arenasからさらに南の文字通り最果ての地。ただし、原文はフランス語で書かれ、パリで出版されている。本書は、児童文学(とはいっても小学校高学年~中学生向きくらい)に分類されているが、だとすると、このタイトル(原題通りの直訳)で売れるか心配だ。また、物語の終盤をもっと劇的に描くか、あるいは淡々と描くかは評価の分かれそうなところ。最後の1文は、しみじみとした感動が湧きあがってくる。そして、アンヘリーナの名は物語を再び甦らせるのだ。

  • チリの最南端、荒れ果てた地に、3人家族が暮らすポロヴェルド農場はあった。
    ある日、アンヘル・アレグリアという「天使」と「歓喜」という名をもつ殺人者がこの農場にやってきた。
    夫妻を殺したが、残された子供パオロは殺さず、共にその場で暮らすことになった。一年後ルイスと名乗る旅人がやってきて、彼もまたその場で暮らすことに。パオロと出会ったことで安らぎを知ったアンヘル。逃げてきた男と、殺人者、そして子供がひとり。
    季節が過ぎ、弱っていたヤギが死んで食べ物がなくなってきたので町へと向かったことから、彼らの心が変わっていく。

    重い話ですね。とても悪い事をしたやつだから同情はできないが、なんだろう、この読後感は。
    「お前に会った瞬間に俺は生まれたんだ」ってことばに込められてる。

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