愚か者同盟

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336073648

作品紹介・あらすじ

1960年代。さまざまな人種と階層の人間が行き交う混沌の街、ニューオーリンズ。

無職、肥満、哲学狂、傍若無人な怠け者にして、口達者なひねくれ者の30歳崖っぷち問題児イグネイシャスは、子煩悩な母アイリーンとふたりで郊外の小さな家で暮らしながら、どこに発表するというあてもない論文を、子供向けレポート用紙に書き散らしていた。

しかしある時、ふたりで街に出かけた帰り、母が自動車で他人の家に突っ込んで多額の借金をこさえ、その返済のため、イグネイシャスはしぶしぶ就活を始める。

イグネイシャスは、潰れかけのアパレル工場、次いで零細ホットドッグ移動販売業者で職を得るが、職場では仕事を放り出し、事務所をリボンで飾り付けつつ黒人たちの労働デモを扇動したり、ホットドッグをつまみ食いした挙句に声を掛けてきた怪しい男に屋台を押し付けて映画に出かけたりするなど、好き勝手やり放題。やがて今度は職場から放り出され、警察にも追われるようになったイグネイシャスは、一癖も二癖もある奇人変人たちを巻き込んだり巻き込まれたりしながら逃亡劇を繰り広げ、ニューオーリンズの街に大騒動を巻き起こす——!!!

デヴィッド・ボウイも愛読した、全世界200万部超のロングセラー&1981年度ピュリツァー賞受賞作、J・スウィフト、W・ギャディス、J・ヘラー、D・F・ウォレスの系譜に連なる、アメリカカルト文学史上の伝説的傑作にして、奇人変人たちが暴走する、爆笑《労働ブラックコメディ》が、ついに邦訳!!!


☆全世界200万部超の大ベストセラー
☆1981年度ピュリツァー賞受賞作
☆デヴィッド・ボウイが選ぶ100冊

A Confederacy of Dunces, 1980

◎装画=塩井浩平
◎装幀=山田英春

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は大学院卒で無職の三十路男、巨体、トラブルメーカーのイグネイシャス。

    社会不適合者の彼は、自動車事故の賠償金を支払うため、しぶしぶ働くことになるのだが、苦労してやっと職を得ても、虚言癖と妄想癖のせいで問題を起こしてクビにされる。

    母親は息子の奇行に頭を悩ませ、アナーキーな元カノは彼に火をつけ、愚鈍な警官は世間の笑い者にされ、上昇志向の強い黒人は雇い主に噛みつき、同性愛者たちは派手なパーティで羽を広げる。町にごった返す奇人変人たちは、イグネイシャスのせいで様々なトラブルに巻き込まれる。

    変な小説。でも好き。

  • 60年代のアメリカ社会を鋭く切り取ってる。
    個性的で、自分ではどうしようもない受難に耐えながら必死に生きている人たち。会話がいちいち全部面白い。
    ぶっ飛んだ会話のなかから、その人がなぜ今の考えや境遇に至ったかがしっかり読む側に伝わってくる。辛い境遇も笑い飛ばせば良い、と言うけれどそんな問題じゃない。どうしようもない絶望がここにはある。

    僕らは変えられないものを受け入れるしかない。
    これは不当な社会に置かれた正しい人間の苦難だ。

    でもわたしはイグネイシャス他、それぞれの登場人物をそんな世界の中でもやっぱり応援せずにいられない。
    世界という永遠のなかで、1人の人生はあまりにも短い。儚い人生だからこそ、喜び楽しみ、もがき苦しみ、愛することの尊さを知ってほしい。

    ある人物の設定→名前がドリアン・グリーン。ネブラスカ州の小麦畑出身て、わろた。

  • コメディ小説というのか、まったくもって面白かった。500ページの単行本を持ち歩いて読み進んだ。幽門ね、検索したよね 笑。
    30才巨漢ニートのイグネイシャス、頭がよく性格は悪くいけすかない主人公だが、彼の処世術はどこか爽快だ。「ああ、恥知らずなフォルトゥナよ!」このフレーズなんなら私も使っていきたい。彼の周囲の変人達。ダメ人間ばかり出てくる。人種や格差など社会派のメッセージを読み取ろうとするのは、書かれた時代の古さからいってやや無理がある。とにかく笑える面白さと広げた風呂敷をたたむ鮮やかさで読ませる。
    このユニークな小説、精力的に翻訳を続ける木原さんの軽快な訳で紹介されたのはありがたい。

  • 60年代ニューオーリンズが舞台らしいけど、高学歴引きニートと捉えれば令和日本でも充分通用するよね。巨漢で話の通じないヤバいヤツとすると空気階段のコントみたいな。オカンと元カノはかたまり2役。

  •  ピューリツァー賞受賞作品であり、デヴィッド・ボウイの愛読書でもある。看板に偽りはなく、最初の3ページだけでも既にかなり面白い。
     舞台は60年代のアメリカ南部。傍若無人で高学歴で子供部屋に住む無職の巨漢イグネイシャスがついに就職活動を始める。彼が巻き起こす騒動を軸に珍妙なミステリーと風変りなラブストーリーと演劇的な群像劇が絡み合う。イグネイシャスは作中で資本主義のシステムに滔々と文句を垂れているし、不純な動機からでも社会運動を始めようとするあたりプロレタリア文学の要素も入っているかもしれない。すべてが不思議なバランスと巧みなストリーで成り立ち、風刺も効いている。
     ミルトンを気取って社会から距離を置くイグネイシャスは都合のよい幽門を持っている。疲れたり、耳に痛い話をされると幽門は反乱を起こし、体調が悪くなる。体調が悪いのだから何ができなくてもやむを得ないし、幽門の弱い人間に無理をさせる方が悪い。そんな価値観で生きているイグネイシャスは心が弱いのか強いのか分からない。私の心にもイグネイシャスは住んでいる。イグネイシャスが心にいない人はぜひ招き入れるといいと思う。当然のこととして他人に甘え、ふんぞり返るのは愉快な万能感を生むだろう。
     そんな彼もついに就職をするが、トラブルばかり起こす(もちろん反省はしない。なんなら社会の無理解を嘆く)。数々のトラブルが怪しいバーの怪しい活動、チャンスに恵まれない黒人、母親の交友関係、街の同性愛者たち、つぶれかけのアパレルメーカーなどといつしか1本の線で繋がり大団円に向かう。一気に読める。多少冗長な感もあるが、それはイグネイシャスなので仕方ない。誰にもおすすめできる痛快な小説だった。
     また、訳も読みやすく、セリフが多い小説にあって登場人物の個性をよく表している。イグネイシャスの口癖「ていうか、」の憎たらしさもリアルである。イグネイシャスの顔をあしらった表紙も秀逸で、普段はカバーをかけて本を読むのに、この顔が見たくて、カバーをとってしまった。
     なぜここまで邦訳されなかったのか不思議なくらい。今後も売れ続けると思う。
     著者は自死しており、痛快ならがあたたかい読後感のあと、しめやかな気持ちになった。

  • イグネイシャス!!! その名の通り、世の中から「迫害」されていると思い込んでいる、陰キャ。陽キャを配役するなら、アレックス・デラージだろうか。アレックスが暴力的「ハラショー」で自己肯定に突き進むのに対して、イグネイシャスは母親の「イグネイシャス‼︎!」で自己肯定に突き進む。ドルーグの白装束と、イグネイシャスの白スモッグ。アレックスは精神病院で治療されるもマンマと返り咲き、イグネイシャスは間一髪救急車から身をかわす。この二人を批判しても始まらない。在るのだから。綺麗事を言っても、社会はこの二人を内包している

  • 饒舌や過剰、インチキ臭、うさんくさい笑いを乗り越えたら未来があった。イグネイシャス頑張った!
    この荒唐無稽の内容を読みやすい文にされた翻訳の方もスゴいし、最後まで読んだ自分も大したことないけど頑張った笑

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著者プロフィール

ジョン・ケネディ・トゥール
1937年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。小説家。テュレーン大学、コロンビア大学大学院卒業後、大学で教鞭を取る。1961年、軍隊に入隊しスペイン語話者に英語を教える傍ら『愚か者同盟』を執筆しはじめ、除隊後、ニューオーリンズに戻り完成させる。いくつもの出版社に原稿を送るも出版に至らず、1969年、失望の中で出た旅の途中で自死。その後、母テルマが作家ウォーカー・パーシーのもとに原稿を持ち込んだことがきっかけとなり、1980年に刊行。翌年にピュリツァー賞を受賞し、全世界で200万部超のベストセラーとなった。その他の作品に、16歳のときに書いた『ネオン・バイブル』(1989年刊)がある。

「2022年 『愚か者同盟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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