動きの悪魔

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336059291

作品紹介・あらすじ

〈向こう〉には物理的な目には見えない、人間の貧弱な脳にはわからない新たな世界があると、いつも信じていた――
「ポーランドのポー」「ポーランドのラヴクラフト」の異名をとる、ポーランド随一の恐怖小説作家が描く、幻視と奇想に満ちた鉄道怪談集。鋼鉄の蒸気機関車が有機的生命を得て疾駆する、本邦初訳14の短篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • ポーランドの怪奇・幻想作家グラビンスキの鉄道怪談集。
    彼が健筆を振るった20世紀初頭は鉄道網が地球を覆い始めた時代で、
    新しいテクノロジーに対する憧憬と希望、
    同時に一抹の不信と、
    その狭間に生じる異様な夢想が織り交ぜられている。
    描かれているのは怪奇というより、
    鉄道そのものに魅入られたマニアたちの狂気であり、
    彼らの暴走によって引き起こされる、
    どす黒いスラップスティックである。
    異常な展開を見せる深夜の情事、
    移動の欲望に取り憑かれて繰り返される無目的な旅、
    不吉な予知夢、
    事故死した美女の凄惨な美貌を記憶し続ける駅長……etc.
    ポオより軽く、ラヴクラフトより能天気で、
    恐怖の隙間に皮肉な笑いが滲むところはグラン=ギニョル的。

  • ホラー。短編集。
    鉄道をテーマにした短編集。
    初めて読む作家。《ポーランドのポー》または《ポーランドのラヴクラフト》らしい。
    怪奇現象だけでなく、どの作品でも必ず描かれる、人間の狂気が特徴的。
    表題作、「奇妙な駅」「待避線」などの作品にはSF要素もあり、好きな世界観。
    一作だけ明らかに雰囲気が違う、「トンネルのもぐらの寓話」が一番好み。これもSFっぽさがある。
    この著者は『火の書』が気になっているので、そちらも読みたい。

  • 佐藤究氏推薦

  •  1919年刊。私にとっては『無気味な物語』(1922)に次ぐ2冊目のグラビンスキ短編集。
     やはり、この人の作品の語りの何かが、私にはとても魅力的である。先に読んだ作品集と同様に、本書特に前半には、「何かに憑かれた男」が破局に向かって突き進む物語が溢れている。この「何か」が、本書では鉄道に関する諸要素となっているのだ。
     ヨーロッパにおいては乗りさえすれば易々と国境を跨ぎ諸国を巡回できる高速な乗り物である鉄道の、その驀進する「動き」「スピード」「巨体」が、何やら猛々しく非情なもののイメージとなったことは想像できる。その性質の魅惑に「我しれず執着してしまうこと」が、男たちの逸脱と破滅を招く。この辺の危うさを本書前半の作品群は魅力的に描き出す。
     何しろ1冊まるごと「鉄道の話」という連作集なので、内容にバラエティをもたらすためだろう、後半はもうちょっと様々な様態の作品が入っている。その分、鉄道自体の「動き」の強迫的なイメージが薄らぐようで、私にとってはそこが幾らか物足りなく思われた。
     あまり面白くもないようなのが2,3あったが、全体としてはやはり魅力ある短編集だった。

  • 普通のホラー/ミステリ。鉄道に関する風景描写は巧み。

  • どうにも陰のある人物に惹かれる。その正体がなんなのか、ひきずるまでの理由が知りたくなる。トッキュウジャーという番組でザラムという人がいた。かつては悪の組織にいたのに「なんか違うわ」と離脱し、主人公達が妄想でこしらえた列車の保線員を勝手にやってる。この本の最初の作品のモデルとなった人である。(もちろん嘘)関根勤さんが車掌をやっていて皆にはやさしく、猿のパペットをはめて毒を吐き、猿を叱るという面倒くさい役をやってた。本は読みやすく楽しい。自分にあってる。 

  • 文学

  • 相変わらず幻想小説ってーか…難しくて分からん…
    だいたいいつものみんな死ぬオチ

  • 基本最後は大惨事!

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著者プロフィール

1887年、オーストリア=ハンガリー帝国領ガリツィア・ロドメリア王国のカミョンカ・ストルミウォーヴァに生まれる。ルヴフ大学でポーランド文学と古典文献学を学び、在学中に作家デビューするが、卒業後は教職に就く。1918年に短編集『薔薇の丘』、1919年に連作短編集『動きの悪魔』を発表し注目を浴びる。短篇を本領とし、『狂気の巡礼』『不気味な物語』『火の書』『情熱』といった短編集を次々と出版した。ポーランド文学史上ほぼ唯一の恐怖小説ジャンルの古典的作家。1936年に死去。近年、国内外で再評価が進み、〈ポーランドのポー〉〈ポーランドのラヴクラフト〉として知られる。

「2018年 『不気味な物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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