壊血病 医学の謎に挑んだ男たち

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336057990

作品紹介・あらすじ

壊血病は古代ギリシアの昔から医師や水夫を悩ませてきた謎であるが、帆船時代になって船が大型化し長期の航海が可能になり、食糧保存に限界があったために壊血病は奇病から恐ろしい疫病にまでになった。200万人の船乗りの命を奪ったとも言われる。壊血病は疫病の域を越えて国家の命運を左右する重要な要因となり、ナポレオン戦争中のイギリスとフランスの衝突で頂点に達した。恐怖の病の克服にリンド医師、キャプテン・クック、ブレーン卿の3人が挑む、熱い男たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 久々の大当たりです。

    非常に面白い。人間は、如何に傲慢で思い込みが激しく、時流に流されやすいのか。それを「壊血病」の謎を解決するという事例を通してかくも活き活きと描写した、名著だと思います。

    確かにアマゾンレビューにあるように、壊血病など既にビタミンC欠乏症として現れる事が自明なのに冗長だと思われる方もいるかもしれない。

    最初の5分の1程度は確かにそのような構成だったように思う。
    しかし、本書は、臨床医学の先駆け、科学とは如何にあるべきかという心構えを見事に描いている。
    是非とも、現代人に読んで欲しい1冊。
    沢山の教訓が隠れている。

  • うーむ大航海中の船員の食事と環境は凄まじいな……
    前に疫学の創始者ジョン・スノウの話を読んだ時も、今じゃ常識な事が当時は判らなかったがゆえにぱたぱた人が死んでいく状況に「早く、早く気が付いてくれぇ!」と思いましたが、こちらも同様です。
    しかしようやく出てきたら今度は王立協会が!
    確かジョン・スノウのときも、ジョン・ハンターのときも、王立協会が!!
    先進的な結果に反応できないんですよね~反応したと思ったら潰しにかかったりするし。これだから権威ってのは……。
    っていうか何気にイギリスの医学史をあちこちかじってる感じになってきたぞ。

    そしてサブタイトルにあるように「男たち」なんですよね。
    結局なんで効くかよくわからないから、何度も歴史の陰に埋もれて行っては誰かが掘り起こす、というのを繰り返し、20世紀になってようやくビタミン欠乏症であり、ビタミンC……アスコルビン酸が人体に大量に必要だということがわかる。
    今はお手軽に取れるビタミンCですが、歴史浅かったんだなぁ。

    原題 / "Scurvy : How a Surgeon, a Mariner, and a Gentleman Solved the Greatest Medical Mystery of the Age of Sail"(2003)
    カバー画像 / John Bennett Fine Paintings/The Bridgeman Art Library

  • 毎日書評、2014-09-14

  • 大航海時代に船乗り達を苦しめた最も恐ろしい病気が壊血病だった。壊血病はアスコルビン酸(ビタミンC)の不足により、細胞や骨の結合が徐々に失われて、細胞の壊死、出血、骨折等で最終的に死に至る病気である。この本では、壊血病が解決するまで(駄洒落じゃないけれど)の歴史と、壊血病の予防に取り組んだ3人の人物リンド、クック、ブレーンの功績を紹介している。
    壊血病の原因は20世紀になるまで特定されなかった。大航海時代の軍医達は発症時の対処法、発症しないための予防法を発見することに注力し、レモンやオレンジ果汁が効果があることを突き止め、効果を挙げた医師もいた。しかし、政治や経済的な理由でその対策は葬られ、当時の権威とされた医師や軍や政治家のトップの意向が反映された対策案(麦汁)が予防薬として永年に渡って使われた。しかし効果はほとんど無く、そのため多くの船員を喪失する。
    リンドは船医としての経験からレモン等の柑橘系の果物に効果があることを突き止めたが、その対策は費用対効果が疑問視され、また自身の社会的な地位が低かったこともあって、耳を傾ける有力者がおらず普及には至らなかった。また、クックは4度の世界周航で壊血病による死者をほとんど出さなかった。彼は船内を清潔に保つことと、毎日自ら率先してレモン汁を摂取し、船員にも寄港時に新鮮な野菜や果物の摂取を薦めた。しかし、彼は科学者ではなく、こちらも原因の特定には至らず、逆に権威に負けて麦汁の効用を認めてしまう。ブレーンは、上流階級の出身らしく自らの意見を堂々と主張できる立場にあり、リンドの対処法、クックの実績を踏まえて、レモン汁の効用を主張する。戦争が頻発した時代で、フランスやスペインの船員や兵がこの病気に苦しんだのに対し、イギリス海軍では発症率が低く、戦力が維持できるためその強さが際立ち、多くの地域を制覇することとなったらしい。壊血病への対応は、歴史を変えた一因となったと著者は考察する。現代において、壊血病で亡くなる人の話を聞く事はほとんどないが、ビタミンCが不足する状況、例えば天災等で食料不足になった場合や飢餓が発生した地域、偏った食事を続けた場合(ジャンクフードばかりの食生活)に症状が現れるので、今でも注意は必要という。

    キャプテンクックを追った旅行記に壊血病の話が何度も出てきて、この本の出版を知って早速読んでみた。いつの時代でも、権威には逆らえない。この壊血病の歴史においても、治療法の発見と権威による破棄の繰り返しだったようだ。それは医療の世界に限ったものではなく、ビジネスの世界でも通用する教訓として読むことができると思う。

  • 壊血病は古代ギリシアの昔から医師や水夫を悩ませてきた謎である。大航海時代になって、船は大型化し長期の航海も可能になったが、食糧保存には限界があったため壊血病は奇病から恐ろしい疫病になっていく。この時代だけで200万人の船乗りの命を奪ったとも言われる。壊血病はさらに国家の命運を左右する要因にもなり、ナポレオン戦争中のイギリスとフランスの衝突で頂点に達した。この恐怖の病にリンド医師、キャプテン・クック、ブレーン卿の3人が挑む、熱い男たちの物語。

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