ハイスクールU.S.A.: アメリカ学園映画のすべて

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336047489

作品紹介・あらすじ

いまやアメリカ映画のメインストリームの一翼を担う「学園映画」。日本では誤解され続けてきた、この一大ジャンルムービーの楽しみ方を徹底解説した、前代未聞・空前絶後のアメリカ学園映画ガイドブック。

感想・レビュー・書評

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  • 1位

    この本は私の世界を一変させた。

    アメリカの学園映画。
    そんなのノーテンキなお子様向けでしょ?
    アメリカ人って大雑把だからなあ。
    ま、なかには傑作もあるんでしょうけど。

    くらいの認識だった私。
    とんでもない誤解でした!

    アメリカの学校には厳とした階層があります。
    学園女王のチアリーダーQueen Bee、
    アメフト部員のいじめっ子Jocks、
    スケボーとクスリが好きなボンクラSlacker等。
    いわゆるオタクを表すにも
    Nerds / Geeks / Brain / Freaks
    と四通りの呼び方があるなど大変。

    著者の二人、長谷川町蔵と山崎まどかが定義する
    “学園映画”とは、そんなアメリカ学校内の
    階級をきちんと描いた映画のことなのです。

    例えば「バック・トゥー・ザ・フューチャー」は
    主人公がヒエラルキーの下層にいるのに
    キュートなステディがいるのが非現実的だし
    親友が同級生ではなく大人の科学者ドクだから
    大傑作ではあるけれども学園映画ではない!
    意外と強固なジャンル意識がある分野なのです。

    そうはいっても膨大な数がある学園映画、
    なにが第一作かなんて分らないはず……
    と思ったら、ちゃんと分るところがすごい。

    それはジョン・ヒューズ監督
    「すてきな片思い」('84)。
    ちょっと新しすぎる気もするけど、
    それにはれっきとした理由がある。

    「もちろん学園を舞台にした
    青春映画は昔からあったけど、
    「優等生VS劣等生」「金持ちVS不良」
    といった単純な対立関係だった。
    もしくはメガネ君と不良が
    なぜか同じ仲良しグループだったりするような
    ありえない友人関係とか。
    それに対してヒューズは現実を
    はじめて映画に持ち込んだ。(略)
    設定がリアルなままドラマを生みだした。
    そんな話を作る人なんて
    それまで誰もいなかったんだよ」

    なるほど、そういえば
    「アメリカン・グラフィティ」('73)
    にはそういう対立がなかったなあ。
    だから「アメ・グラ」は学園映画前史として扱われる。

    ここから見えてくるのは未知の秘境・アメリカです。

    1、「異性にもてる」ということに対して
    おそろしいほどに執着すること。

    そんなのどこの国でも同じだろー、と
    お思いかもしれませんが、
    アメリカはハンパじゃない。
    なんてったって卒業パーティー「プロム」には
    異性の恋人を連れていかなければならないから。

    恋人のいない高校生は出席できないし、
    もし一人で行こうと思ったら、学校によっては
    「どうしてもパートナーが見つかりませんでした」
    という但し書を親に書いてもらわなければならない。
    うわー、イヤだ!
    しかも、出席しないとコミュニティから
    はみだすことになってしまう。
    「それではモテの概念に取り憑かれるのも
    無理はあるまいよ」と著者。そうだよねー。
    それでも廃止されないところに、
    プロムの甘美な魔力がある。

    2、親の資産か先生の推薦がないと
      大学にはとてもいけないということ。

    アメリカでは、大学の学費がべらぼうに高い。
    その上、教師に気に入られないと
    成績優秀であっても奨学金をもらえない。
    「鬼教師ミセス・ティングル」(’99)では
    奨学金が必要な生徒にわざと低い点をつける
    鬼教師をヘレン・ミレンが熱演しているそうです。

    3、田舎では週の半分はアメフト漬けだということ

    ある田舎町では金曜の夜すべての店が閉まる。
    全員で高校のアメフトの試合を観戦するため!
    土曜には大学の試合が、日曜にはプロの試合がある。
    「プライド 栄光への絆」(’04)は
    閉塞感漂う活気のない町が舞台で、
    町民全員がホワイト・トラッシュ。
    高校アメフトが最大の娯楽で、
    試合に負けると
    「勉強させすぎなんだ」とコーチを叩く。
    アメフト部員は、多少の悪業は大目にみられる。
    それでも奨学金をもらって故郷を抜け出せる
    部員はほんのひとにぎり。
    高校のときは英雄でも、ろくな職につけない……。
    さびれるところには、
    さびれるだけの理由があるんだよね。

    こうして見ると、アメリカ社会の問題を
    映画は果敢に取り上げているのが分ります。

    ‘99のコロンバイン高校銃撃事件について、
    犯人の高校生二人を最もリアルに描いたのは
    「ボウリング・フォー・コロンバイン」(’02)でも
    「エレファント」(‘03)でもなく
    「ゼロ・デイ」(‘03)だ、という指摘が興味深い。

    さて、学園映画はスターの登竜門でもあるし、
    フォーマットがしっかりしているから
    その分実験も可能になる。
    古典のリメイクも盛んで、
    シェイクスピアの『オセロ』『じゃじゃ馬ならし』
    『真夏の夜の夢』を現代の高校に移した映画が
    作られています。
    仰天したのは『罪と罰』も
    学園映画になっていること。
    ええ、ドストエフスキーの『罪と罰』ですよ!
    西部劇の名作「真昼の決闘」をリメイクした
    「タイムリミットは午後3時」('87)はぜひ観たいなあ。

    「学園映画」というキーワードで、
    ここまで書けるなんて………。
    映画好きな人はもちろん、
    アメリカを知りたい人も、ぜひ読んで下さい。
    英語にして逆輸出したいくらいです!

  • 「アメリカン・グラフティ」もジョン・ヒューズ映画も大好きだったけれども、年をとるとともに、今さら学園映画なんて、と見なくなっていて。が、ごく最近、なぜか海外ドラマ「グリー」にすっかりはまってしまい、その流れ?で読んでみた次第だけどすごくおもしろかった。
     ただの映画紹介にとどまらず、あらすじや脚注まで読んで笑えるし、コラムもとても充実してて興味深いし。音楽や文学まで、すみずみまで目が届いているというか。ほんとに、学園映画を知る、ってだけでなく、アメリカを知る、っていう感じ。読みでがあって、読みものとして楽しい。著者おふたりはアメリカのリアルな事情にとんでもなく詳しいと思われる。そしてアメリカ学園映画への愛がとんでもなく感じられるところが好き。
     この年で今さらーとか言ってないで、見てみたい映画がたくさん増えた~。
     

  • いまやアメリカ映画のメインストリームの一翼を担う「学園映画」。日本では誤解され続けてきた、この一大ジャンルムービーの楽しみ方を徹底解説した、前代未聞・空前絶後のアメリカ学園映画ガイドブック。 学園映画はアメリカ社会そのもの!
    終わらない放課後のダイナーで喋り尽くした、「学園映画」の魅力のすべて。
    重要作品、監督や脚本家、常連俳優、音楽、文学、スポーツのルール、宗教までを詳しく解説。
    スクールカーストの詳しい解説、学園内のヒエラルキーはランチを食べるカフェテリアの席で決まる、ジョン・ヒューズ監督の映画に始まる学園映画の歴史と変遷、学園映画のお約束(舞台と時間設定が限定されている、登場人物はそれぞれ学校で異なったグループに属している、シリアスとギャグが混在している)、学園映画の音楽の解説などの、学園映画を見る上で欠かせない学園映画解説本です。

  • 割とアメリカのスクールカーストや学園映画は知識があるつもりが、まだまだ深い

  • アメリカ映画、アメリカのティーン事情がとっても詳しく書かれていて これ一冊読んだ後に映画を見るとさらに楽しめるんじゃないかなと思う。

    個人的に下の段書かれている映画や俳優の細かい説明文が好き。

  • いままでホラー映画ばっかり見ていた僕に、全く別の映画の世界があることを教えてくれた本。
    映画だけじゃなくて、アメリカの文化もよくわかるようになってるのが面白い。
    この本で取り上げられている映画は、DVDで見て回ったんだけど、ソフト化されていない作品も多いよね。

  • アメリカ学園映画指南本として素晴らしい。アメリカの風俗も学べるので、この本を片手に片っ端から映画を見て行けば相当詳しくなれるはず。

  • いやあ、あの映画のあれは、そうかそうだったのかーと目からウロコが。

  • 学園映画のレヴュー本。アメリカの高校のドラマや映画では断片的にしか見えてこなかったグループのはっきりした組織相関図が見えてきて面白い。コロンバイン関係の映画を見た時にいまいち理解できなかったジョックスとかギークだとかの生徒の分類による権力構造がはっきりして、今まで見た学園映画も違う視点で見れて面白い。

  • アメリカ学園映画を網羅しつつ、周辺文化も学術的に追求してあるとてもありがたい本。現地の情報にやたら詳しい帰国子女の文科系な先輩二人組にアメリカ文化の面白さを切々と啓蒙されます。本書で仕入れた雑学を元に、わたしはキルスティン・ダンスト、オーディション無敗伝説を己がのことのように吹聴して回ってます。

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著者プロフィール

1968年生まれ。ティーン・ギャング(ツッパリ)全盛時代に、東京のダーティー・サウス、町田市で生まれ育つ。90年代末からライター活動を開始。映画、音楽、文学からゴシップまで、クロスオーバーなジャンルでハスリングし続けている。著書に『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワーネットワーク、2019)、『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社、2017)、『あたしたちの未来はきっと』(タバブックス、2017)、共著に『ヤング・アダルトUSA』(DU BOOKS、2015)ほか。

「2019年 『文化系のためのヒップホップ入門3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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