FIASKO‐大失敗 (スタニスワフ・レムコレクション) (スタニスワフ・レムコレクシヨン)
- 国書刊行会 (2007年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336045027
作品紹介・あらすじ
土星の衛星タイタンにおける救出任務の最中に遭難した宇宙飛行士パルヴィスは、自らをガラス固化して22世紀に蘇生する。地球外知的生命体探査に旅立つ宇宙船エウリディケ号に乗り込んだ彼は、最先端の自然科学者やカトリックの神父らとともに、知的生命体が存在する可能性のある惑星クウィンタを目指す。やがて、光を超える旅の彼方に彼らが見たものは、地球とは別種の進化を遂げた文明の姿だった。不可避の大失敗を予感させつつ、文明の「未来」を思考したレム最後の神話的長篇。
感想・レビュー・書評
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レムの著述期間が約2年、日本語訳者の作業期間が約3年。文句ない超弩級SF。本筋に直接関係ない文明論や宗教論などへの回り道に付き合わされるところは、まさにレム(愛好家には、その回り道こそ本筋、という面がある)。
でっちあげ科学(made-up science)も、論文でも読んでいるかのようにホント感あり。重力シールドとか、時間後退とか、稀代の詐欺師です。
著者得意の「ファーストコンタクト」もの。"ソラリス"や"砂漠の惑星"とは違い、未知なる文明に対して厳かなる畏敬があるばかりではなく、本作では戦火を交える。異なる文明への侵略がテーマになっているが、そこはレム一流の「侵略論」が打たれており、読ませる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルから分かる通り壮大な失敗の物語。思索も冒険もガジェットもてんこ盛りなのでアニメ化希望だけど無理だろう。死後13年も経ってこれを読み終えようやく追悼できた感がある。
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ひとりレム追悼特集第2弾。レム62歳のときの作品を再読。
土星の衛星タイタンで救出任務(救出されるのはピルクス宇宙飛行士。うわ、遭難してたのか)にあたる宇宙飛行士パルヴィスは作業中に遭難。自らをガラス固化して未来の救出を待つという冒頭からしてもうすごい。巨大ロボットもののパロディーのような作業機械、、冷凍保存を超える理論での肉体保存方法云々。すごいぶっ込みよう。
その後の蘇生シーンからテーマはSETIになり、これまた読むものの気力精神力を使い果たすドラマが始まる。これまでのSFがフルマラソンだとしたら、これはクレージートラバース。なんで読んでいるんだろうと思いながらも読み切り、また次の年読みたくなるという衝撃作なのだ。体力気力を充実させて読もう。 -
SFにはファースト・コンタクトものというのがある。異星人なり異星生物とはじめて遭遇する話である。ちょっと考えると人類は地球にいて向こうからやってくるのと、こっちから出かけていくのがあるかな。やってくる話では、遅れた人類を開化しに来る超絶宇宙人だったり、はたまた侵略者だったり。前者の典型が『幼年期の終わり』だろうし、後者は侵略ものという言い方もあるが、『宇宙戦争』を代表としてあまたある。映画『ET』のようなほのぼの路線はこの分類からあぶれることになるか。ファースト・コンタクトのあとエイリアンによる地球人殺人事件の法廷ものになる『イリーガル・エイリアン』なんていう異色作もあるがね。
スタニスワフ・レムの場合は『エデン』にしろ『ソラリス』にしろ『砂漠の惑星』にしろ、人類が探検に行き、あるいは不時着して異星の知性体と遭遇するが、真の意味でのコンタクトは成り立たないという話だ。あるいは『天の声』なら異星からのメッセージの解読に失敗する物語。
『大失敗』はレムの最後の長編で、1970年代にメタフィクションに軸足を移していたが、1980年代に再びSFに回帰した作品である。
地球からの観測で知的生命が存在すると推測されたクウィンタ星に探検隊を乗せた宇宙船〈エウリディケ〉が赴く。ラム・ジェットとは書かれていないが技術的説明によれば恒星間ラムジェットだと思われる〈エウリディケ〉によってクウィンタ星のある星系に到達し、中性子星をタイムマシンとして活用して、クウィンタ星にちょうど文明が存在する時期に到達し、地球に遙か未来にならずに戻ってくるという設定。まあ、それはいい。
〈エウリディケ〉の出発は22世紀なのだが、話はそれより200年も前、土星の衛星タイタンから始まる。タイタンから緊急呼び出しを受けた宇宙飛行士パルヴィスは間欠泉地帯でディグレーター(首なし巨大ロボットのようなもの)に乗った2人が遭難し、そこにピルクスが救助に向かいやはり消息を絶ったと聞く。ピルクスはかつてパルヴィスの教官だったことがあり、彼はディグレーターに乗って救難に向かうがやはり遭難してしまう。彼はガラス固定化装置を作動し、未来での救助に賭けることになる。
そして〈エウリディケ〉が出発しようとしているタイタンで、大昔の遺体が見つかる。その中の一体だけを助けることができそうだったが、地球へ送るより〈エウリディケ〉に載せてその蘇生を行うほうが救命率が高いだろうということになる。蘇生された男は脳の損傷で記憶が戻らず、種々の証拠からPの頭文字を持つとしかわからない。つまりピルクスかパルヴィスなのだ。彼はいつしかマルコ・テムペと呼ばれるようになる(ほんとうはマレク・テムペなのだが、聖書への参照を意識して、訳者によりマルコが採用された)。
ただ、タイタンから話を起こしてピルクスかも知れない人物を登場される意図は最後までよくわからなかった。
そして物語の本体、クウィンタ星人とのコンタクトの物語だが、テーマは「力の誇示」、すなわち軍備。
ひきこもって出てこない人と何とか接触したい。ドアをノックしても返事はない。ちょっとドアを開けてみると中から銃撃してくる。仕方がないから「力の誇示」によって相手を従わせようとしてドアを爆破したら、家がみんな燃えちゃった、大失敗。みたいな話である、これは。
「力の誇示」によって相手を従わせようとしている、世界中の何とか国の指導者の方々に読んで頂きたい。 -
文体と相性が悪かったのか、どうも頭に入ってこなかった。
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死者を蘇らせたりする話。
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【選書者コメント】レムのSFは、専門用がたくさん出てきて、読むのに苦労する。研究者が片手間で書いた小説とは到底思えない細密度。
[請求記号]9800:236