- Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336035950
感想・レビュー・書評
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海外小説を読むとき、未知のものに触れたという驚きよりも、むしろ現代日本に通じる問題であったり、同じ水脈に発する考え方に触れることが多い。空間的な隔たりを越えて、おなじ気持ちや時間を共有する楽しみがそこにはある。しかし海外小説を紐解いているのである、それだけでは満たされない。
そういったストレスを晴らしておつりが来るのが本書だ。これぞ南米小説というよりほかに形容のしようがない無軌道な物語展開、憑依的な語り口、見知らぬ土地の歴史。どれもが新鮮。とくに突拍子のないエピソードの連続は、この本でなければ味わえない。残りのページ数が減ることが惜しいと感じたのは、久々。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
-私の名前はエバ。生命を意味している。
この文章で始まる、南米らしい、混沌をきわめているけれど全体で、またラストに向けて大きな一つの流れになって進む、マジック・リアリズム&政治的な舞台背景も
随所にあふれた物語。
主人公のエバの上を、時代や人、さまざまな土地が通り過ぎ、去って行き、また再開し、さよならをし、、。
その思い出に命を吹き込もうとシェヘラザードのように、物語を作って聞かせる少女がエバ。
メインの登場人物はほぼ移民。
ゲリラ司令官や両性具有の女優、暗すぎる過去を持つ政治記者、人のはく製を作る博士、
粘土から”普遍物質”という、本物そっくりにすべてのもの作ってしまう女性などが出てきて、更に物語を迷宮のように入り組ませる。
しかしそんな奇妙な人物達が登場するからか、
命の混沌、またベネゼエラの政治的混乱の時代背景、
何もかもを飲み込んでしまう深い密林という自然を
より人間らしい視点、観点から達観できるような、、
あるいはさらに複雑に悩ませるような、、。
とにかく感想は、一つ一つの思い出をうんと大切にしたい、と思えたこと。
こんな単純な感想をはじめて書いたかもw
でも、この”思い出”という言葉は、普段使うような軽々しいものじゃなくて、命の思い出、というような、尊厳に値するものだ。
さっきようやく読了した。
久々に、なかなかレビューに何を書こうか浮かばない小説だった。
なんでだろ? -
アジェンデの87年の小説。
衝撃の「精霊たちの家」(1984)と著者が最高傑作とする「パウラ」(1994)の次に読んだので、ややインパクトがおちる感じもするが、さすがに一気に最後まで読ませてしまう。
さまざまな話が、目まぐるしいスピードで進んでいき、徐々に、それらが組み合わさり、伏線を回収しつつつ、一応、ハッピー・エンドで終わる。一種のピカレスク?大人のファンタジー?
フィクションではあるが、物語を語るということに収束していくヒロインの姿は、やはり著者に重なっていく。
「エバ・ルーナ」シリーズで、エバが書いた物語という立て付けをとった「エバ・ルーナのお話し」も読んでみよう。 -
南米シリーズ。やっぱ示唆に富んでおり、イイネ!
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苛烈でグロテスクで、でも元気で前向きで骨太でガッツがあって、幸せ。
「ファミリーポートレイト」を連想。 -
2012/5/7購入
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初・イサベル・アジェンデ。
ガルシア・マルケスを読んだ時と同じ印象を抱いた。
とにかく饒舌。流れるような語り口。
どちらも原著を読んだことがないから、実際には似てるかどうかは不明。
でも両者とも読ませる文章であるのは確かかな。
本著「エバ・ルーナ」は、社会の枠組みから外れた人たちばかりがたくさん出てきてサーカスみたいににぎやかなお話。
物語を読むという才能を持つ女の子、エバ・ルーナ。彼女の放浪の人生はわずか7歳で始まった。一人でたくましく生き抜きながらも、実にさまざまな人たちに出会い、成長していく姿がいい。
いろんな人のところを転々としていたけど、印象深いのは、商店を営むアラブ人、両性具有の女優ミミーだな。
もう一人、全然別の地で生きるロルフ・カルレの人生も挟み込まれる。
終盤で二人は出会い、クライマックスで結ばれる。
もう少し、二人が歩み寄り惹かれあう過程がほしかった。
次は短編集「エバ・ルーナのお話」を読もう。
Eva Luna -
向き不向きはあるらしいけど。
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初めて読んだアジェンデの本だった。印象は「なんておしゃべりな文章なんだろう」。小説なんてものは文字の羅列なんだからこんな表現はおかしいんだけど、それほど彼女の文章は表現力豊かで魅力的。エバが夢から覚めた後、目の前にロルフがいたくだりは、全く異なる人生を歩んできたふたりがまさに「出会った」んだ、と感じた。