アスペルガー医師とナチス 発達障害の一つの起源

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334962319

感想・レビュー・書評

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  •  アスペルガー障害の名前の由来となったアスペルガー医師とナチスの微妙な関係を暴く。

     これはすごい本である。
     アスペルガー医師はナチスに入党こそしていなかったが、その距離感は極めて近く、ナチス政権に順応し確かな地位を築いていた。さらにアスペルガーの自閉という概念には当時のナチスの考え方がだんだんと色濃くなっていっている。時を同じくして自閉症という概念を確立したレオ・カナーもアスペルガーと同じ病院にいた亡命ユダヤ人医師と協力関係だったことはメモ。
     驚くべきはアスペルガーが治療不能と判断した(つまり死亡させる施設に移した)子ども達が今の私達から見て全くそうには見えないことだ。血統や男女の差別も見え、かなり恣意的な判断を下している。

     アスペルガー症候群という疾患が90年代に脚光を浴びた意味は重い。
     私達とナチスの距離は私達が思っているよりずっと近いと覚悟しなければならない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740739

  • ナチの児童安楽死に手を貸した

  • ハンス・アスペルガーの生涯に焦点を当て、発達障害の診断・研究が第三帝国の政治的イデオロギーと密接に結びついていたことを主張する一冊。“民族共同体” 適性がない者(社会性がなく反抗的な者)は排除(殺戮)するといった優生学や、極端な二分化的思考が発達障害の成立とも関わっている。
    発達臨床心理学分野は、研究をすることがラベル付けを促進するという側面もあり、色々難しいなぁ、と思う。

  • ・カナーもアスペルガーもオーストリア出身。
    ・自閉症の発見の先駆として、医師ゲオルグ・フランクルと心理学者アンニ・ヴァイスが、カナーとアスペルガーの両者に関わりを持っていた。
    ・アスペルガーは敬虔なカトリック。
    精神分析をあまりに合理的なものとしてさげすむ反面、問題のある子供たちを冷徹に観察した。
    ・ローナ・ウィングはアスペルガーを”発見”したが後年後悔している。
    ・アスペルガーは本格的な自閉の女性は見たことがないと述べている。
    ・ナチ親衛隊の14パーセントがオーストリア人。
    ・シュピーゲングルントの生還者への補償は1990年代以降。

  • アスペルガー氏の半生の話。
    医者・医学の功罪がいろいろあること。
    ナチスの狂気。排除の理論。
    発達障害の子供を持つ親としては、いろいろ考えさせられる内容です。

  • アスペルガー症候群の元となる症例を発見したアスペルガー医師によって自閉症が「見出されていく」過程を、丁寧に説明していてとても面白かった!発達障害とかの本を読むほど(結局自閉症の定義ってなんやねん…)となってしまう理由の一端が、見えた気がした。
    日本でも最近大人の発達障害がよく取沙汰されるけど、ある種の特質を、差別とは言わないまでも区別する“自閉”という概念が、「個人は共同体に参加しなければならい」というナチスのイデオロギーから発生しているというのは、なんだか怖い。

    「自閉症と診断された子どもは、そのような診断のために、その行動が常に自閉症特有の行動なのだと見なされ、その子の個人としての独自性が考慮されなくなってしまう」ということを危惧する筆者のエピローグがよい。

  • 力作

  • アスペルガー医師が生きた時代と環境、ナチスとの関係性についてつぶさに研究し記載したもので非常に面白い。アスペルガーの行動には2面性があるが生き延びるためにはいたしかたがなかったという気もする。いずれにせよナチス児童精神医学を信奉し障害児の積極的安楽死にも協力したことは事実だし、もしかすると自閉性精神病質はささやかな抵抗を示すため障害のある子を一人でもナチスから守ろうとしたために提出した概念だったのかもしれないと思う。それにしてもナチスはひどい。

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